朱莉TeenageRiot

棚,日記,備忘録

MADCHESTER 1988-1992 マッドチェスターの光芒:ニュー・オーダーからストーン・ローゼズへ

読んだので感想です。マッドチェスターに限らず80~90年代のUKロック、及び電子音楽に興味がある方々全員におすすめしたいです。本当にすごすぎました。


 

 

MADCHESTER 1988-1992 マッドチェスターの光芒:ニュー・オーダーからストーン・ローゼズへ

2024年。発売前に告知を見たときは今マッドチェスター?という気持ちもちょっとあったんだけど、実際ページをパラパラめっただけでそんな気持ち全部ぶっ飛んでしまうほど圧倒的な本であることがよくわかった。まず著者である横田勇司がB5の大判サイズに文字をぎっしり詰め込んで、それを340ページ分ただ一人で書き上げたという事実を知ってほしい。純粋にファンとして手探りでシーンを辿り続けた当事者が、主観や当時の思い出も織り交ぜて作られた総括本。熱量と深みを重視しての一人作業とのことだけど、こんなにもシーンを網羅した歴史のアーカイブでありながら、ここまで個人的な作品としてまとめ上げてしまった事実に畏敬の念を抱かざるを得ない。執念だと思う。にも関わらず無理をしてる感もまるでない、当時を思い返して楽しんで書いているようにすら見える。積み上げてきたものの大きさを感じずにはいられない。こんな音楽人生を自分も送れたらいいな~とか、読んでいてわくわくする気持ちが止まらなくなってしまう・・・。

内容はディスクガイドではなく、アーティストを紹介しながらシーンについて詳しく語る歴史本とディスクガイドの丁度中間といった感じ。象徴的なシングルやアルバムについてはしっかり解説されるため、ガイドとしても全然活用できると思う。以下公式のプレイリスト。

(公式ってことでかなり簡略化されています。自分で文中に出てきた曲をプレイリストにまとめていったらなんと300曲近くに・・・)

当時マッドチェスターに関わった、もしくは前後に活動していたり、影響力の強かったものをかなりの数まとめていて、結果的にパンク〜ポストパンク/ニューウェーブやネオサイケ、後のシューゲイザーやブリットポップといった近隣ジャンルにも触れることになる。また起爆剤となったヒップホップやアシッドハウスは勿論、シェフィールドのFONとの繋がりや後のWarp Recordsへの架け橋もある。

New OrderやThe Smithsといったマンチェスターにいた面々は勿論、Happy MondaysやStone Roses、808 Stateといったシーン内のアーティストからスタートしていき、そういった有名どころと変わらぬ熱量、文章量で名前すら知らなかったバンドが次々語られていくのは中々にすごい。とにかく自由で創作意欲が満ちていた時代だったことがよくわかるし、同時にメジャーシーンも大きく動き出していて、いかにもハピマン~ローゼズな二番煎じを狙ったようなインディーバンドがたくさん現れては消えていったことがわかってきて、相対的にThe VerveやCharatansといったブリットポップへと繋がるバンド達のオリジナリティというか強度が浮き上がってくる(彼らのコーナーもちゃんとある)。またWhat? NoiseやNorthsideのような普段あまり名前を見ないアーティストも何度か引き合いに出されるのだが、あまりにも自然で、リアタイならではの視点があるであろうことが伝わってくるのも良かった。

(あとはFactoryを代表するA Certain Ratioがマッドチェスターでこんなに存在感を発揮していたことなども初めて知った。名文です。)

(マンチェと言えば・・・なThe Fallに関する当時のシーンとの距離感もとても新鮮で面白かったです。)

中盤以降出てくるのだが、個人的に面白いなと思ったのはJesus JonesとかEMFとかMeat Beat ManifestとかThe Wonder Staffを、マッドチェスターとは違ったブレイクビーツ・ロックの系譜として取り上げていたこと。ちゃんと対抗した流れがあったことも初めて知ったし、ここからProdigyとかに繋がっていくんだなぁ。オリジネイターとなるPop Will Eat ItselfがUSヒップホップに影響を受けてああなったっていう流れも解説されていて、AutechreやNightmare On Waxのメンバーが80年代にB-Boyだった事実と繋がってくるし、Warpの系譜ともパラレルの関係にあるだろう。Warpといえばシェフィールドだし、同地で活動したCabaret Voltaireがマッドチェスターに接近した次の作品がIDMだったり、Sweet Exorcist名義でWarp入りしていた事実も興味深い。こちらもしっかり紹介されている。

(めちゃくちゃ良い。A Certain Ratio然り、マッドチェスターの括りで聞いたことのなかったアーティストのそういった一面をたくさん知れるのが良かったです。)

ヒップホップにフィーチャーしたページもあり、UKでは元祖でもあるColdcutは後にNinja TuneとしてWarpと並んでシーンを盛り上げていく。KLFと、あとPrimal Screamとの共演でも知られるThe Orbを中心にしたディープ・ハウスのコーナーとか(レイヴの対としてのチル=アンビエントだった)、あとは時代的に最重要とも言えるDJ/リミキサーであるポール・オークンフォールド、そしてアンドリュー・ウェザオールとテリー・ファーリーといったボーイズ・オウン関連も特集していて、とくにこの辺は音源=アルバム形態で残りづらいし、クラブでは非常に重要だったであろうリミックスワークをまとめていて、資料としてあとで見返すのに重宝するだろう。他にもよく使われていたライブ会場を紹介したり、プレイリスト文化がなかった当時にシーンを知るために重要だったコンピレーションの特集もあったり、筆者オリジナルの年表やレーベル特集、マンチェスターのミュージシャンの年齢や世代を並べていく企画は個の色が見えて良い。本当にめちゃくちゃ充実している。

(ウェザオールとオークンフォールドによるリミックス。当時はハシエンダなどでバンドの前座にDJがあるのが当たり前だったのもシーンの色を表してますね。)

あとはマンチェ以外の盛り上がりの記録も結構やってくれていて、Primal ScreamやMy Bloody Valentineといったクリエイションは勿論、ネオサイケ~シューゲイザーの流れとか、ロンドンシーンでのBelovedや初期Blur然り、みんなダンスに寄っていく部分とか、ぼんやり共通した60sサイケリバイバルの流れとか、なんとなく繋がりを察していた巨大なネットワークの点と点を繋いでいく。あとは80sポップの大御所がマッドチェスターの中でどんな音楽をやっていたかって視点もかなり多くて面白い。トリップホップにもちゃんと触れていて、全体的にSoul II Soulはよく名前が出てくるのだが、ルーツとしてThe Wild BunchがSoul II SoulとMassive Attackに分かれていく流れから切り込んでいく。リミックスの重要性とか、トリップホップやディープ・ハウス、そしてIDMといった流れは、90sのUSにおけるポストロックの潮流と個人的に重ねて聞ける部分もあった。

(ウェザオールがどれほどシーンに影響を与えていたか。サブスクにはありませんが、My Bloody ValentineのSoonのウェザオールリミックスも当時めちゃくちゃヒットしたようです。)

結局、当事者達からしたらジャンルというカテゴリがどれくらい無意味だったかがよくわかる。それはPrimal ScreamがScreamadelicaで証明したことでもあるし、クラブとライブハウスの境界が全くなかった時代であり、レイヴも、シューゲイザーもネオサイケも、ポストパンク以降全てが一緒くたになった混沌の時代がマッドチェスターだったんだと思う。そしてブリットポップへ・・・。

 

 


 

以上でした。本当におすすめです。ちょっと高いですが内容とボリューム、力の入った装丁を考えると全然お釣りがくると思います。何度も言いますが、一人で書いた重みがたっぷり詰まっていて、書きまくってる感じがすごくするんですよね。比べられるレベルではないですが、自分自身割と近い理由でZINEを一人で作ったというのもあってこの純度の強さにとても共感してしまいます。あとはリアルタイマー故、思い込みによっての事実関係の誤認がないよう各アーティストにチャート情報を俯瞰的な視点として必ず添えてくれているのも完璧だなと思いました。

著者の横田勇司は先日ブラック・マシン・ミュージックやテクノボンで知られる野田努とタッグを組み、「UKインディ・ロック入門──ポスト・パンク、ギター・ポップ、スカとダブ編」といった本も出しています。まだ読み始めれてはないですが、とにかく楽しみでしょうがないです。以下いくつか関連記事や本、本文で触れたものについて並べておきます。

kusodekaihug2.hatenablog.com

レイヴ・カルチャーはアシッドハウスとはどのように勃発したのか・・・というのがまとめられた歴史本。ディスクガイド的側面はあんまりないんですが、時代背景を知るのに役立ちます。

最後に、ちょっとだけ触れた野田努について。テクノボンもブラック・マシン・ミュージックも今作と関連性が強いのと、UKロックに興味がなくても純粋な音楽本としておすすめです。UKのレイヴ・カルチャーはデトロイト・テクノやシカゴ・ハウスの影響が強く、今作もリミックスでデトロイト人脈が度々登場します。最近ブラック・マシン・ミュージックは再発されたようです。こちらはブンゲイブ・ケイオンガクブでも解説されています。

ystmokzk.hatenablog.jp

(unknown) bandcamp label guidebook

(unknown) bandcamp label guidebookというディスクガイドの感想を書きました。多数のゲストを迎えて作られた本で、一部分ですが執筆者として自分も参加しています。


 

 

(unknown) bandcamp label guidebook

(unknown) bandcamp label guidebookはmuimix名義でいくつかのディスクガイドをリリースしているにんず氏による、「Bandcampを中心に活動する」「あまり知られていない」レーベルをテーマに作られたディスクガイド。販売及び詳細についてのページはこちら。

氏はこれまでレーベルに焦点を絞ったディスクガイドを出しているけど、今回は一つのレーベルではなく、幅広いジャンルのものを多数の寄稿者に協力してもらう形で、ディスクレビューといくつかのコラム+Shuta Hiraki名義で活動するよろすず氏のインタビューを収録(熱すぎる!)。実際に読むとわかるんだけど気合がすごすぎる。まず、そもそもレーベルをピックアップする時点から規模が膨大で、discogsを参照するにしても条件の設定から難しい・・・じゃあどうやってデータをリストアップしていったのか、大きなバックアップがあったわけでもなく、完全な個人による奮闘の記録そのものがコラムで纏められていて驚愕だった。きっと依頼する人に合わせて取捨選択する戦いもあっただろう。そういうことを想像しながら、チョイスそのものを見るのが面白かった。

執筆者一覧(BOOTHのページより拝借)

基本的にゲストの執筆者がレーベル単位で作品を聴き、レーベルの解説といくつかのディスクレビューを掲載。アルバムにはEssential/Interesting/Favoriteという三つのカテゴリと、それぞれジャンルのタグを自由に設定できるのも遊び心があり、執筆者の個性が出るためゲストを呼んだ意味が大いにある。

ジャケットも「Bandcampを中心に活動する」「あまり知られていない」レーベルということで、ほぼ自主製作になるだろうし、メジャーが関わった作品群とはまた違う、DIYっぽいジャケットがずらっと並んでいる。やってるジャンルは各々違っても、確かに近い質感があり、パラパラとめくるだけでビジュアルに惹かれる。俗っぽい言葉を使うと"おしゃれ"で"かわいい"見た目になってると思う。表紙もにんず氏による自作だというのも驚き。めちゃくちゃ合っている。

各レーベルの解説が毎回とても熱い。小規模のレーベルということはそれはつまり純粋に音楽やアートが好きな人達が集まった、小さなコミュニティがそれぞれ紡いできた生活や、何を残したかったのか、何が好きだったのかを勝手に記録する旅路であり、遠い地の、それぞれの物語を想像してしまう。本文中の街氏の寄稿から一部分を引用すると、"シーンが存在しない場所で、どのようにジャンルを持続させるか"という気概が伝わってくるものから、自然体で好きなことをただ記録していったようなものまで幅広くある。とにかく勇気をもらえるというか、これを見た自分も何かをやりたくなってしまう本だった。

またBandcamp限定且つもう活動していないところがほとんどのため、サブスクにないものが多く、気になった作品を聴くためにレーベルページに飛んで作品をDL→iTunesに登録して聞くっていう一手間挟むこと自体が、かつてブログを読んで気になったCDを探しにショップに繰り出したあの頃のわくわくをフラッシュバックした。こんな当たり前だった行動すらも、もう懐かしくなっている。

ちなみに自分が担当させてもらったMt.Home ArtsはP50~に掲載。10年代以降活動していたインディーロックやインディーポップが多く、フィジカル(主にカセット)のリリースやイベントを重視したレーベルで自分のUSインディー趣味と合致する。90年代にMatadorやMergeがあって、Elephant 6があって、ブルックリンがあって、Alex GやCloud Nothingsが出てきてUSインディーとベッドルームが結びついた10年代前半、そして後に、Snail Mailのようなアーティストが出てくるまでを繋ぎ止めてくれたようなレーベルだと思う。きっとこういうコミュニティってたくさんあっただろうし、2020年前後のインディーロックへ、ちゃんとそのバトンは渡されているように思う。結構書いてるので興味がある方は是非!

