朱莉TeenageRiot

棚,日記,備忘録

NUMBER GIRL全アルバム感想

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 元々大好きなバンドですがライブ行ったり配信して見たりして再燃中。元々00年台、日本のギターロックを聞き育った自分はそのルーツのオルタナティブ・ロックとして聞き、ポストパンク、ダブ、ハードコア、ヒップホップ等新しい音楽を聞く度にどんどんナンバーガールの解像度も上がって新しい発見があるというか、だからこそ一度自分の今の印象や記録を付けてみたいと思ったのでダラダラと書きます。 

 

 


 

SCHOOL GIRL DISTORTIONAL ADDICT(1999)

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メジャー1st。日本のオルタナティブ・ロックのパイオニアとも言われるナンバーガールのメジャーデビュー作で代表曲の「透明少女」も入ってますが、個人的にはオルタナっていうよりもネオアコギターポップを90年代のオルタナ経過後の硬質でジャキジャキなサウンドで鳴らしてるって感じがします。爆音で。後に見せるダブやポストハードコアの要素もそこまで無く、Pixiesと称されることが多いのも理解できるようなアルバムで実際にPIXIDUというPixies+Hüsker Düという趣味全開の曲も入ってるしメロディに寄せてきた後期Hüsker Dü、The Wedding Presentや実際に対バンもしたことあるSuperchunk等が好きな人にもいいかも。

 

シブヤROCKTRANSFORMED状態(1999)

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彼らがライブバンドだったということがよく理解できる作品というか、元々ライブ盤が有名なバンドってイメージありますがまさしくそれを象徴する一枚。爆音の鋭角ギターと強靭なリズム隊というまずシンプルにそういう部分が最も映えるバンドというのがよくわかります。

まず開幕の「EIGHT BEATER」から全体的にポップな曲が多い1stの中では凶暴なリフでハードに攻める恐ろしく殺伐とした曲で大分印象が違いかなりヘヴィで、2nd以降の殺伐とした冷凍都市を描いた楽曲達は今思えばこの曲の系譜でZAZEN BOYSにも繋がるShellac的な上下する鋭角ギターリフ全開。歌詞も「6本の狂ったハガネの振動」「繰り返される諸行無常」等、今後向井さんがNUMBER GIRLZAZEN BOYSにおいて多用するお決まりのフレーズも登場してきます。

他にも初期のインディーズ盤にしか収録されてない「OMOIDE IN MY HEAD」と「IGGY POP FANCLUB」等のバンドを代表する名曲や1stにあった裸足の季節からSAMURAIというこれまた未収録曲から繋げられとんでもないスピードで駆け抜けて行ったり、狂って候では新しいアウトロと間奏がくっつけられ全く違う曲になってしまうんですが全てが熱い。激しいだけでなくアップテンポな曲が多いのもこのアルバムを印象付けている。1st収録のキラーチューンこと日常に生きる少女と透明少女もやってますし、2nd以降音楽性を広げて録音にも拘っていくのでそれまでの一つの区切りとして聞けます。

 

DESTRUCTION BABY

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当時Weezerの2ndアルバム"Pinkerton"を聴いた向井秀徳はそのアルバムを象徴する生々しい破壊的ドラムサウンドにかなり影響を受けたようで、その録音を担当したFlaming LipsやMogwaiとの仕事で有名なデイヴ・フリッドマンへと仕事を頼みます。てわけで彼と初めて録音したUS録音のシングルがこの曲で、先ほどのEIGHT BEATERと並んでSAPPUKEIへと繋がる重要なマスターピース、前作までの「夏」「少女」を連想させるポップな疾走ナンバーとは全く雰囲気が違いサウンドからかなり殺伐としている。また各パートのフレーズの節々や録音からもダブ要素もようやく出てきて、これをきっかけに次のアルバムも更に次のアルバムもフリッドマン録音だしZAZEN BOYSでも録ってるので長い付き合いとなるきっかけの作品。

地味に4曲入りでB面が素晴らしくDrunk Afternoonは僕がナンバーガールで一番好きな楽曲で、Galaxy 500が歌詞で登場することで有名。ひさ子さんの極太ギターリフがかなりフィーチャーされててアウトロの大音量ソロはいつ聞いても泣けるしEIGHT BEATERでも見せたShellac的反復ビートも再登場。他の曲もポストパンク色が強く分岐点というか後を考えるとかなり重要なシングルです。

 

SAPPUKEI(2000)

