朱莉TeenageRiot

棚,日記,備忘録

邦楽オールタイムベスト⑤

今回は羅針盤とGREAT3です。


 

羅針盤 - ソングライン(2000)

最近サブスク解禁もされた羅針盤3rd。フロントマンである山本精一は元々はボアダムスROVOと言ったちょっと実験的なバンドの人という印象が少なからずありますが、そんな中羅針盤は弾き語りと近い感じで聞けるフォークロックとかそういう素直な日本の歌ものとして聞けるフォーマットでゆるやかにやっていてソングラインも割とその形(というか羅針盤は全部そう)。なんですけど、やっぱり、そういう出自が少なからず関係してると思われるような練りに練ったギターサウンドとか、ノイズとか音響とか、もう音色一発で感情全部持ってかれるような破壊力があってそれはもう1曲目「がれきの空」から完全にやられる。空間的なイントロのギターワークだけで涙を誘う。からの、今度は急に音減らしてゆったりとした歌ものが何事もなく始まるのも非常に彼ららしいですが、この最小限に音を絞ったアンサンブルはちょっとスロウコアを思い出したりしつつ、でもアメリカーナとは距離あるし、個人的に後期のOGRE YOU ASSHOLEと近い雰囲気も感じたり(これはまた後述)します。

続く「サークル」「リフレイン」からは割と軽快なフォークソングとかカントリーを想起する部分もありますがやっぱ曲は長尺で、全編通してスローペースのままギターの掛け合い中心にセッションしてくみたいな色が所々見えるのちょっとだけGrateful Deadのライブ盤思い出したりとか、Procol Harum風の曲もあるし、そいう60sサイケからのフィードバックみたいのもふんだんに出しつつこれはアドリブしやすそうだし、ライブアルバムとして残ってはないけど羅針盤って実はかなりライブバンドだったんじゃないかなぁと思います。インプロでいくらでも気持ちよくなってられそうだしギターの轟音も凄まじそうだし。

で轟音と言えばB面がまた神がかってて「波」はノイズの海の中で浮かび上がってくるフォークソングとも言える曲でシューゲイザーファンとかにも行けると思います。近いフィーリングというか。そっからねぇ・・・もう「ひとりのうみ」「ソングライン」「羅針盤」で終わるの、名曲だらけの圧巻のB面。個人的に表題曲である「ソングライン」ヤバイですこれは、ゆったりとしたフォークソング調、めくるめく変わってくメロディーの切り替えで展開していって、音だけでストーリー仕立てのようになってるし後半はどんどんサイケリア渦巻くノイズの中に潜っていき絶頂をキープしたままループしていくという。これはヤバイね、もう本当に心地がよくてプログレ・・・とも違うけどYo La Tengoとか好きな人にもめちゃくちゃオススメ。ノイジーな都市レコードとしても聴けます。

 

羅針盤 - 会えない人(2003)

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4曲入りEP、とは言いつつ相変わらず曲が長いから30分超えてて普通にフルアルバム聞く感覚で聞ける羅針盤で最も好きな一枚。OGRE YOU ASSHOLEの会場でよくご一緒していたネットの知人から是非聞いて欲しいと言われて知ったのでこのバンドと出会ったのもこの作品で、ソングラインと同様濃密なサイケ感、ノイズ要素もある長尺フォークソングみたいな印象を受けてOGRE YOU ASSHOLEのライブから確かにこれはかなり繋げることができるぞと感動したことを覚えてます。で調べてみたらなるほどボアダムスの人なのかと妙に納得したり・・・。

で今作、「会えない人」「さけび」とド名曲続きでソングライン(曲の方)の後半のループ感をより更に洗練したみたいな感じで、あの頃は割と曲展開がドラマティックでちゃんとカタルシスがあったんですが、今作はそういう感じではなく、むしろメインとなるループさせる歌メロそのものが初期の羅針盤楽曲のどれよりもキャッチーで、本当にアコギ一本で歌っても映えそうなポップさがあるんですよ。だからこそ曲展開をドラマティックへ・・・て方向じゃなく、むしろこのキャッチーな歌メロを主軸に繰り返しながらより轟音を、ノイズを浸透させてくという感じで、電子オルガンからは60sサイケの雰囲気もあるしで、よすぎる。本当に気持ちよすぎる。

「さけび」では延々とドライブしていたくなるような序盤のフォークロックから丁度中間より轟音ギターソロが炸裂し始めどんどんこれまたフィードバックノイズの海に潜ったりフォークロックに戻ったりをスイッチを切り替えるように行き来してくんですが、これも感動の連続でこんなんライブで見たら絶対絶頂していただろうなというの間違いなく、OGRE YOU ASSHOLEの「ロープ」「フラッグ」と言った大名曲で得られるカタルシスを、音源の、この10分で堪能することができる曲だと思います。オウガ程リズムに寄せてはないけど、その代わりメロディアスに寄せてるのがこっちだと思う。でニール・ヤングのカバー、これもルーツ開示というかまぁ当然だよねという感じではありますが最後「不明のうた」のちょっとミニマルな質感は後に続くアルバム「福音」「いるみ」に続くかと。

 

GREAT3 - METAL LUNCHBOX(1996)

GREAT3の2nd。アルバムタイトルにもなってる表題曲が大好きで、いきなりローゼズの2ndもろでめちゃかっこいいなと聞いてると途中ギターがジミヘンみたいになるとこでこれまた笑顔になるし、途中からローゼズにもジミヘンにも無いような哀愁漂ってきてGREAT3節全開のメロウネス出てくるの神バランスだなと思いました。

ローゼズに例えましたが他にもディスコやファンクを参照したであろう曲もあってというかDISCOMANというタイトルももろだけど、でもマンチェスターというかUKロック経由ってよりも純粋に80sのソウルやファンクに直接影響を受けてやってる感じもめちゃくちゃあるし、元々渋谷系に括られてたのも相まってこの頃からハッキリとしたルーツがわからないGREAT3の闇鍋感が全開。ギターポップ→マンチェとかシューゲイザーとかそういう流れがベースになったバンドはもっとわかりやすく「オルタナ」て言いたくなる感じになると、思いますがGREAT3にはそれを感じないというか・・・いや、影響はあるのかもしれないが、本人達のミックス具合やアウトプットがうますぎてそうならないのかもしれません。

ちょっと歌謡曲っぽく聞こえるのがミソかもしれないし、カオスというか、奥底が見えないというか、これは僕がグランジオルタナとかUSインディーとかシューゲイザーから出てきたリスナーってのもあるのでしょうが。しかしART-SCHOOLとかが大リスペクトしてるバンドじゃんGREAT3、この後ジャズの色も出てきたり00年代ではポストロック人脈とシカゴで合流するし、それも含めて本当に掴みどころがない。

 

GREAT3 - Without Onion(1998)

大名盤4th。個人的に90年台という括りで見てもトップクラスのアルバム。「Sabbath」て1曲目からも前作で見せたジャズっぽい片鱗を薄めてノイズと混ぜてフィルターかけちゃったみたいな、夢心地なんだけどちゃんと踊りたくなるくらいファンキーだし、完全に入り込んでしまう名曲。からの「Chop The Meat」で、これを数年前に知人にオススメしてもらってGREAT3と出会って衝動的に5thくらいまで借りたんですが、サイケなUKロックみたいなギターをこんなにアグレッシブにアッパーにしちゃってキラーチューンに仕立て上げるって感じで、Kula Shakerの1stの頃とか思い出すような前のめりすぎるドラム録音も衝撃で僕はこの曲聴いてファンになったと言っても過言ではないです。デカイ声で歌いたくなるようなサビの気持ち良い曲ですね。