寄稿者が多数いるディスクガイドあるあるではあるけど、それぞれどういった人なのか、レーベル解説の切り口や設定されたタグを見ながら音楽趣向を想像してしまう。どんな音楽リスナーなのか、普段どういったものを聞いてる方なのか、何をしてる方なのか、何度も何度も最後の一覧ページを見に行ってしまう。

あとはShuta Hirakiとしても活動するよろすず氏のインタビュー、個人的にライターとして強く影響を受けた方で、limboという自分のZINE(limbo 曙橋作品集/私的アルビニ名盤選 - 朱莉TeenageRiot)に収録した「スロウコア/サッドコアから聞くアルビニ録音」は、元々よろすず氏がTURNに寄稿した「スティーヴ・アルビニとジャズ ~シカゴ中の蔓を辿って~」の自分版を作りたいという動機があった。

あとはよろすず氏はGrace Cathedral Parkのライナーノーツも書いていてこれも名文(すぎる、と言ってもいいくらいのものだ)。Grace Cathedral Parkのコンポーザーであるando氏はShuta Hirakiとの共作も発表しているのだが、自分自身ando氏と昨年一緒にフィールドレコーディング作品をコンピで発表(Pot-pourriのsawawo氏も参加)するなど、ちょっとした共通項があり、直接的な繋がりがあるわけではないけど、近い縁があったり、こうやって同誌面に名前が並ぶことがやっぱりちょっとだけ、というか結構嬉しかったりする。

またこれは、本当に個人的な余談ではあるんだけど、今回寄稿者の一人である極東極楽氏は自分が音楽ブログを作る以前から大変参考にさせていただいているディガーである。90sポストハードコアを辿るきっかけになったとあるブログも氏から教えていただいたし(あまりにも朱莉TeenageRiotの元ネタすぎるため詳細は伏せる)、自分がMeshuggahを聴くように(聴けるように・・・)なったのも氏のおかげだ。氏がいくつか寄稿したLonely Voyageというレーベルはマスロック色が強く、にんず氏の提案だと思うがそのチョイスそのものに笑顔になった。

あと先述した街氏も一人の音楽リスナー/ディガーとしていつもレコメンドを参考にさせてもらっていて、エモについて語るなら氏以外にいないだろうとすら思っていた。というわけで現代版エモダイアリー(90sにあったエモというジャンルを確立させるにあたって大きく貢献した名コンピ)といっても差し支えないRealoEmoの文章を担当したことは本当に大きな意味がある。名文すぎ。このコラボレーションを実現させてくれたという時点でにんず氏に無限の感謝が沸いてくる。RealoEmoもエピソードだけでほろりとくるような素晴らしいアーカイブであり、完全に初見だったけど知れたこと自体が嬉しい。

あとはすごかった、いやすごすぎて圧倒されたのが犬山昇氏によるOwn Recordsで、もうレコメンドの枠を超え、レーベルをテーマにした一つのエッセイとして読めるくらい面白い。夢中になって読んでしまった。たった数ページの読み終えたときの充足感が凄まじかった。著者プロフィールを見に行ったら普段は小説を書いている方とのことで、勝手に活動記録を貼らせていただきます。

あとは絶年氏が担当したPilot、にんず氏本人が担当したMikrokleinstgartenは、自分がこれまで追ってきたシーンとは全く違った地で歴史を紡いだインディーロックの重要な記録であり、完全に初見だけどすごく惹かれた。こういった未知のレーベルの背景を個人の視点で切り取ってくれ、且つレコメンドやカテゴライズが見れるのは本当にありがたい。あとはPC一つで完結できる、という点で宅録やDIYと相性がいいのもあると思うけど、エクスぺリメンタルな電子音楽やクラブ・ミュージックをメインにしたレーベルの扱いも多い。この辺に関してはニューエイジ・ミュージック・ディスクガイドの著者及びSiren for Charlotteというレーベルの運営で知られる門脇さん(猫街まろん氏)も参加していて、氏が普段から公開している、アーカイブとしても濃密なプレイリスト群は、未知の音楽を聴きたくなったときによく活用させてもらっていて、そういった活動と本書のコンセプトの合致具合もすごく良いなと思った。

 

 


 

以上です。本当にとても楽しい本でした。参加する機会をいただけたことを光栄に思います。色んな人に手に取ってほしい。最後ににんずさん本人による本書のブログ記事を貼っておきます。文フリ当日は自分も参加していて、直接ご挨拶できたのもいい思い出でした。

また、氏がかつて制作した別のディスクガイドも最近web版として公開されています。実は自分が初めて参加した文フリで買った本でもあり、自分でZINEを作るときも、勝手に参考にさせてもらっていたものでもあります。

Deftones 2026.05.18(月) 東京ガーデンシアター / アルバム所感

Deftones来日。行ってきたので感想&これまでブログ内で触れたアルバムの感想を再編した、ライブレポ+バンドといくつかのスタジオアルバムについて語っていく記事です。

 


 

 

単独来日としては15年ぶりらしい。Deftonesに関しては今になって色々リバイバルが起きているという事実を各所で観測していて、Tiktok世代からの再発見だったりここ最近あった最新インタビューでも近いことが語られていたり(デフコアという単語を始めて知ったけどそれは間違いなく一つの現象だよ、と感動した)、昨今海外のシューゲイザーシーンではもう主流と言っても過言ではないグランジやポストハードコアやメタルの影響を存分に含んだヘヴィシューゲイズのルーツとなっていたりと、実際会場に多くの若手ファンがいる事実からもそれは現実に起きていることなんだなぁというのを肌で体感できた。

自分自身ニューメタル自体にはちょっと苦手意識を持ってた時期が長かった。ただグランジを聴き続ける中でAlice In Chainsにハマり、枯れた/陰鬱なヘヴィロック的な音像を求める中でKornやDeftonesも気づいたら夢中になって聞くようになった。今では同じ括りで語られていたことにどうしても時代を感じてしまうが、どちらもThe Cureがルーツにある気がしたのが良かったし、あとはDischordやTouch and Goを辿る中でポストハードコアに惹かれていたのもあり、DeftonesがJawboxをカバーしていたという事実も大きかった。これがファーストコンタクトだった。それが丁度10年代後半で、初リアルタイムのDeftones作品がOhmsだったことを覚えている。以前別記事でも語ったが、Farとはサクラメントのシーンで密接に繋がっていて、シンコーから出ているエモのディスクガイドではDeftonesが登場したりもして、チューニングを落としてヘヴィになったエモとして聞いてるファンも多いのではないかと思う。自分も入り口はそんなんだった。

Deftonesに関してはこのブログで取り上げた単発記事がなく、自分がどこから入った=どのように聴いているか指標があった方がいいかなと思ったため触れさせてもらった。メタルというよりはやっぱりオルタナティヴ・ロックの一環として聞いてる側面が割と強い。当時はオルタナやエモとして聞くにはヘヴィな印象がありすぎてインディーロックユーザーは自然に聴くバンドではなかったのではないかと思うし、逆にメタル側からはまずニューメタルという時点で往年のファンとの分断や、ゴス/ニューウェーブと通じる耽美な音像、チノ・モレノの穏やかな歌唱からも距離があるファンが多かったのではないかと思うし、オリジナル故に狭間にいたのではないかと思う。逆にそういった独自のミクスチャー感覚が、今のサブスク以降のアーカイブ世代で壁が取っ払われた現状はすごく魅力的に映り、フラットな目線で再ブレイクしているのではないかと、自分自身後追いの視点として強く実感してしまう。


 

ライブ感想。東京ガーデンシアターって初めて行ったけど8000人キャパのアリーナ規模で完売したという事実もすごい。併設されているイオンの店内でDeftonesが流れているのも異質な空間すぎてびっくりした。あんまりできない体験。以下セトリをコピーしたプレイリスト。

開幕入場からの即Be Quiet and Drive (Far Away)の会場の盛り上がりは一生忘れないだろう。最初イントロの音がかなり小さくメンバー入場による歓声でほぼ何も聞こえなかったのだが、数秒後突然爆発するみたいに音量がアップ(普通にトラブルだったらしい)、同時に熱狂するオーディエンスは流石に脳が沸騰するかと思うくらい興奮した。何よりステージを跳ねまわる、MVでの動きも想起してしまうような躍動感あふれるチノ・モレノのパフォーマンスが熱い。フロントマンとしての圧倒的な存在感、ゴシックでダークな瞬間もあれば野生味のあるスポーティな瞬間も多数ある。歌というか声自体が一つのリフでありウワモノであり、放り捨てるように単発のメロディを配置するような独自のボーカルそのものが、チノの全身で歌うような体の動きとリンクしていて視覚的にグルーヴがわかりやすく、一つのスタイルとして音楽的に直結してるものを感じた。音源がしっくりこない人も是非肉眼で見てほしい、ライブ動画で既存楽曲を見るだけでも発見が多いバンドだと思う。

Swerve City→Diamond Eyesで改めてこの時期(Diamond Eyes→Koi No Yokan)のスタジアム・ロック然とした壮大で広がりのあるサウンド、伸びのあるボーカルといった大きな会場に対応した楽曲のスケール感はバンドの歩みとライブの規模が呼応しているのを思い知る。歪みまくった上下するヘヴィ・リフの反復と変化し続けるリズム、反復と停滞の中で"爆発"という言葉ではしっくりこない、引き留めていた水流を一斉に解放するような流麗なチノのボーカルが到達点として置かれていて、躍動感と恍惚としたトリップが同時に訪れる独特の良さがある。バンドの曲の骨子となる円環するようなドラムはカッチリとリズムをはめ込むのではなく、少しもたつきを残すような、音の残留感が次のセクションに引き継がれ循環するようなグルーヴの妙があり、"ドロッとした"という表現を使いたくなる。この心地の良い揺らぎがチノのボーカリゼーションと相まってバンドの伸び縮みするようなグルーヴの根幹にあるものではないかとすら思う。

