朱莉TeenageRiot

棚,日記,備忘録

CODEIN JAPAN TOUR 2024

行ってきました。4月18日に渋谷のWWW Xで公演した後に京都、名古屋と連日ライブを続け21日にもう一度東京。下北沢。そして最終、おそらく下北がSOLD OUTしたからだと思いますが、4月22日FEVERにて追加公演。僕は18日と21日を見に行ってました。


 

Codeineは1989年結成、91年に1stアルバムとなるFrigid Starsをリリース。3年後の94年に2ndのThe White Birchをリリースし同年に解散。その後も2013年に期間限定の再結成を行いましたが、メンバーは音楽を引退し普通に働いていたため10年間ライブ活動を行うことはありませんでした。2022年頃からオリジナルメンバー3人で再結成、それ以降は意欲的にライブを続けているようで、なんと今回初の来日公演。今回行った18日は対バンでermhoi、21日はmei eharaとuri gagarn。22日は行けませんでしたが企画のimakin氏のバンドであるHausと、VINCE;NTとTexas 3000で、VINCE;NTとTexas 3000はメンバーがスタッフとしてツアー全て一緒に回ったというのが熱いですね。本当に素晴らしかった。June of 44のときも思ったのですが、世代的に完全に後追いの自分はバンドを知ったころにはもうすでに活動していなかったわけだし、インディーシーンにおいては大御所でも、まさか復活したり来日をしてくれるようなバンドだと思ってもみなかったわけです。なので当たり前ですが目の前で楽器をセッティングしてる姿を見るだけでも「本物を目の当たりにしている」という事実自体にとてつもなくグッときてしまう。こちらセットリスト。アンコールあり、およそ1時間20分たっぷり堪能できました。いきなり「D」から始まるのも衝撃。

WWW Xでの公演はキャパが広く天井が高いのもありリズム隊の音が非常に映える。SHELTERは天井が低くステージが狭いのもあって、バンド全部が一体となった轟音パートにおけるガシャガシャとしたアンサンブルがすごくかっこよかった。硬質なギターの存在感はこちらの方が大きかったです。どちらの会場も共通ですがおそらく足元に置いたメモを見ながら、すごく丁寧に日本語で挨拶をするスティーブン・イマーヴァールがとても印象的で、彼は90年台レコーディング時は非常に神経質で、自分にしかわからないような些細なノイズでテープ丸ごと没にしてしまうようなこともあったようですが、あのMCを見ていると準備も含めて非常にマメな方なんだなと繋がるところがある気がしてグッときました。SHELTERはWWW Xと比べてもドラムのリバーブが効いていて、曲に入る前にゆっくりすぎるスティックのカウントが痺れる。物腰柔らかいほのぼのとしたMCからあのカウントで一瞬で会場は静寂に包まれるし、そのままズン・・・とギター、ドラム、ベースが合わさって一つの和音になった瞬間、あの出音一発が吸い込まれるように一気にCodeineの音になって空間を支配する感触、たまりません。どちらの会場でも1曲目の「D」から、三人の音が一斉にその場の空気を塗り変えていくあの瞬間がとてつもなくかっこよかった。歌が映える「Barely Real」は音源以上に暖かく感じて、「Loss Leader」「Tom」は収録されてる作品が多くライブ盤でも何度も聞いたため、目の前であの印象的なイントロが流れた瞬間、これまで日常の合間にたくさん聞いてきたCodeineが間違いなく目の前で演奏しているんだなというのを強く感じさせられて涙が出ました。どの曲でもスローペースで音数が少ないからこそ、テンポを維持したままリズム隊をどう変化させてくかってのをまじまじと見れるライブで、こんなにテクニカルなバンドだったのかと新しい気づきがたくさんあった。ドラムはもちろんのこと、ボーカルを兼ねながらバンドをけん引するベースのスティーヴンがものすごかった。ギターは音源のイメージと比べると思ったより淡々としていて、その中心を縫うようにメロディで動きを作って音を持続させていくベースのプレイに目が離せない。シンプルにバンド全体の強弱をどう合わせて、どう緩急をつけていくか、スロウコアというスカスカなジャンルだからこそ、生演奏の些細な変化がはっきりとわかって、当たり前のように何度も聞いてきた音源だけでは気づけなかった新しい要素がたくさんありました。Codeineの轟音パートの圧はリズム隊二人で作っていたんだなというのも気づきだったし、Cave-Inの溜めの長いキメやLoss Leaderといったラウドな曲で音が一瞬ピタっと止む瞬間は生で見ると壮絶です。あとはやっぱり歌の要素がより強く感じて、音源の無機質な印象と比べるとかなり暖かく、徐々に熱を帯びていくドラマティックなライブからファンになった方も多いんじゃないかと思わされます。しっかりエモに通じてく要素があるし泣ける。音源でドラムレスの「Pea」「Broken-Hearted Wine」ではドラムのクリス・ブロコウがスティーヴンからベースを譲り受け、スティーヴンはボーカルに専念するという形で再現したのもサプライズ的に感動しました。とくにアンコール最終曲のBroken-Hearted Wineでは一つのマイクを二人が共有してハーモニーを作るのは涙無しには見れません。

