朱莉TeenageRiot

棚,日記,備忘録

NUMBER GIRL全アルバム感想

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 元々大好きなバンドですがライブ行ったり配信して見たりして再燃中。元々00年台、日本のギターロックを聞き育った自分はそのルーツのオルタナティブ・ロックとして聞き、ポストパンク、ダブ、ハードコア、ヒップホップ等新しい音楽を聞く度にどんどんナンバーガールの解像度も上がって新しい発見があるというか、だからこそ一度自分の今の印象や記録を付けてみたいと思ったのでダラダラと書きます。 

 

 


 

SCHOOL GIRL DISTORTIONAL ADDICT(1999)

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メジャー1st。日本のオルタナティブ・ロックのパイオニアとも言われるナンバーガールのメジャーデビュー作で代表曲の「透明少女」も入ってますが、個人的にはオルタナっていうよりもネオアコギターポップを90年代のオルタナ経過後の硬質でジャキジャキなサウンドで鳴らしてるって感じがします。爆音で。後に見せるダブやポストハードコアの要素もそこまで無く、Pixiesと称されることが多いのも理解できるようなアルバムで実際にPIXIDUというPixies+Hüsker Düという趣味全開の曲も入ってるしメロディに寄せてきた後期Hüsker Dü、The Wedding Presentや実際に対バンもしたことあるSuperchunk等が好きな人にもいいかも。

 

シブヤROCKTRANSFORMED状態(1999)

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彼らがライブバンドだったということがよく理解できる作品というか、元々ライブ盤が有名なバンドってイメージありますがまさしくそれを象徴する一枚。爆音の鋭角ギターと強靭なリズム隊というまずシンプルにそういう部分が最も映えるバンドというのがよくわかります。

まず開幕の「EIGHT BEATER」から全体的にポップな曲が多い1stの中では凶暴なリフでハードに攻める恐ろしく殺伐とした曲で大分印象が違いかなりヘヴィで、2nd以降の殺伐とした冷凍都市を描いた楽曲達は今思えばこの曲の系譜でZAZEN BOYSにも繋がるShellac的な上下する鋭角ギターリフ全開。歌詞も「6本の狂ったハガネの振動」「繰り返される諸行無常」等、今後向井さんがNUMBER GIRLZAZEN BOYSにおいて多用するお決まりのフレーズも登場してきます。

他にも初期のインディーズ盤にしか収録されてない「OMOIDE IN MY HEAD」と「IGGY POP FANCLUB」等のバンドを代表する名曲や1stにあった裸足の季節からSAMURAIというこれまた未収録曲から繋げられとんでもないスピードで駆け抜けて行ったり、狂って候では新しいアウトロと間奏がくっつけられ全く違う曲になってしまうんですが全てが熱い。激しいだけでなくアップテンポな曲が多いのもこのアルバムを印象付けている。1st収録のキラーチューンこと日常に生きる少女と透明少女もやってますし、2nd以降音楽性を広げて録音にも拘っていくのでそれまでの一つの区切りとして聞けます。

 

DESTRUCTION BABY

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当時Weezerの2ndアルバム"Pinkerton"を聴いた向井秀徳はそのアルバムを象徴する生々しい破壊的ドラムサウンドにかなり影響を受けたようで、その録音を担当したFlaming LipsやMogwaiとの仕事で有名なデイヴ・フリッドマンへと仕事を頼みます。てわけで彼と初めて録音したUS録音のシングルがこの曲で、先ほどのEIGHT BEATERと並んでSAPPUKEIへと繋がる重要なマスターピース、前作までの「夏」「少女」を連想させるポップな疾走ナンバーとは全く雰囲気が違いサウンドからかなり殺伐としている。また各パートのフレーズの節々や録音からもダブ要素もようやく出てきて、これをきっかけに次のアルバムも更に次のアルバムもフリッドマン録音だしZAZEN BOYSでも録ってるので長い付き合いとなるきっかけの作品。

地味に4曲入りでB面が素晴らしくDrunk Afternoonは僕がナンバーガールで一番好きな楽曲で、Galaxy 500が歌詞で登場することで有名。ひさ子さんの極太ギターリフがかなりフィーチャーされててアウトロの大音量ソロはいつ聞いても泣けるしEIGHT BEATERでも見せたShellac的反復ビートも再登場。他の曲もポストパンク色が強く分岐点というか後を考えるとかなり重要なシングルです。

 

SAPPUKEI(2000)