「Golf」も最高でホワイトノイズみたいな心地いい夢見心地な世界に落とし込んでくれるけど、ボーカルはなんかもう一周して悟っちゃったような安らかなくたびれ感みたいのが出ててこれも1st2ndではあんま無かった感じだなと思うんですが、ピコピコ鳴ってる電子音とか水中で鳴ってるような透明感あるノイズとか、80年代っぽいメロウさと90年代のザラついた質感の融合だなという感じします。地味にART-SCHOOLのButterfly Kissの元ネタ。長尺のインスト曲も入ってるけどこれは電化マイルスっぽくて、数年後シカゴ行ってTortoiseマッケンタイアとアルバムを作る彼らですがここで繋がってくるというか、あの辺のポストロックのルーツとして電化マイルスは間違いなくあるはずなので、今聞くと伏線回収という感じ。でも今作音響へのアプローチや浮遊感が強くかなり実験的になってるしポストロック行くのもめっちゃ納得してしまった、シューゲイザー好きな人でもつまみ食いできる作品だと思います。でこんなにメロウで浮遊感ある音世界なのにドラムがめちゃ跳ねててタイトなのが最高すぎる、この感じGREAT3ならではって感じするし白根さんは本当に最高のドラマーだなと。

B面は結構今までのGREAT3のパブリックイメージそのままアップデートしましたという王道が続きますが「Kiss To Domino」とか「Soul Glow」とかほんとそんな感じで、Stone RosesとかThe Verveの2ndとかを思い出してたMetal Lunchbox期も思い出す感じで、どことなくバラエティ番組で流れてそうな雰囲気がありますよね。やっぱ総括+αていう最強のアルバムですよ、97年だしリアルタイムで聞いたら絶対大興奮しただろうなと本気で思う作品。

 


 

邦楽オールタイムベスト④

最近聞いてたものメインに。


 

 

BLEACH - 起爆剤(2001)

ZAZEN BOYSのMIYAが加入していたというバンドだというのをRYMでの邦楽ランキングに載っているのを見かけて知りました。いやあのランキング本当にすごいんですがちょっと気になったのがやっぱNUMBER GIRLは絶対いるよねってのとあとポストハードコアのタグがついていてそりゃそうだよね、と、じゃあ他に日本のアルバムで同タグがついてるのってなんだろう?カウパーズ?キウイロール?とか思いながらページ内検索をかけたら引っ掛かったのがこのアルバム「起爆剤」で、とにかくこのジャケ、この名前、そしてポストハードコアとしてSAPPUKEIと並んで紹介されているのを見るだけでもう音も聞かず即購入。

で届いて視聴、一発であぁこのベースはMIYAさんだなとわかるZAZEN BOYSでの衝撃的スラップベースソロみたいなのはそのままBLEACHから地続きだったのだなというのが1曲目の「視界の幅」から即わかり、Nomeansnoをこの過激すぎるベースでズタズタに引き裂いてしまったかのような、全身刃物のようなガレージ・ハードコアがノンストップで爆走する8曲23分、とにかく前のめりにひたすらまくしたてるリズム隊の快感と、もうオルタナだとかハードコアだとかそういう枠を飛び越えて一瞬で僕のオールタイムベストに食い込んでくる程に衝撃を受けました。ヤバすぎます。一々キメがかっこよすぎるとこもNomeansnoを思い出すしMinutemenとか好きな人も是非。とは言いつつ本当に衝動的なパンクで全部解決してしまいそうなパワーがありとにかく聞いてこんな全身熱くなってくるようなロックアルバム久しぶりに聞いたかもしれない。

文脈はありつつもエモやノイズロックとまで行かず、B面に入ってる「声」みたいなエモーショナルな、半分はやっぱハードコア的なシャウトになりかけてるその直前といった具合の塩梅で歌い上げるメロディアスな曲もあったりするし、ここでのMIYAさんの終始耳をえぐるだけでなく所々ユニークなおかずを入れてくるベースラインも本当にかっこよすぎる。そしてこれ聞いたことでZAZEN BOYSって元NUMBER GIRLと元BLEACHのメンバーがいるのかっていうのを考えるとまたテンションが上がってしまったし、他の二人はLumiouseorangeとBuffalo Daughterなので、ちゃんと系譜があったというかあの頃のオールスター感あるバンドなのだなぁと思ったりもしました。

 

 

ZAZEN BOYS- ZAZEN BOYS4(2008)

4th。今までのキメを多様したポストパンク~ポストハードコア+ファンクと言った作風から離れ3rdで片鱗を見せていたエレクトロ路線でガッツリと作りこんだ「ASOBI」より開幕。今聞くとかなりクラブミュージックに聞こえますね。

ASOBI、今では代表曲として長く君臨しているアンセムですが当事自分はギターロック延長線で聞いたというのもありしっくりこなかった。歌詞もネタなのかマジなのかわからんという感じだったんですが、今聞くとノスタルジック全開なシンセの音色がスカスカのビートに乗る作風に冷たさと温かさが共存していて、本当に向井秀徳はこれを一人で、打ち込みで、肌先まで温度感を感じるくらいの孤独を描写する必要があったんだなと思ってしまう程、寂しさを感じる。10台の頃は「眠らずに朝が来て ふらつきながら帰る」に共感していたけど、地元を出て20台の大半を一人暮らしで過ごした今ZAZEN BOYSを聞き返すと、ASOBIでの「全然聞いてなかったが」でのごまかし方にとてつもない孤独を感じてしまい、深夜の帰路などで聞くとリアリティありすぎて本当にぐっときてしまう。

この流れで聞くと次の「Honnouji」ではASOBIの孤独感の反動にも聞こえるバンドサウンド全開のブチギレファンクをやってますが、「本能寺で待ってる」て言いたいだけに聞こえる一発ネタ感ある歌詞の中でも「ずっとずっと待ってる」と連呼される部分にやっぱり近しいものを感じてしまうし、同路線での「Fureai」「Memories」でも、やっぱ人肌恋しいような、歌詞の節々からこの空気はずっと一貫してるんですね。言いたい事を吐き出してるだけで意味を乗せてるつもりは本人にも無いと思いますが、それでもたぶん、自然と出てくる言葉が孤独を連想させるような、ずっとそのモードで曲作ってたんじゃないかと思う。

「ASOBI」「SABAKU」とあとシングルの新バージョンである「The Drifting / I Don't Wanna Be With You」を除く6曲は全部バンド録音(しかもデイヴ・フリッドマン)、MVもあるっちゅうことで割と象徴的な「Weekend」を代表するようにかなりプリンス色強まったと言える程ファンキー、ただサウンドは今までどおり硬質な鋭角サウンドだしハードコア的な不協和音要素も度々顔を出してきて、この冷たい質感でカッチリとビートを刻むのがめちゃくちゃかっこいい。Jesus Lizardサウンドでファンクをやったような印象もあります。最後の「SABAKU」はZAZEN BOYS初の歌ものであり「割と、寂しい」とナンバガ時代からずっと冷凍都市や少女達に孤独を投影してきた向井秀徳がここまでダイレクトに、打ち込みを使ったソロでそれを表現するのにやっぱり感動してしまう。あの頃から「孤独主義者のくだらんさ」を歌ってきたけど、やっぱずっと寂しかったんだろうなと思うし、冷凍都市から、やっぱ地続きなんでしょうね。

