朱莉TeenageRiot

棚,日記,備忘録

記録シリーズ:Shipping News

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Shipping News。RodnaやJuen of 44でフロントマンとして活躍したジェフ・ミューラー最後のバンドにして、Rodan時代を共にした盟友ジェイソン・ノーブルと再びタッグを組みルーツであるハードコア~スロウコアを掘り返します。

00年代に多数フォロワーを生んだポストロック元祖であるSlintやRodan、Crainを発祥とし脈々と続くルイビルのポストハードコア~ポストロックのオリジネイターによる正当な後継。前回、前々回から引き続きSlint以降というテーマの最終ということで全アルバム感想です。


 

Shipping News - Save Everything(1997)

てわけで1st、元々Rodanで活動していたというのもありもろ直系のサウンド・・・とは言いつつRodanにあったスロウコアから爆発して一気に音が分厚くなるエモーショナルな展開はあまり見せず、硬質で冷ややかなギターサウンドと3ピースの隙間のあるアンサンブルを生かし、じわじわと緊張感を持続させながら形を変えていきます。静→動の対比の色はあまりなく、彼らのフォロワーであろう今後出てくるポストロックやマスロックをもろ想起する感じでShipping Newsを聞くことでRodanがマスロックの元祖というのにも説得力が出てくる気がします。実際以降のバンドでもAtivinとかはもろこの頃のShipping Newsを思い出すし、ポストロック大御所ですが初期はハードコアの冷たさが残っていたMurcury Programの1st~2ndとかも近しいものを感じます。

 

Shipping News - Very Soon, And In Pleasant Company(2001)

前作と比べて一気に静寂寄り、前身バンドも含めて彼らのキャリア内で最も落ち着いた作品かもしれません。開幕「The March Song」からミニマルなフレーズの反復によるスロウコアですが、轟音で爆発させるのではなく硬質なフレーズの絡み合いの妙で爆発を表現するというのはJuen of 44でも見られた作風であり音色がおそろしくかっこいいです。June of 44の3rdからダブ要素を薄くした作品としても聞けるし、スロウコア色強くなると同時にジェフの歌心も相まってフォークロック的な風情も少しあり、Rodanの頃からの抒情的なメロディーが濃く出てる曲が好きだった人はしっくりくると思います。

 

Shipping News - Three-Four(2003)

ジャケがマジでかっこよすぎる・・・というかShipping Newsはアートワーク全部かっこいいですね。今作はEPをくっつけたコンピレーションですが新曲3つ追加されてたり全部同時期の録音なので統一感もあり、普通に3rdアルバムとして聞けます。「Hanted on Foot」「Haymaker」辺りはSlintを思い出す静→動への爆発していくスロウコアですがギターのバースト具合が尋常じゃなく、ここまでやるとMogwaiとかと同系列として聞けるでしょう。

あとは静へと振り切った曲が多くやはりSlint~The For Carnationなどのルイビルの同期と呼応しどこまでも深淵へと潜ってしまうし(実際に次作からはThe For Carnationのベーシストであるトッド・クックがメンバーとして加入します)、全体的に落ち着いた曲が多い分、狂気的な曲の振り切り具合がすごいです。今までと比べるとアコースティックな歌ものの雰囲気もあり、Mogwaiの2ndとか、あとDusterとかとも並べて聞ける気がします。通して聞くにはちと重いですが名曲だらけ。

 

Shipping News - Flies The Fields(2005)

2005年ということでルイビル発祥の他のバンドは多数解散、むしろシーンは次に移り変わり、自分達の影響下である新しいポストロックやマスロックのシーン真っ只中で発表された代表作。そんな中彼らは音をそぎ落とし、初期RodanやJune of 44の1st~2ndを想起する彼らのポストハードコア的な獰猛なバンドの音を突き詰めていった作品とも言え、相変わらず陰鬱ですがインディーロックとかからもアクセスしやすいアルバムじゃないでしょうか。

1曲目「Axons and Dendrites」から後のライブ盤にも収録されるナンバーで彼らの曲の中でも随一のポップさを誇っていますが、スポークンワーズを軸にじわじわ迫ってくるスタイルはやはりSlint以降という空気を漂わせ、今や一つの様式美と化した時代にそのオリジネイター達が円熟した音を鳴らしている・・・というより、その更に次に行ってしまったという気さえします。「(Morays or) Demon」に関してはShipping Newsらしいハードなナンバーで、今までのアルバムでの彼らってスロウコア~ポストロックに寄ってた気がしますが、今回はポストハードコアに回帰しそれを発展させてる印象があり、今までの経過を聞きつつ2005年の作品としてこれを聞くとストレートすぎてニヤリとします。

Rodan、June of 44と枝分かれしていったバンドとこれを聴き比べることで、フロントマンであるジェフ・ミューラーはそれぞれのバンドの音楽性の"どの部分"を担当していたのかが浮き彫りになってくるので聞き比べるのが非常に面白いです。その核とも言える部分がむき出しになっているのがこのアルバム、でしょう。ちなみに紹介した4枚全てShellacのボブ・ウェストンによる録音、レーベルはTouch&Go傘下のQuarterstickという、Rodan時代から彼らの作品では完全にお馴染みのメンツ。

 

Shipping News - One Less Heartless To Fear(2010)

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解散前ラストアルバムにして地元ルイビルでの演奏を記録したライブ盤、しかも前アルバムの2曲を除き全て新曲。ライブ音源そのままということでシンプルなアレンジな上に結構早い曲が多くパンクに回帰した・・・というイメージでしたが、B面からは今まで通りポストロック色も強くなり「Do You Remember The Avenues?」とかはもう半マスロック化しつつShipping Newsとは思えないほど高速でめちゃくちゃかっこいいです。もっとこの路線を聞きたかった・・・。

主要メンバーであるジェイソン・ノーブルが2013年に亡くなってしまいバンドは解散。当時まだファンではありませんでしたが、ジェフとジェイソンは高校時代からの親友でJ・クルー、Rodan、Shipping Newsと10代の頃からずっと一緒に音楽をやってきてるので当時の彼の心境については想像に難くないです・・・。ジェフ・ミューラーについて僕は最も影響を受けているミュージシャンの一人ですので、何年か経ち今またJune of 44として再始動してくれたことに感謝しかありません。

 

以上です。元々前身となったRodan及びJune of 44の記事と一緒にジェフ・ミューラーのバンドとして載せようと思ったんですが流石に長くなりすぎたので断念、そしてSlint以降のルイビルの系譜としても完成系の一つということで別で書きました。とりあえずRodanからセットで是非とも、下に関連記事並べます。

 

 

そしてこれら以降に近い雰囲気のあるバンドとかを並べたやつですが、一応ルイビル関連としては一まとめです。