朱莉TeenageRiot

棚,日記,備忘録

OGRE YOU ASSHOLE - workshop

OGRE YOU ASSHOLEというバンドを聞く上で最も重要なアルバム、それがこのworkshopシリーズだと僕は思っています。彼らの活動の中で大きな一つの方針がライブ録音とスタジオ録音でのアルバムを完全に切り分けるというものでした。最新のアルバム聴いたときとかむしろライブでいつもやってるバージョンの本当に素材だけのような質感だったので、これworkshopを作ることを前提にやってない?とすら思いました。

 

というわけで一般的なロックバンドのスタジオ版とライブ盤という関係性とは若干違ったものになってますので、正直オウガのサイケ三部作の難解さがよくわかんね〜って人にこそオススメです(勿論既存の曲が単純にパワーアップしてるのもあるのでそれ以外の方にも)。というかぶっちゃけ僕も最初そんな感じで「homely」とか息苦しすぎてしんどかったし「100年後」もかったるい歌ものばっかりで・・・とか思っていたのにライブに行ったら「とにかくめちゃくちゃ踊れるし爆音のノイズを一杯浴びれて最高だった」という認識へと変わり、それをきっかけに通う内どんどんバンドの魅力に取り憑かれていったのですが、そのライブの記録が今作というわけです。

 


 

workshop(2015)

てわけで一作目、今回は三部作であるhomely~100年後~ペーパークラフトからの収録+αって感じですが収録された曲も今でもよく演奏される代表曲は一通り揃ってるんでベストアルバム的側面もあるし、ライブ公演そのものではなく各公演から厳選された音源を基に再編集、構築してるためアルバムとしての流れも完璧です。

この頃って丁度初期のロックバンドらしい形式からサイケ~クラウトへと舵を切ったときで、スタジオ盤では最小限のミニマルな演奏の中での各パート、楽器の音が着地するときの質感重視の完全にプロデュースされたサウンドでアルバム通して世界観を作り上げるって感じでした。で勿論その録音をライブ演奏で再現する・・・というスタイルではなく、淡々と無機質に繰り返されていたドラムはまずかなりライブらしい有機的なものになってるし、ライブ録音ってことでベースの低音も効いてて曲のテンポも全体的に早いので加速してくグルーヴの中体を揺らすって感じです。それこそサイケな録音じゃない時点でふわっとした質感は完全になくなってギターの音もノイジーになってるし、「見えないルール」なんて最後のノイズギターソロまであり別物ですね。とくに無機質なミニマルファンクって感じだった「フェンスのある家」「ムダがないって素晴らしい」辺りもかなり踊れるようになり、音の分離が良くなったのもあって歌メロが際立ってこんなに口ずさめるようなキャッチーな歌メロだっけ?となるところも良いです。

 

そしてまぁ真骨頂が「フラッグ」なんですが、唯一初期のまだUSインディーっぽかった時期の曲ですがもう全くの別物、メロディー以外の面影ないようなスローテンポのドロドロとしたサイケに変貌してますがそこから四つ打ちで踊るダンスミュージック調のパート→原曲を踏襲した非常にロック色強いパートという三部構成に。とくに最終パート、溜めに溜めて鋭角ギターリフが飛び出すところはダンスミュージック的な肉体的なビートからロック的ダイナミズムへと帰結してくというオウガの集大成的な曲になってます。最後はお馴染みの「ロープ」でNeu!のHallogalloを想起させるハンマービートに各パートが徐々に音を足して熱を上げていき最後はノイズの大洪水に飲み込む、というこれまた非常にドラマティックかつカタルシス満載の曲に。この辺は原曲からは想像もできないような特大ライブアンセムと化してて未だにライブでも大団円的ポジにある曲だし、1コード繰り返しながらアドリブも多いのでいつ聞いても楽しい曲で、その辺のライブの熱気が保存されてます。

 

 

 

workshop2(2017)

workshop 2 | OGRE YOU ASSHOLE

前作のworkshopの曲は今でもライブで演奏されることの多いベスト的なものでしたが、今作はどちらかと言うと当時の最新作、ハンドルを放す前にのライブテイクお披露目と言った感じです。

相変わらずライブ音源を基にした再編集版・・・ということで実際のセトリとは大きく異なってるんですが、僕は正直ハンドルを放す前の曲ってかなり「ミニマル」寄りだと思ってました。無駄な音をそぎ落とし最小限の音だけで構成された隙間だらけのファンク・・・というような、でもって三部作より曲事態をスマートにしたような印象があったんですが、「ハンドルを放す前に」「ねつけない」では電子音で隙間が埋められ無機質な音源がかなり浮遊感漂うものになっていて、「あの気分でもう一度」はクラフトワーク歌謡とも言えるものになってるのでどちらともかなりメロウに聴けるようになってます。というよりあのアルバム、実際の使用機材も60~70年代当時のものを集めた・・・とのことなので、ドイツのクラウトロックのライブって体験できたらこんな感じだったのかなぁという気もするし、それをかなりポップに体験出るアルバムだと思います。 

 

 

workshop3(2020)

OGRE YOU ASSHOLE「workshop」第3弾発売、4年間のライブから音源をセレクト(動画あり) - 音楽ナタリー

三作目。実は2019年以降オウガのライブも徐々に変化していて(というより彼らのライブはいつでも変化し続けているのですが・・・)、バンドの代表曲でありライブでも一番の沸点とも言える「ロープ」「フラッグ」が演奏されないセトリも割と見るようになり、その代わり新たなアンセムとして生まれた「朝」「動物的/人間的」がフィーチャーされてるのが今作で他にも既存楽曲の新しいアレンジも多いですね。

まず開幕の「新しい人」から音源ではベッドルーム的とも思える程ふわっとした質感だった曲が、ライブによるリバーブと更に強調されたギターの揺らぎ、出戸さんのエモーショナルな歌声により非常に暖かみが増していて、これまでの踊りたくなる肉体的な気持ちよさではなく、音の心地よさで陶酔したくなるようなオウガのメロウさが前面に押し出された録音が聞けます。そして朝ですね、こちらはタイトルすら決まってなかった頃から何度も演奏され今やライブの中核とも言える曲ですが、今までのアンセムと違い安易に「爆発させない」美学を感じる曲です。ダンスミュージックの均等に配置されたビートを生演奏ならではのリズム隊の揺らぎの中、その曲の骨組み的なフレーズをどんどん入れ替え足していったりを繰り返していきます。この繰り返しの陶酔感によって自然とフロアを高揚させ温めていくという新しい彼らのライブの形、そしてどんどん体の動かし方を変えていく観客、あのときの会場の空気感が見事に保存されてます。

そして元アルバム最終曲、その前にも2018年にシングルとして発表された「動物的/人間的」ですが、この頃ってどんどん難解になっていった時期にも関わらず突如リリースしたこのシングルが「壮大でメロウな歌もの」だったんですよ。メロディもポップだし、何より歌詞が珍しく直球でエモーショナルだった。というわけでよくライブの最後に全てをまとめあげる役割を担っていたんですが

こちら、野音の録音なのでカセットテープから流れてくるようなローファイな音にわざと録られています。これにより原曲の壮大なメロウさとはまるで逆のメロウさへと変貌、そのギャップ、そして哀愁にやられました・・・。workshop1をベースにこの3の新曲を幾つか足し尚且つまた新しいアレンジを模索している、というのが今のオウガのライブに最も近いかもしれません。

 

以上workshop3作でした。あとはライブではないんですが、リアレンジ編とも言えるこちら

conffidencial(2013)

Amazon | confidential | OGRE YOU ASSHOLE | J-POP | 音楽

三部作発表時のEPは未発表音源をまとめたテイク2とも言える作品ですが、「バックシート」「バランス」「また明日」等の初期曲がAOR風の後期のふわっとした作風に書き換えられていて、しかも元の曲が突き抜けたポップさがあっただけにロックな質感が減りよりポップになってるのが面白いですね。