Digital Bathは個人的に最も好きな曲だったため普通に号泣。ゴスの名曲として聴いている。動き回っていたチノがギターボーカルに転ずるのも良かった。TempestやBeauty Schoolでも見られる、ヘヴィギターと轟音の振動で体を揺らした直後に突然アンビエント風味のシンセとクリーントーンのギターでThe CureやCocteau Twinsみたいな静の瞬間が挿入されるのは、まるでマグマと水風呂を行き来するかのような中毒性がある。この両極端を同じものとしてシームレスに繋ぎ止めるのはやっぱり伸びやかなチノのボーカルで、本当に歌が受け持つグルーヴの大きさを実感するライブだった。

あとは過去の名ナンバーをいくつも繰り出した後に演奏されたmy mind is a mountainに圧倒される。最新曲であるが故に他の楽曲と比べると聞いてきた時間は少ない=あまり思い入れは強くないはずなのに、それでも一番感動した場面はここだったかもしれない。当たり前だけど最新曲こそ今のメンバー、今の状態で演奏されることを前提としているだろうし、昨年のスマパン来日でも思ったけど、現行の最新ナンバーが一番フレッシュでバンドに合っている。Holy Mountainを引用したVJもクールだった。というかVJがすごすぎた。Changeでの太陽が昇ってくるような演出やSextapeでの海のシーンなど、忘れられない部分が多数ある、写真がないため伝えるのが難しいがかなりドラッギーで、生演奏での揺れるグルーヴ感も含め、バンドにサイケデリックな質感を加える重要な要素だったと思う。

本当に最高だったし、自分でもこんなにDeftonesが好きだったのかと、というかパフォーマンスとびっくりするようなファンの熱量、オーディエンスを目の当たりにして自分自身かなり喰らってしまい、当たり前だけど今が人生で一番Deftonesが好きな状態である。一生聴くだろう。ちなみに一番好きなアルバムであるDeftones(セルフタイトル)は1曲もやらなかった。帰りにLPを買った。

以下関連記事と、別記事で触れたDeftonesのいくつかのアルバム所感をアーカイブとして残しておく。

Deftones - Around the Fur(1998)

Deftonesはメタルだけでなくエモ/ポストハードコア、ゴスやニューウェーブ、シューゲイザーとしての側面もあり独自のポジションを築き上げ、メタルからオルタナシーンまで幅広くリスペクトされているバンド。ケヴィン・シールズは最近のインタビューでは現行シューゲイズの大きな影響元として彼らの名前を挙げていた。2ndである今作はメタルらしいおどろおどろしいヘヴィネスと、M6のBe Quiet and Drive(Far Away)で見られる耽美な轟音オルタナが共存。フロントマンのチノ・モレノはHumの大ファンでリスペクトを度々語っているし、Be Quiet and Drive(Far Away)はHumのStarsとは兄弟のような曲だと思う。そしてM1のMy Own Summer (Shove It)やM2のLhabia、表題曲のM5といったザクザクとしたリフ主体の曲はかなりメタリックで、当時Kornらと同じくニューメタルとして解釈されたのも頷けるが、Smashing PumpkinsやAlice In Chainsといったグランジも強烈にフラッシュバックしてしまう。またDeftonesはCoversという2011年のコンピでJapanやThe Smithsをカバーしていたり、インタビューでCocteau Twinsへの愛を語っていて、ポストパンク~ニューウェーブやゴスからの影響も強くあり、今作でも近いものを見出せる。チノ・モレノ自体がSmashing Pumpkinsを敬愛していて、2018年のアニバーサリーライブではビリー・コーガンと共にBodiesをカバーしたりもしているが(選曲が最高)、直接的なリスペクトだけでなく、ビリー・コーガンが80sのゴスやポストパンク/ニューウェーブ、主にThe Cureを大きなルーツとしているように、フロントマン二人の根本から共通したものがあったはず。またカバーアルバムにはJawboxのSavoryもあり、Dischord系譜のポストハードコアの遺伝子があることもよくわかる(それ故にエモを感じることも説得力がある)。度々共演した同郷サクラメントの盟友Farも90sエモ~ポストハードコアを代表するバンドで、Farのステージにチノ・モレノが参加して一緒にJawboxをカバーしていたりする。

実際のライブ映像。録音の粗さによるデッドな音像も魅力となった、自分にとっては好きなバンドと好きなバンドと好きなバンドの曲の交錯でとにかく最高(というか自分は元々Jawboxの大ファンで、SavoryのカバーからDeftonesを初めて聞いた)。Farは音楽性自体がDeftonesと近いのだが、Deftonesがエモ寄りのメタルだとしたらFarはギリギリ境界線の向こう側、メタル寄りのエモといった作風で聞き比べるのも面白い。ジャンルは別だがグラスゴーにおけるArab StrapとMogwaiの関係性に似ていると思う。またSavory自体のじわじわとボルテージを上げる停滞感そのものがDeftonesと近しいものを感じれるし、チノ・モレノが好きなのもよくわかってしまう。

 

Deftonesはこの後2000年にWhite Ponyというヒット作を出し、それこそBe Quiet and Drive(Far Away)的なシューゲイズもしくはインディーロックのラインからアクセスしやすそうな曲が多く、DJ/キーボードのフランク・デルガドが加入したというのもあってメロウな浮遊感も増した。チノ・モレノのオルタナ趣向が表出した作品だと思っていて、ヘヴィさを維持したまま簡単にメタルとは括れない、それこそThe CureやCocteau Twinsのラインでもしっくりきてしまう代表作。とくにDigital Bathは個人的にバンド内で最も好きな曲で、隙間を見せるエフェクティヴなプレイとチノの耽美なボーカルを前面に押し出したThe Cureの系譜としても聞ける曲であり、円を描くようなドラムのグルーヴ感、流れるように轟音を垂れ流す美しいバーストといったバンドの醍醐味が詰まっている。

それ以降もたくさんアルバムを出しててほんとにどれも名盤でいくらでも語れてしまうけど、ゴスやメロウなシューゲイザーという方向性が一番強く出たのは2006年のSaturday Night Wristで、結構歌メロの存在感が強く、M5のMeinはちょっとSmashing Pumpkinsを想起した。M6のU,U,D,D,L,R,L,R,A,B,Select,StartはSlint~Mogwaiラインのポストロックにまで接近。個人的にとても好きなアルバムで、M1のHole In The Earthは浮遊感と展開の多いヘヴィロックが完璧に共存しているし、M3のBewareはリフではなく厚みのあるバンドサウンド、シリアスな歌メロでヘヴィさを再現。M4のCherry Wavesは美メロ路線屈指の名曲。そしてセルジオ・ベガが加入した2010年のDiamond Eyesは轟音とギターリフが一体化したメタルともオルタナとも言い切れない集大成とも言える作品。今では代表曲となったSextapeを聞いたときは少しスマパンがよぎったりもした。(Smashing Pumpkinsとエモ / Hum~Deftonesの系譜 2025-11-21 / 元記事ではチノ・モレノのサイドプロジェクトであるTeam Sleepについても書いている)

Deftones - private music(2025)

最高。先行シングルにぶっ飛ばされてリリースが待ちきれなかったDeftones待望の新アルバム。比較的電子音の要素も多かった前作とは対照的に、キャリアを通して醸造されたバンドのエネルギーに満ち溢れた集大成&現行アップデート版として完璧な一枚。M1のmy mind is a mountainからヘヴィでソリッド、面で押し寄せる"硬くて広い"縦横無尽なギターの波とダイナミックなリズム隊にずっと圧倒されてしまう。シャウトと耽美なボーカルがシームレスに行き来するチノ・モレノのボーカリゼーションも節が効いてて完璧。シンプルにリフがナイスなM4のinfiniti sourceはガチの名曲。ケヴィン・シールズも言及してたけど昨今ムーヴメントになっているヘヴィシューゲイズのルーツとして申し分なく、M6のcxyはボスの貫禄たっぷり。Deftonesを聴いているとこんなに巨大でこんなに繊細なバンドサウンドってあるのかと思ってしまう。2025年はAve Mujicaのライブ→Deftones新譜→Smashing Pumpkins来日という流れが個人的にあった。(年間ベスト2025 2026-02-19)

Deftones - Deftones(2003)

新規の追記分。2003年にリリースされたセルフタイトルにして4枚目のアルバム。2ndで見せたおどろおどろしいヘヴィ・リフの循環と3rdにある電子音を駆使した幻想的な世界観が溶け合った、バンド名を冠するこの時点での集大成として申し分ない作品。M1のHexagramから現在のヘヴィシューゲイズと完全に直通できる硬くて質量のある、それでいて広がりのある轟音からリフを加速させるメタリックなパートへとシームレスに繋ぐ。バンドのいいとこどりでしかない。M2のNeedles and Pinsは2nd時代の鋭利なナンバーを3rdのツルっとしたサウンドで再編したような色があり、Digital BathやMy Own Summerを引き継いだ円環するようなグルーヴ感が全面に出ている。M3のMinervaはドリームポップ/シューゲイズからアクセスしやすい壮大な名曲。MVも良い。この開始の3曲から一気に間口を広げてる感じがするし、音楽性のバリエーションを増やしながら一本の型に凝縮、それでいて美メロ且つ低音はこれまで以上に強調されたヘヴィさも併せ持つ、個人的にとても好きな作品。M7のBattle-axeは静と動の対比でわかりやすいカタルシスを表現しながら、ボーカルはどこか完全に開放し切らない、じわじわ締め付けるようなバンドの妙味が効いている。M9のBloody Capeは1st~2ndにあったヘヴィネスに重さを損ねることなく轟音が纏わりついた、一つのスタンダードであるとすら思う。

Deftones - Koi No Yokan(2012)

追記分その2。ライブ前に一通りアルバムを聴き返す中で最もハマった作品かも。開幕Swerve Cityはガッといきなり重力が上から迫ってくるような、純粋に音自体に物量を感じるイントロから冒頭のヘヴィさを滑らかに開放する歌によってスタジアムロックに対応可能なスケールの広さを持った名曲。前作であるDiamond Eyesと並んで今回のライブでもとくに演奏されたアルバム。Diamond Eyesと同じくゴスやシューゲイズを完全に内面化した状態、ではあるけど前作ほどヘヴィ・ロック然とはしてない印象。リフの動きで魅せるというより、もっと音のテクスチャを重ねて重厚感を出していくような、空間的なイメージが強くある作品。M5のEntombedはクリーントーンのギターの絡みが美しいインディーロックやドリームポップと接続可能、M7のTempestも近い路線だがちょっと歌がマッシブすぎる、このバランスが良い。静と動の対比がドラマティックな曲が多く、先の2曲にM8のGauzeなど、結構バンドのキャリア内でも叙情を見せる歌メロの存在感が強いアルバム。今聞くと2020年のOhmsは前作であるGoreよりこっちの方が近いように感じた。

Deftones - Covers(2011)

ルーツを辿る上でも相当重要なカバー集コンピ。先述したJawboxやDrive Like Jehuといった90sポストハードコアとの接続、The CureやThe SmithsにSadeといった80sのUKからの影響は勿論、個人的に目を引くのはJapanのGhosts。原曲が収録されたTin Drumは自分のオールタイムベストとして欠かせない大名盤で思い入れが相当あるため嬉しい繋がりである。メタルバンドとして出てきたDeftonesの音楽性の広さをそのまま答え合わせするような圧巻の並びはいつ見ても楽しい。The Smithsのカバーなどは意外と今でもライブのレパートリーにあったりする。