 

 

hàl - blue(2001)

こちらも2001年作のSSWの作品で主にZAZEN BOYSの起源とも言える6階の少女が収録。向井秀徳が作曲及びギターを担当しリズム隊に54-71の二人が入るという無敵の布陣、そしてZAZEN BOYSの形が出来た後に最初のシングルでこれがセルフカバーされるというのもあり割と重要作。NUMBER GIRLZAZEN BOYSの最もわかりやすい接点だという気もしますね。

でアルバムの方に関してはあくまで向井秀徳は「1曲提供した」というだけなので作品としては全く違う雰囲気がありとくに開幕「海の音」からいきなりドープなダブが展開されていくし、「カフェ☆レーサー」「人魚」辺りのメロディ自体はポップなナンバーでもアコースティックメインながら見え隠れするダブ音響的な処理やスペーシーな効果音、ホーンセクションも積極的に参加してきて影を落としたような曇天ぴったりの内向きな空気がずっと続いていくのは同時代の坂本真綾新居昭乃といったSSW達と近い空気感がこちらにもあります。「オートバイ」は別名義ですが曽我部恵一提供だったりもするし、上田ケンジも2曲関わっていてネオアコギターポップ色も強いです。ちょっと暗いけど。

そして6階の少女。このアルバムの中で最も浮いてるようにも見え、むしろZAZEN BOYSバージョンよりも際立つベースラインや靄がかったようなリバーブのおかげで音楽性を超えてアルバムに溶け込んでしまってるような印象もあり、ZAZENから辿って単曲で聞くのとhalのアルバム通して聞くのでは全く違って聞こえてくる。これは1曲目がダブでその印象に引っ張られてしまってるというのもかなりあると思います。ナンバガの楽曲として見ても非常にポストハードコア色の強い不協和音ギターノイズ、もろ54-71直系の不穏なリズムの噛み合いによる殺伐さはとんでもなく、ここに、余りにも向井色の強すぎる"メロディーに乗っかり切らない言葉の連続感"みたいのが出すぎて、どこか歌わされてる感のあるhalのボーカルがぶっきらぼうにしかしどこか儚げに乗るのは今聞いても奇跡というくらいの組み合わせ。良すぎますね。

 

 

BURGER NUDS - 自己暗示の日/kageokuri(2014)

1曲目の「AM4:00」からかなりスロウコア色の強い金属的なノイズワークと肌に突き刺さってくるひんやりとした硬質なアンサンブルが美しくて惚れ惚れとする。完全にこれはポストハードコア発スロウコア経由の色を出しながら、でもサビになると急にそれこそ同時期に一緒に評価されがちだったsyrup16gBUMP OF CHICKENと全く遜色のない疾走ギターロック化してしまう突拍子もない展開に少し笑いつつ、これがいいんですよね。そしてギターロックアンセム「自己暗示の日」へ。この曲単体で聴くのとAM4:00から聞くのじゃまるで印象変わるなぁ。

AM4:00が死ぬほど好きなのだけど完全にこの曲はSlintとかルイビル方面からきてる音で、ダブのアプローチがもろあるとこからもリンクしてくるし、インタビューでもSweep the Leg Johnnyをフェイバリットに挙げてる辺り相当コアなその周辺シーンのファンであったことが伺えます。それこそ数年後ストレイテナーアジカンと言った王道さえもポストロックシーンと呼応していったのに対してこの時点でそれを、しかもジャンルが定義付けされきる前のプレ・ポストロック的なルーツを参照していた辺りかなり早いというか、純粋にここが好きでそこと自分達のいる下北系ギターロックの流れを同一に出力していたことが今聞くとわかって、そんなん最高でしかないわけですよ。僕もやっぱギターロック聞いて育った世代なので今になってパズルのピースがハマった感覚があった。全体的に硬質なサウンドの質感も彼らがグランジやUKロックってよりそういうポストハードコアのラインで考えてみると実はめちゃくちゃしっくりくるのではないかという気がする。とは言いつつ、純粋にいい曲、いい歌、スローテンポではありつつもスロウコアからは大分離れた「タネリ」が真っ直ぐに刺さってきて一番好きな曲であります。

今作はオリジナルアルバムではなく2002年に出た自己暗示の日のシングル+ミニアルバムだったkageokuriをまとめた再発盤。主にシングル側の曲で語ってしまいましたがkageokuri収録でも8分超ある「鋼鉄の朝」とかもろスロウコアのビート感でたまりません。他は結構ノスタルジックなギターロック然とした空気が濃いけどそれでもひりひりとした肌に刺さるような空気はどの曲にもありますね。

 



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SPOILMAN - HARMONY(2022)

SPOILMAN - HARMONY(2022)

気が狂ってる。狂気を全身に身にまとった新しいSPOILMANワールド全開の衝撃作。先行配信もPVも無し、全曲新曲という1年足らずにこれが出てきたことに驚いてしまうほど前作から突拍子もない変化を遂げていて、いきなり1曲目の「Cairo」では前作でのパンキッシュなイメージがずっとあったSPOILMANからはかけ離れた12分の大作で内5分がギターソロとかなり攻めてます。それ以外のパートもかなり展開が多く、とくに耳元でのたうち回るように不規則に駆け回るドラムがとにかくものすごくてホラー映画みたい。1st「BODY」でのノイジーで爆発的ポストハードコアメドレーとも言えるラスト数曲をぶっ続け12分即興的にやったような印象もあって、ライブでのインプロゼーション要素をうまいこと音源に落としこもうというのが割と今作の特徴かもしれない。2曲目の「Tiramisu」もそうで以前ライブで見た長尺のノイズパートがそのまま音源に入ってまさに今即興で鳴らしているような、現場にいるんじゃないかと肌先まで伝わるライブハウスの空気感が完璧に音源に保存されてます。開幕2曲からもうアルビニ録音だとかShellacやらJesus LizardやらMinutemenやらそういった今まで彼らの作品から感じてきた影響や文脈についてもうそんなこと言ってる場合じゃないだろというくらい全部断ち切って、アンダーグラウンドの孤高の帝王のような、ノイズとフリーキーなボーカルとアンサンブルの同居の仕方がコンセプトアルバムにすら聞こえる独壇場。

そして個人的に結構刺さってきたのが「Neight Fence」「Happy Life」辺りの路線で、シンプルながらじわじわと迫ってくる不穏なリズム隊とこのスカスカっぷり、スロウコアとも比較できそうな「静」方面の中から狂気が滲み出ていて、この2曲での団地ノ宮の弥子氏を迎えた女性ボーカルとの掛け合いが絶大にこのアルバムの解像度を上げてくれてて、それこそ今までのポストハードコア~ジャンクロックなスタイルからじゃ絶対体験できなかった、破滅的で、少し耽美な・・・ちょっとBlonde Redheadとかも思い出すような、この世のものとは思えない空気がある。最終曲「Sewer Dwellers」はこの路線の究極とも言えるスポークンワーズっぽさもあるカシマさんのボーカルが淡々と続きながらもどこかポップ、と思いきや徐々に徐々に胸の奥が詰まるような体の内の奥から何かが張り裂けて出てくるかのような、新しい生命体が生まれるその瞬間を見ているような耳元にじわじわ迫ってくる生々しすぎるドラムの録音にゾワっとする。

