朱莉TeenageRiot

棚,日記,備忘録

PSP Social - Second Communication(2024)

PSP Social - Second Communication(2024)

先月リリースされたPSP Socialの4thフル。昨年自主レーベルエスパーキックからリリースされた前作にあたる3rd「宇宙から来た人」はスロウコア色が強い作品で、自分のブログの年間ベストや2月に出したZINEでも触れましたが、その直後に出たEP「Communication Brakedown vol.1」はストーナーからポストハードコアまで横断したまた新しい側面が見える作品でした。そもそも宇宙から来た人もスロウコアなんて言葉一つで括るには失礼だと思えるくらい独自の色を持った作品で、本人たちはピンク・フロイドからインスピレーションを受けたと語っているのも興味深い。それがあの形でアウトプットされてることとか、バンド自体なにかにカテゴライズをするということ自体が不可能だなと思ったし、無邪気に、そして誠実にやりたいことと向き合った作品に思える。宇宙から来た人以降出てくる全部の曲がどこか「異界っぽい」と言いたくなる不思議な雰囲気があって、懐かしい見慣れた景色のようでどこか桃源郷のような、近いようで遠い、そういう情景を想起させられるものが多く、この得体のしれないミステリアスで雄大な世界観が、PSP Socalでしか成し得ない新しい場所へ連れて行ってくれてる感じがしてすごく好きなんですよ。


今作Second Communicationは結構まさにその極地みたいなアルバムでずっと聞いている。宇宙から来た人で見せた、自分がスロウコアっぽいと感じていたゆったりとした生々しい演奏と素朴な歌ものとしての風情を今作も十分に受け継いで、それを完全に血肉として曲の中の一つの側面、表情として昇華しながら、そこから目まぐるしく景色を大きく開いていく「撃滅サンダーボルトⅡ」はもう涙無しには聞けない。間違いなく2024年ベストソングの一つとしてこれ以降も聞き続けるでしょう。終盤かき鳴らされる大音量のギターの音に胸の奥が焦げるくらい熱くなり、音楽を聴いてこんなにエモーショナルな気持ちになることあるんだというのを思い出させてくれる。「Communication Brakedown 2」「壁」「土」とかもすごく映像的な曲群で、どこか懐かしい雰囲気があり田舎のポストロックという言葉を連想してしまう。フィードバックノイズの中に景色が見えてくる。BOaTのROROとかとも並べられる作品だと思います。ストーナーやポストハードコアといった鋭利でパワフルなサウンド日本民謡をカバーしたらこうなるんじゃないかという感触もある。

 

ちなみに昨年リリースされたライブアルバムの「PSP Social live #2」ではバンドの実験性も垣間見えてすごいことになってます。バンドでありながらドローン作品にも思えるし、どこか呪術的な雰囲気もあって、これを踏まえた上でアルバムという一つの録音物のフォーマットに収束させたものとして今作や宇宙から来た人を聞くとまた違った趣があると思う。今年リリースされた#3の方も長尺ながら踊れる肉体的なアレンジになっていて、ライブ盤としては前作の#2から引き継いだものも感じれてこれも素晴らしい。バンドの躍動感がたっぷり詰まったライブ盤でコンセプトアルバム的な聞き方もできると思うし、新しいアルバムをリリースした今またどんな形になってるかってのも想像してしまいますね。

 

 

どんなバンドか、どんなアルバムかを人に伝えたいときって受け取ったものが自分の中の一つの入れ物から溢れ出てしまったときだと思いますが、どうしても違うバンドや既存のジャンルに当てはめて語ってしまう。語ってしまいますが、それはイメージを共有することで輪郭を見やすくしてくれる場合もあれば、全く見当違いの姿を想像させてしまうこともあって中々難しいですよね。PSP Socialに関してはライブ盤含めリリースされてる作品全てが全く違った色があり、本当になんにも例えることができない、その行為自体が野暮なバンドだと思います。思いますが、しかしそれでも何か書き残したいと思わされてしまうアルバムばかりで、ここまで書いておいてなんですが、言葉で形容できない全く新しい音楽体験をさせてくれたアーティストでした。近いうちに是非ライブに行ってみたいです。

 

esperkick.bandcamp.com

 


関連記事