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先ほどのデイヴ・フリッドマン録音によりとにかく音がダイナミックになったアルバムで録音が本当に凄まじい。純粋にライブとも全く雰囲気が違った独特の冷たさや生々しさが保存されたこの密室感はやはりデイヴ・フリッドマンのドラムサウンドが肝になっていて、1曲目のBRUTAL NUMBER GIRLのフレーズがこれまたShellacに酷似しているところや、弦を引っかいてギターが鳴っているという周囲の空気そのまま録音したかのようなギターサウンドも含めスティーヴ・アルビニも想起させる。ここにライブ音源では全く体感できない感動があります。最早ギターポップオルタナという言葉では収まらないような金属的なハードコア、そしてURBANR GUITER SAYONARAを代表とするポストパンク由来の単音ギターリフを爆音で鳴らすことによって後の邦楽ギターロックやオルタナに与えた影響は計り知れないでしょう。

今作、田舎から都会に出てきたときに感じる孤独や閉鎖的感情が向井秀徳が一貫して掲げてきた"冷凍都市"と"少女"に投影され、それがポストハードコア/ポストパンクの冷たい無機質なサウンドと融合して殺伐とした世界観が露出してきます。とくにBRUTAL NUMBER GIRLだけでなくZEGEN VS UNDERCOVER等のハードナンバーはShellac、TATTOありのギターソロはRapemenなどスティーヴ・アルビニのバンドの影響を強く感じるし、これらのサウンドがフリッドマン録音によってダブ処理と結びついているのが今聞いても唯一無二ですね。U-REIやABUSTRUCT TRUTHではダブというよりダブの影響のあるポストパンクバンドのリズムをより強靭に、そしてドラマティックに再構築されていて、後のバンドへの影響力は最も強いかも・・・

 

鉄風 鋭くなって(2001)

「鉄風 鋭くなって」の画像検索結果

SAPPUKE未収録のシングルで、デイヴ・フリットマン録音ではありませんがおそらく「透明少女」「OMOIDE IN MY HEAD」と並んで代表曲に数えられる曲。駆け抜けるベースリフはあまりにも有名ですがライブテイクとは全くの別物。隙間の多い鋭角ポストパンクという感じで雰囲気もかなり冷たく、ドラムがちょっとポリスっぽいですね。

 

こちらがライブ版。ファン内でも非常に人気の動画でDVD収録もありますね。

 

この曲の歌詞で描かれる日本的な風景、無常観だったりギターリフもどこか和風なテイストになっていてこれが次作「NUM-HEAVYMETALLIC」へと続きます。

 

NUM-HEAVYMETALLIC(2002)

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最早1stの頃の面影はなく・・・1曲目の「NUM-HEAVYMETALLIC」からダブの影響がもろに出てます。ドロドロにディレイがかかったギターリフに向井秀徳の念仏のようなラップと祭囃子的展開を大々的にロックに導入してて、田渕ひさ子の轟音ギターも元々片鱗はありましたが今作で完全に和を感じるフレーズになってます。

今作の顔とも言える代表曲「Num-Ami-Dabuz」ではSAPPUKEIで見せた冷凍都市の孤独とその風景が向井秀徳によりことこまかに描かれている。The Pop Groupの「She's beyond Good and Evil」のオマージュとも言えるギターリフとカオスな展開から今まで以上に轟音のギターノイズで埋め尽くすという新境地で、これに衝動的なラップが乗るわけですがまさしくこのアルバムを象徴する曲ですね。全体的にジョン・ライドン率いるP.i.L.The ClashやPop Group等のパンクバンドがダブ・レゲエに傾倒して行った80年代の流れに強く影響された暴走ポストパンクとも言えるアルバムで、ギターロックという言葉では収まりきらない完全にオリジナルのスタイルを確立させてます。ただ個人的にはそんな中でも、王道に尖ったギターリフに強靭なリズム隊が乗っかって暴れていく感覚というか、それぞれの個性が際立った「Mnga Sick」「Tombo The Electric Bloodred」と言った曲に惹かれてしまいます。ぱっと聞いてかなりうるさい音ですがどのパートがどういうフレーズを弾いてるか、叩いてるかってのがハッキリわかりやすいのがNUMBER GIRLの魅力の一つで、そういうリフと各パートのフレーズの棲み分け、隙間が見えることで個性が際立つというか、そういうところにLed Zeppelin的なものを感じたりもする。

 

サッポロ OMOIDE IN MY HEAD状態(2003)

「札幌OMOIDE IN MY HEAD」の画像検索結果

解散ライブを録音した大名盤です。少ないオリジナルアルバムからの完成されたセトリ、MC、観客の熱気、ともにベストコンディションが揃っていて、正直これを最初に聞くのが一番近道でバンドにハマれるんじゃないかとすら思ってます。自分も今聞き返すことが最も多いアルバムはこれですね。