数か月前に出た前作スプリットに収録されてた「Pure Puke」ではカシマさんのフリーキーなボーカルをまるでギタープレイに投影したかのような、気狂いジャンクギターと言いたくなるマスロックとはまた違う奇怪なフレーズを弾きじゃくる姿が見受けられそのまま疾走していく3分足らずのパンクロック(?)にすごく惹かれ、このミュータント感は新境地かとも思ったわけですが、それどころじゃなかったし、Pure Pukeはたぶん今作が作られるであろう地盤から出てきた、それこそ新しいSPOILMANからの1st~2ndの従来の作風をリメイクという聞き方もできたのかもしれない。そして今作はその地盤から、これまでの再出力とは遠くかけ離れた・・・今までのスタイルから完全に脱して凶悪なノイズが至る所から体を蝕んでいくような、かといってノイズミュージックやノイズロックのような前衛的な空気は無く、あくまで3人がバンドで合わせている姿を想像できるような音に仕上がってるのがとてもSPOILMANらしく、そしてSPOILMANでしかありえない〇〇のフォロワーと言う聞き方を一切させない確固たる作品。90年代にリアルタイムでTouch and GoやSkin GraftやAmphetamine Reptileのリリースを追っていた人の気持ちは自分にはわからないが、それでもこの時代に毎年出るSPOILMANの新作を楽しみにしながらライブに通うことができるのを、本当に嬉しく思います。最高。

 

 

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Butter Sugar Toast - Extended Play I(2022)

最近リリースされためちゃくちゃかっこいい国内ポストハードコア作品についてです。


 

Butter Sugar Toast - Extended Play I(2022)

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Butter Sugar Toast初EP。ボーカルTakujiro氏の強烈なDischord Recordsへの憧憬はいたるところから伝わるんですがかと言ってFugaziフォロワーだとかディスコーダントだなんて言葉一つで例えられるような音楽性ではなく、もうその手のポストハードコア~ノイズロック周辺を全て取り込んでオリジナルとして衝動たっぷりに出力された衝撃の六曲。まるでHeroinを原体験してるかのような印象すら抱かせてくれる、そういったHeroin以降のサンディエゴのカオティック勢~Repititaion以前の初期Unwound、ポストパンクにも通じそうなキリキリとしたノイズと緊張感からはThe ExやUzedaといった硬質なジャンクロックも思い出すし、Slintのような静寂の中に狂気を孕んだような緊張感とダイナミズム、そして聞いてるだけで腹の底から熱いものがこみあげてくるようなエモさがあってHoover→Four Hundred Yearsのラインと近いものも感じます。

初ライブを見たんですが本当に衝撃だった。SPOILMANやAKUTAGAWA FANCLUB、Teenager Kick Assと言った本当に初ステージとは思えない程シーンを象徴するような錚々たる面子に囲まれたにも関わらず、そこに全く負けることの無い劇的パフォーマンスに完全にその場で言葉を失ったし、同会場にいた人はたぶんみんな同じ気持ちだったと思います。その初ライブから1ヶ月でレコーディングされたスピード感はこのリアルタイムの空気そのまま保存したかのような恐ろしく生々しいDIY感にまみれた録音、フィジカルの方では一つ一つハンドメイドで作りジャケの絵も手書きのため同じものは存在しないという制作スタイルまでハードコアシーンへのリスペクトを感じるし、この徹底ぷりに脱帽。

スロウコア色がとても強い一曲目の「Sink」を聞くと本当に泣いてしまいそうになるくらい僕にとって"エモ"として刺さってくる。これがライブ一発目で披露されたとき今一番聴きたい音楽が今一番完璧な会場で鳴っているというこの感情を一生忘れることはないだろう。どの曲も衝撃ですが最後のMushroom Kingdom~Undietの疾走間とライブハウス中を包み込む(というか収まりきらないような)過激なノイズと爆音にぶっ飛ばされた。とくにUndietはゴリゴリのベースラインをノイズの隙間からうまく聞かせることでしっかり轟音ノイズの中に1本軸を作ることで生まれるグルーヴ、隙間を作ることによるノイズでのカタルシスが本当に気持ちよくてかなり中毒性がある曲です。家で聞いてても叫び声を上げるのを我慢できなくなるような感じ。bandcampのEPの方ではライブ音源もセットでついてくるのでこちらも是非オススメ。

 

The Keeley/SPOILMAN - Peaky(2022)

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そしてこちらも今年出たばかりのSPOILMAN及び盟友The Keelyeのスプリットシングル。関連作としてどうぞ。ジャケがめちゃくちゃかっこいい。Butter Sugar Toastをライブハウスに引っ張り出したのもツイッターで投稿されたスタジオ演奏動画を見たSPOILMANのカシマさんが声を掛けという繋がりもいいです。完全にリンクしたサウンドだしもし自分が海外からこれらのバンドをインターネット等を通して知ったらこのアンダーグラウンドシーンに恋焦がれただろうし、そんなシーンが国内リアルタイムで今かなり近い位置から体感できているというのは一音楽ファンとして本当に恵まれていると心から思います。

The Keeleyは元々ポストハードコアというよりはインダストリアル~ポストパンクのような鋭利でノーウェーブ的な聞き方をしてたバンドで、昨年のEPとかもかなりエクスペリメンタルなビートミュージック的側面があったんですが今回かなり生々しいバンド形態の色の強い曲に。SPOILMANとセットで聞くからこそってのもあるかもしれない。人力Ministryのような、ポストハードコア色強いとは言いつつもやはりソリッドなポストパンク~インダストリアルのメタリックなヘヴィさも存分に滲み出た「硬質なジャンクロック感」はもうポストパンクと融合して全身刃物になったUnsaneという感じ。

そしてSPOILMAN、もうSPOILMAN節が全身から滲み出たギターリフでじわじわと這いよる不穏さはもう貫禄すらあるのですが、今回スプリットというのもあって録音にThe Keeleyのメンバーが関わったらしく今までとは違った方向性、曲自体はかなりSPOILMANでもギターのソリッド感がめちゃくちゃ増してて金属的なサウンドになってます。例えば前作は全体的にかなりスカスカでギターよりもリズム隊の絡み合いを楽しむといった側面が強く、ポストハードコアというよりはMinutemenとかを聞く感覚で聞いたんですが、今回はむしろギターサウンドが前面に出ててカオスなギタープレイの内側にリズム隊が内包された感じというか、パート毎の分離が良かった昨年の2ndとは全く違う感覚で聞けます。というよりそのおかげでカシマさんのギタリストとしての魅力を存分に楽しめるんですが最終曲Pure Pukeでのこの録音による高速ジャンクギターは圧巻、ジャンクな質感と芯の通ったソリッドさみたいのが同居してて凄まじいです。もうすぐリリースされるらしい次作も楽しみ。

 

the pillowsの好きなアルバム

the pillowsに関して現在の活動をちゃんと追えている状態ではないんですが、一時期の自分にとっては間違いなく一番好きなバンドとして長く君臨してたのもあって、思い入れのある時期だけまとめます。邦楽に関しては定期的にまとめてきたけどpillowsは好きな枚数が多くて一個分けたかったというのもありますね。


 

Please Mr.Lostman(1997)