 

ラストを飾ったBroken-Hearted Wineは春をテーマにしていて、Codeineの中でもとくにメロディーが映える曲でGalaxie 500との関連性も見出せます。Memörial氏におけるこちらの記事がこんなに素晴らしい音楽文があるのかと思わされ、いつ読み返しても記事だけで泣けてしまう。Codeineファンの方は是非とも読んでほしいです。

 

対バンについてですが、ermhoiもmei eharaも本当に素晴らしかった。そしてuri gagarn、今回は彼らについて少し触れさせてください。2004年の時点でリリースした1stアルバム(no title)から芳醇に90sポストハードコアやスロウコア、ポストロック前夜の雰囲気を纏っていたし、MCで昔からの一ファンとして、今Codeineのライブを見れること、共演できることが本当に嬉しいんだろうなというのが伝わってきた。それでいてすごく楽しそうに演奏しているのも見れてかなりグッと来た。先日、自分の方でリリースしたpärkという同人誌の巻末で、私的スロウコアガイドという音楽ZINEを作ったのですが、その本編はSlint/Codeineに始まり(ディスクレビューは実質Codeineから)、最後はuri gagarnで一旦幕を閉じます。この構成は自分の全ての始まりがuri gagarnで、彼らをスロウコアとしてしまうのに賛否両論あるのはわかった上で、だがしかし受け取ったものの大きさからエゴだとしても最後に記載したかった。もちろん来日公演のブッキングに合わせて作ったわけではないので、偶然だとしてもこれ以上ないほど嬉しい対バンでした。uri gagarnは今までも何度かライブで見てますが、今回Codeineと同日に続けて見ることに大きな意味を感じたし、Swimに終わりDeptで終わる静寂が映えるセトリ構成、Ijdbでのライブにおける極端な"轟音から音を引く"冷ますような感覚とか、Codeineのライブと重ねることで気づけることがたくさんあった。自分が後にRodanやSlint、それこそCodeineといったスロウコア~ポストハードコアのバンドを好きになる導線を張ってくれてたのは間違いなくuri gagarnだったなと噛みしめることができて、すごく大切な一日になったなと思います。

uri gagarnの威文橋氏はgroup_inouではcp名義でボーカルや作詞も兼任していて、自分は元々group_inouの大ファンなので、pärkというZINEのタイトルはgroup_inouの曲名を意識していたり、描いたイラストのインスピレーション元にinouの歌詞があったりします。本当にたくさんのものを受け取っているなと強く実感したし、すごく個人的な話ですが終演後、威文橋氏本人にpärkを献本することができたのもいい思い出です。

 


 

関連記事

最後にいくつか関連記事を。先ほどBroken-Hearted Wineの方でも紹介させて頂いたMemörial氏によるバンドのバイオグラフィ。こんなに詳しく情報がまとまってるサイトは見たことがありません。Codeineがどんな経緯で結成され、どういった人脈を辿って行ったのがかなり詳しく書かれています。何より最後に参照したであろう海外のインタビュー記事がたくさん羅列されていて、音楽記事において最も気になる部分も全部記載されているのが本当に参考になりました。Codeineだけではなく、スロウコアというジャンルについてどういう経緯を辿ったのか、どんな音楽なのかも非常にわかりやすく書かれています。本当に凄まじいので是非とも。

個人的に驚いたのがSeamやBitch Magnetのメンバーとの関係です。バンド結成前から交流が深かったとのことで、今までSeamがカバーしたと勘違いしていたCodeineのNew Year’sは実はSeamがオリジナル、Codeineがカバーだったという事実です。アルバムリリースの順番でそうなってしまったらしく本当に驚きでした。またデヴィッド・グラブスとの共作はBastroがCodeineのファンだったのもあり、それがきっかけかと思っていたのですが、実際のところCodeine結成前からBitch Magnetの面々と交流があったようだし、デヴィッド・グラブスはBitch Magnetのメンバーだったことを考えるともっと前から繋がりがあり必然的だったのかもと思います。そしてレコーディングで何度かルイヴィルを訪れているというのも、Slint、Rodanとの同時代性(ダグ・シャリン繋がりでもあったり)、RodanのタラはCodeineのカバーをしていたり、ルイヴィルのアーティストとの距離感の近さを再度確認しました。またこの記事からSeam~Bitch Magnetのスーヤン・パークとは旧知の仲であることがわかりますが、彼は現在日本在住らしく今回の来日公演に顔を出してたというのもSNSを通して知り驚きでした。