 

 


以上でした。最後にいくつかリンクを貼って終わります。とくにs.h.i.さんのNote記事は最新アルバムのレビューを掲げつつバンドの楽曲やアルバムの構造について踏み込んだキャリアを総括するもので、且つあんまり今まで見たことない切り口で語られていてものすごく面白かったです。

冒頭で触れた、オフィシャルのインタビュー記事と、現在起きているリバイバルについて纏められたNote記事。

とても参考になるディスコグラフィ総括。

ジョニー・マー自伝 ザ・スミスとギターと僕の音楽

シンコーから出ているジョニー・マー自伝の感想を書きました。


 

 

ジョニー・マー自伝 ザ・スミスとギターと僕の音楽

まず自分にとってジョニー・マーと言えば?The SmithsよりModest MouseやCribsといったバンドのギタリストであり、そしてOGRE YOU ASSHOLEのファンであり、来日時クッキーシーンの記事で対談をし、お互いUSインディーやCANの話などで意気投合していたというイメージがとてもデカい。名前を最初に知ったのはOasis経由、たぶんノエル・ギャラガーとの友情がきっかけだけど、ここは割と同じ人が多いんじゃないかと思う。あとは世代的に相対性理論のギターの元ネタとして引き合いに出されることが多く、そこからThe Smithsを聞いた。

The Smithsに関しては好きになったのが結構遅く、ポストパンクを掘り始めた頃、ネオアコ的に聞けるという話は聞きつつも少し違うなと思っていた。C86でまた影響力の大きさを知った。自分は、そこまでThe Smithsのファンではないと思う。好きだけど、例えば復活して来日ライブをやりますってなっても積極的に行こうとはしないだろう。でも一年に何度かはThis Charming ManのMVを見返す時間が絶対あるし、思い出したように帰りの車で1stやHatful of Hollowをかける日がある。友人と交換するプレイリストに頻繁に選曲するくらい好きな曲も多い。ただ細かいバイオグラフィや、メンバーの変遷や経歴といった情報はあまり把握していない。解散後のメンバーの動向を熱心に追いかけたわけでもない。

(一番好きな曲。Hatful of Hollowは何度も聴きました。How Soon Is Now?も入ってたし・・・)

では何故、本書を手に取ったかと言われると、シンプルに自分が聞いたり資料を読んだり映画を見たりで慣れ親しんだ当時のシーンについて、当事者の新しい視点をもらえるのではないかと思ったから。パンクやポストパンクの激動の時代を切り取った一つのドキュメンタリーとして、そしてThe Smiths解散後、マッドチェスターからブリットポップの時代にどうしていたのか、Modest MouseでUSインディーに重心を移したり、そのまま(個人的にUSインディーっぽい要素が多分に含まれていたと思っている)The Cribsに加入したり、経緯そのものが気になるところが多数ある。自分は元々USインディーキッズのためThere Is a LightよりもDashboardという人間だし、どうしてもそこが読みたかった。そしてその点に関しては、完璧だ。同じ部分に興味を持った人は全員読むべき本だと思う。とくにModest Mouseがこんなにも、ジョニー・マーの中で大きなバンドだと知れたのはよかったし、全体の尺から見ると短いがとても濃密。バンドの一時代を切り抜いた記録として生々しく、楽しく読めた章だった。

こうやってざっくり書くだけでも、Ths Smithsを始めた片割れでありソロシンガーとして世界に飛び立っていったモリッシーは人気バンドの元フロントマンとしてめちゃくちゃそれっぽいキャリアを積んでる気がするが、ジョニー・マーは意外とちゃんと時代や文脈に理解が無いと背景が想像しにくいキャリアではないかと思う。今作がバイブルになってくれるだろう。あとは個人的にボビー・ギレスピーの自伝を読んだり、24アワーをおよそ10年ぶりに見返したりしてマンチェに関する話をもっと知りたいと思ってたのもあった。最高の生き証人だしね。元々評判良かったのも知ってたし、そういう機運が高まってた頃に、偶然本屋で見かけてしまったから・・・。

感想。まず本当にギターが好きすぎておもろい。子供の頃からもう運命の出会いみたいな書かれ方をしてるし、ずっとしがみついている。そして自覚的には書かれてないけど、明らかに若い頃からギターがうますぎて、各所から一目置かれていて話題の人物だったことが色んな描写の節々から伝わってくる(全然The Smiths以前からトニー・ウィルソンにFactoryのバンドで弾かない?と声を掛けられている)。The Smiths編はモリッシーとの出会いや友情や曲が作られていく経緯が割とガンガン進むんだけど、ここがやっぱり楽しい。熱い。やっぱりバンド・マジックがあるよね。イングランドイズマインでは見れなかった部分だ。そして崩壊へ。辛い。22歳でギター作曲のみならず、あんな巨大になったバンドのマネジメント及びプロデュースをやっていたのめちゃかわいそうだなって思うけど、周囲のメンバーも全員若いから誰も尊重できないまま崩壊してった感じがする。あらゆる手続きやメディアに追われ、ただステージでギターを弾いてたいだけだったのにっていう本心が悲痛の叫びすぎる。それこそなんとかしてラフ・トレードから出せないかと奮闘していた頃から見てただけに・・・。モリッシーはモリッシーで突然時代の代弁者として祭り上げられ、各所メディアでアイコンとしての露出を全て受け持っていた心労がすごかったことがマー視点でも伝わってくるし、若い二人がそれらを受け止める方法を、キャパシティを広げる手段を考えられる状態ではなかったのだと思う。しかしその刹那的な、イノセントなバンドの煌めきがThe SmihtsをThe Smithsにしていたことも、同時によくわかってしまう。

解散後に各所でギターをのびのびやっている時期は見ていて救われるんだけど、でもThe Smithsの再結成を求めるメディアからは大御所ミュージシャンとコラボしまくるジョニー・マーが裏切者だって指をさされている事実は胸が痛い。全部誘われて参加しているだけだし、「ただステージでギターを弾いてたいだけだった」がやっと実現してる状態なだけにね。ビートルズ解散後に近い境遇だったポール・マッカートニーに相談をしたシーンもグッときた。それにしても引っ張りだこでこんなとこでやってたの?てのが死ぬほどあってすごい。今組むのがヒップな若者ギタリストとして、業界でも話題だったことがよくわかる・・・。

(あと普通にTalking Headsに参加してたの知らなかったんですが、Nakedの(Nothing But) Flowersという曲で、これがめちゃくちゃ良くてずっと聞いてました。)

The Theが実はThe Smithsの前からマット・ジョンソンとバンドをやる約束をしていた話も地味に熱い。あとかなり重要なのがバーニーと組んだElectronicで、今聞くと真っ向からマッドチェスターに乗っかった作風、というか一つの指標でHappy MondaysやStone Rosesと並んで重要なバンドとさえ思う。ElectronicをきっかけにPet Shop Boysとの交流が大きかったことも知ったし、なんならPet Shop Boysも割とマンチェスターのダンス・ムーヴメントと関連付けて聞けることに気づいた。モリッシーはマッドチェスターを批判していたらしいけど、マーの地元のシーンに寄り添う姿勢自体が二人の違いを如実に表していて、時代の代弁者として世界に飛び立っていたのがモリッシーだとしたら、ジョニー・マーはラフトレを起源に持つパンク以降のインディーロックとしてのThe Smithsを体現していたと思う。

実際マーはマンチェスターが大好きでThe Smithsの事情でロンドンに引っ越すことになった時は本当に嫌がっていた。インタビューでもそれがバンドの終わりの始まりだったと語っている。あとかなり愛妻家で10代の頃からずっと寄り添った彼女と結婚し子供が産まれ色々活動しながらも家庭をずっと大切にしている。これは本当に彼の活動を辿る上で避けることのできない大きなトピックだと思う。だってModest MouseやCribsの離脱も家庭があったから。

あと絶対に触れておきたい点として。Modest Mouseをやる前にアイザックと出会ったシーンやその後セッションをしてDashboardの原型ができていくとこは読んでて本当に興奮が止まらなかった。必見です。この曲にある「フロントガラスやダッシュボードがぶっ壊れてもラジオが鳴ってればOK」的な歌詞が本当に大好き。そしてこの歌詞に関して、ジョニー・マーの視点からアイザックを語るタームがあったこともグッときた。

最後にThe Cribsで好きな曲を一つ。We Share the Same Skiesはアルバム内でとくにジョニー・マー印が強い気がするけど、グラデーションみたいに重なってそれぞれリードの如くフレーズを絡ませるギターがとにかく最高。ほんのりとした緊張感と、いつもより影を落とした歌メロが良い。Ignore the Ignolandというアルバム内ではLast Year's Snowという曲もインディー・ギターが炸裂している。自分にとってはロックンロール・リバイバルだったCribsを、USインディーやThe Smithsの系譜として聞くための導線を作ってくれた人物がジョニー・マーだった。

 

 

 


 

 

以上でした。ボビー・ギレスピーの自伝にハマって以降の私的UKロックブームの一環として読んだことは否定できません。同時代を別視点で楽しめますからね。本当に面白かった、面白かったんですが、ジョニー・マーは若き日から苦悩はあれど普通に天才のサクセスストーリー的な側面があり、個人的には田舎でミュージシャンにもなれずにくすぶっていた時期が長かったボビー・ギレスピーの方が感情移入できたかなとも思います。ジョニー・マーはどんなに周りに振り回され、とんでもないことになっても、一緒に曲作った人達やレコード会社の人達に対して悪口が全然ない、全員をリスペクトしてるのがしっかり伝わってくるので本当に人が良いんだと思います。そういう意味でも、やっぱりちょっと遠い人に感じてしまうかも。

 

 

関連作品

関連作品か?いやそんなことはない、二人は別に交錯しないし・・・ただ個人的に同時に読むのはとても面白かったです。あとは兄弟記事とも言えるこちら

の中盤以降出てくるUKシーンに関する書籍や映画でも、同時代を多角的に語る、という意味では並べられるかと。

イングランド・イズ・マイン モリッシー,はじまりの物語

The Smithsの映画。モリッシー視点から見た結成前夜を描いた作品のためジョニー・マーはあまり出ませんが、映像化されたものを見ることで背景を想像しやすくなるという意味ではいいかもしれません。そういえばビリー・ダフィとマーの友情の話はあんまり自伝では語られてませんでした。

2026.3.29 (Sun)nest 30th Anniversary “オウガとにせんねん”(OGRE YOU ASSHOLE/NISENNENMONDAI)

渋谷にあるSpotify O-nestの30周年記念イベントでOGRE YOU ASSHOLEとNISENNENMONDAIが対バンするということで行ってきました。

