リアルタイムで触れてきた、10年代後半~現在まで続くサウスロンドンから端を発したムーヴメントについての記録になります。決してアルバムガイドではなく、あくまで自分が主に聴いていた/辿ったアーティストの変遷であり、とある一視点を提示するための記事でもあります。

2017~18年にサブスクが一般的に普及し始めて自分の周りでも使い始めている人が増えてきて、自分も重い腰を上げてSpotifyに登録した。最初はCDを取り込んでライブラリに登録する、という手順を踏まずにワンボタンで音源を次々追加されてしまう手軽さに、これではアルバム一枚ごとの記憶が希薄になってしまうのではないか、自分で自分の聞いたものをコントロールできない、良かった作品の名前すらも忘れて思い返すことができなくなるのではないかと少し怖かった。実際この問題は未だにある。それを解決するために、ブログをやっているという側面も少しある。
Spotifyを始めるまで、自分が新譜を聴く機会というのは極端に少なく、リリースからある程度経ってのディスカスを用いたレンタルか、もしくは何ヶ月かに一度行く東京のタワーレコードやユニオンで欲しいものリストを眺めたり、試聴機で聞いて気になったものを買っていた。予算的にも限度があったし、年に数枚とかだったと思う。それがサブスクで、そういったプロセスを経ずとも次々と音源をチェックできるようになった(なってしまった、とも言う)ことで、人生で初めてリアルタイムでシーンを追えるようになった。shameは丁度その時期に出てきた新人アーティストで、現代のポストパンクシーンの旗手、と言った見出しからもJoy DivisionやThe Pop Groupが好きだった自分は興味が湧いた。ブルックリンもインディーポップもポストパンクリバイバルもリアタイできなかった自分が今なら流れに乗るチャンスだとも思った。Idlesも話題になり始めた頃で、ポストパンクが今になってちょっとヒップになっていた雰囲気もあった。
サウスロンドン、というワードをインタビュー等で度々見かけるようになったのもこの時期で、このワードを知ったのもshameのインタビューからだ。Windmillというライブハウスを共通項にした面々が注目され始めていて、そういった地元アーティストをフックアップするためのZINE(So Young Magazineというタイトルで現在日本版もリリースされている)やライブ企画などをしていたのが少しずつ世に出始めた頃、というかその着火点の一つとしてこのアルバムがあったと思う。shameはインタビューでもまだアルバムはリリースしていない同シーンのクールなバンドの仲間を多数上げていた(Goat GirlやSorryやHMLTDもこの時点から名前が出ていた)。サブスクがあれば今後出てくる度にすぐ聞けてしまうのかと、あまりにも自分の世界が一変したことにまだ戸惑いながらも正直わくわくした。Songs of Praiseはそのきっかけとなった作品で、一つの体験として思い入れが深く、サブスクで聴いた後もライナーノーツが読みたくて今はもうない秋葉原のタワーレコードに買いに行った(一緒に当時出たばかりのDavid ByrneのAmerican Utopiaも買った)。
開幕Dust On Trialはクリーントーンともノイジーでもない冷たくて重いギターリフ、ゆっくり立ち上がるよう徐々にラウドになっていくアンサンブル、息が詰まった緊張感のあるM1から、突然風通しよく疾走するM2のConcretはいい具合に吹き抜けを作っていく。鮮烈なMVも良い。半分呟きのようなボーカルスタイルは確かにThe Fallのマーク・E・スミスを想起するし、曲の真っすぐさに対してメロディアスなベースラインが曲を牽引していくのはJoy Division、それこそ初期の激しいライブ音源とshameは重なるし、M6のDonkはKilling Jokeっぽかったり、M7のGold HoleはSiouxsie and The Bansheesを思い出さなくもない。しかし結局これはラベリングに対する後からのこじつけで、当時も自分の中のポストパンク像とは離れたアルバムだなと思っていた。仄暗い雰囲気はあれど、そこと相反するような熱さがあって、ストレートなパンク・アルバムとして聞けてしまう。一音一音の線が太く、音が押し迫ってくる感覚や、そもそも曲がアンセミックすぎる(それ故ブレイクしたのだろう)ことも、自分が思っている=好きだったポストパンクのイメージとは少し離れていた。
10年代後半っていうと様式化されたポストパンク像の議論はもう何周もしていて、それこそ00sにあったポストパンク・リバイバル(もしくはディスコパンクと呼ばれていたもの)と、純粋にポストパンクとされているものは、全くの別物だろうということはかのサイモン・レイノルズも指摘をしていて、00sからずっと続いてきた二分化があったと思う。日本では実際に"アブストラクト・ポストパンク"という別の呼称を掲げて精神性そのものを追い求めるPot-pourriのようなバンドも出てきている。shameは、それこそ直前にブリストルのIdlesが話題になっていて、割と近しい音楽性だったが故に括られたことも要因の一つだと思う。彼らの登場を見ていて、自分は初めて既存の言語の組み合わせで纏めてしまう野暮ったさを認識した。shameはまだメンバーが10代だったということもあり、素直に自分たちの音を鳴らして楽しんでるような雰囲気もあった。そんなことを思いながら、翌年以降次々と出てくるサウスロンドン及びダン・キャリー絡みの"ポストパンク"の見出しを付けられた多数のバンドを追うことが一つの楽しみになっていった。
Dry Cleaning - Sweet Princess EP(2019)/Boundary Road Snacks and Drinks EP(2019)

