朱莉TeenageRiot

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COMITIA147レポート/pärk反省会

先日制作したpärkという同人誌を販売するため、2月25日にビッグサイトにて開催されたCOMITIA147に参加してきました。改めて足を運んでいただいた方々に心から感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。初参加のイベントで一人だったのもありとてつもなく不安で、そんな中声をかけてくれたり、手に取って買ってくれた方々、めちゃくちゃ励みになりました。どんな言葉を選んでも返しきれないような、それくらい感謝の気持ちが止まりません。


 

 

スペースはこちら。

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Spiderlandのレコードを置いたのは単純に左側に置くものがなくめちゃくちゃ空いてしまうからなのと、後半の私的スロウコアガイドと内容的にも一致するし、表紙の色合いともマッチしたものがあるため、置いてみました。これが売り上げに貢献したのか、マイナスになったのかは不明です。ですが、一人だけSlintに反応し本を手に取り、中にあったSun Kil Moonについて言及し、そのまま買ってくれたという方がいました。本当に嬉しかったし、この瞬間のこの一冊のためだけに置いておいてよかったなと思いました。

嬉しかった誤算としては、直接本を手に取って絵を気に入って買ってくれたという方が非常に多かったことです。正直自分は絵描きとしては全く自信がなく、ほとんどの方は後半の音楽ZINE目的で来られるかと思っていたのですが、実際のところ完全にその逆でした。とくに暗い絵に関して言及していただき、そこを褒めてくれる方がとても多く非常に励みになりました。表紙もそうですが暗い絵はtwitterやpixivでもあまり反応がよくなく、個人的な話をするとそういったイラストこそが自分の好みなのですが、SNSを通してそれが広く受け入れられるわけではないという事実を実際に数字で提示されたこともあり、諦めの気持ちが強くありました。実際にSNSで人気だったイラストを表紙にした方が売れていたのかもしれませんが、好きなものを信じてあの表紙を選択して、会場でその部分を肯定してくれた方が一定数いたこと、この事実だけで絵を描いていてよかったなと心から思います。

 


 

pärk反省会

会場受け取りだったのですがちゃんとできあがってるのが当日までわからないという状態がマジで超不安でした。できあがっててよかったです。感動しました。実際に触ってみて、やっぱり120ページなので結構分厚く、表紙のマット加工の吸い込まれるような漆黒の質感もあり、重厚な本になったと思います。装丁はかなり気に入っていて、これはイラスト集としてではなく、昨年11月に足を運んだ文フリで購入した伏見瞬さんのLOCUSTや、北出栞さんのferne、あと毎回通販で買わせていただいてた李氏さんの痙攣とか、そういった音楽関係から知ったZINEの練りに練られたかっこよすぎる表紙、そして手に取って質量を感じる分厚い本の雰囲気に憧れて目指したものでもあります。結構狙った感じが出てきてよかったです。

反省点。まず私的スロウコアガイドですが、ムラがすごい。原稿は全て約2週間、データ打ち込みでもう2週間、明らかに時間が足りてないのが随所に出ています。PC画面で入稿3日前から何度も読み返してたんですが、書いた直後ってのがよくなかったですね。1か月くらい空けてからじゃないと見えないものも多数あったと思う。アルバムによっては油が乗っていて自分で読み返して気に入ってる部分もありますが、明らかに振り絞って無理矢理出して、何が言いたいのかさっぱりわからない部分も散見されます。あとこれは盲点でしたが、紙になると読む速度って画面上で確認していたものと大きく変わるんですよね。これは個人差もあると思いますが、とにかく会場で受け取って実際にパラパラと読んだだけでも、元々想定していたスピード感、リズム感がまるで変わってしまい、そのせいで違和感になってしまってる表現や切り方が多数あり、届けたかったニュアンスが歪んでしまったなと思う部分がいくつかありました。これは純粋に自分の文章組み立て能力が低すぎるのも原因ですが、試しに印刷してみるなどして事前にカバーできた事態だったなと思います。

イラストに関して。当たり前ですがPCもスマホも画面って発光してるので、デジタルで描き画面上で確認したイラストって本来のものより明るくなってるんですよね。それによって、印刷したことで空など明度の高い部分の塗り残し、修正のムラがかなり目立ってしまいました。次は気を付けます。しかし紙になって良かったことも多く、粉を吹き付けて焼きつけさせる(らしい)印刷の方法から全体的にザラついた質感が増していて、それが自分の油彩筆を主としたスタイルと噛み合ってアナログっぽさが増したと思います。実際に会場でアナログかと聞かれることが多数ありました(全てクリップスタジオを使っての制作になります)。表紙含め、カラーページのできは作る前から気になっていたため、実際に印刷会社に足を運び、直接どうしたいのか相談できたのが功を成したと思います。印刷会社はねこのしっぽを利用させていただきました。誰が得するかはわかりませんが、少なくとも自分は作りたいってなったときに右も左もわからなかったため、実際に印刷の設定を貼っておきます。

・表紙用紙:ホワイトポスト マットPP加工

・カラー口絵:コート紙 110kg [マット]

・本文用紙:ソフトバルキー [白]

全てオンデマンドになります。コミティア会場で見本誌等置いていたのと、ネットでも注文できるみたいなので、実際に触ってみることをおすすめします。

 


 

最後に本書を作るにあたって参考にさせていただいた本について。

 