そして素敵な予感 (alternate version)は実はworkshop3のものとも違いライブテイクは未収録ですが、alternate versionのライブは本当にヤバくてこの音源はそれをかなり再現されていて必聴です。地響きするんじゃないかというくらいの暗黒ノイズにより塗りつぶされたダブへと変貌し一度聴いたらこの重さは忘れられない・・・。

 


 

終わりです。バンドを聴くという上でそのバンドのライブに行く、ライブアルバムを聞いてその変化を楽しむ、というのは深く掘り下げるには基本的に通る道だとは思うんですが、オウガに関してはその重要度が特別高いと思われます。最初にも触れましたが、難解だと思っていた音楽がとにかくめちゃくちゃ踊れてめちゃくちゃ轟音を浴びれる、これだけで印象がガラリと変わると思うんですよ。自分もこういう楽しみ方をリアルタイムで追えているのは初めてであり、ここまでライブに通っているバンドは他にいません。

 

最後に参考にさせて頂いたインタビューをいくつか

ロープ、が最初は観客に嫌がられていた曲だったのが今や一番盛り上がる曲になっていた・・・のくだり、笑えますが非常に面白いですね。より魅力が伝わると思います。

 

あとこちらも。

 

終わりです。

 

おまけ

kusodekaihug2.hatenablog.com

OGRE YOU ASSHOLE 全アルバム感想

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2001年結成。初期の頃は90年代のUSインディーをベースにしたようなロック~ディスコパンクシーンとも比較されながら徐々にサイケデリックへと傾倒しAORクラウトロックプログレの空気まで入っていきながらソフトサイケな歌もの → ライブで轟音~グルーヴ重視へと大化けするというバンドです。

一時期狂ったようにライブに通いまくってました。かなり多方面から楽しめるというのもあり1stから順に追っていきます。

 

 


 

OGRE YOU ASSHOLE(2006) 

OGRE YOU ASSHOLE/OGRE YOU ASSHOLE : UK/US/JPロックレビュー

セルフタイトルの1st。元々OGRE YOU ASSHOLEというバンド名の由来はかつてメンバーが敬愛していたModest Mouseの来日ライブに行ったとき、メンバーにサインをねだったところ書かれた文字(もうほぼラクガキみたいなもんですが)をそのままバンド名にしてしまったというエピソードがあります。で1stアルバムということでそんなModest Mouseを強烈に思い出すローファイな作品、というか歌い方までも近いと思わせる瞬間もあるんですがあちらと比べるとジャケット通りかなりダークな雰囲気漂います。

で割とメロディーも声もキャッチーで普通に00年代の邦楽ギターロックな流れでも聞けるアルバム・・・だとは思うんですが、かなり不穏で、後期の本格的なサイケデリック・ロックとかとはまた違った、独特の得たいの知れない危うさとも言える別の意味でのサイケ感が滲み出てますね。「タニシ」「また明日」という今でもライブで聞けるナンバーも収録されていてこの辺もメロディはポップなんですがかなりくたびれてます。「ロポトミー」では今からは考えられないようなシャウトも。タニシでのツインギターの絡み合いは割りと後にも通じるかも。

割とUSインディーライクな作品ながらこの頃からドラムは後を想起させるミニマルさのようなものがあってこれが結構浮いてるんですが味になってますね。というかドラマーだけ当時からプログレクラウトロックとかポストロック嗜好だったというのもバンドの出自や後の音楽性を考えるとめちゃくちゃ大きい気がする・・・。

 

平均は左右逆の期待(2006)

1st後に出たEPで前作と比べたら音もキレイになり雰囲気もポップになりました。というか1曲目からアコースティックで始まりオウガ随一ポップな曲で前作から来るとびっくりするんですが、捻くれた曲展開というか予想外なとこから飛んでくるのは相変わらず。

そして「アドバンテージ」はこれまたおそらくModest MouseのLoungeを想起させる疾走ナンバー、をめちゃくちゃ肉付けしてよりドラマティックにした感じで、この頃のUSインディーを咀嚼した~という王道のロックサウンドはこれで完成されちゃってる気もするし次作の1stフルアルバムへも繋がります。後に難解になってくことを考えるとストレートにクールがギターロックやってた唯一の曲じゃないでしょうか。

 

アルファベータ vs. ラムダ(2007)

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今でもよく聞くアルバムです。フロントマンである出戸学が度々影響を公言するTelevisionの色がフレーズや音色からもかなり濃く出てきて、マーキー・ムーンで見られる単音ツインギターの絡み合いの上で歌ものインディーロックをやるといった感じ。リフとリフを反復しセッションした後どんどん新たなギターフレーズが登場しドラマティックに展開していく・・・というのをわかりやすく3分~5分のサイズでコンパクトにしたような曲が多くてギターのフレーズを耳で辿るだけでもこれがかなり楽しい。

Modest MouseというよりBuilt To Spillっぽい感じがかなり出ていてオウガの中で最も人懐っこいアルバムにも聞こえるし、でもやっぱりちょっと無機質な感じになっちゃうのは出戸さんの声と掴みどころのない歌詞、情報量の割にアンサンブルはスッキリしてて隙間がハッキリ見えるってのもあるかもしれません。今では別物に変貌してしまったライブアンセムの「フラッグ」の骨組みとも言える原曲もここ。

 

しらない合図しらせる子(2008)  ピンホール(2009)

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メジャーデビューシングル「ピンホール」とEP「しらない合図しらせる子」ですね。デビューということでピンホールは非常にポップで最も一般受けする曲かと。この頃からプロデューサーとして石原洋、エンジニアに中村宗一郎というゆらゆら帝国を手掛ける二人と手を組みます。

そして今作、後期のどんよりとしたサイケデリアとはまた別の、多幸感あふれるメランコリックなサイケデリアが結構滲み出てきてて、この辺はおそらくThe Flaming Lips由来だと思うんですが石原洋と最初に会ったときこんなことやりたい、ていうモデルの一つだったみたいです。ギターの音も大分くぐもった乾いた質感になってきてこれも後期への兆候な気がするけどまだまだUSインディーオルタナの範疇って感じがしますね。

 

フォグランプ(2009)

前作と同じく単音ツインギターのアンサンブルによる歌もの・・・の延長ですが、そこまでキャッチーではなくなってて後期のサイケデリックな空気がぼんやり出てます。で尚且つその空虚さを伴ったまままだギターロックの範疇という異色作でもあり、後期のサイケ期を期待して聞くと物足りず、逆にアルファベータを期待して聞くと重くなりすぎな感じもありますが、だからこそ今作が一番好きって方も結構いそうですね。

あとは一つのリフを繰り返してくうちに徐々に絶頂へ向かう・・・という淡々としたアンサンブルの中で変化を楽しむ「ワイパー」等、ドラマティックに展開していくラムダとはここも違いますね。ジョニー・マーがオウガを指して「CANを早回ししたようなバンド」と例えたことがあるのですが、時期と音的におそらくこのアルバムかな~と思います。

 

浮かれている人(2010)

さてこちら・・・フォグランプと並び丁度中間、サイケ寄り・・・録音の質感は全体的にふわっとしてますが、リードトラック「バランス」がしらない合図しらせる子とかで出てきてたThe Flaming Lips歌謡の完成系とも言えるもので、たぶんオウガ屈指のポップさを誇っていてその印象のままあっさり聞けちゃうんですよね。

「タンカティーラ」とかもかわいいキラーチューンでフォグランプと比べると全体的にポップなんですが、この明るさ、今までとは違いシュールさを伴ったものなんですよね。でこのシュールさって深読みすると少しだけ不気味に感じるような・・・という、ちょっとだけ毒の入った明るさだと思います。ジャケもね。

 

homely(2011)

