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discography⑤ Shipping News / uri gagarn

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Shipping News。RodnaやJuen of 44でフロントマンとして活躍したジェフ・ミューラー最後のバンドにして、Rodan時代を共にした盟友ジェイソン・ノーブルと再びタッグを組みルーツであるハードコア~スロウコアを掘り返します。

00年代に多数フォロワーを生んだポストロック元祖であるSlintやRodan、Crainを発祥とし脈々と続くルイヴィルのポストハードコア~ポストロックのオリジネイターによる正当な後継。前回、前々回から引き続きSlint以降というテーマの最終ということで全アルバム感想+uri gagarnについてです。


 

Shipping News - Save Everything(1997)

てわけで1st、元々Rodanで活動していたというのもありもろ直系のサウンド・・・とは言いつつRodanにあったスロウコアから爆発して一気に音が分厚くなるエモーショナルな展開はあまり見せず、硬質で冷ややかなギターサウンドと3ピースの隙間のあるアンサンブルを生かし、じわじわと緊張感を持続させながら形を変えていきます。静→動の対比の色はあまりなく、彼らのフォロワーであろう今後出てくるポストロックやマスロックをもろ想起する感じでAtivinを聞いた時ぱっと思いついたのがこれでした。あとMurcury Programの1st~2ndはこれをかなり参考にしたんじゃないかなぁと思います。

 

Shipping News - Very Soon, And In Pleasant Company(2001)

前作と比べて一気に静寂寄り、前身バンドも含めて彼らのキャリア内で最も落ち着いた作品かもしれません。開幕「The March Song」からミニマルなフレーズの反復によるスロウコアですが、轟音で爆発させるのではなく硬質なフレーズの絡み合いの妙で爆発を表現するというのはJuen of 44でも見られた作風であり音色がおそろしくかっこいいです。June of 44の3rdからダブ要素を薄くした作品としても聞けるかと。

 

Shipping News - Three-Four(2003)

ジャケがマジでかっこよすぎる・・・というかShipping Newsはアートワーク全部かっこいいですね。今作はEPをくっつけたコンピレーションですが新曲3つ追加されてたり全部同時期の録音なので統一感もあり、普通に3rdアルバムとして聞けます。「Hanted on Foot」「Haymaker」辺りはSlintを思い出す静→動への爆発していくスロウコアですがギターのバースト具合が尋常じゃなく、ここまでやるとMogwaiとかと同系列として聞けるでしょう。

あとは静へと振り切った曲が多くやはりSlint~The For Carnationなどのルイヴィルの同期と呼応しどこまでも深淵へと潜ってしまうし(実際に次作からはThe For Carnationのベーシストであるトッド・クックがメンバーに)、全体的に落ち着いた曲が多い分、狂気的な曲の振り切り具合がすごいです。今までと比べるとアコースティックな歌ものの雰囲気もあり、Mogwaiの2ndとか、あとDusterとかとも並べて聞ける気がします。通して聞くにはちと重いですが名曲だらけ。

 

Shipping News - Flies The Fields(2005)

2005年ということでルイヴィル発祥の他のバンドは多数解散、むしろシーンは次に移り変わり、自分達の影響下である新しいポストロックやマスロックのシーン真っ只中で発表された代表作。そんな中彼らは音をそぎ落とし、初期RodanやJune of 44の1st~2ndを想起する彼らのポストハードコア的な獰猛なバンドの音を突き詰めていった作品とも言え、相変わらず陰鬱ですがインディーロックとかからもアクセスしやすいアルバムじゃないでしょうか。

1曲目「Axons and Dendrites」から後のライブ盤にも収録されるナンバーで彼らの曲の中でも随一のポップさを誇っていますが、スポークンワーズを軸にじわじわ迫ってくるスタイルはやはりSlint以降という空気を漂わせ、今や一つの様式美と化した時代にそのオリジネイター達が円熟した音を鳴らしている・・・というより、その更に次に行ってしまったという気さえします。「(Morays or) Demon」に関してはShipping Newsらしいハードなナンバーで、今までのアルバムでの彼らってスロウコア~ポストロックに寄ってた気がしますが、今回はポストハードコアに回帰しそれを発展させてる印象があり、今までの経過を聞きつつ2005年の作品としてこれを聞くとストレートすぎてニヤリとします。

Rodan、June of 44と枝分かれしていったバンドとこれを聴き比べることで、フロントマンであるジェフ・ミューラーはそれぞれのバンドの音楽性の"どの部分"を担当していたのかが浮き彫りになってくるので聞き比べるのが非常に面白いです。その核とも言える部分がむき出しになっているのがこのアルバム、でしょう。ちなみに紹介した4枚全てShellacのボブ・ウェストンによる録音、レーベルはTouch&Go傘下のQuarterstickという、Rodan時代から彼らの作品では完全にお馴染みのメンツ。

 

Shipping News - One Less Heartless To Fear(2010)

