black midi - John L

色々新譜が出てるのを適当に漁りつつblack midi新譜ということで。出すんだ。この前BCNRもShameもかなり好きだったしサウスロンドン熱いですね。


black midi、最初アルバム出したときも各所で話題になって来日行った知人も多かったし、僕はと言うと実はポストパンクもマスロックも好きだしよく比較されてたnhhmbaseZAZEN BOYSも好きだったのに何故かしっくり来ず・・・ということで葛藤していたバンドなのですが、新譜聞いてドハマリしました。2nd発売はもうちょっと先で先行シングルですね。

ギターリフ一本に合わせた各パートがフレーズをぶつけ合いときには強烈にユニゾンしながら、black midi得意の無機質なノイズと一体化したような強烈な音像で突っ走っていきます。どこへ向かっていくのかわからない音楽であり、あらゆる文脈を断ち切ったような・・・

とは言いつつ、おそらくZAZEN BOYSファンなら一発でHIMITSU GIRL'S TOP SECLETを思い出すこと間違いなし、だと思います。ライブバージョンの方とかもろでギターが一音繰り返しながら無に潜っていってその後拡大、という展開までそっくりだし、展開どころかリフの置き方やドラムの強調の仕方まで・・・

イントロはTaratine(ZAZEN BOYS4)っぽいし、途中でRiff man(ZAZEN BOYS3)のアルバム収録版にある一度演奏をストップ → 打ち鳴らすリフとリフ のくだりを思い出す箇所があったり、というか3分頃からの展開はRiff Manのライブバージョンも強烈に思い出します。

もう似てる似てないとかそういうレベルじゃないだろ・・・という気持ちになりつつも、それでドハマリしてしまう自分に「これはblack midiを好きになったというよりZAZEN BOYSが恋しくなってるだけなんじゃないか」という気持ちにもなり、なんだか申し訳ない・・・。

black midi、完全にオリジナルな音楽をやってる集団ということでサウスロンドンから広がった新世代の旗手なので、好きなバンド同士が繋がってく感じがしてすごく嬉しいんですよね。ZAZEN BOYSは2015年からコロナ禍までは毎年ワンマン通っていて自分の中でかなり補正かかっちゃってて、知らない人より無駄に関連付けちゃってる・・・てのはあると思いますが、どちらかのファンでもう一方と体験してないという方は是非とも。

Schlagenheim - Album by black midi | Spotify

 Amazon | Schlagenheim [輸入盤CD] (RT0073CD) | black midi, ブラック・ミディ | 輸入盤 | 音楽

black midi、当時完全に好きなタイプなのにハマれなかったのなんでだろうと思い、とにかく聞きまくった覚えがあります。こういうのは感覚的なものの好みなので自分でもその理由ってのはわからないですね。マスロック文脈で語るにはハードコアとかポストロックとかの流れを汲んでるようにあまり思えず、クリムゾン・・・は影響下が多すぎてこの手の音鳴らしてたら全部関連付けられちゃいますよね。

Lightning Boltっぽいなと言っていた知人に結構納得しつつ、というかもう〇〇っぽいとか〇〇に影響を受けたとかのロック雑誌ありがちな評をすること自体がもうお門違いというか、バンド名が日本のインターネット文化が由来だったり音楽と関連するあらゆるカルチャーから影響を受けた人達から出てくる素の音だと思います。まさにロック以降、"ポスト"ロック的というか、いや音楽的にはポストロックじゃないんですけどね、そう考えるとポストパンクってのは本当にしっくりきますね。2nd楽しみだな。

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ギタマガ買った

ギタマガ買いました(前にも書いたな・・・)

今回はこちらなんですが、相変わらず全くギター弾かないので機材の話とかほぼわからないんですが、このパッケージカッコ良すぎでしょう。

ギター・マガジン2021年4月号 (特集:90年代オルタナ革命)

ギター・マガジン2021年4月号 (特集:90年代オルタナ革命) | ギター・マガジン編集部 |本 | 通販 | Amazon

で内容もオルタナグランジ特集とか、もう一番好きなとこというか僕のルーツですね。いきなりページめくって1991年特集!とかでニルヴァーナパールジャムサウンドガーデンスマパンダイナソーと並んでいたり、というか表紙に並ぶこのメンツ・・・

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載ってる文字がどれもこれも好きなとこで、これがカタログ化されてるだけでも嬉しい・・・。

 

でミュージシャンがそれぞれの「私的オルタナグランジ名盤三選とイチオシ曲」「好きなオルタナグランジギタリスト」というコーナーがあり、dipのヤマジさんやノベンバ小林裕介、ホムカミの福富さん、オウガの出戸さんまで・・・ととにかく楽しいです。でこういうの見ると必ず「俺だったらこの3枚だな」とかをまぁ考えてしまうわけですが、考えてしまったのですがこちらです。

 

1位 Smashing Pumpkins - Siamese Dream(1993)

曲:Quiet

なんの捻りもないですがやっぱり僕のオルタナ趣味の最初って日本ならナンバーガール、海外ならスマパンなんですよ・・・。とにかくメタリックなリフ一本で聴けるし、同時に美しく重ね掛けされた奥深いギターの轟音、て側面でも気持ち良すぎる。昔はオルタナってリフがかっこいい音楽のことだと思ってました。

 

2位 Pavement - Wowee Zowee(1995)

曲:Rattled By The Rush

一番好きなインディーロックでその在り方自体がオルタナだと思います。音が悪いって意味でのローファイではなくアンサンブルがぶっ壊れてるという意味でのローファイが堪能できる名盤。歌がヘロヘロなのも全てその計算の内というか、メロディアスだし泣けるっていう。