Dry Cleaningはshameらと同じくサウスロンドンを拠点に活動したバンドで、ただ場所が同じだっただけで実際シーンとの関わりはなかったらしいが、当時このEP2枚は周辺作品だと思って聞いた。ぶっきらぼうなボーカル、骨組みのようなスカスカな演奏はshameやblack midiと比較すると確かに"往年のポストパンク"的で、ただかつてのバンドが持っていた歪さ、チープさのようなものはなく、インディーロックの一スタイルとして作られているように聴こえたし、それ故シンプルにポップで親しみやすかった。Goat GirlやSorryにもインディーロックやガレージロック・リバイバルっぽいラフさがあったし、ポストパンクってもっと冷たいイメージがあったので(それこそ当時だとSavagesやViet Cong~Preoccupationsみたいな)、確かに新しい風を感じていた。
black midi - Talking Heads(2019)

black midiは今では完全に伝説となってしまったバンド。今ではshameと並びサウスロンドンの代表でWindmillでも演奏していたが、重要なのはダン・キャリーがプロデュースし彼のレーベルであるSpeedy Wunderground(名前がウケる)から音源をリリースしていたこと。元々海外ではライブ動画等を通して既に話題の新人という枠だったらしいけど、自分が彼らの名前を最初に認識したのはTalking Headsという曲名のシングルで、スカスカな演奏とスポークン寄りのボーカル、且つ風通しがよくポップな雰囲気もありDry Cleaningと同じくインディーナイズドされた現行ポストパンクの一つとして聞いていた。そう、まだこの時点では・・・。
black midi - Schlagenheim(2019)

2019年の1stフル。なんとThe FallやPop Group、The Smithsでも知られるインディーロックの先駆けにしてポストパンクの総本山Rough Tradeからリリース。膨大な歴史と結びついたのも重要だけど、実際ラフトレの数々の名作に間違いなく連なるべきアルバムだろう。未だに彼らのキャリアの中で最も好きだ。シングルであるTalking Headsからは飛躍しすぎていて正直戸惑ったし、あれを前座に置いたのは巧妙だと思う。M1の953から触ったら一瞬でコマ切れにされそうな鋭利な刃物のようなギターリフの反復と、その裏で縦横無尽に暴れ回るリズム隊、リズムキープではなく野生味全開で躍動するモーガンのフリーキーなドラム(これによってフリージャズ風の混沌が添加される)、それぞれのパートが正面衝突し渾然一体の巨大なノイズと化し、一つの生き物になるような破壊的な展開は今聞いても震える。ポストハードコア、マスロック、プログレ、ジャズのミュータントみたいな側面から類似バンドを挙げることはできるけど、どれも先ほどのshameと同様こじつけでしかなく、本当に新鮮で聞いたことがない音だった。かつてのポストパンクはファンクやダブ・レゲエを取り入れて反復や音響処理という観点から新たな様式を作ったが、black midiはそのスタイルを踏襲しているわけでは決してない(そのスタイルを発展させたものがDFAらポストパンク・リバイバルだろう)。ただ、自分達のやり方でジャンルの境界を溶かして新しいフォーマットを作る=脱構築の音楽として見るのであればこれは確かにポストパンクそのものだった。ポストパンクはロックを否定し、パンクを否定し、そしてポストパンク自体をも否定しメジャーに昇華されていったその何巡目かの先に確かにblack midiがある。
ちなみにスティーヴ・アルビニが当時彼らをフェイバリットに挙げたことも重要。個人的にベストトラックでもあるM4のNear DT,MIはストレートにポストハードコアとして聴けるし、アルビニ一派という意味ではShellacはもちろんUzedaからMy Discoの流れと近いものを感じとれる。M6のOf Schlagenheimはジャズの雰囲気も強いカオスなノイズロックで、これも生音ポストロックの異形の未来の一つだろう。ルーツってわけではないだろうけど、Southern Records発の90 Day Men→Disappears→FACSの変遷や、彼らとレーベルメイトだったSlint +King Crimsonな様相を見せるSweep the Leg Johnnyも思い出さずにはいられない。そもそもこういったポストロック前夜のアーティスト自体もポストパンク現象を下地にした再解釈だったはずだし、FugaziやUnwoundの奥にだってしっかりGang of FourやKilling Joke、Joy Division、Wireが見えてくる。black midiが、というよりサウスロンドン自体が何巡かした後の違う土地、違う若者達によって引き起こされた新しい運動の一つだったと思う。自分がこういったパンク~ポストハードコアの歴史を辿っていた時期に(これは今でも続いているのだが)、リアルタイムでその現行版を直に触れることができたのを嬉しく思う。