あきま先生になりたくて絵を描いていたんですが、遠いところにいすぎるため真似しようとしても全然何をしたらいいかわからないような、まるで手が届かないところにいる方なので、リファレンスというよりは憧れと呼ぶのがしっくりくるかもしれません。mirageの方のイラスト集は出先にも持ち歩いて表紙がボロボロになるくらい読み返しました。ツイッターで「イラストに関して、Wilcoみたいな曲を作ろうとしてるのにYo La TengoやDusterみたいになってしまう」みたいなツイートをしたことがありますが、あれはまさにあきま先生を目指しても何をしたらいいかわからない、感覚でやっても全然違うラインの作品になってしまう、という体験から出てきたものになります。

 

AS4KLA先生の完全攻略!冬の曇り空2.0は昨年の3月に知人に勧められ購入し、読んでみたところ、目を凝らさないとわからない真っ暗な質感と吸い込まれるような広大な一枚絵の雰囲気に圧倒されかなり衝撃を受けました。ZINEのセルフライナーでも名前を出させていただいた作品です。昨年イラスト集を作ってコミティアに出たい!という漠然とした願望ができたとき、それまでオリジナルなんて一度も描いたことないし、目指すべき場所がどこかもわからない自分が、一体何を描けばいいんだろう?となったときにこの本に出会い、それ以降一番の指標になりました。AS4KLA先生はコミティア147にも参加していて、一般公開前の時間にご挨拶させていただきpärkを献本できたのも思い出深いです。またツイッター等でコミティアの戦利品として自分の本を上げてくれた方々の写真に一緒にAS4KLA先生の新刊「完全攻略!冬の曇り空3.0」を並べてくれてる方も多く、見かけるたびすごく嬉しい気持ちになっていました。当たり前ですが本を作ると自分が憧れ、尊敬している方々の本と自分の作品を並べてもらったり、自分で同じ本棚に置くことができるというのはとてつもなく幸せだし、このために本を作ったと言っても過言ではないなと思ってしまいました。

 

SPOILMANが昨年リリースしたUNDERTOW/COMBER。アルバムをリリースする度にこのブログで触れてきたアーティストですが、昨年キャリアとして初のLP発売、もちろん即購入したところバンドのフロントマンであるカシマ氏本人によるアートワークと、ジャケットを開いたときデカデカと視界に入ってくる大きなイラストに圧倒されました。レコードサイズの大判の歌詞カードも全て手描きイラストとして作り込まれていて、仕掛けだらけの内装はイラスト集としても本当に魅力的です。紙を開いて一枚絵が出てくるインパクトの強さに自分もフィジカルでなにかを作りたい!という気持ちを強く掻き立てられました。

 

クラウトロックディスクガイドの増強改訂版。クラウトロックの歴史を辿りながら、冒頭ではインスピレーションとしてドイツではなく英米サイケデリック・ロックやジャズのアルバムが紹介されていて、本当に充実した内容で筆者個人の視点が見え隠れするシーンも多々あってすごく影響を受けています。憧れ、という言葉の方がしっくりくるかもしれません。

 

s.h.i.さんの現代メタルガイドブックにも強く影響を受けています。そもそも"私的スロウコアガイド"というタイトル自体この作品から着想を得ていて、他にも冒頭のintroductionや、Borisから始まるその構成自体に感銘を受けました。pärkでも思いっきりリスペクトしたintroductionから幕を開けるし、スロウコアとしては微妙なラインに立っているSlintから始まるというのも通じるところがあると思ってます。

 

ポストロックディスクガイドに関しては内容の時点で一部被っていて、pärkはスロウコアをポストロック前夜の一形態として何度も切り込んでいく関係上、ポストロック関連作を網羅したこのガイドで触れてる作品も多数出てきます。また本ブログで何度も書いてきたSlintやRodan周辺についても軽く触れられていて、自分の音楽観自体がかなり影響を受けています。

 

 

pärkの制作にあたり、多部なこさんと一個人さんという二人の絵描きの方にイラスト制作についてご教授いただいてました。今回収録したイラストは全て昨年の6月以降に描いたもので、クリップスタジオをダウンロードしたのもそのちょっと前、本当に右も左もわからない状態で単純な操作方法からおすすめの筆についてなど、イラストの基本的なアドバイスまでたくさん助言していただいてました。本当に恵まれた環境で絵を描けたなと思います。こちらはお二方の作品ですが、使用した筆だったり、そもそもラフの時点で構図についてのご教授だったり、制作環境そのものからかなり影響を受けています。

 

 

 

プレイリストです。私的スロウコアガイドに載っているものだけで作ったリストになります。会場で手に取ってくれた方で後半のZINEについて聞かれたときにイラストと雰囲気が近い、暗くて遅い音楽について書いてますという説明をしたのですが、いざそこから聞いてみようとなったとき、いきなりSlint/Codeineから始まる本書の構成はかなり聞きづらいのではないかと思いました。ある程度音楽を掘ってくことを普段から趣味としてる人であれば、年代順は見やすいかなと思う一方で、イラストやセルフライナーの雰囲気から入ってくれた方には時代関係なく入り口としてわかりやすいものがあった方がいいかもしれないと思い、指標として作ったものになります。おそらくその対象となる方々はこの記事まで読んでないのではないかと思うし、実際聞いてみますと言ってくれた方々もお世辞の可能性もありますが、例えばEarly Day MinersやDusterのようなアーティストを入り口として提示しておくだけでもグッと入りやすくなったのではないかと、盲点だったのもあり少し後悔もあるためここに残します。

 

 


 

以上でした。一年後のコミティアでもう一回くらい本を出してみたいです。何より素晴らしい出会いがたくさんあり、やってよかったなと心から思います。通販もやっていますので、ご興味ある方は是非手に取ってみてください。

 

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