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先ほどのデイヴ・フリッドマン録音によりとにかく音がダイナミックになったアルバムで録音が本当に凄まじい。純粋にライブとも全く雰囲気が違った独特の冷たさや生々しさが保存されたこの密室感はやはりデイヴ・フリッドマンのドラムサウンドが肝になっていて、1曲目のBRUTAL NUMBER GIRLのフレーズがこれまたShellacに酷似しているところや、弦を引っかいてギターが鳴っているという周囲の空気そのまま録音したかのようなギターサウンドも含めスティーヴ・アルビニも想起させる。ここにライブ音源では全く体感できない感動があります。最早ギターポップオルタナという言葉では収まらないような金属的なハードコア、そしてURBANR GUITER SAYONARAを代表とするポストパンク由来の単音ギターリフを爆音で鳴らすことによって後の邦楽ギターロックやオルタナに与えた影響は計り知れないでしょう。

今作、田舎から都会に出てきたときに感じる孤独や閉鎖的感情が向井秀徳が一貫して掲げてきた"冷凍都市"と"少女"に投影され、それがポストハードコア/ポストパンクの冷たい無機質なサウンドと融合して殺伐とした世界観が露出してきます。とくにBRUTAL NUMBER GIRLだけでなくZEGEN VS UNDERCOVER等のハードナンバーはShellac、TATTOありのギターソロはRapemenなどスティーヴ・アルビニのバンドの影響を強く感じるし、これらのサウンドがフリッドマン録音によってダブ処理と結びついているのが今聞いても唯一無二ですね。U-REIやABUSTRUCT TRUTHではダブというよりダブの影響のあるポストパンクバンドのリズムをより強靭に、そしてドラマティックに再構築されていて、後のバンドへの影響力は最も強いかも・・・

 

鉄風 鋭くなって(2001)

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SAPPUKE未収録のシングルで、デイヴ・フリットマン録音ではありませんがおそらく「透明少女」「OMOIDE IN MY HEAD」と並んで代表曲に数えられる曲。駆け抜けるベースリフはあまりにも有名ですがライブテイクとは全くの別物。隙間の多い鋭角ポストパンクという感じで雰囲気もかなり冷たく、ドラムがちょっとポリスっぽいですね。

 

こちらがライブ版。ファン内でも非常に人気の動画でDVD収録もありますね。

 

この曲の歌詞で描かれる日本的な風景、無常観だったりギターリフもどこか和風なテイストになっていてこれが次作「NUM-HEAVYMETALLIC」へと続きます。

 

NUM-HEAVYMETALLIC(2002)

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最早1stの頃の面影はなく・・・1曲目の「NUM-HEAVYMETALLIC」からダブの影響がもろに出てます。ドロドロにディレイがかかったギターリフに向井秀徳の念仏のようなラップと祭囃子的展開を大々的にロックに導入してて、田渕ひさ子の轟音ギターも元々片鱗はありましたが今作で完全に和を感じるフレーズになってます。

今作の顔とも言える代表曲「Num-Ami-Dabuz」ではSAPPUKEIで見せた冷凍都市の孤独とその風景が向井秀徳によりことこまかに描かれている。The Pop Groupの「She's beyond Good and Evil」のオマージュとも言えるギターリフとカオスな展開から今まで以上に轟音のギターノイズで埋め尽くすという新境地で、これに衝動的なラップが乗るわけですがまさしくこのアルバムを象徴する曲ですね。全体的にジョン・ライドン率いるP.i.L.The ClashやPop Group等のパンクバンドがダブ・レゲエに傾倒して行った80年代の流れに強く影響された暴走ポストパンクとも言えるアルバムで、ギターロックという言葉では収まりきらない完全にオリジナルのスタイルを確立させてます。ただ個人的にはそんな中でも、王道に尖ったギターリフに強靭なリズム隊が乗っかって暴れていく感覚というか、それぞれの個性が際立った「Mnga Sick」「Tombo The Electric Bloodred」と言った曲に惹かれてしまいます。ぱっと聞いてかなりうるさい音ですがどのパートがどういうフレーズを弾いてるか、叩いてるかってのがハッキリわかりやすいのがNUMBER GIRLの魅力の一つで、そういうリフと各パートのフレーズの棲み分け、隙間が見えることで個性が際立つというか、そういうところにLed Zeppelin的なものを感じたりもする。

 

サッポロ OMOIDE IN MY HEAD状態(2003)

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解散ライブを録音した大名盤です。少ないオリジナルアルバムからの完成されたセトリ、MC、観客の熱気、ともにベストコンディションが揃っていて、正直これを最初に聞くのが一番近道でバンドにハマれるんじゃないかとすら思ってます。自分も今聞き返すことが最も多いアルバムはこれですね。