 

3位 Rodan - Rusty(1994)

曲:The Everyday World Of Bodies

ポストロック元祖ですがハードコア出自だけあってかなりギター寄りのバンドで、とにかくザクザクとしたリフが気持ち良いんですが同じ曲の中でスロウコア的な最小の美しさを奏でたり、メロディアスな轟音でエモーショナルに盛り上げて行ったり・・・と展開が多くて衝撃でした。

 

でギタリストに関して僕はそもそもギター弾かないのでどうなんだろう・・・て思っちゃったんですが、完全に好みでUnwoundジャスティン・トロスパーとかの変則的フレーズから不協和音ノイズへ飲み込んでくスタイルが大好きですね。あとはShellacスティーヴ・アルビニ、金属的なジャッキジャキの和音、徹底的なアナログ録音による生っぽい響き含めあのジャキっとした何にも代えられない音はいつまでも聞いていたくなります。

 


 

吉野寿×向井秀徳の対談で思ったことを少々。

先ほどの91年の名盤、から続いてニルヴァーナパールジャムから話題を振るんですが、まず“オルタナ“ではなく“グランジ“て切り口ならその人選はミスってね?と思いつつ実際2人ともほとんど聞いたことないです、とハッキリ言ってて笑っちゃいました。

でその2人で盛り上がると言えばやっぱりハスカードゥとソニック・ユースダイナソージュニアでした。前半の名盤紹介とかなりズレていて笑 でもこれが面白いっていうか、リアルですよね。世間的に売れた代表作はグランジでも、実際にミュージシャンに聞いた影響力の強さとしてはインディー精神強いものやハードコアが根本にあるもののが強いんだろうなぁと思います。それが良い意味で出てた気がする。

話それすぎですが、それ以上に面白かったのが2人のギターに対する話題で、とにかくそれぞれの価値観がありそのスタイルそのものが間違いなく“オルタナティブ“と言える独特のものを持っていて、2人の音楽をよく知ってるからこそ非常に読み応えがありました。あれを読めただけでも買ってよかった。

 

あと対談の中でフガジにもがっつり触れててポストハードコアで特集してほしいな・・・アルビニ録音とかに話題を寄せても面白そうですけどね。PJハーヴェイとかもいるし。あと向井秀徳が91年と言えばライドでは?とも言うんですが、マイブラもそうですし、あえてUKロックは避けてたっぽいのでシューゲイザーもお願いします。こういう好きなジャンルのカタログ、バイブルは家にフィジカルであるってだけで嬉しいですね。

記録シリーズ:Rodan / June of 44

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Rodan及びJune of 44、ケンタッキー州ルイビル出身のバンドです。一つの曲の中でスロウコアとハードコアを行き来するSlint直系のポストロックにしてJune of 44ではダブにも接近、解散後様々なバンドへと派生。Slintと並びまだポストロックという名もついていなかった頃、その原型とも言える音楽をやってました。後のTortoiseやGaster Del Sol等、シカゴ音響派も元を辿るとこのルイビルのシーンで繋がってきます。

そしてジャズやエレクトロニカの要素も強いシカゴ音響派と比べると、Rodanに関しては根本に「ハードコア」「オルタナ」というものが根付いたまま発展していきます。解散後の派生バンドもUSインディーやローファイと接点が多く、アメフト以降のキンセラ兄弟や先のシカゴ音響とはちょっと違った楽しみ方ができるかと。

 


 

Rodan - Rusty(1994)

Rodan - Rusty | DeLorean | Tiny Mix Tapes

Rodanが唯一残したオリジナルアルバムにして大名盤。1曲目の「Bible Silver Corner」からとても抒情的で美しいスロウコアから入り同じバンドとは思えないような程ハードコア色の強い「Shiner」へと展開。たった一枚で解散してしまいましたがこれがベストアルバムと呼ばれても遜色ないほど名曲しか入っておらず、最初2曲の要素が入り混じった切れ味の鋭い獰猛なハードコアと美しくエモーショナルな静 → 動の展開を流動的なアンサンブルで行き来し、徐々にギアを上げ爆発させていくという曲群に泣けます。

解散後フロントマンであるジェフ・ミューラーはJune of 44を結成、ベースのタラジェイン・オニールとドラムのケヴィン・コールタスはThe Sonora Pine、ギターのジェイソン・ノーブル、ピアニストのレイチェル・グライムスはRachel‘sへと派生。Slintの名盤SpiderlandとこのRustyはルイビルの元祖ポストロックシーンで最重要のアルバムでしょう。

 

June of 44 - Engine Takes to the Water(1995)

ENGINE TAKES TO THE WATER (COLOR VINYL) /JUNE OF 44/RSD DROPS  2020.08.29.|ROCK / POPS / INDIE|ディスクユニオン・オンラインショップ|diskunion.net

Rodan解散後ギターボーカルのジェフ・ミューラー、Codeineのダグ・シャリン、Hooverのフレッド・アースキン、この後Lungfishに加入するショーン・メドウズによる同時代ポストハードコア界隈のスーパーバンドに近いです。RodanのメンバーはJune of 44ともう一方The Sonora Pineに分かれるのですが、どちらも1stアルバムはまだRodanの作風に近く、Sonora PineはUSインディーやジャンクロックの色が強まっていったのに対し、June of 44はギターがより分厚く緊張感も増しハードコア寄りになってます。