ディスク1ではバンドを代表するキラーチューン目白推しでベスト盤ともとれるような選曲、とくにI don't knowから鉄風へと繋がる序盤の2曲はスタジオ版では味わえない魅力が詰まっている。ディスク2は中々ライブテイク自体が少ないSAPPUKEIから始まるのですが、SAPPUKEI→U-REIの流れはどちらもスタジオテイクだと録音の生々しさが強い冷やかな曲で、これらがライブ盤によって極太ギターリフによってフレーズのかっこよさが直に伝わる形となり、更に強靭なリズム隊と一緒に爆発する様が見れる巨大アンセムへと変貌しています。これも衝撃だった。ディスク2はあまり代表曲でまとめた感じはなく結構尖ったセトリだと思います。アレンジも多いので故に今作はコンセプトアルバム的な色もあると思っていて、スタジオ版ではバラバラな録音の質感が同じ場所、同じ時間で一貫したものとして録音されてるのも貴重。これはライブアルバム全部にも言えるのですが、ナンバーガールは特にその色が強いと思います。

そして日常に生きる少女から始まるMCはロック史に残ると言っても過言ではなく、バンドを総括させるに相応しいOMOIDE IN MY HEADへと繋いでいく様は鳥肌。北海道出身の今では伝説となった数々のインディーズバンドを自分はここで知りました。

 


 記録シリーズ

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2枚のライブアルバムからもわかる通り、ライブ音源が本当に素晴らしいバンドなんですよね。とにかく爆音だったり新しいアレンジが沢山出てきたり、もっと音源が聞きたい・・・という方も多いと思うんですが、そういう方のためにこういった記録シリーズが解散後に出ています。1と2、それぞれ4枚ずつで8枚組という長大ボリュームですが一度バンドにハマればいつまでも楽しめる。初期音源を後期のダブバージョンでアレンジしたり構成が全く違う曲もあって飽きません。再結成してからもよく聞いてます。

他にもリミックス音源やデモ、アルバム未収録の初期音源が入ってる記録シリーズ4もあったり・・・ここまでくるとマニア向けですが、再結成後にライブで何度も演奏しているKU~KIはここに収録されています。

 

 

感電の記憶(2019)

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まさかの新作。彼らのライブに"感電"とつけてくれるのはしっくりきました。2019年発売ってことで再結成記念盤みたいな感じですが、解散前のNUM-HEAVYMETARIC後のツアーライブ音源になってます。音がめちゃくちゃ良いです。

シブヤROCKTRANSFORMED状態やサッポロOMOIDE IN MY HEAD状態で聞けなかったNUM-HEAVYMETALLIC期の曲が多数演奏され、とくに記録シリーズまでは手が届かないという人にも非常にオススメ。INUZINIやTombo The Electric Bloodred等のライブでこそ映える曲は勿論、記録シリーズ4に入ってるインスト音源のGIRA GIRA HIKARUと融合しとんでもなく重いリフに変貌したbrutal man、記録シリーズにすらないSASU-YOUの新テイク等。ナムアミは今作のテイクがベストかも。

 

そして完全にスルーしてしまいましたがインディーズ版

 SCHOOL GIRL BYE BYE(1997)

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もありますね、決してスルーしていい作品ではないですが、OMOIDE IN MY HEADIGGY POP FANCLUBはライブテイクが素晴らしく、ベスト盤にもそっちが収録されたりしているのでこういうバージョンもあった・・・という楽しみ方がいいと思います。

とは言え「我起立唯我一人」は1stの曲にも負けず劣らずエモーショナルな曲で「水色革命」は1stでの轟音ギターポップナンバーガール特有のジャキジャキのコード感の王道とも言える曲でファン人気も非常に高いです。個人的にこのアルバムで好きなのが「mini grammar」で、ちょっとだけSAPPUKEI以降の殺伐とした気怠さがあったり、、、等、書いていたら幾らでも出てくるのですが、録音が1st以上に悪いのでいきなり聞くのにはそこまでおすすめしません。逆に音の悪さから80sの海外のインディーズでのギターポップだったりハードコアの延長としてアクセスするなら良いかも。

 


 以上でした。解散後向井秀徳はドラムのアヒトイナザワZAZEN BOYSを結成。ぱっと聞きの方向性や録音の質感がまるで違うだけで世界観、音楽性ともに延長なので、是非ともセットで聞いて欲しいという思いもあります。

 とくに初期の半透明少女関係、はタイトルからももろですし、六階の少女もアルビニの雰囲気がありながらもどこか達観した冷やかさのある直球のオルタナで、自問自答にあたっては完全にナンバガで魅せた冷凍都市問題に一つ向井秀徳がはっきりと決着をつけてるようにも思えます。