2019年と言うとこちらも外せない。Fontaines D.C.は今ではアイルランドのインディーシーンからヒットチャートまで快進撃を見せ、現代のロックスターとして確固たる地位を築いてしまったけど、当初は新進気鋭ポストパンク軍団の一バンドという認識だった。サウスロンドン出身ではなくともWindmillで多数ライブをしていたり、shameのツアーに帯同したりダン・キャリー(先のblack midiとも繋がる)がプロデュースをしていたこともあって何かと関連付けて語られる。Partisan Recordsと契約していてレーベルメイトのIdlesが彼らを推していたり、Rough Tradeが年間ベストで彼らを1位にしていた事実も重要なトピック。black midiやSquidと比べるとかなり真っ当でラフにパンク〜ポストパンクを鳴らしてるバンドではあるけど、地元の先輩Gilla Bandから受け継いだノイジーなサウンドスケープ、全体的に飄々としてるようで憂いも帯びた仄暗いチャッテンによるボーカリゼーション、半スポークン的ではあるけど結構ちゃんと歌心もあり、アルバムをリリースする度に世界観を深め今ではスタジアム級まで名を轟かせた。初期作品の感想及びディスコグラフィーはこちらで記載。
Squid - Bright Green Field(2021)

ブライトンのSquidはFontaines D.C.と同じくサウスロンドンではないが、こちらもダン・キャリーが手掛け、且つWindmillに出演していたということで共に語られることの多いアーティスト。音楽性としてはポストロック+ディスコパンクでクラウトロックの要素も強く割とこの中では反復を軸にしていて踊れる。Foalsも思い出すがもっとフリーキー。そしてWarp Recordsからリリースしているという事実がとてつもなく大きく、Warpはそもそも活動初期にSweet Exorcist(ex.Cabaret Voltaire)がいてポストパンクの派生としても聴くことができたし、レーベルを代表するAutechreやNightmares On Waxは元B-BOYでヒップホップ経由のファンクの遺伝子がある。そしてなにより「ファンクをカバーするパンクバンド」であった!!!(chk chk chk)がWarpにいたことも重ねることができ、その系譜の現代版としてSquidを連ねられるはず。また23年リリースの2ndでジョン・マッケンタイアと組むのもシーンの横断としては直球すぎる。後述のBCNRと同じくポストロックとの交錯にぶち上がった。この辺に関しては別記事で纏めた。
Black Country, New Road - For The First Time(2021)