録音もタイトに録られていてマスロックと称されることも多いのは大体この1stからなんじゃないかなぁと。直後にでたシングルの「The Anatomy of Sharks」ではより重く高速になっていて、同じくハードコア色の強かったDon Caballeroの1stとかとも並べて聞けるかと。

 

June of 44 - Tropics & Meridians(1996)

June Of 44 – Tropics And Meridians (1995, CD) - Discogs

そして2nd、こちらはドラムとベースが組み合わせりフレーズの塊としてループしていく感覚があり、テンポも遅めなので1stよりリズムで聞くバンドになってます。整頓されたタイトなアンサンブルの中でスポークンワーズ+シャウトとヘヴィなギターを載せていくという感じでしょうか。まさしく"スロウなハードコア"でしょう。Shellacのボブ・ウェストン録音でじわじわ迫ってくる緊張感とドラムの生々しい音が相変わらずすごいです。僕の中では2ndと3rdがいかにもJune of 44な作品だと思ってます。

 

June of 44 - Four Great Point(1998)

June Of 44 – Four Great Points (1997, CD) - Discogs

大名盤3rd。Rodan直系の美しい旋律を奏でる「Of Information & Belief」から始まり中盤から不穏なポストハードコアへ急変、一気にエッジの効いた展開を見せ、2曲目からベースリフを骨組みとしそこにリフのようなドラムが繰り返され2ndから更にリズム重視になり徐々にダブ化、アルバムが終わるころには全く別の作品のようになってます。自然とA面~B面で音楽性が見えてくる様は圧巻で、そのまま一周して1曲目に戻ってきた時点でベース音がかなり大きく録られてることに気づくという。

1st2ndはまだRodanを率いたジェフ・ミューラーのポストハードコア要素が強かったのに対し、3rdからは元Hooverであるフレッド・アースキン、元Codeineであるダグ・シャリンという後にHiMを結成するリズム隊の色が非常に強くなっています。Rodan組のハードコア要素とHiM組であるダブ要素が引っ張り合っている中間と言ったアルバムで、実験的なことをしつつも彼らのディスコグラフィで最も聞きやすいかと。

 

June of 44 - Anahata(1999)

June of 44 - In The Fishtank 6(1999)

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完全にHiM組の色に染まってしまったアルバムでバンド感強めのダブ~ポストロックという感じでしょうか。ハードコア色が薄いおかげで3rdとも違いますし、このアルバムだけにしかない完全なるオリジナリティを確立させてます。リミックス集に近い感覚かも・・・。

ボーカルも歌心強めでスクリーモ要素もないんですが、歌ものポストロックと呼べるほどメロディアスでもないこのバランス感覚、まさしく各々のバンドで培ったそれぞれの音楽性・・・の延長にある部分を絡み合わせ作っているというまさしく「ポスト」ロック的な作品だと思います。隙間の多い演奏からわかる各パートのミニマルな絡み合いによる浮遊感が非常に心地いいです。

Fishtankは専用スタジオを借りてEPを一枚作るという企画もののようですが完全に4thの延長線・・・そしてこちらのがバンド感強めなので3rdからの流れだと聞きやすいかも。

 

Rodan - Fifteen Quiet Years(2013)

Rodan - HAT FACTORY '93(2019)

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未公開音源集でFifteen Quiet Yearsは2013年、HAT FACTORY '93は2019年に発表されました。Fifteen Quiet Yearsは未収録曲+ライブ音源で、スタジオ盤ですら凄まじくライブ映えしそうなバンドなので間違いないです。「Darjeeling」など未公開曲を聞いてるとまだ80sハードコアの延長に聞こえる箇所が多々あり、これがセッションにより発展、肉付けされてってRustyになってったのかなぁとか考えてしまいます。

HAT FACTORY '93はRustyとほぼ曲目一緒ですがアウトテイクとは思えないほど完成されており、ギターの音はこちらのが暖かみがありより美しいRodanが聞けますし、「the Everyday World of Bodies」は全体的に音が分厚くなっていてポストロック感も増し増しに。

 

June of 44 - REVISIONIST: ADAPTATIONS & FUTURE HISTORIES IN THE TIME OF LOVE AND SURVIVAL(2020)

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まさかの新譜。解散から20年経ってなので驚愕でしたが、その20年の間にジェフ・ミューラーはRoadn時代の盟友ジェイソン・ノーブルとShipping Newsで活動、ダグ・シャリンとフレッド・アースキンはお馴染みのHiMでアルバムを多数リリースと、それぞれキャリアを重ねた面々+ジョン・マッケンタイアとマトモスも参加という90年代のポストロック大御所オールスターのような布陣になってます。

で中身ですが4thのAnahataを更に推し進め、より音をスマートにそしてヘヴィにした感じでしょうか。元々がダブっぽいリミックスにも思えるアルバムだったのがこちらはバンドサウンド強めになっていて、B面では普通にハードコア色強い曲も戻ってきており熱くなります。マッケンタイアとマトモスによるリミックス二曲はバンド音源をサンプリングしたカオスなハードテクノに。

 

The Sonora Pine - The Sonora Pine(1996)

The Sonora Pine - II(1997)

Amazon | The Sonora Pine | Sonora Pine, the | 輸入盤 | 音楽 The Sonora Pine – II (1997, CD) - Discogs