OGRE YOU ASSHOLE - homely - Amazon.com Music

さて、こっから完全に今までの音楽とは別次元に行ってしまった感じがあり"USインディー"的な聞き方をすることはほぼできません。石原洋+中村宗一郎というかつて90年代にWhite Heavenを率い、00年代ではゆらゆら帝国をプロデュースしていた二人と組んだことで完全にサイケデリッククラウトロックといったあの乾いた音楽へと変貌。リアルタイムで追っかけてた人は一体どう思ったんだろうか・・・。

ということでもう最小限のビートを刻む淡々としたギター、ドラム、ベース、そこにプログレクラウトロック的な効果音が飛散しながらミニマルな繰り返しの中で虚ろに踊るような、そこにゆらゆらとボーカルが浮遊しているような、そんなアルバムです。

歌詞も今までは意味があるようでないような単語をハメ込んできたオウガですが、「居心地の良い、悲惨な場所」をテーマに「ここから出ることはできない」と言う息が詰まるような閉鎖的な空気に包まれていて、統一感のある録音も含め完全にコンセプトアルバムです。そもそもこの音楽性自体が、今までの作風の地続きではなく"描きたい世界観に合わせて音を選択した"というあたり、今作からライブとスタジオアルバムを完全に切り分けるようになります。

最初聞いたときこの空気にやられて非常に重苦しかったんでが、ライブで大化けする「ロープ」「フェンスのある家」辺りのキラーチューンの原型も収録されてて、乾き切った空虚な録音の印象で塗りつぶされてますがよく聞くとメロディーはちゃんとキャッチー。でこれらを再編集しより肉体的になったworkshopというアルバムが後に出るのですが今作がしっくりこなかった人に是非オススメしたいです。後から聞くほど発見の多いアルバムだと思います。

 

100年後(2012)

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100年後。前作の終末感を引き継ぎつつ、直接的に終わりを表現せずに100年後という"終わった後"を当てはめるのはかなりオウガらしいタイトルだと思います。

そしてこちら、僕は最初に聞いたときついにさっぱりわからなくなってしまったアルバム・・・というのも前作から引き続き完全にサイケやってるこの頃を三部作と呼ばれてるんですが、かと言ってhomelyとはかなり趣向が違いますね。録音のふわっとした質感くらい?まだ前作の方がビートで聴く感覚があったので踊れた。

今回、たぶん今までで一番歌の比重が大きいです。あと音への没入感。音を鳴らした後の残響、が着地せずに地続きに浮遊し、ぼんやりと広がってくその幽玄な世界観に浸るといった作品です。めちゃくちゃメロウ。和製AORって感じも。

 

ペーパークラフト(2014)

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ジャケットが素晴らしいですね。homely、100年後から続く三部作では個人的に一番好きです。今までのオウガってミニマルな曲とメロウな曲がそれぞれ存在していて(homelyならミニマル、100年後ならメロウ寄りでしょうか)、それらを共存させたアルバムを作るということで「ミニマルメロウ」がコンセプトだったようです。ということで結構双方の作風を引き継ぎつつポップになってるので、この三作では一番とっつきやすいかも。

ライブの定番である「見えないルール」は音源の時点でミニマルなファンクという、homelyでも見られた無機質なダンスナンバーとして完成された感じがあります。そして「ムダがないって素晴らしい」はギターではなくドラムとパーカッションが主格となる"リフ"的なものを担っていて、そこにキャッチーなメロディーが乗ってくのがクラウトロック歌謡として完全に完成された曲だと思う。CANのTago Mago辺りが好きな人にはたまらないと思うしよくここまでポップにしたなぁと思うし、反復と歌のバランスがミニマルメロウを模索してる中でやってたのかな・・・と思います。

 

ハンドルを放す前に(2017)

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前作ペーパークラフトで提示したミニマル/メロウの基準でいうと完全にミニマルに振り切ったような作品で今作からセルフプロデュース。「頭の体操」「なくした」といった曲はスカスカながらもペーパークラフト以上にファンキーで踊れる曲も多数あってこれが中々新しい感覚です。

そして「ハンドルを放す前に」「あの気分でもう一度」辺りは曲の要所要所でそのフレーズ一本で曲の印象全て持ってくようなキャッチーな場面が少しずつ忍ばされていて、本当に些細なワンフレーズが挿入されるだけとかそんなもんなんですけど、ただでさえいつもがミニマルのため極小→小という動きでカタルシスを得ているような感覚があります。ということで聞けば聞くほど空っぽな心地よさの奥にドラマティックなものを見出してしまうというアルバム。あと音源だとスカスカな分ライブバージョンの広がりのある音響でメロウへと大化けするし、隙間が多い分各フレーズのぐにゃっとした感じも楽しめます。

 

新しい人(2019)

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ミニマルなソフトサイケで、結構今までのアルバムの中でも「歌」の要素が強いかもしれません。でもって三部作程重くもなく、あっさり聞けるシンプルなバンドアンサンブルのソフトサイケというか、今までの音の引き方とはちょっと違い、音の規模、世界観そのものが縮小され"そこ"でなってる言葉と歌、という印象を受けます。

順を追って聞くとペーパークラフトで突き詰めた「ミニマルとメロウの共存」が最も自然な形で出てきてるアルバムじゃないでしょうか。空っぽなのに暖かみがあるというか。で歌詞も対象物がほとんど出てくることなく現象、状態を示す言葉が連ねられていく感じで、石原洋が今作を「さっきまで誰かが"いた"ような、座っていた椅子の温もりが残っている」と捉えていたのもかなり納得しました。

そして「さわれないのに」は個人的に傑作だと思っていて、ライブで聞いた時はもちろんですが音源公開時も非常に盛り上がりました。オウガの持つ無機質ながらも体を動かしたくなるファンクネス、あの要素をうまくポップソングとして聞ける形に落とし込んでるというか、これ新しいファン層もガッツリ掴めるんじゃないかと興奮した覚えがあります。

 


 

以上でした。後はライブアルバム・・・というよりはライブ音源を再編集した「workshop」についてですが、個人的にオウガの最も大きな魅力が詰まってる三作だと思ってるので、正直重要度は上記の作品より高いと思ってます。

世界観に合わせて音を選択した後期のコンセプトアルバムを考えると、こちらこそが真のバンドの姿であるとも言えます。その辺について書いていきます。

 

20210210 Shame/Black Country, New Road

Black Country, New Road(以下BCNR)がアルバムを出して周辺で話題になってたので聞いてみた感想です。前評見ただけで結構気になって、ライナーノーツ読みたさにフィジカルも買ってしまいました。

サウスロンドンシーン、2018年頃・・・初期はShameとかGoat Girlが盛り上がってて「ポストパンク」という見出しがついてるけど全然想像した音と違うな~と思いながら聞いてました。Shameとか確かにリズム隊がジョイ・ディヴィジョンの系譜っぽく思わなくもないけど、ただ00年代のポストパンリバイバル的なものとも全く違って、エモやオルタナと同じようにサウンド的な意味だけでなく精神性、様式的なものなのかが10年越しにまた変わって出てきてるのかな~とか。その辺の漠然とした感情はこちらのファラ氏のNote

note.com

で完全に言語化されていて感動してしまったのでシェアしておきます。僕は元々80sポストパンクが好きだったのですが、00年代のリバイバル~今のサウスロンドンでのポストパンクブームを経験した人のリアルな今の言葉というか、たぶん何年後かに見てもこの感覚が保存された最高の記事だと思います。

でその後も続き、話題になったblack midiとかHMLTDとか、どんどんジャンルが複雑化してきたしエクスペリメンタルなのも増えてきたな~と思いつつ、先日発売されたShameの新譜

Drunk Tank Pink

 Amazon | Drunk Tank Pink | The Shame | 輸入盤 | 音楽

ジョイ・ディヴィジョンってよりもギャングオブフォーみたいになってたし、シンプルにロック純度がかなり高くて個人的にかなりヒットしました。ポストパンクって言われてたけどポストパンクっぽくなかったバンドがどんどん増えてシーンが闇鍋化してきた中、ブームを牽引していたShameが80年代のオリジネイターっぽい音を鳴らしているってのがいいな~というか。