OGER YOU ASSHOLEとNISENNENMONDAIに関しては出自も辿った音楽性もまるで違う二組だと思いますが、最初は比較的インディーロックやオルタナと区分されるジャンルと近いものをやっていたこと、ポストパンクのスタイルを流用するのではなく、サウンドの特徴の一つとして血肉にしていたこと、そしてどちらも2010年以降"ロックバンド"的だったそれまでのイメージとはかけ離れた、ミニマルでサイケデリックな音楽をやっていたこと、坂本慎太郎と交流があること、二組とも今聞いても全く違う音楽ですが、その全てが当てはまってしまう。結果独自の道を行きすぎた音楽を、言葉で表現することの陳腐さみたいなものまで痛感してしまうわけですが、それも音楽の面白さの一つですし、それを同じ空間で浴びたい、並べたいとどうしても思ってしまう。普通に夢です。何度夢見たことか。2013年にエスプレンドー・ジオメトリコが来日して、その時のツアーの対バン相手がOGRE YOU ASSHOLEとNISENNENMONDAIだと聞いたとき、当時リアルタイムで追っていなかったことを、見れなかったことをどれだけ悔やんだことが。叶いました。ありがとうございます。一瞬でSOLD OUTした上に当選しなかった方も自分が見える範囲でかなりいて、もっと大きいハコでもよかったのではないかと思いますが、今回はまずO-nest30周年おめでとうございますということで、是非、また見れる機会があれば嬉しいなと思います(なんならDELAYに呼んでほしい)。二組についてはこちらのブログ記事でも触れていたりします。

以下ライブの感想。

 


 

 

最初はにせんねんもんだい。ヌルッと始まった。自分はDestination Tokyoは邦楽オールタイムベストを作るんなら真っ先に挙げたい、ていうくらいには衝撃を受けたアルバムだけど、割と近年ファンクやソウルからディスコ、ダブ、ヒップホップやトリップホップなどを聴くようになり、スロウコア~ポストロックで密室音響作品を好むようになった今なら#N/Aの素晴らしさが身に染みてしまうな、とここ最近ライブ行くにあたって音源を聞き返しながら思ったりした。先ほどのブログ記事でもNと#N/Aに触れているが、一番最初にあの記事を書いた頃(2021年2月27日)の自分と今の自分の距離を再認識したし、改めてDestination Tokyoと並ぶくらい、#N/Aも大切な作品になってしまった。

という完全な余談です。言うてもうNも#N/Aも10年以上前の作品ということで全くモードは違う、個人的にシーケンス主体のミニマルテクノ/インダストリアルなのかと思いきや意外とバンドサウンドが強くてびっくりした。スタジオ盤にある直線的な反復とはちょっと違っていて、ミニマルではあるが、抑制されたビートとビートが同じシーケンスと同期するっていうよりは、別々に独立してそれぞれを抑え合うような、ときたま噛み合って爆発するときもある、不思議な緊張感のあるライブだった。3ピース、全パート異様に先が尖っている。ギター及びシンセはずっとドローン的な不穏な音を鳴らし、ベースは点を打つというよりはもっとランダム性がある。そしてハイハットの音よ。全くシンバルを震わせず、ガッチガチな金物の打撃音でビートを作り上げていて、ドラムの音作りに感してはこのバンドの真骨頂、もう芸術とさえ思ってしまう。ヒリヒリとした反復の中突然ドラムの金属音がバシッと全てを塗り潰す瞬間がある。怖い。そして気持ちがいい。所謂メロディ、そしてフレーズといったものが全く存在しない剝き出しの音楽を、聞くというよりは体験、体内に直接入ってきて精神と接続されてしまうような、Nにあったようなわかりやすい反復と盛り上がりがあるわけでもない、絶妙に抑制された音の配置は、踊りたいのに全然踊れない、音に乗っかりたいのに乗り切れない、音楽と一体化したいのに、身体という容れ物が邪魔に感じてしまうような、そんなことを考えてしまうライブだった。

たぶんメンバーのお子さんであろうNISENNENMONDAIシャツを着た小学生くらいの子供たちが舞台袖から見ていたと思いきや、手数の少ないリズム隊の反復とドローンを漂わせる序盤をバシン!という爆音シンバルのノイジーで甲高い金属音が突如ぶち壊した瞬間みんなして奥に消えて行ってちょっと笑いました。かっこよかったけど、見てる側もびっくりしたし、しょうがないと思う。

 

続いてOGRE YOU ASSHOLE。まずセトリを

ロープ(meditation ver.)

ムダがないって素晴らしい

素敵な時間

待ち時間~家の外~朝

見えないルール

en. また明日

もう2年ライブに足を運んでいなかったけど、OGRE YOU ASSHOLEは間違いなく人生で最も見に行ったバンド。とくに2017~2019年は毎月ライブ情報を喰い入るように探していたと思う。ただ短期間で繰り返し行き過ぎることで、逆に"見えなくなってしまったもの"もたくさんあったなと、色々考えることが増え、会社を辞め、自分が何かしらの創作を発表するようになってからは一回完全に距離を置いてしまった。それがこれまでだった。というわけで丸二年空けたOGRE YOU ASSHOLEのライブ、今どんなモードなのかも全く知らない。最後通ってたときどんなセトリだったかもおぼろげな記憶しかない。そんな感じの、少しの緊張とワクワク感と不安が入り混じった状態で、一曲目がかつてライブの最終曲を飾り続けたアンセムであり、いつからかあまりやらなくなってしまった、自分の中では永遠にバンドの顔である「ロープ」だったことは、本当にとても幸福だったと思う。

ロープはworkshopの冒頭を飾ったクラフトワーク+サイケデリック・ロックなmeditation ver.。ただ家の外~自然とコンピューターを出してからのシンセサイザーが本格的に加わって、シーケンスそのものを一パートとしてグルーヴに組み込む、という洗練された状態でビートも電子音のフレーズも新たに練り込まれ、かなり進化していたと思う。アレンジが増えた、構成を大きく変えた、ていうよりは真っ向からアップデートした感じ。近年のスタイルに関してはこのインタビューで語られている。

"バンドがシーケンスと一緒に演奏する場合、普通はライヴでドラマーなどがクリックをイヤモニなどで聞いて演奏するのが一般的だと思うんですが、僕らはそれも禁止していて。"

"なのでシーケンスでなっている音もあくまで演奏者の音として捉えて演奏するっていうのが今のバンドのモードです。"

そしてムダがないって素晴らしい、素敵な予感とグルーヴナンバーとしてもシンプルに爆音アンセムとしても振り幅の多い2曲へ。まず率直に、すごく肉体的だな、と思った。とくにムダがないって素晴らしいは前回見たDELAYや2022年~のライブでも冒頭からギターでアレンジを加えていたのが(朱莉TeenageRiotの過去のライブレポでも触れている)、今回は比較的原曲に寄せていて、アウトロや間奏では生演奏ならではの強弱をつけたニュアンスでエモーショナルに昇華する感じに(音源はもっと平坦に作られている)。素敵な予感に関してはalternate ver.というドロドロのダブバージョンのイメージが強かったが、なんなら新しい人を出してからのオウガはこの曲に限らず、ずっとダブをやっていたようにさえ思えるのだけど、あの隙間を生かした、メロウでダビーな雰囲気は今回のライブにはほとんどなかったと思う。それもあってバンドのマッシブさを感じるライブだった。

待ち時間~家の外はこの2年幾度なく演奏されてきたんだろうなという貫禄がある。動画も上がっているし(見えないルールやフラッグも動画に残してほしいが・・・)、ライブアンセムとして定着したんだろう。家の外は後半のシーケンスでギターに朝のフレーズが混じってきたなと思ったら、本当に途中から朝へと切り替わってかなりぶち上がってしまった。朝本来のじわじわ熱を伴っていく展開が、家の外で暖まり切ったフロアを、一回朝の前半でペースを緩めていくような、そしておかわりとしてもう一回バーストさせる形に昇華されていた。比較的workshop3にあるライブ版の原型に近い形で、自分が通っていた頃は見る度に違う朝だったから最終的にスマートに組み込まれていることがとても感慨深かった。同じBPMで合わせながらファンキーな家の外に対して機械的な朝という対比も効いていた。最後は見えないルールへ。いつもの、ではあるんだけど、こちらも朝と同じくイメージより緩めに感じる。かつて、ライブの度に加速していった頃を知ってると原曲通りのスピード感が新鮮でもあるし、リズム隊もギターのカッティングも以前の尖ってた記憶と比べるともうちょっと先の丸い音へ。でも段階的に、ブレイクを挟んだり全体のトーンやキーを挙げながらフロアを温めてバーストと寸止めを繰り返し到達点に観客共々向かってくみたいな一体感はやっぱりいつも最高ですよ。これを見に来てる人もたくさんいると思う。清水さんのベースラインが途中一回単音を繰り返して熱を一歩前で引き留めるような、ミニマルなアレンジが加わっていた。スマートになった朝といい、今の余裕も見せながら完璧にフロアをコントロールしてる感じがとても好きだし、いい状態だと思う。いつにも増してパワフルなのに、引きがしっかりしているというか、余裕が見える。

比較的ソウル/ファンクやヒップホップを日常から聞くようになってから改めてオウガを見ると、三部作以降にそういった音楽に寄せながら、ギターはカッティングしててもファンク的なグルーヴのねちっこさは全くない、むしろサブベースを切り刻んだみたいなインダストリアルの機械的なリズムだったり、フォグランプの頃からずっとある、メロディアスなのに淡白にお互いが絡み合う=音は有機的なのに無機的に組み上げてしまうというバンドの個性はずっと変わらないなと、そういうところが見えてとてもグッときた。以前から言われがちな(自分も使ってきた)AORとクラウトロックの融合という言葉で纏められてしまう要素ではあるんだけど、文字にするだけでなく、ちゃんと体感できたかどうかで全く違う。それを自分は、たぶん初めて無意識ではなく意識的に体験できたんだと思う。最後はアンコールでまた明日、カーティス・メイフィールドみたいな吹き抜けのいいアレンジへ。こんな憂鬱な歌詞を、ここまで気持ちよく歌い上げられてしまうと、諦観さえ見えてきて涙が出てしまう。

個人的にコロナ入ってから試行錯誤の時期がずっと続いていたように感じていて、例えば見るたびにアンセムとして曲の尺もアレンジの種類も肥大化し続ける朝や、テンポを速めたりバースト部分を増やして爆発力を挙げていく見えないルールとか、あとは既存楽曲のシンセ化や初期のナンバーをあえて今のモードに寄せずにセトリに組み込むようになったりとか、ずっとスタジオとライブでの実験を繰り返したように見ていたんだけど(それも通う楽しさではあった)、今回は比較的原曲に寄せつつよりバンドの力強さと、純粋な曲の良さを真っ向からぶつけてくるような感じですごく懐かしい気持ちになった。最高でした。ライブのあまりの素晴らしさに、余韻というよりは完全に放心状態になってしまったし、退場する背中を見てこんなにも終わらないでほしいって思えたライブはいつぶりだろう。これから初めて見る人にもずっと魅力が伝わりやすい状態だと思う。行くなら今でしょう。僕もこれからまた通おうという気持ちに完全になってしまったので、会場でお会いしましょう。

 


 

 

完全に余談なんですが今回会場BGMが神過ぎた。2010年前後の馬渕さんと出戸さんが選曲したのかと思えるくらいUSインディー、ポストロック、スロウコアに寄っていて、Shipping NewsのLouvenが流れたときはまさかオウガの会場でジェフとジェイソンのギターを聴くことになるとは思っていなかった。他にもJoan of ArcやDavid Grubbs、Mice Parade・・・あと思い出せないけどバトルスとかStorm and Stress系っぽいマスロック(絶対聞き覚えがあるため思い出せ次第追記)、ライブが終わった後、まさにまた明日直後に電気がついたと思ったらSun Kil MoonのCarie Me Ohioが流れ始め、20回以上オウガのライブに行ってるけどここまで会場BGMが自分の好みだったことは初めてだった。デカい声を挙げそうになり、隣の人にSun Kil Moonですよね!?て声をかけそうになってしまった。本当に余談。まぁnest企画なんでバンドの面々ではなく、ライブハウスのスタッフでしょう。ありがとうございました。