Rodanから掘ってくにあたって重要なバンドでRodanでベース+女性ボーカルパートを担当していたタラジェイン・オニールとドラマーだったケヴィン、そしてJune of 44でギターを弾くショーン・メドウズによるバンド。1stはRodanと展開の仕方や構成が近く、ジャンクロック的なローファイな録音+タラジェイン・オニールの暖かみあるボーカルのおかげで全体的にふわっとしていて、スロウコアとしても聴けるようなミディアムテンポの中で曲がどんどん展開、バーストしていきます。

2ndではギターではなくヴァイオリンやオルガンをフィーチャーしより繊細なリズム隊を乗せるというまた別の作風になっており、1stと比べてこっちのがスロウコアと言えるかも。半分ポストロックに浸ったアート嗜好の強いスロウコア、という感じでしょうか。2000年以降SSWとして名を上げるタラジェインオニールのソロや、この密室感はSlint解散後にメンバーが結成したThe For Carnationともリンクするとこがあります。

 

Retsin - Egg Fusion(1996)

Retsin - Sweet Luck of Amaryllis(1998)

 

Rodan、The Sonora Pineでおなじみのタラジェイン・オニールによるまた別のバンドで90年代末期にやっていたので同時に活動していたようですが、Rodan一派によるマスロック~ポストロック的な作風ではなく純粋にいい歌にいい演奏が乗っている暖かみのあるインディーロックです。いかにもオルタナという感じで録音もインディーらしいローファイな質感が個人的に大好きなバンド。90年台中期頃のYo La Tengoとかと近い感覚で聞けるかも。

 

Shipping News - Three-Four(2003)

Shipping News - Files The Fields(2005)

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Rodan~June of 44を率いたギターボーカルのジェフ・ミューラーの次のバンドで、彼の変遷を辿ってくうちに上記の周辺バンドを知っていきました。彼のルーツであるルイビルのハードコアを正面から掘り下げていったバンドです。

Rodan時代から交流の深い同郷Slintのじわじわと心臓をわしづかみにするような静寂と狂気を行き来する緊張感を受け継いでいて、彼らがやっていた「遅いハードコア」とでも言うような音の完成形が鳴っています。しかもSlintが出てきたときってそんなジャンル存在していなかったのでまさに先駆け、ジャンルの草分けとも言える存在でしたが、後に発展したベテラン達が集まってそれをやってるのでかなり洗練されてますね。

3rdのThree-Fourでは静から動の振り切り方が激しい同時代のポストロックの名盤だと思います。4thはジェフ・ミューラーの暗黒ポストハードコア趣味が最もポップに出てる作品かと。

 


以上です。Rodan以降、という括りで聞くのならこの辺を押さえておけば間違いないと思います。とくにJune of 44と同時進行でジェフ・ミューラーがShipping Newsを始めたことで彼の本来の音楽性がわかり、June of 44の後期がいかにリズム隊二人の音楽性に寄って行ったかがよくわかったり、タラジェインオニールのアート嗜好のインディーロックとも言える美的センスがRodanに溶け込んでいたこともよくわかります。

 

Rodan関連、として括るのならここで終了です。以下、June of 44後期の音楽性に影響を与えたリズム隊二人のバンドについてちょっとだけ掘り下げていきます。

 

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Cloud Nothings - The Shadow I Remember

Cloud Nothingsが新譜を出してこれがめちゃくちゃ突き刺さってきたのでやべ~って言いながらその感情について書こうとしてたんですが、なんか途中からデジャブを感じ・・・

昨年のアルバムのときほぼほぼ同じことを言ってました。ストレートなギターロック的作品が本当にシーンから衰退してしまったのを実感してたタイミングでこれ聞いて、感動が何倍にもなってしまった・・・的なやつです。で前作の記事書いた頃はある程度新しい音楽も聴いてたし、ちゃんと流行もチェック(?)してたはずで本心からだったんですが、最近はもっぱら旧譜掘ってばっかだったから説得力ないなと(笑) 別にちゃんとチェックしてればいくらでもあったかもしれないですよね。昨年もなんだかんだあのあとBullyとかMetzとかSprainとかNarrow Headとかあったわけだし。

The Shadow I Remember - Album by Cloud Nothings | Spotify

 THE SHADOW I REMEMBER / ザ・シャドウ・アイ・リメンバー/CLOUD NOTHINGS/クラウド・ナッシングス/世界同時リリース  / ボーナストラック収録|ROCK / POPS / INDIE|ディスクユニオン・オンラインショップ|diskunion.net

でも本当に素晴らしいなと。ギターが一番前に出てきてポップなメロディが乗っかってっていう、日本人のオルタナとかが好きな人にストレートに刺さる感じというか、SNSの知人がこのバンドって海外でそこまで話題にならなくても日本で盛り上がりすぎてるところあると思うって言ってて本当にそれは思います。ピンポイントすぎるというか、00年代ロキノン的な土壌があるロックファンは間違いないだろうなぁみたいな。

元々親やすいローファイインディーって感じの作風からグランジ〜ポストハードコアへ接近して前作でまた初期のようなインディーロックに回帰したわけですが、あのときそれでも感動していたけど今回それを更にバンドサウンドで強靭に肉付けしアルビニ録音でリリース、まぁ本当にオルタナド直球という感じです。殺伐とした焦燥感みたいのはなく吹き抜けがいいのでLife Without Soundsとかに近いかな・・・あちらはもうちょっとパワーポップ寄りな感じしますが。Naraという曲があって多分前に来日したときLOSTAGEと対バンして、そのあとLOSTAGEメンバーのレコ屋に顔を出してたようなのでその一件が元になってるのかなぁとか考えたり、奈良県だったし。嬉しくなりますね。