あと彼らのライブは音源よりも更に疾走しよりハードになってていかにもパンク的な印象だったんですが、ギャングオブフォーを連想したからと言ってリズムに寄った感じではなく、ライブでの姿を全然想像できるくらい疾走感があったのもよかったです。

 

For The First Time

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でBCNR、もうポストパンクって見出しも使われずに出てきてハードコア~ポストロック経由みたいな文字見てかなり惹かれまして。元々こっちの畑というのもあり・・・。SNS見てると聞いてきた音楽によって皆の感想違って面白いな~ってなったんですよね、クリムゾンっぽいねって人とかソニックユースだねって人とかいて・・・で僕は1曲目のインストなんだこれ?て思いつつ、2曲目聞いた瞬間一気にヒット。まぁこれも散々言われてるんですけど、Slint思い出しました。というか、Slintと同系列の発祥地ルイビルのポストロック(?)達のことを。

 

SlintやRodanのルイヴィルのポストロックともハードコアともスロウコアともとれない、あの不安定な音が僕は大好きなんですが、その系譜を少し感じてかなり楽しくなりました。だって今そういう音楽聴きたいっていっても中々無いですからね。いやどこかの地下で鳴ってるのかもしれませんが、ムーヴメントにもなってない以上特定のジャンル名で探せる音楽じゃないですし。マスロックとかスロウコアで調べてるとたまにそのジャンル内でのはみ出し者みたいなポジションに近いのいてニヤリとしたりするわけですが、まさかサウスロンドンから出てくるってのは、完全に予想してなかったです。

てことで、ただもう少し質感はものすごく現代的というか、カッチリ整理されてますし、スロウテンポのマスロックを聴きやすくした感じと評してる人もいてそりゃSlint思い出すよねって(笑) ただやっぱ大所帯バンドということで色んな音が飛び出てきますね、それでも引き締まってるように聞こえるくらい音数は多すぎないとことかはやっぱ現代のインディーロックっぽいな・・・とか思ったり。

そういう計算高さや多ジャンルの表層を混ぜ合わせてる保守的な音楽だの言う意見もあり、結構賛否両論っぽいんですが、僕はそういうの素直に喜んでしまうタイプで。このまま彼らがハードコア化するともプログレ化するとも思えないし、だからこそ次どんな音鳴らしてくるのか・・・てのもすごく楽しみです。

 

何よりRodan解散後にRachel’sやSonora Pineに分かれポストクラシカルに接近したことや、スカスカのアンサンブルの中ギター以外の楽器を前面に出しその様式を模索していったこと、そんな彼らのことも思い出してしまうんですね。Rodanも解散しなかったらもっと実験的な方向にいってたかもなぁ、とか。いや、RodanはBCNRとは全然似てないんですけど、派生していくその後のバンドやSlint含め、当時まだポストロックという定義もなかった中、ルイビルを中心に新しい音楽を模索していた人達のことを思い返します。

だんだん妄想して突き進んでしまった感じがありますが(笑) 音源の話よりも聞いて連想したものや全体像から見たバンドの立ち位置みたいな聞き方をどうしてもしてしまうタイプですね。

 

でもこうやって地域とレーベルと・・・共通のプロデューサーとか同じ方向を向いて関わってる人たちがいて、ちゃんとメディアが取り上げてジャンルとして盛り上がってるのってあんまリアルタイム経験できたことないので。割と楽しいですね。新譜逐一チェックできるようになったのもここ2,3年でサブスクを導入してからなので、ようやくというか。ヒップホップとか電子音楽とかも幅広く見てたら面白いことあったんでしょうけど、いかんせんロックだけ聞いてきたというのもあります。

個人的にBCNRのライナーノーツにも登場してきた同じくサウスロンドンのSquidですが、WARPから出すということで先行トラックもかなり好きで、アルバム非常に楽しみです。割とハッキリと80sポストパンクがルーツなのがわかる感じでそれがさらに捻じ曲がってるような感じで・・・

 

話が肥大化しすぎたので終わりにします。備忘録というか、まさしく「感情の動きの保存」です。ありがとうございました。

 

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記録シリーズ:NUMBER GIRL / 音楽性から見る関連バンド

 

ナンバーガールから辿る関連バンド


僕はナンバーガールにハマってからはっきりと音楽の聴き方が変わったと言っても過言ではなく、その後色々な音楽を漁る指標も「向井秀徳が言及したかどうか」というのをかなり参考にしてましたので、とくに今よく聞くものでNUMBER GIRLを感じる、もしくは影響を公言していた中でも好きな物を勝手に並べてきます。

 

別所から手繰り寄せたものの寄せ集めという感じで少しでも参考になれば・・・

 

 

Shellac

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そもそもPixiesの影響を何度も公言してる向井秀徳ですが、そのPixiesのプロデュースをしたスティーヴ・アルビニとその音楽の影響がかなりあります。とくにShellacでの「At Action Park」や前身バンドのRapemanはSAPPUKEIを通じるところも多く、またBRUTAL NUMBER GIRLやDrunk Afternoonで見せるお得意のビートも元ネタもしかしてShellacでは?と思う瞬間が多々。

 

・Gang Of For

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Gang Of For、よく言及されるバンドですが全体的に80年台ポストパンク・・・の中でもとりわけファンクやレゲエの系譜にあるリズムへの意識が強いバンド達の影響はかなりあると思います。とくによく鋭角なギターサウンドと形容されるあの音もGang Of Forの1st~2ndなどを聞いてるとこれがルーツなのでは?て思える程ギターそのものが近く聞こえますね。

 

The Pop Group

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Pop Groupに関しては一部引用ネタがあるというだけでアルバム聞くとまさにカオスなんですが、1stに入ってるShe Is Beyond Good And EvilがNUM-AMIDABUZの元ネタだったり、2ndの「For How Much Longer Do WeTolerate Mass Murder ?」などはこれを聞くことでZAZEN BOYSを感じてそことも繋げることができるし、フリージャズやダブを強引に手繰り寄せながてパンクロックとして破壊的に出力しているのが色々な部分でシンパシー感じますね。

 

Sonic Youth

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本人がベストとして多々言及してるのもありますが、よく引き合いに出されるバンドですね。実際に聞いてみていかにもナンバーガール的というか、直接的に感じるポイントはそこまで多くないんですが、向井秀徳のノイズへの拘りや静と動のコントラストと言ったドラマティックな曲展開はSonic Youthから影響を受けたと公言していて、サーストンへのリスペクトはインタビュー等でも多々見受けられますね。そしてbandcampで公開されてるライブ音源(Live At The Warfield 1993 | Sonic Youth)辺りの、グランジに接近して最も王道のオルタナという感じだったDirty期のライブ音源を聞くと近隣作としてとても聞きやすいと思います。

 

Pixies

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曲名にもなっているし、こちらもSonic Youthと並んでよく言われてますが、そもそもアルビニ録音的な生々しい音響とヒリついたバンドサウンドから放たれる絶叫シャウトっていうスタイルが非常に近いですね。轟音の中で結構ポップな歌が乗るとことかも。使ってるギターがテレキャスターだったり実際にシングルB面でPixiesのカバーをしてたりとすごくストレートに、純粋に向井秀徳が大ファンというのも色んなとこから伝わるんですが、ナンバーガールでのポストパンクの消化の仕方や道筋を見ていくとそこまでやってる音楽は似てないというか、それぞれの色が出てると思います。

 

・Sugar

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初期のナンバーガールを聞いたときギターポップを轟音でやっているようなアルバムだと思ったんですが、その感想が丸々とSugarにも当てはまるまさしくというバンドです。向井秀徳はSugarの前身であるHüsker DüのファンでPixiesとともにオマージュされ曲名にもなってるので間違いなく影響はあるでしょう。とにかくギターがガサついてて最高なのですがとびきりポップです。