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代表作。バンドの創始者だったリーダーが脱退して残ったメンバーでもうやめようかと何度も考えたみたいですが、最後にやりたい路線やってやり切ろうとレーベルの反対を押し切ってまで出した「ストレンジカメレオン」がしっかり受け入れられこの後の活動に繋がったという有名なエピソードに惹かれて聞いたこと覚えてます。実際もう解散寸前というか、フロントマンの山中さわおのどうしようもない孤独や不平不満をぶちまけたようなストレンジカメレオン、に続くTRIP DANCERやSwankey Streetと言った同路線のシングル三部作、そしてそれに連なる表題曲でもあるPlease Mr.Lostmanという文句無し名曲が並び、ロック路線へと大きく舵を切り後のpillowsのイメージを作り上げた第三期開幕のアルバム。この体制で20年以上経つ今でもずっと続いてるのですっかり1st的ポジションで語られること多いですが、キャリア的には5thになりますね。

元々ネオアコAORに傾倒してたジャンルをやってたのもありバンド名の由来もチェリーレッドのギターポップ名コンピ「pillows and players」から取ってるし、この頃はまだ以前のUKロック然とした空気がめちゃ濃く残ってて、SUICIDE DIVINGとかかなりマンチェっぽい。「彼女は今日、」「ICE PICK」ら辺もUKロックで今聞くとTRIP DANCERはもろSome Might Sayだし・・・となるんですがこれは後のpillowsもそうなんですが、中々ダンスミュージックの方にはいかないんですよね(二期までではちょっとあった)。メンバー全員ローゼズ大好きでもFools Goldには寄せないしこの後の彼らのキャリアからもそういグルーヴ重視の方向にはガッツリやることない気がしてて、シューゲイザーにも行かずUSオルタナやインディーロックと融合してやってくのはさわおさんのポップミュージック趣向というかやっぱメロディーが第一だよねって部分なんじゃないかと勝手に思ってます。

歌詞については語りつくせないくらい名曲だらけのアルバムで、「僕らは間違いながら何度も傷ついたけど 信号が何色でもブレーキなんて踏めない」「僕の振りかざす手があの空に届いて あの星を盗み出せたら何か変わるのか」などなどいつ見ても泣けるわけですが、この辺から感じるやるせなさというか、売れて色んな人に認められたいという気持ちとセルアウトすることへの反発に自分から板ばさみになってるようなのが伝わってくるのもすごく良いんですよね。一度売れ筋を目指したにも関わらず失敗してしまった第二期があったからこそってのもあると思うんですが、そういう作品が出る経緯含め大好きなアルバムでした。

 

LITTLE BUSTERS(1998)

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これも代表作。BUMP OF CHICKENによるハイブリッドレインボウのカバーが有名になったおかげで原曲体験として聞いた人も多いんじゃない?て思うけどまさしく僕がそれで、これを聞いて関連作とか前後作とかバンドのことを調べてく内に上記のロストマンという会心作のこと知ったりしました。そしてロストマン成功により自信をつけたさわおさんが今後その路線で行くのを決定付けた作品というか、決意表明なのが今作だと思います。てかジャケ良すぎ。

この後アメリカのオルタナティヴ・ロックへどんどん傾倒するpillowsだけどこの頃はまだUKロック路線みたいのも残ってて、そのおかげでUSのグランジオルタナなザラついた音とブリットポップマンチェスターっぽい空気感が溶け合っていて1曲の中でも同居していることもあり、割とこの後の所謂00年代ギターロックという邦楽の路線にも繋がってく要素とかもあったりして、このざっくりとした「90年台っぽさ」みたいのがとても愛しくなるアルバム。前作を踏襲したしんみりとした空気感もどことなくそれっぽいですね。

開幕の「Hello, Welcome to Bubbletown's Happy Zoo」はもろthat dogだけどヘヴィなギターサウンドグランジとも接続できると思うし、名曲ハイブリッドレインボウは元ネタがBlurのsong2だという意見もあるようですが言われてみるとリフは近くて(でも時期近すぎて微妙だと思います)、あの頃のBlur自体がUKブリットポップからUSのインディーロックに寄ってもろNirvanaPavementに影響を受けていた時期なので、出自というか同じ時期に同じバンド達を体験したってのも含めてリンクしてくるんじゃないかなぁと。

あとは特筆すべきは吉田仁のプロデュースによるギターの爆音感が凄まじく気持ちよくて、これはグランジ色強い次作で更に顕著になりますがとくにアナザーモーニングはイントロの出音のインパクトはいつ聴いてもめちゃくちゃかっこいいですね。でこれRideの「Like a Daydream」をpillows風に解釈した曲だと思います、Rideのときもアルバムであの曲のインパクトすごかったし。歌詞も「ああ今日は新しい僕の誕生日なんだ」と言ったこのときの心境をもろ表しててどん底で出したロストマンを評価してくれたファンへの感謝というか、ハイブリッドレインボウの「ほとんど沈んでるみたいな飛行船」「明日を持ってる」とか、こういうありのままの自分達をうまく昇華した名曲がたっぷり詰まったアルバムであり、この後長きに渡る活動の中で歌詞が再登場することもあったりして、pillowsのバンド通してのストーリー性(あとからついてきたって感じだけど)の強さもよく出た曲だと思います。

 

RUNNERS HIGH(1999)

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いつ聴いても最高・・・。確かこれくらいの時期にnoodlesと出会ってアメリカのオルタナに目覚めたと言っててその路線もろで、吉田仁プロデュースのエッジの聞いた爆音ギターサウンドが色濃く出た作品で数曲を除いてほとんどの曲が爆音です。しかもめちゃ音の分離がいいのもあってリズム隊もラウドに響くしでガンガン脳内に入ってきます。

開幕のSad Sad Kiddieから極端なまでに振り切られた爆音ギターのスイッチのオンオフがとにかく気持ちのいい過剰なラウド&クワイエット、毒っ気たっぷりな1曲目から最高ですね。NirvanaのLove Buzzを想起しつつグランジ一辺倒てわけではなくthat dogやPixiesのようなユニークな要素がメインに出ちゃってるのがよくわかる曲で、Wake Up Frenzyとかは次作にも出てくるDinosaur Jr.及びJ・マスキス感もかなりあります。

個人的に大好きなのがインスタントミュージック、ポップな入りでメロディーもメロウだし、アルバム内でもユル目の曲だと思って聞いてると批判的な歌詞が中々に強烈、でもってサビになるとやっぱり爆音ギターがこれでもかってくらい炸裂していくグランジである必要性たっぷりな曲。あとWhite Ashは彼らにしては珍しいくらいパンキッシュでめちゃくちゃかっこいいんですが、後にトリビュートにも参加するWhite Ashのバンド名の由来になった曲でもあるようですね。

 

HAPPY BIVOUAC(1999)

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年内二枚目で凄まじいリリース速度を誇ってますが、本当にロストマン以降評価されたことによる吹っ切れたpillowsはもう今が売れてようが売れてまいが関係ないって感じのアクセル全力で踏みっぱなしで爆走していきます。てことで1999年作。ありのままの自分を歌詞に投影することの喜びに満ち溢れてるという感じで間違いなく全盛期、幸せな登山なんていうタイトルがそのままそれを表してるし、まだもうやりたいことやりたいようにやってるようなエネルギッシュな空気が音から滲み出ていて本当に好きな時期ですね。