 

 

そして個人的にナンバーガールを聴く上でセットで聞きやすそうな向井秀徳のルーツというか、影響元となってそうな関連バンドを並べようと思います。記事内でも度々触れてるバンド等についてですね。

記録シリーズ:Autechre

90~00年代を重点的に各アルバム感想。


オウテカの新譜となる「SING」をリリース、そして直後に事前情報一切なくサプライズとしてもう一枚「PLUS」がリリースされました。

元々自分がAutechreにハマったの自体がここ2~3年で、もとよりIDMというジャンルのパイオニアとして90年台にWARPを代表する大御所、自分が一人Autechreを発見し大熱狂してツイートしてた頃には皆もうとっくの昔に済んだ道だったと思うので、新譜をきっかけにそういった人達の現在の間奏やノートに投稿された記事、ツイートを読むのが正直かなり楽しかったです。

中でもSIKEI-MUSICで知られるファラ氏のNOTE

めちゃくちゃ良かったです。良すぎたので自分なりの言葉で「ぼくとオウテカ」的なやつをやろうかな・・・となり、前々から膨大なディスコグラフィを少しずつ辿るという行為が好きでよくBOX SETを買うのですが、その軌跡を残してみようと。丁度一番聞いていた90年台~代表作であり最も実験的であるConfield~Gantz Grafに至るまでをやってみました。まさしくシングルやEPを集めたBOX SET(EPS 1991-2002)から自分は入門したので、そちらに収録されてるEPの時期と、並行してリリースされていたオリジナルアルバム達がメインになってます。とくに代表作でありながらもかなりとっつきづらい「Confield」「Gantz Graf」が入門になるかと言うとちょっと微妙かなと、それ以前の作品を聞く指標にでもなればと思います。

基本的にロックしか聞いてこなかった人間がテクノ~アンビエントに関する知識を持たずにどう受け取ったか、逆に普段からそういった音楽を聞く方々からしたら浅い解釈だと思うのですが、一ロックファンが偶然Autechreに出会った一つの記録として見てもらえると幸いです。そして近い目線の方には少しでも参考になればと思います。

 


 

Cavity Job(1991)

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BOX SETの1曲目である1991年のデビューシングル。正直Autechreとしての面影はほぼなく、この後何があったのかと心配になるくらいわかりやすく真っ当なアシッド~ハードテクノって感じの作風で、速くて重くて聞きやすいです。最初に聞くってよりはアルバムを一周してから出発点として聞いて「なんで?」てなってほしいシングル。

 

Incunabula(1993)

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1stアルバム。本人たちはこれをヒップホップと呼んでいますが、アンビエントを想起させる美しい音色と浮遊感の中にとてもキャッチーなリズムでメロディーを形作っていきます。ある意味Autechreの一番の個性である強烈で金属的なサウンドはほぼ見られないんですが、じめっとした深夜の高速道路とかに一人細々と聞きたくなるような、心地の良い無機質なようで有機的な暖かみすら感じる透明感の音色に浸る。リズムと音色とメロディーそれぞれの境界が曖昧で溶け合ってる質感は一番強いです。音が固形ではない、というか。そして代表曲である「Bike」や個人的ベストトラックである「Autriche」ではループの中でもとにかく記憶に残る印象的な1フレーズをフックとして持ってくるのが非常にうまい。よく無機質な音楽と呼ばれるAutechreの中でもとくに聞きやすく最も普段聞きする作品。

 

Amber(1994)

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2ndアルバム。今作もかなり聞きやすく実際90年代では最高傑作に挙げられることも多いですね。全体的に音の先が丸くなり前作はどちらかと言うとシンセの上物のふわっとした部分、楽曲を覆っている衣とも言える部分が微かにメロディーを作っているという感じでしたが、こちらに関してはそれぞれ完全にメロディアスなフレーズがくっきりとしていて、音の輪郭が見えるようなキャッチーな電子音が曲を形作っていきます。とは言えアンビエント的な原風景的な音色の美しさも残っていてどっちにもなりきらずバランスを取っているような、初期の人気作と言われてるのも納得です。

 

Anti EP(1994)

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Amber録音時に同時に制作された同年発売のEPで3曲入り、これがめちゃくちゃ濃くてエッジィなブレイクビーツ軍団になってます。Amber自体が彼らのディスコグラフィの中でも最高傑作に上げる人も多い作品ですが類似作が少なく、そしてあのアルバムを好きになった方は是非その関連作、続編としてどうぞ。

 

Anvil Vapre(1995)