でなんかこれを記念してAttack on Memoryのライナーノーツが無料公開されて、多分家にあると思うんですが読んでみたら中々面白く・・・

 

あんまりポストハードコアな聴き方したことがなくて前々作のLast Building Burningとかはめっちゃパンキッシュだし金属的なギター音が鋭利でそこでやっとハードコアと結びつけたわけですが、これ読むとあの頃からもろにLungfishとかNation of UlyssesとかDISCHORDの面々が引き合いに出されていて、まぁそりゃそうか、当時俺がハードコア知識なかったから結びつけられるどころではなかったんだなと思いました。あの時はまだUSインディーがグランジ色濃くなったな〜くらいの感想しか多分出てこなかったんでしょう。でアタックオンメモリーは死ぬほど聞いた愛聴盤でしたが、その数年後ハードコア掘って俺がNation of Ulysessとかにどハマりするの自然な流れというか、納得しました。

でまぁこうやって、日々旧譜を漁っているおかげでこういう楽しみ方やアクセスできる場所が増え、参照された音楽も新しい音楽も解像度が増して楽しく聞けるようになるのでやっぱ楽しいんですよね。まだ全然聞き込めてないのでこれから聴きます。またライブ行きたいなぁ。

 

記録シリーズ:OGRE YOU ASSHOLE / メンバーのプレイリストから辿る周辺バンド~ゆらゆら帝国との関係性

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ディスコグラフィに引き続き書いていきます。二つの記事で何度か名前を出したバンドや影響力が強いと感じるもの、その中でも個人的に好きなバンドについて。

 

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記録シリーズ:OGRE YOU ASSHOLE - workshopシリーズ

OGRE YOU ASSHOLEというバンドを聞く上で最も重要なアルバム、それがこのworkshopシリーズだと僕は思っています。彼らの活動の中で大きな一つの方針がライブ録音とスタジオ録音でのアルバムを完全に切り分けるというものでした。最新のアルバム聴いたときとかむしろライブでいつもやってるバージョンの本当に素材だけのような質感だったので、これworkshopを作ることを前提にやってない?とすら思いました。

 

というわけで一般的なロックバンドのスタジオ版とライブ盤という関係性とは若干違ったものになってますので、正直オウガのサイケ三部作の難解さがよくわかんね〜って人も是非これだけは必ず聴いておいてほしいです。というかぶっちゃけ僕も最初そんな感じで「homely」とか息苦しすぎてしんどかったし「百年後」もかったるい歌ものばっかりで・・・とか思っていたのにライブに行ったら「とにかくめちゃくちゃ踊れるし爆音のノイズを一杯浴びれて最高だった!」というくらいになっていて、それをきっかけに通う内どんどんバンドの魅力に取り憑かれていったのですが、そのライブの記録が今作、というわけです。

 


 

workshop(2015)

一作目。今回は三部作homely〜100年後〜ペーパークラフトから収録。「ロープ」「フラッグ」等、今でもライブでの大きな要ともいえる代表作目白押し。厳密にはライブアルバムではなく各公演のライブ音源を再編集、厳選したものなので実質ベストアルバムのようなものですね。でこの三部作と言えば・・・彼らが完全にサイケ~クラウトへと舵を切ったときの音源であり、よりミニマルな演奏の中の音の"質感"重視というか、描きたい世界観、コンセプトに合わせ使う音を選択していったという時期です。そしてその録音をライブで再現するのは不可能に近い・・・ということで、ある意味「バンドの生の姿の記録」を実感できるものであり、ロックバンド本来のダイナミズムが最も出てる作品になります。

 

とくに「ムダがないって素晴らしい」「フェンスのある家」「見えないルール」は乾いた無機質ファンクとも言える新たなスタイルを確立したはずですが、生演奏によってより有機的にアレンジされどんどん加速していくグルーヴが完全にそれを取っ払ってます。そもそもアルバムに合わせたサイケな録音じゃなくなった時点でプログレクラウトロック的文脈から外れアルバムコンセプトから解放しているように聞こえるんですよね。

 

そしてやはりハイライトとなるのが「フラッグ」「ロープ」なんですが、フラッグに関してはこの中で唯一初期の曲、まだUSインディーだったアルファベータ vs.ラムダの頃の曲ですね。であれが・・・やはりサイケ期を想起するようなスローでドロドロとしたものに変貌してしまってるんですが、まさかの三部構成、途中で四つ打ちっぽいダンスミュージック風へと転調、そのまま気持ちよく艶やかなセッションを繰り返していく・・・と思いきや、最後に聞き覚えのあるギターリフが曲を切り裂いていきます。まさかの伏線回収。サイケ化する前の初期オウガへと原点回帰していくのがぶち上がりますし、毎度ライブでも一番の沸点を見せる"あの瞬間"が音源にも見事に保存されてます。

そして「ロープ」ですね、なんと二回やるんですが最初はクラフトワークのヨーロッパ特急風、電子音シーケンスに地続きになるように各楽器隊がリズムを足し見えないルールへつ繋がるオープニングナンバー。

そして本番・・・最後のlong verで一応原曲を踏襲しているのですが、1コード刻みながらそれぞれのパートがどこまで旅を続けていくか、どうギターを乗せてどう音をいじっていくか、そんなバンド本来の楽しみを非常に心地いいビートの上で拡大し続けていきます。ちょっとノイ!のHallogalloぽいかも。音源では機械的とも言える単調な繰り返しも生演奏、ライブでしか実感することができない徐々に熱気を伴って熱くなっていく様が音に反映されて行き13分という時間を忘れさせ、後半、最終的に全部どうでもよくなったような巨大ノイズに呑み込んでいきます。ライブの最後というか、基本的にセトリで大団円ポジにいることが多いんですが、こちらもあの「三部作」からは想像できない程ライブの熱気が保存されています。