グランジ色っというかギターのヘヴィな感じは少しずつ抑え目になってきてその分Dinosaur Jr.とかPavement、Built To Spillと言ったUSインディー色かなり強まってきてて、ああいうヘロヘロながらどこかエモーショナルなインディーロックをかなり感じるし「LAST DINOSAUR」なんていう曲名はもろリスペクトだし、後にリメイクで有名になるFunny Bunnyもこの頃はシングルですら無い一アルバム曲ですがスカスカでローファイなユルさかなりUSインディー(というよりLiz Phairを)思い出します。あとは有名だけど「Back Seat Dog」「Kim Deal」と言ったPixiesやBreedersへのオマージュがそれを物語ってる気がするし、今聴くと開幕のビバークもBuilt To Spill、Beautiful Morning With Youではギターにマスキスの感じあると思います。あとは捻くれギターリフから始まるカーニバルはシングルとは思えないくらいずっとダウナーな雰囲気が続くんですがこれも大好きな曲です。

この辺のジャンルをかなりリアルタイムで取り込んで反映してたんだなってのがよくわかるアルバムで、PavementのWoowee Zowee(3rd)とthe pillowsのHAPPY BIVOUACはもうこういう音楽が好きですと自己紹介替わりにできるアルバム。

 

Ride on shooting star(2000)

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シングルだけど個人的に曲のパワーも3曲のまとまった作品としても傑作。フリクリだったりグランジのハムスターでおなじみのRide on shooting starはいつ聴いてもめちゃくちゃかっこよく、この時期のpillowsを象徴する曲で、直前のHAPPY BIVOUACやRUNNERS HIGHともまたちょっと違う作風ですがストレートにメロディーもギターリフもめちゃくちゃキャッチー、捻くれギターリフ路線ってのはこの後のアルバムでもずっと出てくる「pillowsの手癖感」みたいのが炸裂しまくり、そしてサビのカタルシスがめちゃ気持ちいい曲でもあります。

Skelton Liarは名曲。ギターの絡みとかリフの感じとかもろPavementですがあそこまでユルくはなくて、それこそグランジのラウド&クワイエット的カタルシスを得る展開はPavementとちょっとイメージが違うし、むしろここまでアッパーに仕上げてくるのはかなりpillows節を感じる。Subhumanは初期のUKっぽさ出しつつ少し浮遊感もあったりして濃密な3曲で全部キラーチューン。EPみたいな感じでよく聞いちゃうシングルですね。

 

Swankey Street(1996)/HYBRID RAINBOW(1997)

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この二作もB面含めて好きなシングル(あとジャケも最高)。ハイブリッド・レインボウのB面に入ってるBeautiful PictureはもろRadioheadだけど初期pillowsの持っていた何をやらかすかわからない怪しさとメロウな哀愁全部乗せって感じでめちゃくちゃかっこいいです。音までAirbagオマージュなのもこういうプロダクション彼らの中では珍しい気がする。TRIP DANCERに入ってるレッサーハムスターの憂鬱も二期以前を思い起こす曲ですがこれもノスタルジー全開で、ロストマンの名曲群とセットで是非。

NO SELF CONTROLL(1998)/CARNIVAL(1999)

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あとNo Self ControllのシングルでB面含めての3曲のバランスは個人的にRide on shooting starに並んで好きです。Wonderful SightはRadioheadの1stもろだし、3曲目のNightmareって曲が彼らにしてはかなり荒々しく、カーニバル(これもジャケが最高)のシングルB面のCome Downとか、この辺りの曲がアルバムの方であんまやらないというかあまり見せない一面のパンキッシュな路線でランナーズハイのWhite AshやビバークのAdviceとか好きな方は是非。

Another morning, Another pillows(2002)

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でサブスクにはないんですがこの辺のシングルが全部収録された「Another morning, Another pillows」は絶対に間違いないというか超名盤。全部聞けます。

 

上記4枚のアルバム+αでシングルとそれ以前の曲をちょっと入れてまとめたベスト「Fool on the planet」で一区切りって感じでしょうか、フリクリ効果で海外人気が出てくるのもこの頃だろうし(てかフリクリのサントラもほぼベスト的網羅具合ですね)。サウンド的には次作の「Smile」も割と延長線上(この4作より大分ローファイなサウンドで更にダイナソーっぽい曲とかあってこれも最高)で更に次の「Thank You My Twilight」からかなりハイファイな路線へと振り切りますが、この辺からさわおさんのメロディーセンスというかポップネスが炸裂しまくって、今回取り上げた所謂「オルタナティヴ・ロック然とした」色はどんどん薄まってパワーポップとか純粋なロックンロールに寄ってきます。Thank You My Twilightは丁度その中間って感じで、まだ曲とかは初期っぽいけどサウンドがめちゃクリアーですね。

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で後期のだと先ほどの「Thank You My Twilight」と2006年作の「MY FOOT」辺りが割と人気、というかすごく聞きやすくてMY FOOTは結構またマスキスのソロ作やLiz Phairを思い出すような曲あったりもして、最初名盤といわれてる90年台のアルバムから入ったんですがこっからの方が全然聞きやすかったなという気もします。ツインギター色も強くなってるしギターもクリーントーンがメインなので90sの作品とはまたちょっと色違いますが、このアルバムThe Strokes意識だともよく言われてますね。

 


以上でした。歴史を総括するような記事でもなくて好きな時期についてダラダラ書いたって感じですがこの後も大体好きです。最後にちょっと触れたMY FOOT以降にレーベルをavexに移して20周年記念だったり武道館ライブやったりとメジャー寄りに、音楽性もよりパワーポップに振り切り始めたり、反動的にその後もう一度解散の危機というか活動休止をした2013年作「トライアル」があったり、それ以降バンドの方やソロの方でまた色々と動きがあって、再始動した現在を第四期とする声もあるようですがちょっとまた違う作風になってきてます。多作なバンドで、他にも好きなアルバムちらほらあるし余り語られない初期作も名盤なので気が向いたらまたどこかで・・・。

 

deathcrash - Return(2022)

Return(2022) - Album by deathcrash 

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めちゃよかった・・・。新譜聞いてここまでハマることってあまり無かったと自分でも思うくらい最近のめりこんでしまってるんで書きます。

daathcrashは元々サウスロンドンシーン内から出てきたバンドのようですが、ポストパンクと括られがちのあの辺の音と並べて聞ける感じではあまり無くインディーロック~フォークロックとして聞けるバンドです。ただ先日新譜も出たシーンを代表するバンドでもあるBlack Country,New Road(以下BCNR)と関わりが深いようで、deathcrashから音楽性に影響を受けたってバンド側から公言してるらしいですね。でそれも一瞬で納得した前作EPのPeople thought my windows were stars(2020)はサウスロンドンとかポストパンクとかそういう言葉をほとんど思い出すことなく聞けて、というかもろ90sのスロウコア名盤を思い出し、MogwaiのCome On Die Youngのオマージュかと思った1曲目からBCNRのSlint化ってもしかしてMogwai経由だったのか?とdeathcrashを聞いて繋げたくなるような感じでした。

 

で今作、近年BCNRもblack midiもどんどん聞いたことない新しい音へとスケール感広げてってる印象なんですが、deathcrashはそっから90年代を更に逆行してアンダーグラウンドへ向かってどんどん純化していくような、スカスカの生音嗜好も増しノイズ要素も激増。CodeineのサウンドでBluetile LoungeやDusterをやった感じで、硬質な音からスタートし徐々に暖めていく中で時折ギターをバーストさせていく展開はエモやポストロックとも通じると思います。