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4曲入りEP。この辺から聞き進めるのがどんどん楽しくなってきます。1995年に三枚出してますが新しい作風な上、どれも全く違った色、でもってちゃんと後に還元されてくものばかりでBOX SETという形でまとめて聞くことで全体像や流れが見えてくるのがやっぱり良いですね。1曲目の「Second Bad Vilbel」から10分近くあり、もう1st2ndのAutechreとはまた違った、今までのAutechreがゆっくりと浸りながら虚ろに体を動かす(脳内で)みたいな感じだったのに対し今回は割とハードなブレイクビーツで、ノイズは重くなり低音も強調されていて同時代のμ-Ziqの初期二作やAphex Twinも思い出します。

 

Garbage(1995)

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そしてこちらGarbage、個人的にこの頃のAutechreの傑作・・・というよりもう代表曲これでいいのではと言いたくなるくらいで、先ほどのAnvil Vapreがハードだったのに対しこちらはより「浸る」音というか、より自分のイメージする当時のIDMって感じですね。プチプチと何かがはじける泡のような効果音が近づきすぎず遠すぎずの位置でキャッチーなリズムを細やかに反復、音色を変化させながらより奥へ奥へと潜っていきます。常に隙間が見えるような音の流麗な配置も本当に美しくて、お互いの隙間と隙間を接触しないように距離を取りながら埋め合うような感覚は14分という曲の時間を忘れるほどに心地が良い。何度聞いても飽きず、単曲で言えば最も好きな曲かもしれません。

 

Tri Repetae(1995)

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3rdアルバム。この辺からグリッチっぽい硬質でエッジの効いたサウンドに寄ってきます。後期程ではないですが、前作まであった透明感はほぼなくなり、ビートを形作るキックやハイハットの音がグリッチ寄りの鉄の塊のような効果音みたいになっていて、それらがヒップホップやファンク的に体を揺らしたくなる、機械的な反復から生まれるグルーヴで非常に心地いリズムを刻み始める。これがかなりかっこいいです。個人的に初期Autechreと実験的になってきた00年代前後のAutechreの中間だと思うので、とりあえずどんなアーティストか知りたいときここ収録の「Clipper」や「Eutow」や後に出てくるLP5というアルバムがいいんじゃないかと思っています。SF感も非常に強く、これも後期の路線へと繋がっていてやはり非常に好きなアルバム。

 

Chiastic Slide(1996)

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4thアルバム。この辺からかなりとっつきづらくなってきます。完全にインダストリアル的なノイズと言いますか、金属と金属がぶつかり合ったかのような強烈な音を加工して全面に押し出したような、しかも今まで以上にシンプルな音数、隙間のある作風で強烈な音色をフックアップしながら太いビートをひたすら反復。長尺な曲も多く、しかしそんな作風の中でもドラマ性があり、これが00年代以降のどんどん難解になるAutechreを紐解く上での重要な作品になってると思います。ぶっ壊し方というか。

 

Cichlisuite(1997)

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Chiastic Slideと同年のEPで、こちらも同じく実験的でちょっととっつきづらい・・・ですが、1曲目2曲目ともにあちら程ミニマルではなくある程度音の変化が大きく細やかなビートを刻んでいるので聞きやすいかも。全体的にとても暗いですが、個人的にどんどん高速になっていくPenchaという曲がお気に入りです。

 

Envane(1997)

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こちらも同年EP、大傑作だと思っていて初期の後期の作風のいいとこどりをしたような実験的かつバラエティに富んでいてどっから聞いてもかっこいい。初期の透明感のある柔らかな音色と、90年代後半Autechreの金属的で硬質なノイズ要素が散りばめられた李同居していたり平行に襲い掛かってくる感じです。相変わらずメロディーは希薄ですが1曲目Goz Quarterは割とキャッチー、音色自体がポップな質感で、個人的に3曲目Laughing Quarterがとにかくハードで、硬質で尖ったフレーズをひたすら繰り返すのでとにかく聞きやすい。ビートが弾力を持った感覚は00年代以降の作風とも繋がってくると思います。

 

LP5(1998)

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5thアルバム。こちらもChiastic Slideと同じく、最早シンセサイザーによってつくられた音色という枠を超えよくわからない機械音やバグって出てきたノイズ、どっから鳴らしたのかよくわからないようなサンプリングにも聞ける"Autechreの音"としか形容できないものを加工しそれをメロディアスに再編成したかのような曲が印象的で、しかもそれがキャッチーなんですよね。Chiastic Slide程振り切ってないというか、今までは素材をバラバラに解体し数学的に曲を作ってきたというAutechreですが、今作LP5に関してはメロディー主体で作るという本来スタンダードで感覚的な作曲を初めてやったらしく、わかりやすい故に逆にAutechre目線ではいつもより実験的な作品、らしいです。1曲目の「Acroyear2」から鼻歌したくなるようなメロディーがノイジーな作風の中からその音色のまま出てくるのでえらくスタイリッシュ。後半の展開とか普通に泣けますね。代表曲でありとても美しい「Rae」も収録されていてTri Repetaeと並び入門にうってつけかと。