Ninja TuneよりリリースされたBlack Country, New Road(以下BCNR)の1st。彼らもサウスロンドンで活動したバンドで、パンデミックで活動が難しくなったWindmillのためにblack midiと共にBlack Midi, New Roadとしてライブイベントを開いていて、リリース前から話題になっていた。当時はリアルタイムの音楽シーンを追うのとは別に、自らのルーツを掘り下げる過程で90年代のポストロックやその前夜となるポストハードコア、スロウコアに夢中になっていたんだけど(その旅路は当ブログのdiscographyや記録シリーズで追うことができる)、BCNRはまさにその系譜の色があり、M2のAthens, FranceからSpiderlandを青写真としていることは明白だった。マスロックをスロウ再生したようなカッチリした反復→スロウコア展開はまるでGood Morning, CaptainとDon, Amanのいいとこどりに聞こえたし、M3のScience Fairという曲の歌詞には実際にSlintが登場することを後にライナーノーツで知って驚いた。Science Fairは不協和音ノイズを使ってドラマティックに展開してくのはSonic Youthも思い出す。M4のSunglassesは生音ポストロック的なイントロからホーンセクションが合流、ビートはミニマルながら全体ではあまりそう感じさせない、フォークやジャズ、ポストクラシカル的な静謐要素はただのポストロックのリバイバルではない現在の肌感覚を伴っていた。1曲1曲がじっくり聞かせながら最終的には混沌へと到達する確固たる世界観を持った濃密な6曲40分。まさか現在進行形のUKシーンで、SlintやSonic YouthといったUSオルタナの地盤を作ったレジェンド達を思い出すバンドが出てくるとは思ってもみなかった。USインディーは10年代以降ずっとリバイバルしていたし、そういったものも好きだったが、本当に聴きたかったものはこれだったかもしれないと当時思った。ただ、このBCNRのゆったりと情景を作るスロウコア~ポストロック感覚はdeathcrashというバンドの影響によるものだというのを後に知り、彼らにこれ以上の衝撃を受けることになる。
ちなみにBCNRの音楽性に関しては自分はたまたまポストロック~USオルタナ史観から見つめ直してしまっただけで、black midiと並べてKing Crimsonという共通言語で語ることも可能だと思う。そして上記のele-kingのレビューではスプリングスティーンの引用やフリー画像を使ったアルバムジャケット、参照、参照、参照・・・と繰り返されるScience Fairの歌詞といった側面からもまさにインターネット・アーカイブ世代の大量の引用が含まれたアルバムであることがわかる。Science Fairでは自分達をSlintのトリビュートバンドと称することもあり、彼らもそれに自覚的で、まさに冒頭で自分がサブスク導入時に感じたことでもあるのだが、ナチュラルにその感覚を伴って出てきた世代であることを表してるだろう。何を選び取るかに思想が込められるし、今現在サブスクで音を聴きながら記事を書いている自分自身も見つめ直したくなる。そんな彼らがNew Roadを名乗ること、そして何よりWarpと兄弟のようなレーベルでありながらよりヒップホップ=サンプリングに寄ったNinja Tuneからリリースされていることはとても象徴的な事実だろう。

サウスロンドン出身のdeathcrashはBCNRと共にツアーを回り、ライブを見た彼らの音楽性に多大な影響を与えたらしい。音楽性としてはSlintやCodeineといった90年代のスロウコア~ポストロックを鳴らしていて、21年に出しているPeople thought my windows were starsというEPもすごくMogwaiっぽい。先述の通り自分はずっと過去のスロウコア~ポストハードコアを聞いていたため、まさかUKポストパンクシーンの人脈からこんな音楽が出てきたことに衝撃を受けた。ただ、そういった往年のレジェンドと比べてもdeathcrashはスロウコアの空間を捉える静謐なサウンドスケープ+現代のアメリカーナにも通じる暖かいメロディが同居した唯一無二の親しみやすさがあり、最小限でありながら比較的しっかり歌があるスロウなエモとしても聴けた。例えるならMineralやChristie Front Driveからもアクセスできる間口の広さがあった。決してバーストを際立たせる前座の静ではなく、むしろ無音にこそ本質があると思わされてしまう徹底して練られた作品世界、密室を感じさせるプロダクション、自分の内面に深く潜り込んでいく瞑想のような曲の数々、ドラマティックなアルバム構成、どこをとっても完璧で、2022年はダントツでこの作品をリピートした。CodeineやRed House Painters、Bluetile Loungeといった自分の心に深く根を張ったスロウコアレジェンド達と肩を並べるような作品をリアルタイムで聴けたことがすごく嬉しかったし、きっとこの作品が無かったら、今こうやってサウスロンドンを省みることもなかっただろう。自分にとって一つの到達点となった作品。来日も勿論行った。こちらも1st及び2ndの個別記事を書いている。
2023年~24年に自分が制作した「pärk イラスト集/私的スロウコアガイド」の着想にもdeathcrashがあった。過去の音楽を記録するだけでなく、それが今のシーンにどう繋がったか、懸け橋になるものを作れないと意味がないという思いがあったのだが、まさにdeathcrashをハブとすることでそれができるのでは?と思った。そこに焦点を絞り、deathcrashとcarolineやBCNRといったバンドとの関わりや、black midiの存在を根拠にした「ポストロック史観から聞くサウスロンドン」というコラムをZINE内で書いた。本記事と被るものもあるが、ポストパンクではなくUSポストロック史から語るものになっていて、Touch and GoやSouthern Recordsの面々と絡めている。冒頭文とコラムの詳細、及びプレイリスト(選曲で大体内容が想像ついてしまうかと)はこちらの記事で公開中。