とにかく再生して1曲目「Sundown」はこの寒い季節にしみじみと染みこんでくる名曲。イントロの静寂からそっと楽器の音が入ってくるような密室を意識させるサウンドスケープ、楽器の質感を楽しむような再生して数秒のこの"間"だけでぐっと引き込まれるこの感じは間違いなくスロウコア。Bleutile Loungeの名盤「Lowercase」を思い出す入りで、フレーズそのものよりも一音一音の隙間に浸る・・・まさしく"空間で聞く"という感覚なんですけども。これが、この時点でめちゃくちゃ体に入ってきます。

そっからはもうスカスカでゆったりとした音像の中淡々としたドラムの音響自体を楽しむという己を見つめ直すような極上な静謐パート。ハードコア以降のバンドが持つ硬質で冷たいサウンドを持ちつつ、Dusterと言った暖かみのあるインディーライクなメロディーも同居していてここにかなり現代ならではのハイブリッドさを感じます。そしてここから轟音パートに入っていくんですがMogwaiとかの爆音とは違って個人的にはSonic YouthのThe Diamond Seaを連想するような、あの曲での実験的ノイズパートを引き裂く抒情的なギター音と近い感じで、その後また静寂に戻りテンポを上げながらアウトロへと向かってく三部構成は素朴ながらドラマティック。ハイハットを刻みながら再び轟音をかき鳴らすアウトロへの流れは今まで内向きに渦巻いていたエネルギーが外に向かっていくような、立ち上がって外に歩き出すようなカタルシスがあり涙なしには聞けませんでした。

あとは以外とアコースティックっぽいしっとりした曲も多くてこの辺はアメリカーナ側からも聴けそうだし今The New Year聞いてたんだっけ?と勘違いしそうになる瞬間も多々あり。「Unwind」は最早deathcrash流の遅くて枯れたエモとも言える曲でこちらも名曲。「Was Living」ではリフが映える爆音で入りながら逆にその後長いスロウコアパートに淡々と潜ってくというのも新鮮。ラストの「Doomcrash」はリードシングルだけあってSundownに続くドラマティックなスロウコア名曲にして終着点。

こういう音楽は余裕がないときか、全てを諦めたときに聞きたくなるような、そんなときにそっと寄り添ってくれるような本当に居心地のいい音の隙間なんですよね。昨今の話題になっている新譜とか年間ベスト見て好きそうになったやつを掘っていて、気に入ったアルバムは多くとも本当にビビッとくるもの滅多に無く、単純に自分の感性が衰えてきただけだと思ってたんですが、こういう音楽に出会うとそんな気持ちも全部吹っ飛ばしてくれたし、来日したら絶対ライブ行きたいとか、まだ自分の中にここまで新譜に熱狂するような熱が残っていたんだなという気持ちにすらなりました。

最後に参考記事として最初に触れたサウスロンドンシーン内でのdeathcrashについて触れた記事を貼って終わりです。めっちゃ参考になったし人脈が続いてシーンが活性化していく感じが伝わってかなり面白かった。あとdeathcrashのメンバーが参加しているFamousもまるで違うポストパンクだけど良かった。

 


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以前作ったプレイリストですが、結構近いフィーリングあるので今作が気に入った方は是非とも。

  

記録シリーズ:Hoover

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HooverというDischord Recordsのバンドを中心に関連作、解散後の各メンバーのバンドをまとめました。激情系のルーツでもありつつジャズやダブ、レゲエにも接近しながらJune of 44やSweep The Leg Johnnyと言ったポストロック方面とも合流していきます。

 


 

Hoover - The Lurid Traversal Of Route 7(1994)

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ワシントンD.C.で結成されたDischord Records発のHooverの1stにしてポストハードコア大名盤。Hooverは解散後メンバーが散り散りになり、様々なバンドで活動したり合流したり再結成したりして音楽性を多方面へと深化させてくわけですが、その全ての原初がこのアルバムに詰まってます。ディスコーダントな音ですがダークでヒリヒリとした緊張感が尋常じゃなく、変拍子の不協和音ギターリフを次々とチェンジしスクリーモを繰り返すこの作風は常にシーンが切り替わっていくような感覚で、後の激情系エモやカオティックへの影響力も絶大、Drive Like Jehuの「Yank Crime」と並び(しかもこれも94年作)それらのジャンルの布石となったアルバムだと思います。

で尚且つ、メンバーのその後を知ってるからこその視点でもあるのですが「Route 7」ではポストロック化の片鱗もあり後のAbileanやThe Sortsを思い出したり、「Electrolux」ではスロウペースでじわじわと繰り返されるベースリフを核としてバーストさせてく曲でこれはJune of 44で繋がってきたりと、既に色んな曲からジャズを想起するシーンもあったりメンバーのその後のバンドでより掘り下げていく兆候はもう大分見せてきてます。ただそれらのバンドとは違ってHooverではあくまで実験的にはなりすぎず、FugaziやJawboxと言ったあの辺とも並べて聴けるような、あくまでハードコアの中にそれらを内包しているってくらいのバランスやってるのが熱いです。

そしてレゲエやダブが由来であろうフレッド・アースキンのベースラインがこの頃から耳を傾けるだけでかなり楽しい。彼はこの後数々のバンドを渡り歩きハードコアとポストロックをジャズやレゲエをミッシングリングにして繋げていくシーン内最重要人物とも言えますが、そんな彼のスタートであるアルバムでもあります。

 

Crownhate Ruin - Until The Eagle Grins(1996)

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そんなHooverが解散後にツインボーカルの片割れジョセフ・マクレッドモンド主体のバンドでベースはHooverより続投のフレッド・アースキン。Hooverが持っていた爆発パートというかハードコア成分やあの殺伐とした不穏さを色濃く継承していてストレートなポストハードコアとして聞くならこちらです。Hooverの1stでの1曲目「Distant」とかに衝撃を受けた方はそのままどうぞ。Hoover時代のポストロック要素は後にAbileneとなるRegulator Watts側が担っていたのかもというのもよくわかります。

 

Regulator Watts - The Murcury(1998)

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Hooverでボーカルをやっていたもう片方であるアレックス・ダナムのバンド。基本的にCrouwnhate Ruinと同じくHooverの延長、ではありつつ、こっちは少し実験的な要素も見えてきて並べて聞くことでうまいこと分離したような気がするしこの後のHoover復活での両者いいとこどりしたような融合っぷりも絶妙。

割とAbileneだったりJune of 44だったりもう"ハードコア"よりも"ポストロック"としての成分が強いんじゃないかって思えるバンド群とここから直に繋がってくような空気があって、激情にも通じそうなリズムとか曲展開凝ったポストハードコアが相変わらず多いんですが、その中でも「Los Angeles」とかはずっと静パートですがヒリヒリとした緊張感が持続していってこの空気感はもろAbilaneのプロトタイプ。「Winslow」のフェードインで入ってくイントロとか「Version idols」でのダブ要素、そしてラスト3曲はエレクトロニクスも導入した実験的な路線でGastr Del Solになる直前のBastroとかを連想します。

 

Hoover - Hoover(1998)

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再結成して出したEPでこれが余りにヤバすぎますね。ぶっちゃけここで再合流するので上記の2枚も周辺バンドってよりはもう初期のHooverの活動の一環として聞いて大丈夫だと思いますが、それらの集大成的なものが詰まっていて開幕「TNT」からHooverで見せていた衝動はそのままずっしりと構えたような、リズムやアンサンブルにアプローチしながらより曲を重くしたような印象でめちゃくちゃかっこいいです。