 

EP7(1999)

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トム・ヨークが影響を受けたということで代表作にも挙げられる傑作EP。Chiastic Slideであったその音のぶっ壊し方、ぶっ壊れた音というのがより洗練されていて、今まで割とわかりやすくキャッチーだったAutechreのそのリズム、ビートに対するアプローチ自体が更に複雑でより実験的になってます。とくにDroppという曲を実は僕は最初に聞いたAutechreだったのですがとにかく衝撃でした。形を持たないノイズ自体が上下左右いったりきたりしていてこれはメロディーなのか・・・?となり、この持続するベース音のようなノイズが途中から拡散し全てを覆い尽くすグリッチノイズのようでこれがまた逆にメロディアスなビートを刻む瞬間があったり、やっぱりただのアンビエンスだったりあらゆる角度から飲み込んでくる。何度でも聞きたくなる中毒性があり、ビートというよりは完全に音色の変化を聞かせる方向へシフトしてます。この曲をきっかけに収録されているBOX SETを購入したのもいい思い出。PVもかなり良い。

 

Peel Session(1999)

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個人的にこれもこの時期の大傑作だと思っていてEP7よりアルバムとしては好みかも。Envaneでも触れたような、硬質なノイズ成分強めのAutechreと透明感のあるアンビエンス漂うAutechreの境界があまり無く、録音が1995年ということで丁度Tri Repetaeと同年なので、その中間となる時期だったからかもしれません。Milk DXやInhake 2は上記にあったGarbageも想起させる曲なのですが、キャッチーなリズムの反復の中で音色を変化させ深く潜っていくのがGarbagegだとすると、こちらの収録曲はむしろ潜るというより液状化した金属がその場でどんどん形を変えていくのを見てるというような印象です。

 

Peel Session2(2000)

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よりバリエーション豊富な作風となったPeel Session2で、割とこの中でも特異というか特別尖った作品ではないと思うんですが、〇〇に似ているというような他のアルバムと相互関係にはそんなない気がしますね。1曲目「Gelk」がEP7のDroppのイントロを想起するどこか抒情的で不穏な、けど少し温かみのあるシンセの音色が最低限の音で曲を構築していて割と聞きやすい入り。そして「Blifil」ではめちゃくちゃかっこいい高速金属テクノで疾走、音色はAutechreなのでここまでストレートな曲だと逆にものすごく新鮮。しかもこの速度で7分!?と驚きながら聞いていると途中からどんどんぶっ壊れてく感じはAutechreならではです。

 

Confield(2001) Gantz Graf(2002) 

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そしてこの後かの代表作「Confield」「Gantz Graf」をリリース。どちらもより難解で、Confieldは最早音楽というより音の素材そのもの、ある意味今までの金属的だったAutechreの極地ではあるんですが、そのAutechreを構成していた鉄の音を無加工で今まで以上にスカスカなリズムを組み立てていきます。Gantz Grafは耳をつんざくようなハードなノイズによる高速テクノで電子音楽版のメタルとでも言うような重さ。

Confieldはミニマルに少しずつ変化していくリズムの動きを楽しむ方、Gantz Grafに関しては元々へヴィな曲や過激なノイズミュージックが好きな方には逆にキャッチーかもしれません。自分自身まだ理解しきれてない部分が非常に多いですが、これらが規定概念を破壊し00年代に新しい音楽を生み出すきっかけになったと言わてるのもわかります。だからこそ未だにこれらの作品が代表作として語り継がれてるのも納得なんですが、ここまでの道のりもそれなりに長く、そしてその過程も素晴らしいので是非とも違う切り口から聞くきっかけになればいいかなとも思っています。

Untilted(2005) Exai(2013)

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そしれそれ以降、Confieldでの無感情で余りにも機械的な作風は2005年作の「Untilted」で一定の形として完成したと思っていて、間違いなくConfield通過後の音なんですが、割とメロディーが存在する上に細やかにビートが変化し展開も多いのであちらと比べれば聞きやすいかと。その後もリリースは続くのですが、90年代の作品が好きだった自分は集大成と言われた2013年作「Exai」もとてもよかったです。近年だとこの二作が好きですね。