 

・The Wedding Present

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こちらに関してはベースの中尾憲太郎ツイッター向井秀徳が好きだったみたいなことを言ってるのを見かけ、Sugarでも言ったギターポップを轟音でやっているというのを体現してるのは完全にこっちにも当てはまるし、高速カッティングというところもギターのジャキジャキ具合に影響を与えてると思います。

 

・No Knife

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直接な言及は一切ないし実際に向井秀徳がこれを聞いて影響を受けたかと言うと微妙な気がしますが、以前No Knifeをナンバーガールを引き合いにして語るレビューを見たことがあり目から鱗だったので触れておきます。90sのポスト・ハードコア~エモ文脈で語られるバンドですが、グランジやハードコアを通過したより硬質なヘヴィなギャング・オブ・フォーと言ったスタイルのバンドで、直接的に似通ってるていうよりやってる音楽やその要素が結果的に近づいてる感じがしますね。個人的にハードコアやエモの文脈で好きなバンドです。

 

Superchunk

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チャペルヒル発のMerge Recordsでも知られる90sのUSインディーシーンを代表する大御所。こちらも直接的に言及されてるわけではないですが、対バンしていたりスティーヴ・アルビニ録音という共通点もあったりします。エモまでは行かず、かと言ってローファイよりは激しいという具合のガシャガシャとした疾走ギターロックに声を荒げるというシンプルに高揚するロックで、ナンバガのようにポストパンクやダブ、ハードコアの影響が出てくるってわけじゃないんですが、だからこそその辺の影響があまり強くなかったSchool Girl Distiornal Addict辺りが好きな人にはしっくりくるかも。

 

透明雑誌

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ここまでナンバガ以前のバンドをずっと紹介してきたのですが、どうしても並べたくなったのでこちらも触れます。台湾のバンドでこれは2010年作の1stですが、名前からわかる通りまんまフォロワー、そこにSuperchunkや90年代後半のエモを足したようなバンドです。聞いてみるとその影響を隠しもせず、むしろナンバーガール調の曲にTelevisionのギターリフを混ぜるというかなり粋なことをしていて(ナンバーガールはライブ時にTelevisionの曲を流しながら入場してくるというネタから)、またナンバガがライブでのみ演奏するアレンジ曲のリフを拝借していたり等、とにかく一ファンとしてのマニアックな願望を最高の形で具現化してるかのような曲が多く聞いてるだけで嬉しくなってきますね。

 

The Flaming Lips

「Transmissions From The Satellite Heart」の画像検索結果

ナンバーガールのSAPPUKEI以降の路線を象徴するデイヴ・フリッドマンがプロデュースしていたバンドで、それどころかフリッドマンがプロデュースする前に組んでいたマーキュリー・レヴとずっと交流があったバンドでフリッドマンとは盟友のイメージがあります。 でリップス×フリッドマンと言えばやはり人気のThe Soft Bulletinや向井秀徳が好きなCloud Taste Metallicが有名で本人も言及も多々あるので関連作としてはそっちのが相応しいと思いますが、個人的に上記のTransmissions From The Satellite Heartが激オススメです。最高に音の荒れたジャンクなオルタナ・ポップとも言えるアルバムで、最後に入ってるSlow Nerve Actionという曲の爆裂ドラム音とギターの存在感はもろにナンバーガールを思い出す。デイヴ・フリッドマン繋がりではWeezerのPinkartonとかも向井秀徳が彼と出会うきっかけになったアルバムですね。

 

 

54-71

f:id:babylon5000:20210210025602p:plain 「True Men Of Non-Doing」の画像検索結果

どちらかと言えばZAZEN BOYSへの影響の方が強そうですが、ハードコア出身の人がヒップホップのリズム感覚を取り入れるというか、ブラックミュージックのサウンドに寄せずバンドサウンドで再現しようとした結果全く新しいスカスカで鋭角な音楽が出来たという経緯、張り詰めたようなバンドの緊張感はまさしく後期や、ZAZEN BOYSにも共通点を感じる。一緒にやった6階の少女という名曲もありますし、そもそも54-71自体が上記のShellacとの共通点も多くてアルビニ録音で1枚出したりもしてますね。

 

THA BLUE HERB

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こちらはもうバンドではなくヒップホップですが、解散ライブでも名前を挙げていたり、ヒップホップの言葉の強さに影響を受けたという言葉からも割と重要な関連作だと思います。彼らが1stで掲げた地方(札幌)VS東京というフォーマットを掲げその余りにも攻撃的なリリックや対抗心を聞いていると、向井秀徳が冷凍都市という仮想敵を作り上げ叫んでいる姿は無関係には見えず、ZAZEN BOYSの1stで見せた冷凍都市問題を総括したともいえる「自問自答」は完全に向井節のBLUE HERBだと思ってます。

 

eastern youth

「イースタンユース アルバム」の画像検索結果 「イースタンユース アルバム」の画像検索結果

ブルーハーブやブッチャーズと並び札幌OMOIDEのラストMCで名前が出てるので当然なんですが、イースタンユースと出会い彼らの音楽を聞くことで自分も自分の音楽で叫ばなきゃいかんと思うようになったとのことです。彼らはもう少しエモやハードコア寄りのサウンドですが、再結成後も対バンの予定があったり交流が深く、影響を受けたのは勿論もう盟友って感じがします。

 


以上でした。まだまだ沢山あると思いますが、インタビュー等を辿って聞き進めていった中で僕がとくに好きだったもの、肌に合ったものをまとめた・・・という感じですね。あとはよく公言しているバンドでは鋭角サウンドやギターの絡みと言う意味ではTelevision、レゲエやファンクへの接近という辺りでThe PoliceThe Clash、あとはプリンス・・・とくにプリンスは向井秀徳が兄に勧められてそれ以降ずっと影響を受けているようです。 

「クラッシュ アルバム」の画像検索結果「クラッシュ アルバム」の画像検索結果

Clashに関してはロンドン・コーリング以降にダブ・レゲエに寄りますが、なんと解散しなかったら次のアルバムはClashのサンディニスタ!をオマージュしたような2枚組にする予定だったと向井秀徳本人が公言しています。Ramonesのカバーや、Television、ZAZEN時代にリスペクトを表明するTalking Heads等、この時代のパンクロックが根本にありそうですね。

というより、ZAZEN BOYS期に渡って向井秀徳ピストルズジョン・ライドンへのリスペクトを度々語りますが、彼がピストルズを解散しPiLを結成、そして2nd以降突然ダブに向かって言ったあの流れが象徴している「パンクロックがダブ・レゲエやファンクに寄ってポストパンク化した」ということそのものに憧れていたように思えます。

 

そして、影響を”受けた””与えた”というわけではないのですが、丁度00年代入ってから海外ではThe RaptureFranz Ferdinand等のポストパンリバイバル~ディスコパンク勢がナンバーガール参照元が被ってるんですよね。別に似てるというわけではないのですが、ジャキジャキのギターサウンドだったりという点では結構聞き比べるのが面白かったです。

 

でまぁ書いてる途中で気づいたのですがここ

に大体あります、、、まぁZAZEN BOYS期ではありますがオールタイムなのでほぼここでOKです。

 

 以上でした。最後に何曲か貼って終わりです。

 

www.youtube.com

 

 

記録シリーズ:uri gagarn

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uri gagarn、日本のオルタナ~ポストハードコアシーンのバンドとしてはもう大御所感ありますが全アルバム感想。Slintとかのルイビル周辺のバンドやポストロック、スロウコアのルーツとしてハードコアへと目を向けるようになったのもこのバンドがきっかけでした。


 