 

 

workshop2(2017)

workshop 2 | OGRE YOU ASSHOLE

前作のworkshopの曲は今でもライブで演奏されることの多いベスト的なものでしたが、今作はどちらかと言うと当時の最新作、ハンドルを放す前にのライブテイクお披露目と言った感じです。

相変わらずライブ音源を基にした再編集版・・・ということで実際のセトリとは大きく異なってるんですが、僕は正直ハンドルを放す前の曲ってかなり「ミニマル」寄りだと思ってました。無駄な音をそぎ落とし最小限の音だけで構成された隙間だらけのファンク・・・というような、でもって三部作より曲事態をスマートにしたような印象があったんですが、「ハンドルを放す前に」「ねつけない」では電子音で隙間が埋められ無機質な音源がかなり浮遊感漂うものになっており、「あの気分でもう一度」はクラフトワーク歌謡とも言えるものになってます。というよりあのアルバム、実際の使用機材も60~70年代当時のものを集めた・・・とのことなので、ドイツのクラウトロックのライブって体験できたらこんな感じだったのかなぁという気もします。 

 

 

workshop3(2020)

OGRE YOU ASSHOLE「workshop」第3弾発売、4年間のライブから音源をセレクト(動画あり) - 音楽ナタリー

三作目。実は2019年以降オウガのライブも徐々に変化していて(というより彼らのライブはいつでも変化し続けているのですが・・・)、バンドの代表曲でありライブでも一番の沸点とも言える「ロープ」「フラッグ」が演奏されないセトリも割と見るようになり、その代わり新たなアンセムとして生まれた「朝」「動物的/人間的」が遂に収録されてます。

まず開幕の「新しい人」から音源ではベッドルーム的とも思える程ふわっとした質感だった曲が、ライブによるリバーヴと更に強調されたギターの揺らぎ、出戸さんのエモーショナルな歌声により非常に暖かみが増しています。そして朝・・・こちらはタイトルすら決まってなかった頃から何度も演奏され今やライブの中核とも言える曲ですが、今までのアンセムと違い安易に「爆発させない」美学を感じる曲で、ダンスミュージックの均等に配置されたビートを生演奏ならではのリズム隊の揺らぎの中、その曲の「骨組み」ともなるフレーズをどんどん入れ替え足していきます。この繰り返しの陶酔感によって自然とフロアを高揚させ温めていくという新しい彼らのライブの形、そしてどんどん体の動かし方を変えていく観客、あのときの会場の空気感が見事に保存されてます。

そして元アルバム最終曲、その前にも2018年にシングルとして発表された「動物的/人間的」ですが、この頃ってどんどん難解になっていった時期にも関わらず突如リリースしたこのシングルが「壮大でメロウな歌もの」だったんですよ。メロディもポップだし、何より歌詞が珍しく直球でエモーショナルだった。というわけでよくライブの最後に全てをまとめあげる役割を担っていたんですが

こちら、野音の録音なのでカセットテープから流れてくるようなローファイな音にわざと録られています。これにより原曲の壮大なメロウさとはまるで逆のメロウさへと変貌、そのギャップ、そして哀愁にやられました・・・。workshop1をベースにこの3の新曲を幾つか足し尚且つまた新しいアレンジを模索している、というのが今のオウガのライブに最も近いかもしれません。

 

以上workshop3作でした。あとはライブではないんですが、リアレンジ編とも言えるこちら

conffidencial(2013)

Amazon | confidential | OGRE YOU ASSHOLE | J-POP | 音楽

三部作発表時のEPは未発表音源をまとめたテイク2とも言える作品ですが、「バックシート」「バランス」「また明日」等の初期曲がAOR風の後期のふわっとした作風に書き換えられていて、しかも元の曲が突き抜けたポップさがあっただけにロックな質感が減りよりポップになってるのが面白いですね。

そして素敵な予感 (alternate version)は実はworkshop3のものとも違いライブテイクは未収録ですが、alternate versionのライブは本当にヤバくてこの音源はそれをかなり再現されていて必聴です。地響きするんじゃないかというくらいの暗黒ノイズにより塗りつぶされたダブへと変貌し一度聴いたらこの重さは忘れられない・・・。

 


 

終わりです。バンドを聴くという上でそのバンドのライブに行く、ライブアルバムを聞いてその変化を楽しむ、というのは深く掘り下げるには基本的に通る道だとは思うんですが、オウガに関してはその重要度が特別高いと思われます。最初にも触れましたが、難解だと思っていた音楽がとにかくめちゃくちゃ踊れてめちゃくちゃ轟音を浴びれる、これだけで印象がガラリと変わると思うんですよ。自分もこういう楽しみ方をリアルタイムで追えているのは初めてであり、ここまでライブに通っているバンドは他にいません。

 

最後に参考にさせて頂いたインタビューをいくつか

ロープ、が最初は観客に嫌がられていた曲だったのが今や一番盛り上がる曲になっていた・・・のくだり、笑えますが非常に面白いですね。より魅力が伝わると思います。

 

あとこちらも。

 

終わりです。

 