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解散前ラストアルバムにして地元ルイヴィルでの演奏を記録したライブ盤、しかも前アルバムの2曲を除き全て新曲。ライブ音源そのままということでシンプルなアレンジな上に結構早い曲が多くパンクに回帰した・・・というイメージでしたが、B面からは今まで通りポストロック色も強くなり「Do You Remember The Avenues?」とかはもう半マスロック化しつつShipping Newsとは思えないほど高速でめちゃくちゃかっこいいです。もっとこの路線を聞きたかった・・・。

主要メンバーであるジェイソン・ノーブルが2013年に亡くなってしまいバンドは解散。当時まだファンではありませんでしたが、ジェフとジェイソンは高校時代からの親友でJ・クルー、Rodan、Shipping Newsと10代の頃からずっと一緒に音楽をやってきてるので当時の彼の心境については想像に難くないです・・・。ジェフ・ミューラーについて僕は最も影響を受けているミュージシャンの一人ですので、何年か経ち今またJune of 44として再始動してくれたことに感謝しかありません。

 

uri gagarn - (untitled)(2004)

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日本のポストハードコアの深淵uri gagarnによる伝説的1st。無題、そしてジャケットからすさまじい存在感ですがそれは1曲目「Mutant Case」から期待を裏切らず、ギター1本、とんでもない緊張感を孕んだ不規則で縦横無尽なフレーズを弾き、途中からリズム隊も参加しながら徐々に盛り上げていき最後はノイズギターソロへ。支離滅裂な歌詞もあり、徐々に脳内が狂気で侵されていくその様を音に封じ込めたかのようなこの1曲で完全にぶっ飛んでしまいこの手のジャンル・・・上記のShipping Newsやポストロックへとハマるきっかけとなりました。

日本でハードコアと言えばやっぱり北海道のイメージが強いですがCowpersやNAHTと言ったディスコーダントで硬質なハードコアとは全くタイプが違い、こちらはそれこそSlintやRodanと言ったルイヴィル系列に近い音を鳴らしてますが、決してそのフォロワーでは収まらない得体の知れなさがあります。「Resister」「Detroit」はストレートに疾走感のあるポストハードコアですがやはり不協和音的なギターワークがおそろしくかっこよくて最後の「Maron」に関してはちょっとポストロックやスロウコアにも突っ込んだ10分にわたる長尺。とても聞きやすい作品ではないですがこの空気感は唯一無二でしょう。

このあと2ndを出した後メンバーが脱退し活動休止、フロントマンである威文橋はcpとしてgroup_inouでボーカルを担うんですが全く印象が違う・・・。ちなみに僕がuri gagarnを知ったのはgroup_inouからだったりするんですが、group_inouのきっかけがimaiをuri gagarnのドラムに誘ったところ新しい提案があり始まったユニットみたいです。

 

uri gagarn - my favorit skin(2014)

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2013年にnhhmbaseの二人が加わり再始動した3作目。2ndでは1stからさらに音をそぎ落としスカスカのUnwoundとも言える作風になってましたが、今作は逆に轟音寄りに。とは言いつつも2曲目「Fly」から早速新規のリズム隊二人による強靭で不規則なビート感がすさまじいです、ギターはほとんど最小限で前作までの流れを汲んでますが、ぼそぼそとボーカルが乗り、突如スイッチが入ったように不協和音ジャンクギターをかき鳴らしシャウトしていくんですがめちゃくちゃかっこいいですね。そして「Doom」は珍しくストレートにハードな曲でメロディーもキャッチーなのでかなり聞きやすく、全く青臭くないですが轟音エモとしても聞けそう。ここまでの三作では最も聞きやすいアルバムかと。

 

uri gagarn - For(2018)

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1stの頃からあったルイヴィル特有のポストロックやスロウコアの空気が完全にuri gagarnの中で昇華された感じがあり、そこに今まではなかった歌もの要素が強まったことでかなり聞きやすくなり今までのアルバムとはちょっと雰囲気が違います。スロウコア程静寂ではありませんがスローテンポで隙間を生かしたアンサンブル、空間の奥行を感じる間の置き方はもう3ピースであることを最大限に生かした究極。ギターも今までの無機質で鋭い音ではなく暖かみがあり、そして静寂を生かした対比的な轟音パートも今までのような静→動のジャンクなものではなく自然に温めていく感じはこのバンドでしか聞けない味わいがあります。

僕はこのアルバムから入り、というかライブで見てとてつもなく衝撃を受けその場で全アルバムを購入したので思い入れ深いですね。とは言いつつ1st~3rdの毒のあるポストハードコアのあのカオスさが好きだった人は逆に戸惑うかもしれません。UnwoundやJune of 44、ディスコードの面々と並べて聞ける感じだったのが、今作ハードコア出身のUSインディーであるPinbackとかThree Mile Pilot、あと初期Karateとかのが近いかもですね。

 


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前身となったバンドについて。この記事でもShipping Newsについて触れておりその掘り下げという感じです。

 

Slint、大元です。