(untitled)(2004)

uri gagarn: Stream

日本のポストハードコアの深淵uri gagarnによる伝説的1st。無題、そしてジャケットからすさまじい存在感ですがそれは1曲目「Mutant Case」から期待を裏切らず、ギター1本、とんでもない緊張感を孕んだ不規則で縦横無尽なフレーズを弾き、途中からリズム隊も参加しながら徐々に盛り上げていき最後はノイズギターソロへ。支離滅裂な歌詞もあり、徐々に脳内が狂気で侵されていくその様を音に封じ込めたかのようなこの1曲で完全にぶっ飛んでしまいこの手のジャンル・・・Shipping Newsやポストロックへとハマるきっかけとなりました。

日本でハードコアと言えばやっぱり北海道のイメージが強いですが、CowpersやNahtと言ったディスコーダントで硬質なハードコアとは全くタイプが違い、こちらはそれこそSlintやRodanと言ったルイヴィル系列に近い音を鳴らしてますが決してそのフォロワーでは収まらない底知れなさがあります。「Resister」「Detroit」はストレートに疾走感のあるポストハードコアですが不協和音的なギターワークは録音も相まってジャンクロック的で最後の「Maron」に関してはちょっとポストロックやスロウコアにも突っ込んだ10分にわたる長尺。A Minor Forestとも近いです。とても聞きやすい作品ではないですがこの空気感は唯一無二でしょう。

 

no.1 oracle(2005)

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2ndアルバムで前作から更に音をそぎ落としスカスカになってしまってて最初ポストパンクを連想しました。全体的に音数の少ないUnwoundって感じで更にとっつきづらくなってしまった印象が・・・。一度廃盤になった後再発ついでに初期音源のデモトラックが大幅に追加されてるんですが、1stにあった「Mutant Case」や「Detroit」と言ったヘヴィな曲が密室でそのまま取りましたって具合の音の悪さと相まって生々しさがアップし両方ともノイズギターのジャンクっぷりが凄まじく変貌。基本的に同じなのにこのノイズパートのせいでもう別物と言える程パワーアップしてしまってて最早ノイズロック、とにかく荒々しいカオスなギターノイズが好きな方は必聴です。

この後メンバーが脱退し活動休止、フロントマンである威文橋はcpとしてgroup_inouとして活動を始めるんですが自分も実はそちらから知りました。そもそもinouのトラックメイカーであるimaiも元々はuri gagarnのドラムとしてメンバーに誘ったところ断られ新しい提案で始まったのがgroup_inouらしいです。

 

my favorit skin(2014)

Amazon | my favorite skin | uri gagarn | J-POP | 音楽

2013年にnhhmbaseの二人が加わり再始動した3作目。2ndでは1stからさらに音をそぎ落としたアルバムでしたが今作で逆に轟音寄りに。とは言いつつも2曲目「Fly」から早速新規のリズム隊二人による強靭で不規則なビート感が凄まじくギターはほとんど最小限で前作までの流れを汲んでますが、ぼそぼそとボーカルが乗って突如スイッチが入ったように不協和音ジャンクギターをかき鳴らしシャウトしていくんですが、この何をしでかすかわからない得体の知れなさのようなものが滲み出ててめちゃくちゃかっこいいです。スイッチが切り替わる瞬間が見えないというかそういう不規則っぷりとポストハードコアってのはかなり親和性が高いと思います、マスロック的というか。そして「Doom」は珍しくストレートにハードな曲でメロディーもキャッチーなのでかなり聞きやすく、全く青臭くないですが轟音エモとしても聞ける要素もあります。ここまでの三作では最も聞きやすいアルバムかと。

 

Face(2016)

uri gagarn/Face(CD) - SENSELESS RECORDS

シングルですが3曲全てが前作と次作を繋ぐ重要なマスターピースとなってる上に全曲キラーチューンと言える程素晴らしいです・・・とくにタイトルトラックになってるFaceは今まで以上にポップなんですが3ピースのバンドサウンドのみでやるポストロックというか、ポストロックにまではまだ行かずともそれに近づいていて尚且つ歌もの色も強まってるという、ハードコアバンドが音を引いてポストロック化していった流れをuri gagarnという狭い殻の中でオリジナルのまま変わっていったような感触で、この路線が名盤「For」へと続きます。Calenderも前アルバムにあった轟音ハードコアの流れを汲んでますがこちらも1stや2ndと比べるとかなり聞きやすくライブの定番に。

 

For(2018)

Amazon Music - uri gagarnのFor - Amazon.co.jp

最新作にして名盤。1stの頃からあったルイヴィル特有のポストロックやスロウコアの空気が完全にuri gagarnの中で昇華された感じがあり、そこに今まではなかった歌もの要素が強まったことでかなり聞きやすくなり今までのアルバムとはちょっと雰囲気が違います。スロウコア程静寂ではありませんがスローテンポで隙間を生かしたアンサンブル、空間の奥行を感じる間の置き方はもう3ピースであることを最大限に生かした究極。ギターも今までの無機質で鋭い音ではなく暖かみがあり、そして静寂を生かした対比的な轟音パートも今までのような静→動の爆発的なものではなく自然に温めていく感じはこのバンドでしか聞けない味わい深さがあります。

僕はこのアルバムから入り、というかライブで見てとてつもなく衝撃を受けその場で全アルバムを購入したので思い入れ深いですね。とは言いつつ1st~3rdの毒のあるポストハードコアのあのカオスさが好きだった人は逆に戸惑うかもしれません。UnwoundやJune of 44、ディスコードの面々と並べて聞ける感じだったのが、今作ハードコア出身のUSインディーであるPinbackとかThree Mile PilotとかDuster、あと初期Karateも近いかもですね。

 

Swim(2019)

uri gagarn "Swim" (Cassette Tape) | BOY

シングルにしてマジで大名曲でもうFor以降のuri gagarnは3ピースバンドとして完全に完成してしまっている・・・。IjdbやFaceの路線なんですが、音数減ってるのにバンドサウンド色強いままポストロックへ向かってるような感覚があり、所謂ポストロック的な曲じゃないのに自然とその空気が滲み出てきちゃってるって感じはむしろポストロック前夜、オリジネイターであるRodanとかJune of 44がスロウコアやったときとかを思い出す先祖返り的な貫禄があります。あとが歌詞が今回かなり好きですね、ふわっとしたフレーズの一つ一つそれぞれがエモーショナルで・・・。

 

 


 関連記事

バンドとして直接関連があるわけではないんですが、聞いててかなり通じるものを感じます。それどころか元々Rodan周辺のルイヴィルのシーンが大好きなんですが、その空気感を受け継いだ数少ない日本のバンドだと思っていてその旨をツイッターで発言したところuri gagarnの公式アカウントにRTされたこともあり、全く意識がないということはないと思いますがセットで是非とも・・・。 

 

こちらはSlint

Smashing Pumpkinsとグランジとオルタナティヴ

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広義な意味での「オルタナティヴ・ロック」が好きになったのはSmashing Pumpkinsがきっかけであり、そこから辿った音楽も多いのでその辺についての雑記です。


 

オルタナティヴ・ロックという曖昧なジャンルの中でも割と代表格として扱われているSmashing Pumpkins。自分のファーストコンタクトも中古の音楽雑誌を漁ってて、NirvanaやPeal Jamと共に「90年代のグランジを代表するバンドの一角」という紹介を見たのがきっかけでした。で周辺のバンドやシーンのことを知る内に、Smashing Pumpkinsって思ったより音楽ジャンルとしてのグランジ的ではないというか、聞きながらどんどん新しい視点を貰ったというのがありました。

 

そもそもグランジというムーヴメント、知れば知る程シアトルを中心としたMother Love Bone、Peal JamやSoundgardenと言ったハードロック直系こそが王道で、Nirvanaがたまたま一番売れてグランジの顔になってしまったというだけで彼らも随分とパンク寄りな気がします。BleachはまだしもNevermindはとくにそう感じていて、Smashing Pumpkinsもその中で並べると割と異質。ゴスの影響も強いので元々のルーツというか、バンドの持つ「ハードロックぽさ」にも違いがあるように思える。