そして新譜「SIGN」と「PLUS」ですが、まだまだ全然聞き込みが足りませんが上でも触れた初期の1st2ndに割と近い質感があり、ただ音色自体は2013年作の「Exai」の延長でもあるかなとは思ってるんですが、どんどん上物の透明感のある音響、アンビエント的な音色だけどアンビエントではなくもう少し形を保っている音楽にも聞こえます。で尚且つ面白いのが1stの頃のようにリズム自体がキャッチーな具合ではなく、その音色、アンビエンス漂う上物それ自体がリズムを刻んでいる感覚がありそれがとても美しい。隙間が映える作風なのも好みです。


以上でした。基本的にロックを聞いていてもハードコアやオルタナティブ・ロックのノイズに呑まれてく部分や不協和音的な展開が大好きだったり、スカスカの中でリズムがぶっ壊れていくタイプのポストパンクが好きだったりするので、割とAutechreのそういうエッジの効いた面とは呼応したのかな、という気もします。むしろよりクラウトロックやインダストリアルの初期作の聞き方が変わったり、ヒップホップへの興味が動いたり等とても大きかったです。

ちなみに僕がとくに好きなアルバムは1stのIncunabula、次点でLP5というところでしょうか。入口としての聞きやすさではAmberがいいかと。アンビエント的な作風が好きだったり純粋に音色の優しいテクノが好きなのなら1st2ndから入り、ロックファンならLP5やTri Repetaeがいいかもしれません。1st2ndが好きならGarbageを、LP5辺りがヒットしたのならEnvaneを、もしくはこのままGantz Grafでもいいかも。

ショーン・ブースはプレイリスト文化がとても嫌いなようですが、過去に作った1時間ちょいで気軽に聞けそうなプレイリストを置いときます。

 

最後に自分がこれを書き始めたちょい後に出てきてこれ完璧じゃん・・・となったMikikiの徹底ガイドです。EPやシングルには余り触れてませんが、1stアルバム以前のコンピレーションやWARPレコードを踏まえた当時のクラブシーン等の時代背景、ジャンル全体の切り口からわかりやすくまとめてくれてます。自分も初めて知ることも多くとても勉強になりました。

Cloud Nothingsの新譜がゲリラ発表されました

7月3日にゲリラ的にCloud Nothingsが新譜(The Black Hole Understands)を発表。仕事中サボってツイッター見てたらそれが出てきて本当にびっくりする。そういえば今日はbandcampセールで全額アーティスト返還の日なんですよね。それに合わせて皆新譜やブートレグや未発表音源集をこぞって出すけどまさしくあれの一環でしょう。

 

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聞いた。一曲目、一聴した瞬間に泣きそうになってしまった。つい先日、上半期ベストみたいなものを作ってSNSに発表しあう流れがあったのですが、僕は振り絞ったような選び方をしたのに対し、今回は本当に心からナンバーワンだと思ってしまった。話題の新譜を掘ったりすることに少し窮屈感を感じていたというか、実際楽しいし新しい音楽と出会える喜びや衝撃はあっても、前々から好きな音楽を聞いた時の自分に浸透してくる喜びみたいなものはあまりなく、それを久しぶりに満たすことができたのが今回のCloud Nothingsだったというわけです・・・。

宅録でやってた初期の作風にかなり近い楽曲群で、アルビニと組んでヘヴィになってたAttack On Memoryよりも前の作品と言われた方がしっくりくるくらい。前作がかなりパンクとかポストハードコアっぽい質感だっただけに、今作は声を張り上げてシャウトする部分も無くギターロックが好きなインディーロックユーザーは絶対良い感じだと思います。むしろチルいベッドルーム的なインディーよりも90sのUSインディーとかそれに連なるローファイバンドが好きなら間違いないでしょう。次のリリースのアナウンスも既にあるようで楽しみ。あと今回メンバーで集まって作ったわけではなくドラムと二人で連絡とりつつ作ったらしくそれもあり初期の宅録に近いアルバムなのかな・・・。



やっぱ自分はTHE 1975とかにあんましっくり来ずあれが現代最強のロックバンドとして時代を作ってることに対しうまく乗り切れないところがあるんですが、本音を言えば今1975のポジションにCloud Nothingsがいてほしかった、と心から思ってます。とかなんとか言ってる時点で一生こういうオルタナとかローファイとか聞いてるんだろうなって思うけど、好きな人たちが俺の好きな音楽を作り続けてくれるならそれでいいかな・・・

 

ちなみに報告ですが、上記の上半期ベスト、という流れで僕が絞り出した8枚がコチラになります・・・

 