 

 

関連記事

年間ベスト2025

2025年の記録です。音楽に限らず記事や本なども含め自由に書きました。


 

 

The Ex - If Your Mirror Breaks(2025)

The Exの最新作。以前からアルビニと交流が深いオランダのバンドで、スティーヴ・アルビニに捧げられた一枚。元々80年代はオランダ版Crassとも言われたパンク~ノーウェーブなバンドだったけど、90年代にはエチオピアやコンゴのミュージシャンとコラボし独自のエッセンスを取り入れハードコア以降の音でKonono Nº 1的なアフロファンクやジャズをやる唯一無二の音楽性へ。Sonic YouthやFugaziといったバンドとの交流も深くジョン・ゾーン人脈のミュージシャンも参加、アルビニ録音が多かったのも納得できる鋭利な作風はShellacやblack midiが好きな方まで幅広く聴けそう。今回M1からThe Exらしい全パート打楽器かのような刻みの美学が炸裂した最高のオープニング。結成当初からのフロントマンだったGWソックは既に脱退、2009年以降新しいボーカル&メインソングライターとしてアーノルド・デ・ブールが加入してるというのも大きい気がするけど、いい意味でキャリアの長いバンドの最新作とは思えないフレッシュなエネルギーを感じさせる。入門としても集大成としても完璧な作品。

 

 

FACS - Wish Defense(2025)

アルビニ録音最後の作品。ex.90 Day Men/Disappearsのブライアン・ケースの現在のバンド。ポストパンク~ポストハードコアを縦断し深化させてきたバンドだけど今回最も3ピースの色が出た肉体的なアルバムで、これを生っぽく録るというアルビニ録音とのマッチングは説得力しかない。ブライアン・ケースの空間に滲むようなギターの音はダビーでゴシックな空間美がありUnwoundやSiouxsie And The Bansheesが好きな人にもおすすめしたい。4月に来日もあってEraで見たけどマジですごかった。FACSに関しては前身バンドからキャリアを総括した記事をこちらで書いている。

 

 

Lifeguard - Ripped And Torn(2025)

LifeguardはHallogalloってタイトルでシカゴのインディーシーンを賑わせたZINE及びフェスを主宰するカイ・スレーターによるバンドで、ここ数年来日もしたFrikoやHorsegirlもHallogallo出身、本来ボスであるLifegurdはちょっと遅れてMatador Recordsより1stをリリース。ドラムのアイザックはHorsegirlのペネロペの弟、ベースのアッシャー・ケースは上述FACSのフロントマンであるブライアン・ケースの息子で、ブライアン・ケースは息子がMatadorと契約したことについてインタビューされた際に是非FACSで前座をやりたいと冗談っぽくも実現したらかなり熱い発言をしていた。No Ageのメンバーがプロデュースしたってのもあってゴシャっとしたノイズ増し増しの混沌とした音と曲を牽引するキャッチーなリフと歌メロで疾走する爆音ギターロック、This Heat~P.i.L.っぽさや00sディスコパンクのリバイバル感も結構ある、という旨を初期EPを2枚コンパイルした前作含め現代のシカゴ自体に焦点をあてて個別記事に書いている。ちなみに前作EPはアルビニのエレクトリカル・オーディオで録音(親子で使ってるの地元感ありすぎる)。

 

 

Teethe - Magic Of The Sale(2025)

Teetheはベッドルームポップやインディーフォークが台頭してきた10s以降、ジャンルというよりはインディーロックの表現技法の一部として昇華された現代のスロウコアを象徴するバンドだと思う。BedheadやDusterが提示したものの解答でもある。今作は2020年の1st以来Slow Pulpなどを擁するWinsperに移行してからの2nd。前作よりドリーミーな雰囲気が強くてM5のHoly Waterはジャンクなノイズ+開放感のあるメロディで突き抜けていくアッパーな名曲で、相変わらずメロディが激良い。冬の乾燥した素肌にマフラーやセーターがあたってピリピリくる静電気の感じまで音源に内包されてるのではないかと思ってしまうほど寒さに合う。スロウコアってよりはHovvdyとかに通じる純粋なインディーミュージックになっていてM3のAnywhereはちょっとPinbackもよぎる。さらっと聞けるのにアルバム内に名曲が多すぎてびっくりしてしまう。

 

 

kitchen - Blue heeler in ugly snowlight, grey on gray on gray on white.(2025)

Bluetile Loungeに憧れたジェームス・キーガンが前作におけるバンド編成を経てPavementのWowee Zoweeを目指したというこれまでの集大成のようなアルバム。たくさん聞いた。最小限のエレクトロニクスで曲を彩りながら時折Bob DylanになったりCloud Nothingsになったりする。途方もないくらい雄大で枯れたアメリカーナを好む人は是非M19のBlue Healerを聞いてほしい。Red House Painters/Sun Kil Moonのマーク・コズレックの系譜やBlutile Loungeといったスロウコアが好きな人にもおすすめしたい。limboという今年リリースした音楽ZINEに長文のテキストを収録(limbo 曙橋作品集/私的アルビニ名盤選 - 朱莉TeenageRiot)。

 

 

caroline - caroline 2(2025)

carolineの2nd。先行シングルのTotal euphoriaのフリーキーさにはびっくりしたし、それでいてIdahoみたいな歌心あるインディーミュージックとして聞けるのがとても良い。M4のWhen I get homeという曲は繊細かつダイナミックな音の重ね方、通してある静謐なムードが素晴らしく泣ける。間違いなく2025年のベストトラック。こちらもlimboという音楽ZINEに長文のテキストを収録。

 

 

bloodsports - Anything Can Be a Hammer(2025)

ブルックリン出身bloodsportsの1st。くたびれたボーカルと苛烈なノイズロック~ポストハードコアの重厚なサウンドの組み合わせがツボ。ノイズに粒が粗いヤスリみたいなザラザラ感があって物理的な質感の硬さ=重さがあるモノクロームな轟音ポストパンク。M6のRotはGalaxie 500っぽさもあるドリーミーなスロウコアからドラマティックに展開、静謐展開も多くスロウコアが完全に血肉になってる感じがして、一周回って2000年前後のポストハードコア~ポストロック黎明期の、ジャンルの境界が曖昧だったオリジネイター達を思い出す。2025年のブルックリンはYHWH NailgunやWater From Your EyesやModel/Actrizといったバンドがよく話題に挙がっていて、Animal CollectiveやGang Gang DanceやBlack Diceといったあの頃のNYリバイバルとして語られているらしい。割と自分のリアタイちょい後くらいに情報を追った音楽がもう参照される世代になったんだなぁという驚きもあった。

 

 

想像力の血 - 物語を終わりにしよう(2025)

完全に初聴き。80sのムーンライダースを思い出すなと思っていたらM7のQuaggiでまさかの本人登場、思ってもみなくて声が入った瞬間相当にぶち上がった。現代のポスプロ感覚で色んなエフェクトが入れ替わり立ち代わり盛り込まれ、それでも全然ごちゃっとしない整頓された電子音楽としての繊細な構築美+ソングライティングが融和していてあえて和製ニューウェーブ/テクノポップという言葉を使いたい。新しいことをやりながら、愛がそこら中にあるのがすごく良い。幽霊のようでキャッチーなボーカルはデヴィッド・シルヴィアン経由でYMOにもある少しゴシックな色気が継承されてるように感じるし、M2のUTOPIA(異議申し立て)はPrince的なダンスポップで個人的に80sの高橋幸宏とも重なる。M8のIdeは蠢くような電子音の波は重層的且つ透明感あるのがまさにニューウェーブのドリーミーさが詰まってて爆発オチなのも笑った。YEN Recordsリバイバル的な雰囲気もあるけど決してノスタルジーの中にある作品ではないと思うし、自由に作った快活な空気が溢れててとても好きだ。この感じで最後に「そして音楽はつづく」というストレートな名曲で終えるのもグッときてしまう。Pot-pourriのEraser, PencilがOver(and Over)で終わったこともフラッシュバックする。

 

 

Pot-pourri - Eraser, Pencil(2025)

Pot-pourriの3rd。名盤。L'Arc〜en〜CielからART-SCHOOL、James Blake、Nine Inch Nails、TortoiseからRadiohead、ただただ美しい音響の電子音楽が聴きたい、気持ちよく踊れればいいって人にも、純粋な歌ものとしても、きっと刺激があると思う。とくにポストパンク/ニューウェーブを好んで聞く人、黎明期のポストロック~エレクトロニカのジャンルの拡大具合にわくわくした人には是非おすすめしたい。個別記事あり。

 

 

Grace Cathedral Park - histoires de roches(2025)

Grace Cathedral Parkの2nd。先行シングルにして初のMVであるmélusineから向こう側から聞こえてきた音を辿って歩いて行ったらいつの間にか異世界にいるような、全く見たこともない地平に連れてかれるような怖さがあって公開時本当に衝撃を受けた。フィーレコも盛り込んだ異様に実在感のある生っぽいサウンドスケープは前作にあったぼんやり夢見心地の曖昧さとはかなり対照的、アンビエント~スロウコアってよりはRadioheadのDaydreamingと新井昭乃の感覚が混ざったような印象で、フレーズの反復感はコンポーザーであるando氏がルーツとするフォークの要素もある気がする。バンド名であるGrace Cathedral Parkは4ADでありスロウコアでありアメリカーナだったRed House Paintarsの曲名が元になっているけど、比較的Grouperチックだった1stのスロウコア感は今作にはほとんどない。ただPot-pourriと共同企画を行っていること、Khakiのメンバーが在籍していることを前提に置いて前作から続けて聴くと、ゴス~ドリームポップな感覚のその先としても聴けそうな気がする。つまりCocteau TwinsやSlowdiveの流れからGrace Cathedral Parkの1st→2ndと辿ることも可能な、ちゃんと繋がるものが見てとれると思うし、だからこそ今作の飛躍具合に驚くと思う。CD版にはライター及びShuta Hiraki名義でアーティストとしても活動するよろすず氏のライナーノーツも収録。元々Graceのando氏と連名で以前Shuta Hiraki & Shuma Ando名義のコラボ作品を出していた縁もある。

 

 

1,000,000 CHARGE OF PSYCHIC YOUTH(2025)

PSP Social主宰のエスパーキックによる即興コンピでakebonobashiとして自分が参加。Disc1にあるAt Fureai Parkという曲で、Pot-pourriのフロントマンであるsawawo氏と、Grace Cathedral Parkのコンポーザーであるando氏と連名でフィーレコを元にした音源を残している(恐縮すぎます・・・)。3人で千葉県南部の公園に向かいレコーディング道具すらも現地のホビーオフで調達するプロセスそのものが楽しかった。

 

 

行為者 - 減退(2025)

行為者の2nd。うっすらした絶望が最高のメロディに載せてラフに歌われていて、こういうシリアスさを突き放すカラッとした音楽がなんだかんだ一番元気が出るし、疲れてるときや一人の夜になんとなく流していると勝手に涙が出てしまう。何度も出てくる「クソみたいな日常」を写し取った歌詞は全部の音がごちゃっと混ざった宅録の質感と完璧にマッチしていて、どの曲にも共通する平坦で軽快なビートは何を言おうが繰り返しやってくる毎日を勝手に自分の中で象徴してしまう。M4のろくでもないぜという曲における「大人になれたよ 子供のまんま」は強烈に喰らった。1曲選べと言われたらM7の死刑をベストトラックに挙げたい。歌詞も最高だがシンプルにメロディの展開にグッと来る。別にUSインディー的な音楽性ではないんだけど、自分の世代のGuided By Voicesだと思わずにはいられないし、PavementのIn The Mouse Desert/Perfume-Vの系譜をART-SCHOOL以降の音でやったような印象もある。宅録が容易になってローファイという概念も幅広くなったけど、でもPavementの1stが大好きだったのはあの音にあの歌詞が乗っていたからというのは間違いなくあったし、そういう音楽にしか寄り添えないものを思い出してしまうよなぁ。とても聞き心地が良く、15曲30分であっという間に過ぎ去ってしまうことから気が付いたら無限に周回していて新譜で一番聞いたアルバムになってしまった。