ディスク1ではバンドを代表するキラーチューン目白推しでベスト盤ともとれるような選曲、とくにI don't knowから鉄風へと繋がる序盤の2曲はスタジオ版では味わえない魅力が詰まっている。ディスク2は中々ライブテイク自体が少ないSAPPUKEIから始まるのですが、SAPPUKEI→U-REIの流れはどちらもスタジオテイクだと録音の生々しさが強い冷やかな曲で、これらがライブ盤によって極太ギターリフによってフレーズのかっこよさが直に伝わる形となり、更に強靭なリズム隊と一緒に爆発する様が見れる巨大アンセムへと変貌しています。これも衝撃だった。ディスク2はあまり代表曲でまとめた感じはなく結構尖ったセトリだと思います。アレンジも多いので故に今作はコンセプトアルバム的な色もあると思っていて、スタジオ版ではバラバラな録音の質感が同じ場所、同じ時間で一貫したものとして録音されてるのも貴重。これはライブアルバム全部にも言えるのですが、ナンバーガールは特にその色が強いと思います。

そして日常に生きる少女から始まるMCはロック史に残ると言っても過言ではなく、バンドを総括させるに相応しいOMOIDE IN MY HEADへと繋いでいく様は鳥肌。北海道出身の今では伝説となった数々のインディーズバンドを自分はここで知りました。

 


 記録シリーズ

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2枚のライブアルバムからもわかる通り、ライブ音源が本当に素晴らしいバンドなんですよね。とにかく爆音だったり新しいアレンジが沢山出てきたり、もっと音源が聞きたい・・・という方も多いと思うんですが、そういう方のためにこういった記録シリーズが解散後に出ています。1と2、それぞれ4枚ずつで8枚組という長大ボリュームですが一度バンドにハマればいつまでも楽しめる。初期音源を後期のダブバージョンでアレンジしたり構成が全く違う曲もあって飽きません。再結成してからもよく聞いてます。

他にもリミックス音源やデモ、アルバム未収録の初期音源が入ってる記録シリーズ4もあったり・・・ここまでくるとマニア向けですが、再結成後にライブで何度も演奏しているKU~KIはここに収録されています。

 

 

感電の記憶(2019)

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まさかの新作。彼らのライブに"感電"とつけてくれるのはしっくりきました。2019年発売ってことで再結成記念盤みたいな感じですが、解散前のNUM-HEAVYMETARIC後のツアーライブ音源になってます。音がめちゃくちゃ良いです。

シブヤROCKTRANSFORMED状態やサッポロOMOIDE IN MY HEAD状態で聞けなかったNUM-HEAVYMETALLIC期の曲が多数演奏され、とくに記録シリーズまでは手が届かないという人にも非常にオススメ。INUZINIやTombo The Electric Bloodred等のライブでこそ映える曲は勿論、記録シリーズ4に入ってるインスト音源のGIRA GIRA HIKARUと融合しとんでもなく重いリフに変貌したbrutal man、記録シリーズにすらないSASU-YOUの新テイク等。ナムアミは今作のテイクがベストかも。

 

そして完全にスルーしてしまいましたがインディーズ版

 SCHOOL GIRL BYE BYE(1997)

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もありますね、決してスルーしていい作品ではないですが、OMOIDE IN MY HEADIGGY POP FANCLUBはライブテイクが素晴らしく、ベスト盤にもそっちが収録されたりしているのでこういうバージョンもあった・・・という楽しみ方がいいと思います。

とは言え「我起立唯我一人」は1stの曲にも負けず劣らずエモーショナルな曲で「水色革命」は1stでの轟音ギターポップナンバーガール特有のジャキジャキのコード感の王道とも言える曲でファン人気も非常に高いです。個人的にこのアルバムで好きなのが「mini grammar」で、ちょっとだけSAPPUKEI以降の殺伐とした気怠さがあったり、、、等、書いていたら幾らでも出てくるのですが、録音が1st以上に悪いのでいきなり聞くのにはそこまでおすすめしません。逆に音の悪さから80sの海外のインディーズでのギターポップだったりハードコアの延長としてアクセスするなら良いかも。

 


 以上でした。解散後向井秀徳はドラムのアヒトイナザワZAZEN BOYSを結成。ぱっと聞きの方向性や録音の質感がまるで違うだけで世界観、音楽性ともに延長なので、是非ともセットで聞いて欲しいという思いもあります。

 とくに初期の半透明少女関係、はタイトルからももろですし、六階の少女もアルビニの雰囲気がありながらもどこか達観した冷やかさのある直球のオルタナで、自問自答にあたっては完全にナンバガで魅せた冷凍都市問題に一つ向井秀徳がはっきりと決着をつけてるようにも思えます。

 

 

そして個人的にナンバーガールを聴く上でセットで聞きやすそうな向井秀徳のルーツというか、影響元となってそうな関連バンドを並べようと思います。記事内でも度々触れてるバンド等についてですね。