そしてこのバンドのメンバーは別バンドでの活動において結構多ジャンル幅広く活動しつつも、ここで集まったときには"Hooverの音"として、Dischord Recordsのポストハードコア然としたサウンド直系のままより深みを増してく感じがすごく好きですね。ポストロック方面に突き詰めた結果としてはAbileneが到達点だと思いますが、ハードコアとして聞くんなら個人的に一番好きなアルバム。しかも最後の「Relectrolux/Electrodub」はもろダブからの影響を顕著にしていて、これがHooverとしては最後のリリースですがそのまま以降のバンドに繋がってくのもニヤリとする。

 

The Sorts - More There(1998) / Six Plus(2002)

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フレッド・アースキンがトランペットとして参加したバンドで元々Hooverではベーシストだったのでサウンド的に関連性があるかと言うと微妙なんですが、Hoover派生ポストロック系やちょっと飛んでSlint~June of 44を経由した後のシカゴ音響派周辺、TortoiseやSea And Cake、Dianogah、33.3とか、The Coctails周辺とか好きな方にはめちゃ良いと思います。2002年の最終作である「Six Plus」には上記のHoover~Crownhate Ruinのジョセフ・マクレッドモンドも参加。

 

The Boom - Movin' Out(1998)

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そしてこちらは上記のThe Sortsとほぼ同メンバー、つまり変名バンドで音楽性を変えたとも言えるのですがこちらがヤバすぎます。Sortsから続くジャズ要素をそのままポストハードコア化させたようなあまり聞いたことないサウンド、ディスコーダンドてタイトなリズム隊の上に乗るのは不協和音ギター・・・ではなく、分厚いホーンセクションが前面に出ているという、しかも唐突なジャズパートが挿入されるのもかなりクールです。むしろギターは小刻みにリズムを刻むことに徹していてこういうバンドがDischord由来から出てくるのめちゃくちゃかっこいい。というかこのサウンドに乗るのが逆にもろHoover直系のシャウトかましまくるボーカルってのも何故か見事にマッチしていて色々衝撃を受けました。しかもギターボーカルがフレッド・アースキンでベースでもトランペットでもないっていうマルチプレイヤーっぷりがすごすぎる・・・。

 

Abilene - Abilene(2000)

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Hoover及びRegulater Wattsのアレックス・ダナムのバンドで完全に延長線というか直系。今作はいませんが2ndでHooverのフレッド・アースキンも参加するし、あと地味にスコット・アダムソンというマスロック寄りシーンでの重要人物もドラムで参加してて彼については後でまた触れます。

こちらもヤバイですね、衝動的なハードコアサウンドからは一旦離れ、Hooverから音を引いてスローペースでじわじわとリフを重ねることでマスロック~スロウコア色が強くなってます。まだ2nd程レゲエとかジャズには寄せてなくあくまで"遅いポストハードコア"という感じでこのサウンドスクリーモが乗ってるバランス感、音がめちゃくちゃ悪いのも相まって地下で生まれたダークでアンダーグラウンドなミュータント感がかなりかっこいい。

 

Abilene - Two Guns, Twin Arrows(2002)

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2nd。とにかく1曲目の「Twisting the Trinity」からかなり衝撃的な不協和音ギター+ホーン+スクリーモがスロウペースでじわじわと浸透していく暗黒世界はもう完全に唯一無二。Hoover関連でお馴染みのフレッド・アースキンが今作から参加しますがベースではなくホーン、そしてこれがギターよりフィーチャーされてるんじゃないかというくらい前面に出ていて、1stと地続きのねっとりとした緊張感のあるグルーヴの上でトランペットとギターがユニゾンしていってこれはもうプログレを聞く感覚でも行けると思う。

もうHooverの中にあった実験性というかハードコアに内包されていた多ジャンルを行くとこまで突き進めて完全にオリジナルの音楽に昇華したサウンドで超絶不穏、上記のThe Boomとも繋がってくる音であれをより音数を減らし煮詰めていった感じです。Bastroがシカゴに渡ってGastr Del SolだったりTortoiseになったかのような、SlintのThe For Carnation化やJune of 44が1st~4thの内にダブ化しHiMに分離してったような、そういう同時代のハードコア出身のバンドがそれぞれのサウンドを突き詰めていったのとこれは完全に被ってきます。名盤。

 

Just a Fire - Light Up(2004)

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こちらはフレッド・アースキン主体のバンドで彼はベース及びボーカル、ドラムは上記のAbileneにも参加した元Chisel Drill Hummerのスコット・アダムソン、ギターはSweep The Leg Johnnyのクリス・デイリー。90s後半のマスロック~ポストロック界隈の錚々たる面子が揃ってます。

再生して1曲目の「Hot Export」のイントロのベースリフからわかるようかなりフレッド・アースキンの趣味がフィーチャーされたバンドだと思います。AbileneやJune of 44やHiM以降の彼のバンドにしては全然そういうった実験的な要素は薄く、ただホーンが入っていたりベースラインには彼の特徴であるレゲエからの影響を前面に押し出していて、ストレートなポストハードコアの中でそういった今までの経験が滲み出てくるような感じがめちゃくちゃかっこいいです。The Boomからジャズ要素を抜いてまたDischordに回帰したような感じで「Snake In That Bush」「Dog Bites Back」での踊れる曲もHoover系列の中では珍しく、これもレゲエ要素が今までより強く出てきてるからだと思います。

 

Chisel Drill Hammer - Chisel Drill Hammer(1998)

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上記AbileneやJust a Fireでドラムを叩いたスコット・アダムソンのバンドで、彼自身はHooverに在籍していたわけではないですが主要メンバーのその後を支えたということでこちらも近隣作。でこれがまた凄まじいです、HooverというよりはJune of 44とかがまだダブ化する直前だった2nd~3rdのリズム主体なスロウコア/ポストハードコアを、よりエモとかマスロックに近づけた感じで、スロウペースのまま静寂とリズムの妙と捻じれたフレーズが絡み合って次々と展開していく様は曲がどこに向かってくかさっぱりわからないまま快感が次々と訪れるような感じ。あとこの時代のマスロック全般にも言えますがKing Crimsonっぽさもあります。

 

Sweep The Leg Johnny - Tomorrow We Will Run Faster(1999) / Sto Cazzo!(2000) / Going Down Swingin'(2002) 

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上記のJust a Fireにギターで参加したクリス・デイリーのバンドでこれがまた00年代前後のマス~ポストロックを代表するバンド、当時の名コンピZum AudioにもJune of 44と一緒に参加してました。

こちらもChisel Drill Hummerと同じく直接Hooverと関りはありませんが近隣作、Slint~初期Don Caballero~Rodan辺りのポストロックの祖を一本線で繋げてKing Crimsonやジャズの要素が入ってきたようなバンド。ハードコア色かなり強いんですがこちらもメンバーにホーンがいるためカオスな不協和音とスロウコアのような静パートとの行き来が激しいです。上記の2nd~3rdは全てSouthern Recordsからのリリースで、レーベルメイトの90 Day MenとかKarateとかのジャズ~ポストロック~スロウコアと言った要素を多分に含んだバンド群は上記のAbilaneとかともめちゃくちゃリンクしてくると思います。

 


以上です。途中何度も触れてますがフレッド・アースキンが参加したJune of 44/HiMはまた別軸、Rodan~June of 44~Shipping Newsというルイビルの系譜で書いてるのでセットでどうぞ。というかHooverの系譜とRodanの系譜が交錯する瞬間がJune of 44なんですよね。