あと完全に余談だけど、おそらくギター+ラップトップのソロ形態によるにしね氏本人による行為者のライブで終演後にステージ上から金をばら撒く動画がSNSで公開されていてかなり鮮烈だった。インディーロック史に残る衝撃の一瞬だったと思う。スタイルや佇まい含めとても好きだ。

 

 

Japan - Tin Drum(1981)

2年前にできた地元初の市立図書館(個人的にも重要なトピック)に置いてあったele-kingやミューマガの坂本龍一追悼号からデヴィッド・シルヴィアンへ→昔ふんわりとニューウェーブ/ポストパンクとして聞いたJapanを聞き返したらTin Drumのすごさに衝撃を受け新旧ひっくるめて2025年最も再生したアルバムとなった。デヴィッド・シルヴィアンと坂本龍一はまるで兄弟のようだった、と書籍に再録された当時のインタビューでも語られていたけど前作Gentlemen take Polaroidsにおいて共作、次作となったTin Drumはもう完全にYMOが滲み込んだBGM/テクノデリックの次に絶対聞くべき作品。テクノポップとファンクとポストパンク/ニューウェーブ全部スレスレのラインで誰も真似できない狭間の音楽をやってる。浮遊感の裏で一本針金が通ったようなリズムを強調する密室サウンドもかっこいい。The Art of Paritesで一年中通して踊っていた。GhostsはDeftonesがカバーしてることでも有名。

ここからデヴィッド・シルヴィアンのソロへ行って1st~3rdにやられロバート・フリップとのタッグ作品にやられ、後の新ユニットNine Horsesにやられ、CANの面々とのセッション作品にやられ・・・みたいな感じの1年だった。この視聴録もいつかまとめたい。ミック・カーンのベースプレイは思いっきりノベンバでリンクとなる土屋昌巳の作品群も聴けたし(かつてJapanに在籍していた)、ele-kingがTESTSET新譜に合わせてテクノポップ特集号を組んでいてこれも関連してYen Recordsの作品やP-MODEL、電子音楽とダブ(後述)、交錯することがやけに多いCANの諸作品などを聞いてた。余談だけどlimboという自作のZINEにアンケート用紙を同封したんだけど、これも実はTin DrumのLPに同封されていた東芝EMIのものをパクった。

 

 

David Sylvian and Robert Fripp - The First Day(1993)

もう1枚くらい触れておきたい。ロバート・フリップは90年代にKing Crimsonを再度立ち上げる際にボーカルにデヴィッド・シルヴィアンを勧誘→別プロジェクトとして今作が誕生。ロバフリ作品でこんなに踊れるアルバムあったんだって思うほど弾力たっぷりなバンドのグルーヴ感とキンクリらしいヘヴィでダークなギターリフの数々が融合、歯切れの良いリズムにふわっと乗るデヴィッド・シルヴィアンの耽美なボーカルのコントラストも美しく、Red辺りと通じるダークな雰囲気と完璧にマッチ、新しい表情まで見えてくる極上のコラボレーション。確かにかつてのキンクリからは嗅ぎ取れなかったこういうゴシックさを目指したオファーだったのかと勝手に想像してしまう。メタリック且つファンキーなベースの音も良い。あまりの素晴らしさに仰天して繰り返し聞いた。翌年にDamagedというライブアルバムも出しててこっちもすごすぎる。

 

 

DUB論

ちょっと前に再発された激熱書物。とても勉強になるが最早専門書といった貫禄で機材の知識がない自分はイメージしづらい部分も多かったけど、この直後に読んだシンコーのディスクガイド・シリーズ・レゲエクロニクル・シリーズ・レゲエという2作品がDUB論を読んだおかげで死ぬほど読みやすくなった。DUB論で語られたアーティストを簡略化してディスクガイド/コラム形式でまとめてるような感じで、単品だったら物足りないかもだけど相互補完としては完璧。おすすめの読み方です(シンコーの2冊は図書館にあった)。あとele-kingから出たDUB入門というディスクガイドも全部を総括する勢いがあって本当にいい入り口だと思う。元々ポストパンク関連でOn-Uは愛聴してたけど昨年は各種ガイドを元にAswadやBrackbeard、比較的ロック側からも聴きやすいSteel Palseなどもハマった。あとはBurning SpearのGavery's Ghostはオールタイムベストに挙げたくなる。これも超聞いてた。

 

 

Primals Scream - Screamdelica(1991)/Happy Mondays - Pills 'n' Thrills and Bellyaches(1990)

 

ちょっとのめり込みすぎてマッドチェスター漬けだった時期あり。ありえんくらい聞いた。別記事にて。上述したDUB論にもこの記事内で触れていて自分の中では結構ちゃんと繋がった流れがあって良かった。

 

 

Ave Mujica - Completeness(2025)

アニメは賛否両論あったけど自分は好きだった。4月のKアリーナ公演も行った。アルバムってよりはぶっちゃけコンピのため思うことなくはないけど、最終曲となるM7の天球(そら)のMúsicaは2025年のベストトラックの一つ。 Deftonesを思い出してしまう。

 

 

Deftones - private music(2025)

最高。先行シングルにぶっ飛ばされてリリースが待ちきれなかったDeftones待望の新アルバム。比較的電子音の要素も多かった前作とは対照的に、キャリアを通して醸造されたバンドのエネルギーに満ち溢れた集大成&現行アップデート版として完璧な一枚。M1のmy mind is a mountainからヘヴィでソリッド、面で押し寄せる"硬くて広い"縦横無尽なギターの波とダイナミックなリズム隊にずっと圧倒されてしまう。シャウトと耽美なボーカルがシームレスに行き来するチノ・モレノのボーカリゼーションも節が効いてて完璧。シンプルにリフがナイスなM4のinfiniti sourceはガチの名曲。ケヴィン・シールズも言及してたけど昨今ムーヴメントになっているヘヴィシューゲイズのルーツとして申し分なく、M6のcxyはボスの貫禄たっぷり。Deftonesを聴いているとこんなに巨大でこんなに繊細なバンドサウンドってあるのかと思ってしまう。2025年はAve Mujicaのライブ→Deftones新譜→Smashing Pumpkins来日という流れが個人的にあった。

 

 

littlegirlhiace - Yes,We Love littlegirlhiace ~Tribute to littlegirlhiace~/OUT OF HIACE(2025)

 

littlegirlhiaceの祝10周年トリビュート。作品の生い立ちからもう奇跡みたいなもんだと思うし、愛に溢れた各バンドのカバーが本当に素晴らしい。こんな解釈があるんだっていう発見が多数ある。自分はイラストとライナーノーツ風テキストで参加、Pot-pourriや2lcd、昨年触れた小雨ちゃん、Lily FuryやSleepinsideなども名を連ねている。個別記事あり。また昨年末に出た再録ベストのOUT OF HIACEも神でアカネ→engage ringのとこでいつも拳を突き上げてしまう。ミスチルやART-SCHOOLが好きでまだlittlegirlhiaceを聞いたことがないという方はこちらから聞きましょう。

 

 

I have a hurt - 00:00.00(2025)

 

国内最強エモバンドことI have a hurtを昨年たまたまライブで見てかなりの衝撃を受ける→音源を掘って前作にあたる24年のIXIと、25年に新しくリリースされた00:00.00は繰り返し聞いた。IXIにあったシャウトはポストハードコアや激情におけるスクリーモってよりは生きづらい世の中に向けて駄々をこねるマジの叫び、というかもう泣き声、どうしようもない孤独を吐き出す行為に見えたのだが(それが好きだったし全力でライドできた)、今作はもっと暖かい雰囲気があって曲によっては背中を押してくれているような気さえしてしまう。ボーカルの切実さとパワフルな演奏とは対照的なクリーントーンのギターが美しく響く作品で、まくしたてるような苛烈な演奏にShotmakerも思い出してしまう。M2のleft handは終盤明らかに音量が1段階上がる瞬間があってぶち上がる。kurayamisakaがI have a hurtをリファレンスとしていて度々リスペクトを掲げているのだが、掲げすぎてSNSのフォロワーが爆増したらしい。

 

 

kumagusu - kumagusu(2025)

kumagusuのサックス加入後初となるスタジオアルバム。ライブも行ったけど本当に最高だった。個別記事あり。個人的には割礼のゆれつづける+ZAZEN BOYSのすとーりーずみたいな雰囲気もあると思う。サムさん(WITHOUT SOUNDS)のベスト記事でも言われていたけど、この歌詞を堪能できる日本人で良かったなぁと本当に思う。

 


takujirosadae - 情を春に移す(2025)

Butter Sugar Toastのフロントマンことtakujirosadae氏によるソロ作。憂鬱な春のサントラで、Elliott SmithやAlex GからAmerican Analog Setが好きな人、そしてエモやポストハードコアが好きな人は是非。あまりにも素晴らしいため個別記事を書いている。

 

 

uri gagarn - Timed(2025)

メンバーの入れ替えがあり新体制によるセルフカバー+カバー+未公開曲を詰め込んだコンピ、に見えて統一された部屋っぽい録音とライブのセトリのように流れのある構成の没入感もすごくある。記録シリーズの末尾に本アルバムの感想を新たに追記。

 

 

1/8計画 - Live at "Wall of Apes" (at 初台Wall, 2025/6/22) FULL VIDEO

朱莉TeenageRiotのポストロック関連記事(RodanやSlint他)、スロウコア関連記事(CodeineやRed House Painters他)、インディーロックのdiscography(Modest MouseやNorth of America)、などなどが好きな人はこれを見てぶち上がらないわけがないと思う。とりあえずシングルリリースもされた30:05~のDecatur, GE、続いての38:43~イメージの本 (Le Livre d'image)だけでも是非。とくにイメージの本は音源化されてないけどもう既に2025年ベストトラックの一つだよ。間違いなく。

 

 

ele-king -  #10:いや、だからそもそも「インディ・ロック」というのものは

泣ける。間違いなく年間ベスト記事。サムさんの文章ベスト(【年間ベスト】2025年面白かった文章(Web記事)|WITHOUT SOUNDS)という素晴らしい企画があったけどもし自分でやるとしたら真っ先に思いついたのがこの記事だった。ele-kingの書籍を読みまくっているためそのボスである野田努には信頼しかなく、当事者の生の言葉として、これが記録として残ること、元々シーンに浸ってなかった人がこれを新たな入り口としてくれる可能性も考えると本当に嬉しい。これまでのインディーロック史の総括、そして現代への接続という観点でもこれ以上のものはないと思う。今だからこそ読まれてほしい。"文脈というものがあったし、文脈こそが重要だった"←ここに、自分が音楽を掘る全てが詰まっている。文中にも出てくるがファンからしたら"なにを今更"ではあるのかもしれないけど、なにを今更、すぎるからこそ誰もまとめてなかった流れがここに集約しているのではないだろうか。もう何周かしたことで、00年代のポップシーンを経た後の目線でもう一度語ることの意味も見えてくる気がする。エレクトロニックミュージックについて書き続けてきた野田努にしかできない切り口も多数ある。本当に素晴らしい文章です。ありがとうございます。