carolineはサウスロンドンのバンドではないけど、BCNRの人脈が関わっていること、そしてblack midiと同じくRough Tradeから出している事実もあり触れておきたい。何より音楽性がBCNR~deathcrashをSlintとするならこっちはRodan、Rachel's、Tara Jane O’Neilといったルイヴィルの系譜に近くUSポストロックシーンと重ねて聞ける。これによってcarolineも先ほどの「ポストロック史観から聞くサウスロンドン」のキーになっている。carolineはGastr Del Solを思い出す瞬間もあってシカゴ音響派→Tortoise/Sea and Cake→ジョン・マッケンタイア=昨今のSquidといった並列も可能、何よりそういったポストロック周辺をメインで聴いている方にも、これを機にこのシーンに耳を向けてもらえたらいいなと思う気持ちも結構あった。25年に出たcaroline 2は本当に文句無しの超名作。全員におすすめです。
shame - Drunk Tank Pink(2021)/Food for Worms(2023)

shameは21年に2ndとなるDrunk Tank Pinkを、23年には3rdとなるFood for Wormsをリリース。2ndは1stと比較すると往年のポストパンクを思い出す作品で、それこそ1stの時点では別ラインに感じられたblack midiやSquidと今回は近い耳で聴けると思う。1stがJoy DivisionやThe Fallだとしたら、2ndはGang of FourやEssential Logic、肉体的な弾力のあるビートと鋭利なフレーズの反復が軸になったグルーヴィーな作品。とくにM3のBorn Is Lutonは不穏で軽快なリフと後半のノイズ展開のコントラストがヘヴィな名曲。終盤のハードなポストパンクで畳みかける流れも圧巻。3rdは個人的には直球でエモを思い出し、歌の叙情も増して円熟味が出てきた。M2のSix-Packはイントロから相当ファンキーで2ndのグルーヴ路線の延長版。M6のOrchidはイントロのアコースティック・ギターが印象的な、どことなくくたびれた情緒もあってめちゃくちゃ染みる。

そしてblack midiは21年、22年と続々1stの延長線となる新譜をリリースし、2024年に活動休止。ギタボのジョーディー・グリープはソロへ、ベーシストのキャメロン・ピクトンは現在My New Band Believeで活動中。2022年以降のBCNRはよりホーンセクションやアコースティック編成が主軸に置かれArcade Fireに近くなった。2ndリリース直後に1stでバンドの核だったアイザック・ウッドが脱退したことで音楽性が変化、というかもう名前が同じ別バンドに変わったという方が近く、最新作はまたかなり違ったカラーに。1stが好きすぎるため未だにこちらはしっくり来ず、これまでの音源をライブで演奏することもないと公言しているのが個人的に寂しい。もうScience FairやTrack Xなどの名曲を生で聞くことは叶わないのだろうか・・・。
以上です。2026年9月にshameの活動休止が発表されました。元々それをきっかけに書いたわけではなく、単純に一つの記録として書いている途中にその報を受け、偶然ながら区切りのようなものになってしまった。black midiはバラバラになりBCNRも形を変え、shameは活動休止・・・どうしても時が経ったことを実感してしまいます。こうやって書き連ねる中で自分に与えた影響の大きさと、積み上げたものの重さも改めて実感しました。サウスロンドンは、最初は新しい何かを観測していたはずが、気づいたら昔から自分が聞いてきた音楽が別の場所で、別の世代によって新しい形で鳴らされている、という形に変化していったことが見ていて一番面白かったです。しかも自覚して見ていたわけではなく、こうやって書き連ねる中で気づけた部分もある。自身の変遷も含めて紛れもなく個人史でした。今回は一視点を切り取ったにすぎず、PVAやUgly、Sorryなど言及していない愛聴していたアーティストもまだまだいます。Dry Cleaningが4ADと契約したときRough TradeやNinja Tune、Warpと並んで各バンドをどこが回収していくか、というのを見守る楽しみもありました。人によって見方も違うでしょう。とりあえず自分の主軸はここだったかなぁと。

