おまけ

kusodekaihug2.hatenablog.com

記録シリーズ:OGRE YOU ASSHOLE

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2001年結成。初期の頃は90年代のUSインディーをベースにしたようなロック~ディスコパンクシーンとも比較されながら徐々にサイケデリックへと傾倒しAORクラウトロックプログレの空気まで入っていきながらソフトサイケな歌もの → ライブで轟音~グルーヴ重視へと大化けするというバンドです。

一時期狂ったようにライブに通いまくってました。かなり多方面から楽しめるというのもあり1stから順に追っていきます。

 

 


 

OGRE YOU ASSHOLE(2006) 

OGRE YOU ASSHOLE/OGRE YOU ASSHOLE : UK/US/JPロックレビュー

セルフタイトルの1st。バンド名の由来にもなったモデスト・マウスを強烈に思い出すローファイサウンドで、歌い方までも近いと思わせる瞬間もありますがあちらと比べてジャケット通りダークな雰囲気ですね。

で割とメロディーも声もキャッチーで普通に00年代の邦楽ギターロックな流れでも聞けるアルバム・・・だとは思うんですが、かなり不穏です。「タニシ」「また明日」という今でもライブで聞けるナンバーも収録されていてポップなんですがかなりくたびれてます。「ロポトミー」では今からは考えられないようなシャウトも。

 

平均は左右逆の期待(2006)

1st後に出たEPで前作と比べたら音もキレイになり雰囲気もポップになりました。というか1曲目からアコースティックで始まりオウガ随一ポップな曲で前作から来るとびっくりしますね。

そして「アドバンテージ」ではこの頃のUSインディーを咀嚼した~という王道のロックサウンドはこれで完成されちゃってる気もしますし、後に難解になってくことを考えるとストレートにクールがギターロックやってた唯一の曲じゃないでしょうか。

 

アルファベータ vs. ラムダ(2007)

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今でもよく聞くアルバムです。フロントマンである出戸学が度々影響を公言するテレヴィジョンの色がかなり出てきます。マーキー・ムーンで見られる単音ツインギターの絡み合いの上で歌ものインディーロックをやるといった感じで、リフとリフを反復しセッションした後どんどん新たなギターフレーズが登場しドラマティックに展開していく・・・というのをわかりやすく3分~5分のサイズでコンパクトにしたような曲が多いですね。

モデスト・マウスというより同じくKレコーズのビルト・トゥ・スピルっぽい感じがかなり出ていてポップですね。オウガの中で最も人懐っこいアルバムにも聞こえますし、でもやっぱりちょっと無機質な感じになっちゃうのは出戸さんの声と掴みどころのない歌詞、情報量の割にアンサンブルはスッキリしてるのもあるかもしれません。

 

しらない合図しらせる子(2008)  ピンホール(2009)

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メジャーデビューシングル「ピンホール」とEP「しらない合図しらせる子」ですね。デビューということでピンホールは非常にポップで最も一般受けする曲かと。この頃からプロデューサーとして石原洋、エンジニアに中村宗一郎というゆらゆら帝国を手掛ける二人と手を組みます。

そして今作、後期のどんよりとしたサイケデリアとはまた別の、多幸感あふれるメランコリックなサイケデリアが少しあります。ギターの音も前と比べるとくぐもった乾いたものになり、この辺はおそらくフレーミングリップス由来らしく、石原洋と最初に会ったときこんなことやりたい、ていうモデルの一つだったみたいです。この後どんどんクラウトロックにハマってくんですが、まだUSインディーオルタナの範疇だったことがわかりますね。

 

フォグランプ(2009)

前作と同じく単音ツインギターのアンサンブルによる歌もの・・・の延長ですが、そこまでキャッチーではなくなっており後期のサイケデリックな空気がぼんやり出てます。で尚且つその空虚さを伴ったまままだギターロックの範疇という異色作でもあり、後期のサイケ期を期待して聞くと物足りず、逆にアルファベータを期待して聞くと重くなりすぎな感じもありますが、だからこそ今作が一番好き、という方も結構いそうですね。

あとは一つのリフを繰り返してくうちに徐々に絶頂へ向かう・・・という淡々としたアンサンブルの中で変化を楽しむ「ワイパー」等、ドラマティックに展開していくラムダとはここも違いますね。ジョニー・マーがオウガを指して「CANを早回ししたようなバンド」と例えたことがあるのですが、時期と音的におそらくこのアルバムかな~と思います。

 

浮かれている人(2010)

さてこちら・・・フォグランプと並び丁度中間、サイケ寄り・・・録音の質感は全体的にふわっとしてますが、リードトラック「バランス」があまりにもポップすぎて、たぶんオウガ屈指のポップさを誇っていてその印象のままあっさり聞けちゃうんですよね。

「タンカティーラ」とかもかわいいキラーチューンでフォグランプと比べると全体的にポップなんですが、この明るさ、今までとは違いシュールさを伴ったものなんですよね。でこのシュールさって深読みすると少しだけ不気味に感じるような・・・という、ちょっとだけ毒の入った明るさだと思います。ジャケもね。

 

homely(2011)

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さて、こっから完全に今までの音楽とは別次元に行ってしまった感じがあり"USインディー"的な聞き方をすることはほぼできません。石原洋+中村宗一郎というかつて90年代にWhite Heavenを率い、00年代ではゆらゆら帝国をプロデュースしていた二人と組んだことで完全にサイケデリッククラウトロックといったあの乾いた音楽へと変貌。リアルタイムで追っかけてた人は一体どう思ったんだろうか・・・。

ということでもう最小限のビートを刻む淡々としたギター、ドラム、ベース、そこにプログレクラウトロック的な効果音が飛散しながらミニマルな繰り返しの中で虚ろに踊るような、そこにゆらゆらとボーカルが浮遊しているような、そんなアルバムです。