金子厚武 - 「ポストロック・ディスク・ガイド」10周年に寄せて

これも外せない。ポストロック・ディスク・ガイドは自分のバイブルと言えるもので本ブログとの共通事項が多数ある。参考にさせてもらった部分は枚挙にいとまがない。筆者は別でポストロックの年間ベストを作っていてこれも現在との接続として重要。

あとはgroup_inouのインタビュー、Pot-pourriのインタビュー記事もとても面白かったのだが、どちらも自分がバンドのファンであるというのが前提にある気がするため、リンクを貼るに留めておく。

ヴェールに包まれた二人組group_inouの“正体”に迫る | 【GINZA】東京発信の最新ファッション&カルチャー情報

Interview | Pot-pourri | 消してしまったと思っても、その痕跡は残る | AVE | CORNER PRINTING

 

ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド(2017)/ティアーズ オブ ザ キングダム(2023)

 

10月~12月はもうこれをやっていた記憶しかないんだけど、人生で最も充実した期間だったと思う。音楽が結構ポストロックやスロウコア好きな人にも刺さるなって思った。自分ですが・・・



 

 


 

以上です。あんま指標もなく流れでハマったジャンル/シーンを中心に聴き進めた一年だったと思います。つまりは平常運転ですね。SlyやParliamentに端を発するファンクブームは一旦落ち着き(とか言いつつPrince超聞いてたけど)、25年はJapanに関するあれこれやPrimal Scream~Happy Mondaysから多くを辿った年でした。これが本当に大きかった。それ故たまたまチェックした新譜と並べることにちょっと抵抗もありますが、こういう記録を残すことで「どんな一年だったか」を思い出すことができるので意義はあるでしょう。

あとはやっぱりZINEを作った一年というのは避けられず、それに関する文章や絵にかけた時間が多くどうしても偏っちゃいますね。リリース後に協力してくれたLIKE A FOOL RECORDS及びcinema staffの辻さんとの交流もとてもありがたく、ショップに何度も足を運ぶ中で新たな気づきも多かった一年でした。

もう一つ大きな出来事としては地元に図書館ができ、そこに通うようになったこと。音楽書籍をたくさん読みました。興味が無くともとりあえず手に取ってみることの大切さを学びましたし、これもしかして関連してない?て自宅に積んであった書籍を大量に消化できZINEの作風にも繋がりました。これに関してもいつか記事を書きたいと思います。

まだまだやりたいことがたくさんあるので引き続きやっていきます。今更ですが、今年もよろしくお願いします。

 

 

kumagusu - kumagusu(2025)/処夏神経(2021)

2025年にリリースされたkumagusuの新譜について書きました。また前作にあたり、今作にも繋がるサックス加入後の5人体制としては初となる処夏神経というアルバムについても一緒に書いています(こちらは2021年のベスト記事で書いたものを加筆修正したものです)。


 

 

kumagusu - 処夏神経(2021)

kumagusuは2009年に結成された日本のロックバンド。2016年に1stとなる夏盤、2019年に2ndとなる夜盤を出していて、処夏神経は2020年に新規加入した富烈によるサックスを既存曲に追加した新アレンジお披露目アルバム。最初はサブスクで聞いてたんだけど、リリース当初はM1~M6までしか収録されてない短縮版だったらしくサムさんのベスト記事(【年間ベスト】2021年の個人的な32枚|WITHOUT SOUNDS)で見かけた後にインタビューを読み返したらなんとbandcampで温泉街、彷徨、精進、あなたの主張の4曲が追加された全10曲の完全版が出てたらしく急いで購入。短縮版はゆったりした曲が多く全編通してちゃんと統一感がありこの時点でもとても好きだったんだけど、バンドのキラーチューンであり大きなカタルシスを提示するラスト2曲(精進/あなたの主張)が収録された完全版を聴いたらこれだけでアルバム全体の印象を変えてしまうほどここに帰結していく感覚があり、トータル作品として本当に素晴らしい名盤に大化けしてしまった。

ちなみに現在はサブスクの方もフル版になっていて、しかも短縮版だったM1~M6を実際に録音したときのライブ映像も丸ごと上がっている。開幕のM1海まではダルい夏の雰囲気が漂う風通しの良いスロウナンバーで、所々ストンと落ちるように静寂が挟まれる瞬間が本当にかっこいい。3分半~から全体のトーンは変えないまま急に風向きが変わるようなギタープレイ、「黄昏…」という呟きから演奏を崩して各々動きを大きくしながらボルテージを上げていく後半は、こんなユルい曲でこんなにぶち上がってしまうことがあるんだという驚きがある。あと新規加入のサックスが完璧にハマっていて新アレンジお披露目のはずが、「欠けていたパーツが戻ってきた」感すらある。だってもう海までのイントロのサックスがないなんて全然考えられないもんね。

ギターの音だけを聞いたらスカスカのポストパンクバンドのライブ音源みたいな、ライブによって単音ギターの揺らぎが増して空間的に広がる音響の気持ちよさに浸る感じで、「深夜徘徊楽しい」と繰り返される歌詞、「彷徨」という曲名はまさにこのバンドそのものを表している。ゆらゆらしてるけど、浮遊感ともちょっと違う、むしろ地に足が着いてるというか、酩酊しているようで実は正気を保ってるんじゃないかとハッとさせられる瞬間が何度もある。M8にあたる精進はそれがすごくよく出ていて、演奏の隙間が多くムダな音が一つもない、このバンドのグルーヴの真髄が詰まっている。ラストのあなたの主張はこの中で速い長尺曲ってだけで映えてしまうけど、後半バチバチにやり合う即興なインストパートはアルバムの印象を最後の最後に大きく塗り替えてしまう。「旋回してるイメージ 引きずって歩く」「煙を吸う 煙を吐く」「空中を眺める…」と繰り返される言葉はウワモノっぽい音で構成された演奏を聴いて思い浮かぶ景色そのままだ。言葉で音に名前をつけていくような、つい口ずさまずにはいられないフレーズの強さがあってすごく中毒性のある作品。本当にハマった。

 

 

kumagusu - kumagusu(2025)

kumagusuの3rd。サックス加入のライブ盤から5年、ようやくサックスありの5人体制でリリースされた待望の新譜。ライブも行ったけどマジですごかった。なんならライブで見る前に音源の予習をしたくなく、会場で買うまで聴くのをずっと我慢してたくらいには楽しみだった。kumagusuは1st~2nd時にNUMBER GIRLや54‐71が引き合いに出されることもあったバンドだけど、サックス加入&幾度なくライブで練り上げられた隙間と侘び寂びの効いた現在のモードはもう完全kumagusuはkumagusuでしかないというとこに来ていると思う。相変わらず煙のような、追いかけても追いかけても消えてしまうくせにその幻影自体はこっちをジッと見つめているような、フロントマンである井上Y氏はバンドの音楽性を象徴するソングライターではあるけど、kumagusuはバンドそのものを"詩人"と例えたくなってしまう。それほどまでに歌に追随する演奏の一つ一つ、言葉=音をパレットに書き写していくような、歌に纏わりつくそれぞれの音が意味を持って一つの映像を再生させる力がある。

目を引くのはリードトラックにもなったM3の窓割り。淡々と、一定間隔で点を打つようなリズム隊のアンサンブルは夜盤(2019)を踏襲しながら、ウワモノと化すリードギター、小刻みな点から線へと移行するホーンセクション、各パートが一本線に収束するよう同期していく終盤への長い旅路はじわじわとノスタルジーが沸く。サックス加入後の初音源となったM4の経験(2023年にシングルリリースされていた)は歌という連続した言葉が一つのリフみたいに絡み合って情景を作り出している。柔らかいのに張り詰めている、という雰囲気はこのバンドならでは。kumagusuは昔からの同級生で結成されたバンドらしく、かなり長いこと同じメンバーでやっているというのもあるだろうけど、特定のリファレンス、共通の音楽趣味をビジョンとして掲げたバンドというよりは、メンバー同士のコミュニケートを自分たちの言語(演奏及び井上Y氏の言葉)として昇華していった自家醸造の先にあるバンドに思えてしまう。だからもうこの音にこの言葉、という純度の高い一つの形にものすごく説得力がある。

余談だけど井上Y氏が弾き語りライブでFishmansをカバーしたという話を見てなんとなくPolarisも思い出した。グルーヴィーなのに所々淡白に感じるところとか、歌の感じ、ちょっと硬くてさっぱりした音(とくに後期)とも重なる気もする。最新作リリース直後のライブも行ってきたのだが、カッチリしてるのに弾力もあるグルーヴ+サックスというところで安直にSteely Danを思い出したりもした。井上Y氏はキリンジも好きらしく、自分はキリンジをSteely Danの系譜として聞いていたため微妙なニアミス。個人的には割礼のゆれつづける+ZAZEN BOYSのすとーりーずみたいな雰囲気もあると思う。サムさん(WITHOUT SOUNDS)のベスト記事でも言われていたけど、この歌詞を堪能できる日本人で良かったなぁと本当に思う。

kumagusu - 夏盤(2016)/夜盤(2019)

 

サックス加入前の初期作についてもちょっとだけ。夏盤はダルい夏がテーマとなった作品。M1のサスティンは暑くなってくる季節の始まりに必ず再生し一緒に歌い出してしまう名曲。ライブ盤で印象的だったM3の海までは勿論、ライブ盤の収録はないけど超ファンキーなM7の呼吸をととのえて、ストレートに名曲なM9のローな人々も素晴らしい。ギターが最高。M2のツリメノも代表曲。夜盤は寂れた夜、深夜徘徊をテーマとして作られた作品で、kumagusu特有のユルくて怪しい雰囲気が満載。開幕の夜来たるは出音一発目からマジで痺れる。54-71っぽいって言われてたのは隙間を広く見せた絞った音作りもあったかと思うし、先行シングルの夜来たる/精進の両A面を当時リアタイで聴いてたら「何かが始まった」感をすごく感じただろうなぁと思う。この時点でめちゃくちゃかっこいいが、やっぱり現在を知っているとサックスが少し恋しくなってしまうし(何度でも言うが本当にしっくりハマっている)、処夏神経の素晴らしさを、改めて噛みしめてしまう。

 

 


以上でした。年間ベスト2025に記載するにはとてもじゃないけどボリュームがありえんことになったので単発記事となります。

 

関連記事

Klan Aileen(現Zamboa)と対談する形でバンドを深く掘り下げるインタビュー。処夏神経のレコーディングもZamboaの澁谷氏が担当。会話の中でSPOILMANや帯化が出てくるのもあって勝手にkumagusuをフリーキーなポストパンク~ポストハードコアを演奏するバンドだと思い込んでいたんですが、それ故に処夏神経を聞いたときのいい意味での予想外にぶっ飛ばされました。半分以上雑談ですが、当時のレコーディングに至るまでどういう感じでシーンっぽい交流がぼんやりできあがっていたか、そういう空気が自然と伝わってくる生の会話がとても素晴らしいです。処夏神経が気に入った方は是非見てみてください。

メンバーによる各曲解説。

kumagusuの公式noteから最新作であるkumagusuの、音源のみならずアートワークやデザイン諸々に関する文章が公開されてます。