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Phoebe Bridgers、Real Estate、吉田一郎、石原洋、SquarepusherPhoebe Bridgers、Public Practice、The Gardens、THE NOVEMBERSです。あと新譜と言って微妙だけど今年リリースされた昨年のLOSTAGEライブ、間違いなく一番聞いたし一番感情が動きましたが、現在bandcampでの公開をやめてしまったので一切入手不可となってしまったのがキツイ・・・



20200702 ギタマガ/ニッポン偉大なギター名盤100

知人の間で話題になり結構内容について話してる人がとても多く、ちょっと気になって買ってしまいました。ギター名鑑。

ギター・マガジン 2020年 7月号 

良かったです。マジでね。いつも選出されるようなミッシェルとかブランキーとかと並んでブッチャーズがかなり上位だったりBUMPの位置にも驚いたし、でpillowsのアルバムがちゃんとフィーチャーされてて嬉しかったですね。やっぱりハッピービバークは名盤だよなと。

90年代の日本のロックってやっぱ伝説的に語り継がれてるもの多く、載ってるけどゆらゆら帝国とかナンバーガールとか・・・解散して大きくなってるってのはあるかもですけど、pillowsの同時代のアルバムも並べていいと思うんですよね。ずっと語り継がれ足りないなと思っていたけど最近になってようやく見るようになった気がします。

 

でランキング100選とは別に、様々なミュージシャンが「ギターアルバム」という観点から一枚ベストを紹介してるんですが、オウガの出戸さんとかも参加してて邦楽だとなんだろうな~と思いチェックしたらWhite Heaveneを上げてました。石原洋のバンドですね、師匠だしね・・・。

で、逆にオウガのアルバム誰か挙げないの?と気になって見てたらなんと「フォグランプ」を選出してる方がいて、Minakekke(ミーナケッケ)というミュージシャンで完全に初見でした。で調べてみたらKlan Aileenと対バンしていたり、若手の女性SSWとのことですが普通に歌だけでしっかり売れそうな感じなのに超絶不穏なトラックが乗ったりしてるしちょっとWarpaintとか思い出す雰囲気もあり、フォグランプをチョイスしたのにも納得です。

タイトルがデッドっぽかったりポストパンクやゴシック~シューゲの文脈でも評価されてるようで、聞かなきゃな・・・。

 

で全然ギタリストでもなんでもないただの一リスナーである自分が「ギターアルバム」として選ぶならこの一枚です。

OGRE YOU ASSHOLE - アルファベータ vs. ラムダ

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テレヴィジョン meets ビルト・トゥ・スピルとも言えるとにかくエモーショナルな単音ギターの絡み合いが最高ですね。邦楽で、ギターを聞くアルバムと言えば自分の中ではまさしくこれ。というかオウガ上げてる人いないの?て探したの実は絶対ラムダ上げてる人いるだろうという過信からでした。いませんでしたが・・・。

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あとは向井秀徳のアルバムならやっぱ間違いないのでSAPPUKEIとかZAZEN BOYS4とか、とにかくツインギターのガチャガチャした絡み合いそれ自体が一つの和音になってる感じとか・・・

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uri gagarnの初期作とかにもかなり衝撃受けましたね。ハードコアやポストロック由来の不協和音だらけな音のファーストコンタクトだったというか、これも未だにかっこいいギターを聞くために聞きますね。

以上でした。

日常に生きる少女

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田中恵子

6/13

田中恵子さん誕生日おめでとうございます。

彼女のpixivを10年間追ってますが未だにページ数は少ないまま、仕方ないんですが、そこに一つ自分の絵を上げることができたというのは結構感慨深かったです。

 

完全に自分用で好きなアニメキャラ(アマガミ)+SNSで使っていたアイコンのポケモン(イワンコ)+好きなバンドのジャケット(NUMBER GIRL)という僕を知ってる人にしか繋がらない身内ネタなわけですが、SNSで結構外の人にも好評で嬉しかったですね。

 

www.youtube.com

ポケモン 続

pixivSketch (8)

pixivSketch (11)

pixivSketch (15)

pixivSketch (23)

前回から継続してやってるけどマウスだとマジで腕が死ぬほど疲れる・・・。まっすぐ線が引けないんでこの荒い感じを味にできないかと悪戦苦闘してます。

だんだん凝ってきて、前回のモルフォンとかドククラゲは1時間ちょっととかで描いてるんですが少しずつわかってきて今回のはどれも3時間とかそれ以上かけてます・・・。ペンタブさえあればな~!て言ってたら持ってるけど使ってないという友人から頂けることになりました。ありがたいけど、別に絵描きになる予定じゃなくて映画見た影響でちょっとした遊びでやってただけなんですが、もう少しやってみるか・・・という気持ちです。