歌詞も今までは意味があるようでないような単語をハメ込んできたオウガですが、「居心地の良い、悲惨な場所」をテーマに「ここから出ることはできない」と言う息が詰まるような閉鎖的な空気に包まれていて、統一感のある録音も含め完全にコンセプトアルバムです。そもそもこの音楽性自体が、今までの作風の地続きではなく描きたい世界観に合わせて音を選択したというあたり、今作からライブとスタジオアルバムを完全に切り分けるようになります。

最初聞いたときこの空気にやられて非常に重苦しかったんでが、ライブで大化けする「ロープ」「フェンスのある家」辺りのキラーチューンの原型も収録されており、それらを再編集したworkshopは今作がしっくりこなかった人にも是非オススメしたいです。後から聞くほど発見の多いアルバムだと思います。

 

100年後(2012)

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100年後。前作の終末感を引き継ぎつつ、直接的に終わりを表現せずに100年後という"終わった後"を当てはめるのはなにもかも漠然としている非常にオウガらしいタイトルだと思います。

そしてこちら、僕は最初に聞いたときついにさっぱりわからなくなってしまったアルバムです(笑) というのも前作から引き続き完全にサイケやってるこの頃を三部作と呼ばれてるんですが、かと言ってhomelyとはかなり趣向が違いますね。録音のふわっとした質感くらい?まだ前作の方がビートで聴く感覚があったので踊れた。

今回、たぶん今までで一番歌の比重が大きいです。あと音への没入感。音を鳴らした後の残響、が着地せずに地続きに浮遊し、ぼんやりと広がってくその幽玄な世界観に浸るといった作品です。めちゃくちゃメロウ。和製AORって感じもします。

 

ペーパークラフト(2014)

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ジャケットが素晴らしいですね。homely、100年後から続く三部作では個人的に一番好きです。今までのオウガってミニマルな曲とメロウな曲がそれぞれ存在していて(homelyならミニマル、100年後ならメロウ寄りでしょうか)、それらを共存させたアルバムを作るということで「ミニマルメロウ」がコンセプトだったようです。ということで結構双方の作風を引き継ぎつつポップになってるので、この三作では一番とっつきやすいかも。

ライブの定番である「見えないルール」は音源の時点でミニマルなファンクという、homelyでも見られた無機質なダンスナンバーとして完成された感じがあります。そして「ムダがないって素晴らしい」はギターではなくドラムとパーカッションが主格となる"リフ"的なものを担っており、そこにキャッチーなメロディーが乗っていて、CANのTago Mago辺りが好きな人にはたまらないでしょう。というよりああいうクラウトロックをよくここまでポップにしたなぁという感じで、反復と歌のバランスがミニマルメロウを模索してる中でやってたのかな・・・と思います。

 

ハンドルを放す前に(2017)

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ハンドルを放す前に・・・というのは、つまり「何かが起きる直前」という意味らしいです。100年後という言葉で終わりや終わった後を表現したオウガが、今度は始まる前を描いていきます。。

こっからセルフプロデュースですが同じテンションで聞けますね。で・・・さらに隙間が多くなってます。より音数を減らしたアンサンブルを楽しめるんですがその最小限な音の中、印象的なフレーズが途中から出てくる「ハンドルを放す前に」「あの気分でもう一度」と言った、間の多い音楽を聴いてる中で急に現れるフックが非常に気持ちいいアルバムでもあります。

そして音数が少ないからこそフレーズのぐにゃっとした感覚をより楽しめるようになったり、あと詩がより直接的になりつつもそのモチーフが意味わからないとことかも相変わらず掴みどころがないのですが、そんな中でも「かんたんな自由」「なくした」等は相変わらず踊れる曲になってます。実験しつつポップネスを失ってないのがすごいですね。

 

新しい人(2019)

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ミニマルなソフトサイケで、結構今までのアルバムの中でも「歌」の要素が強いかもしれません。でもって三部作程重くもなく、あっさり聞けるシンプルなバンドアンサンブルのソフトサイケというか、今までの音の引き方とはちょっと違い、音の規模、世界観そのものが縮小され"そこ"でなってる言葉と歌、という印象を受けます。

順を追って聞くとペーパークラフトで突き詰めた「ミニマルとメロウの共存」が最も自然な形で出てきてるアルバムじゃないでしょうか。空っぽなのに暖かみがあるというか。で歌詞も対象物がほとんど出てくることなく現象、状態を示す言葉が連ねられていく感じで、石原洋が今作を「さっきまで誰かが"いた"ような、座っていた椅子の温もりが残っている」と捉えていたのもかなり納得しました。

そして「さわれないのに」は個人的に傑作だと思っていて、ライブで聞いた時はもちろんですが音源公開時も非常に盛り上がりました。オウガの持つ無機質ながらも体を動かしたくなるファンクネス、あの要素をうまくポップソングとして聞ける形に落とし込んでるというか、これ新しいファン層もガッツリ掴めるんじゃないかと興奮した覚えがあります。

 


 

以上でした。後はライブアルバム・・・というよりはライブ音源を再編集した「workshop」についてですが、個人的にオウガの最も大きな魅力が詰まってる三作だと思ってるので、正直重要度は上記の作品より高いと思ってます。

世界観に合わせて音を選択した後期のコンセプトアルバムを考えると、こちらこそが真のバンドの姿であるとも言えます。その辺について書いていきます。

追記 また書きました