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NirvanaNevermind、Peal JamのTen、SoundgardenのBadmotorfinger、これら全てが91年に発表されていて先日ギターマガジンのオルタナ特集でも名前が挙がってました。そしてスマパンの1stであるGishも同年であり同時代性があるので同じ括りだったのも頷けるし、グランジと言えばこの辺が最も象徴的な作品かと思われますが、今もう一度聞いてみるとPeal JamとSoundgardenはかなりハードロック色が強く、ストレートに地域性みたいなものも見えてきます。

Smashing Pumkinsはシアトルではなくシカゴだし、バンドのルーツとしては「ポストパンク」「ゴス」としての色が強いスタートだったようで、こちらアルバム出す前の初期音源

もろThe Cureやネオサイケの雰囲気があってちゃんとのまま今のスタイルにも地続きになってるので納得できるしめちゃくちゃ良い。シアトルではハードコアやパンクが根付いたライブハウスが中心にあったというのも大きいと思いますが、やっぱり違うルーツを感じるし、ここが自分がSmashing Pumpkinsに惹かれた大きな要因の一つだと思ってます。

そしてネオサイケ=シューゲイザー前夜のイメージが自分には割とあるんですがそこともしっかりリンクするというか、直接的に言及しているインタビューや記事を見つけたってわけではないけど、ビリー・コーガンは影響を受けたバンドにMy Bloody Valentineを挙げているし、そして当時ツアーの前座としてHum、そしてSwervedriverとの3バンドで回っていたというのがすごく象徴的に感じる。他にもMedicineという同時期のシューゲイザーバンドの曲をEPでビリー・コーガンがリミックス、しかもスマパンのドラマーであるジミー・チェンバレンが参加なんてこともありました。

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Humはエモグランジやスペースロックとも呼ばれているジャンルで、シューゲイザーのノイズ要素をアメリカのグランジやハードコア経由のヘヴィさで再解釈したバンド、Swervedriverマイブラ周辺のシューゲイザーの一角とされていてクリエイション発なのもその印象に貢献してると思いますが、USオルタナとして聞ける側面も強く、後のエモグランジ勢とスプリットを出したりもしています。

でこちらの2バンドは「グランジ」に分類されることはなく、かと言って王道のシューゲイザーとしても若干違和感が残る。ここを経由することでスマパンの持つシューゲでもグランジでもはみ出てしまう、ただ間違いなくシンパシーがあるバランス感が所謂「オルタナ」っぽいイメージができるというか、これによってシアトルのグランジとは違った透明感や耽美さ、2ndに強く出てくるギターの轟音要素に関係してくるんじゃないかという気がする。

そしてやはり切り離せないのがゴスの要素。実際にビリー・コーガンのソロ作品やアドア期を作る際にザ・キュアーの作品を参照したと言っていてカバーもやってます。

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とくにキュアーの「Disingration」でアメリカで大ヒットしたアルバムですが、時代的にも89年とドンピシャ、エモやメタルシーンにも影響を与えた作品でネオサイケ~シューゲイザーとリンクするとこもあるし、スマパンと共通項かなりあると思うのでこちらも並べて聞きたい。逆に00年代以降にヘヴィになってくThe Cureが今度はスマパンっぽいとこあったり、スマパン自体もSense FieldやJejuneと言ったエモシーンに影響与えてたりします。

 

日本で言うオルタナバンドってグランジと同時にシューゲイザーの要素が強いことが多く、広義の意味でのオルタナ、イメージやルーツとして90年代のスマッシング・パンプキンズはかなり近いとこにいると思います。Plastic Treeのようなバンドもいたり、多方面でオマージュも多いし。

そしてビリー本人が「8歳のときに衝撃を受けたレコード」として語るブラック・サバス

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ヘヴィロックの元祖としてホラー要素の強いコンセプチュアルなアルバムを発表していたオジー期のブラック・サバスが、サイケデリックプログレにまで接近し始めた73年以降のアルバムをリアルタイムで聞いてたっぽい言及が割とあるんですよね。プログレバンドと言えば、度々影響を語るRushの2112以降のギターリフのヘヴィさはスマパンを想起させる面もあるし、ヘヴィロック趣味の少年がニューウェーブやネオサイケに触発されてある程度形としてまとまったのがGishだったような気がする。


前置き・・・というかスマパンについての自分の情報まとめって感じですが、あと個人的に気に入っている90年代のアルバムを中心にディスコグラフィというか感想です。散々語られてる気はしますが・・・

 

Gish(1991)

 

91年作の1st。この頃はハードロック色が強く、Led Zeppelinや初期Rushを想起するようなギターリフ+ベースがなぞるように付随してくスタイルなんですが、既にゴス~ポストパンクを通過したというのも納得の透明感と冷ややかな質感があり、ビリー・コーガンの毒っ気のある声質も完全にハマっていてこの時点でグランジとはちょっと色が違いますね。

バンドの骨組みはすでに完成されてる感じがあり、Sivaでは超かっこいいギターリフから展開して一度深く潜るような静のパート → ギターソロ+爆発といういつものスタイルが既に見えてます。完全にコンセプチュアルというかプロデュースされた2ndと比べると粗削りですが、この頃にしかない爆発しきらずクールなまま突っ走っていくような疾走感や勢いがあり個人的にかなり好きなアルバムです。メロウな曲も次作の轟音路線と比べるとサイケ寄りな印象も。

 

Siameas Dream(1993)

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いつ見てもジャケが最高・・・。

大名曲Todayを筆頭に「Rocket」「Mayonaise」等のもう他のフォロワーや同時代のオルタナバンドの追随を許さない圧倒的オリジナリティがあり、やっぱりビリー・コーガンの人を選ぶかもしれない毒っ気もあればときに誰よりも甘いこの声質と、この重厚なギターの轟音で埋め尽くされたサウンドの中で浮き出るメランコリックなメロディーラインは相反するようで非常に幻想的、今聞いても全く古びれないです。あとジミー・チェンバレンの大暴れっぷりがこの頃もう加速しまくっていて「Quiet」とか「Geek USA」はもうドラミングすごすぎる。手数が多いのも勿論ですが手数が多いだけじゃなく、ここ叩くと重くなるっていうポイントで確実に踏み抜くヘヴィドラマーとしての貫禄もあって、スマパンのメタリックなリフと絡みついた結果似たようなバンドが思いつかない完全に「スマパンの音」とも言える速くて重いサウンドが完成されている。結構重いのに全体的に透明感あるのもやっぱニューウェーブとかゴスとかの耽美要素なのか、感覚的なものですがやっぱり同時代のグランジともシューゲイザーとも距離あると思います。

 

Mellon Collie and the Infinite Sadness(1995)

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2枚組でしかもオルタナグランジがブーム的には逆風だった時期とのことですが見事高セールスを記録した最強のアルバム。僕もやっぱりベストとして挙げたくなるし、2枚組アルバムとしての長さを全く感じない通して聞きたくなる名盤。

あれこれやりたいこと、溢れ出るアイデアをもう全部自分たちのフォーマットで再出力してしまおうと、影響元がパっと頭に浮かばないくらい多作なのにも関わらず完璧に昇華された作品。サイアミーズのメロウ路線の曲はどれも割と近いフォーマットで轟音+美しいメロディって感じだったと思いますが、今作では「Beautiful」とかヒップホップっぽいリズム+ベッドルームな曲になってたり「Lily」「We Only Come Out At Night」とかは全体的にドリーミーな空気感があるもののソフトな質感で今までにない程ポップに聞こえる。このメロウ路線のバラエティっぷりすごいんですが、録音の質感とか統一されてるおかげで散漫に感じず通して聴きやすいのがやっぱりアルバムとして良いですね。そして代表曲の1979、アコースティックで浮遊感漂うギターリフも中毒性あるんですがやっぱりジミー・チェンバレンのドラムの同期したような均一なビート感、なのに絶妙に生演奏じゃないと出せない揺れのようなものがあって、言うか後のスマパンでも多用されてますが完全に発明だと思います。あと地味に弾き語りのStumbleineが大好き。

そしてヘヴィ路線、もろグランジでどんよりと重いリフを繰り返しながらサビで大爆発するBullet With Butterfly Wingsはもう彼らのグランジバンドとしての顔とも言える曲で、僕は最初これをyoutubeで見て素直にNirvanaとかと並べて聞いてたんですが今聞いても最高にかっこいい。今までのスマパン以上に静→動の爆発っぷりが強調されてるのもグランジらしい。あとZeroとかもメタリックな暗黒リフでじわじわと迫ってくるのがダークなスマパンの象徴とも言える曲ですし、ぶちギレたシャウトが聞ける「Bodies」「XYU」など・・・とこうやって書くとヘヴィロックのアルバムな気もしてきます。そんなこともないんですけど。

 

Adore(1998)

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ここまで幾度なくジミー・チェンバレンのドラムが・・・と書いてきましたが薬物が原因でバンドを脱退、全編打ち込みとエレクトロサウンドをメインとして作られたのがこのAdoreです。

最初聞く前はチェンバレンいないスマパンに対してあまり期待してなかったのですが聞いたら素晴らしすぎて一瞬で掌を返した。あっという間に虜になりました。前作、前々作とあったメロウ路線が好きな人は一番ハマるかもしれないし、エレクトロ要素強めってことで彼のルーツ的にニューウェーブになるかと思いきや、意外と音数を減らしたビートが先行してくるトラックがめちゃくちゃかっこいい。当時の流行的にもヒップホップの意識も感じるし、アコースティックメインの美しい曲も多く前情報より全然聞きやすかった。個人的に同時代ではデヴィッド・ボウイのOutsideとの関連性も感じます。

続くマシーナやこれまでのヘヴィ路線からインダストリアルに向かう道もあった気もしますが、ビリー・コーガン自体がそういうグランジ/オルタナの流れで語られることにうんざりしていたようなのである意味チェンバレン脱退がうまいことプラスに働いたという側面もあるかも。この後戻ってきたチェンバレンとともに2000年にマシーナを作り解散、そしてズワンやらソロやら色々あるのですが一旦オリジナルアルバムはここまで。

 

Pisces Iscariot(1994)

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そしてこの時期のスマパンを語る上で絶対に外せないのがこちらのパイシーズ・イスカリオット。B面集なのですが、1st2ndのサイアミーズまでの音源でB面集と思えない程に統一感があり、この頃の音もっと聞きたいって人は必聴です。メロンコリーも良いけど初期のバンドの衝動たっぷりな時期が記録されてるのはこちらですね。

とくに「Hello Kity Katt」はベストソングで、この頃のスマパンによくあった轟音ギター+チェンバレンの高速ドラムで疾走するタイプの曲で、イントロ2秒のドラムとギターの掛け合いで一瞬でスマパンだとわかる程濃厚。あとこの曲グランジ等の手法にあるわかりやすくサビで爆発、という展開が無く、むしろ分厚いギターサウンドに常時覆われているのにメロディーだけでフックを持ってくる展開が、低空を疾走してく感じが最高にクールです。ビリー・コーガンのメロディーセンスが一番光る曲だと思います。

 

 Aeroplane Flies High(1996)

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そしてB面集作品でもう一つ「Aeroplane Flies High」というメロンコリー期のシングルをまとめたBOXがあるのですが、これがシングル5枚、しかも1つにつき6曲前後入っていて、メイン曲以外はアルバム収録無しなのでミニアルバム5枚として聞くことができ無視できないほど重要作となってます。

とくに1979はジェームス・イハがフィーチャーされたメロウなオルタナポップが多く、この路線で推し進めても全然やっていけたんじゃ・・・てくらい素晴らしいです。メロンコリーと比べると純粋にバンドの音でメロウ路線をやってるという感じがします。Tonight, Tonightは最初から最後までアコースティックメインの最も優しいスマパンが聞けてコンセプチュアルなミニアルバムとも言えますし、この2作がとくに好きですね。あとはニューウェーブっぽいアプローチの曲が多くカーズやキュアーのカバーまで聞けたり、スマパンにしては音源からはっきりとルーツを垣間見ることも可能です。

こちらについては放蕩息子の迷走による全曲レビューが大変参考になりますので是非とも。僕はこの記事を読みBOX SETを買いました。

 


最後に関連作・・・とは言いつつも上記で述べた通りルーツを感じさせる要素が少ないと思っているので、ビリー・コーガンがフェイバリットとして挙げたバンドの中で僕がとくに好きなものや、スマパンと関連付けて聞けそうなものを何枚か書きます。

 

Hum

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スペースロックとも言われるグランジ~エモ~シューゲイザー全ての要素が前面に押し出されたバンド。バンド自体がスマパンの影響を公言しているようでとくに3rdのDownward Is Heavenwardあたりではとにかく重ねられた轟音ギターの奥深さは完全に独自のスタイルを確立させてます。個人的にかなり好きなバンドです。

 

Black Sabbath

「ブラックサバス 黒い安息日」の画像検索結果 「ブラックサバス パラの井戸」の画像検索結果

ビリー・コーガンが度々影響を公言しているバンドで前記事、本記事でも何度も参照させていただきました。ビリー・コーガン本人はフェイバリットとして徐々にプログレ化していった73年「Sabbath Bloody Sabbath」75年「Sabotage」辺りを挙げたのですが、単純にこの1st2ndが重いリフとキャッチーな歌という面で非常に聞きやすく、グランジ全体への影響も大きくオススメです。

 

The Cure

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こちらもソロ作ではコラボもする程ビリー・コーガンが憧れているバンドですね。で彼らは非常に多作な上アルバムごとにかなり色が違うので難しいんですが、89年作の「Disintegration」は透き通った幻想的な世界観をある程度ビートで聞けるロック内でやってるので近いかもしれません。それをさらにポップに推し進めた92年作の「Wish」も。とは言いつつ初期のポストパンク期のキュアーも通じるところがあるのでベスト盤でもいいかも・・・。

 

New Order

一時期のビリー・コーガンは彼らの追っかけをしていたらしく、メンバーから認知されるレベルで熱心なファンだったようです。後に彼らのアルバム「Get Ready」ではギターで参加したりもしています。キュアーと並びこの辺のシーンにどっぷりだったんでしょうね。ちょっとクラブの色が強いかもですが最も聞きやすいのが「権力と美学」です。

 

 

最後に参考資料としてこちら

hender-usuk.blogspot.com

キュアーのアルバム解説なのですが、度々スマパンの名前が出てきてどのアルバム、どういった影響があったか非常にわかりやすく書かれています。また他に同作から影響を受けたバンドにどういったものがいるかといのもわかるので、キュアー経由で同じ方向性のフォロワーを探すことができたり・・・というような見方もでき、非常に参考にさせて頂きました。

 


以上でした。記事内で触れたバンドはまだまだいるのですが、どれもスマパンから直で飛ぶ感じではないかな・・・となり、そもそも関連作で辿ってくという感じではなく、90年代の同シーンのバンド達で聞き比べた方が楽しい気もしますね。

 


2020年まとめ

見出し画像

 

書きました。
Spotify導入した2018年~2019年はとにかく話題の新譜や今まで疎かったジャンル聞くの楽しい~みたいな感じでしたが、原点回帰というか、元々好きなとこの周辺の旧譜漁るのが一番楽しくね?となり、ここ数年で一番音楽聞いたけど一番新譜は聞かなかった年になりました。そんな感じですが備忘録シリーズ新譜編・・・

 

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