OGRE YOU ASSHOLEはworkshopの名を冠するライブアルバムを3枚出していて、個人的にこのバンドを聴く上では最も重要な作品だと思っています。彼らの活動の中で大きな一つの方針が"ライブ録音とスタジオ録音でのアルバムを完全に切り分ける"というものでした。とくに三部作以降の最近のアルバムは初めて聴いたとき本当に素材だけのような質感だったので、ライブで肉付け~セトリによって構成に練り込まれるworkshopを後に作ること前提にやってるのではないか?とすら思いました。
workshopはライブ公演をそのまま記録したものではなく、ライブ音源を元にしてコンセプチュアルにもう一度再編集、流れ等も含めて新しく作られたライブ盤とスタジオ盤の中間とも言える作品になっています。かと言ってBBCのような完全なスタジオライブではなくちゃんと会場の熱気のようなものも所々見えてくるのがいいんですよね。初期のロックバンド然としたオウガが好きでサイケ三部作以降の振り切った作風が難解に感じる方にこそオススメです(勿論既存の曲が単純にパワーアップしてるのもあるのでそれ以外の方にも)。というかぶっちゃけ僕も最初はそんな感じで「homely」は息苦しすぎてしんどかったし「100年後」もゆったりとした甘い歌ものばっかりで・・・とか思っていたんですがライブに行ったら「とにかくめちゃくちゃ踊れるし爆音のノイズを一杯浴びれて最高だった」という認識へと変わり、それをきっかけに通う内どんどんバンドの魅力に取り憑かれていきました。そのライブにおける変化を記録した作品がworkshopとなります。

2015年にリリースされた最初のworkshop。サイケ三部作とされるhomely~100年後~ペーパークラフトからの収録+αな選曲で、今でもよく演奏される代表曲は一通り揃ってるためベストアルバム的側面もあるし、ライブ公演そのものではなく各公演から厳選された音源を基に再編集、構築してるためアルバムとしての流れも完璧。
10s以降彼らが作ってきたアルバム群は初期のロックバンドらしい形式からサイケ~クラウトへと舵を切っていて、スタジオ盤では最小限のミニマルな演奏の中での各パート、楽器の音が着地するときの質感重視の完全にプロデュースされたサウンド、AORを基調にした乾いた空虚がさ一貫してあった。音源の雰囲気含めてアルバム毎に完全にそれぞれ違う世界観が確立されていて、今回はそれをライブ演奏で再現する・・・というスタイルではなく、淡々と無機質に繰り返されていたドラムはライブらしい有機的なものになってるし、ライブ録音ってことでベースの低音も効いてて曲のテンポも全体的に上がっていて、加速してくグルーヴの中一本芯を通す針金のようなヘヴィさがある。かなり強烈なリズムセクションで音源におけるふわっとした質感は完全になくなり、なんなら馬渕さんのギターの音も超ノイジーになってる、M2の最後のソロは必見。完全に別物です。とくに無機質なミニマルファンクって感じだった「フェンスのある家」「ムダがないって素晴らしい」も弾力あるリズム隊によってストレートにファンクの色が増していて、音の分離が良くなったのもあり各種リズミカルに刻みを入れるフレーズの良さも際立っている。というかシンプルにこの2曲とも歌メロが良すぎる代表曲でもあるためる、踊れるし口ずさめるしで隙が無い。
再骨頂となるのがM7のフラッグ。本アルバム収録の曲の中で唯一初期USインディー期の曲だけど、メロディー以外まるで面影がなくなったスローテンポのドロドロとしたサイケに変貌。低音を強調してスロウにひたすら腰に来るトリップ感はドゥーム/ストーナーっぽさもちょっとあるのだが、中盤テンポを上げ四つ打ちで踊るダンスミュージック調のパート→原曲を踏襲した(というか原曲だとイントロから流れる曲の象徴的な)ギターリフが空間を引き裂きラウドなロック調へ雪崩れ込むラストパートという三部構成に。とくに最終パート、溜めに溜めて鋭角ギターリフが飛び出すところは反復における肉体的なビートからロック的ダイナミズムへと帰結してくというオウガの集大成、最も熱い部分が詰まっている。これが音源に残されているというだけでも嬉しい。最後はお馴染みの「ロープ」でNeu!のHallogalloを想起させるハンマービートに各パートが徐々に音を足して熱を上げていき最後はノイズの大洪水に飲み込む、というこれまた非常にドラマティックかつカタルシス満載の曲に。この辺は原曲からは想像もできないような特大ライブアンセムと化してて未だにライブでも大団円的ポジにある曲だし、1コード繰り返しながらその時々のアドリブも多く、会場に足を運ぶ度に違う感動がある。

2017年にリリースされた2枚目のworkshop。当時はまだライブ会場限定販売のCDでしか聞けなかった。ライナーノーツも付属しててこちらも名文。前作のworkshopは今でもライブで演奏されがちなベスト然とした選曲だったけど、今回はどちらかと言うと当時の最新作、ハンドルを放す前にのライブテイクお披露目と言った感じ。
相変わらずライブ音源を基にした再編集版・・・ということで実際のセトリとは大きく異なっているけど、ハンドルを放す前にの新しい可能性を引き出した一つのパラレルとしてとても重要なアルバム。リミックス版的楽しみがあるのが良い。元アルバムにおける、無駄な音をそぎ落とし最小限の音だけで構成された隙間だらけのミニマルな曲群が、クラウトロック+ダブといった(つまり80sのUKにおけるポストパンク的な流れと並列でもあると思う)電子音と浮遊感漂う残響によって隙間が埋められていく。とくにM1のハンドルを放す前には馬渕さんによるフックとなるギターリフ(この曲リフそのものが歌メロで言う"サビ"的なものを担っている)が音源と比べてかなり表情豊かで、同じフレーズを弾いているのに捻りのあるプレイ一つで全く違ったグルーヴを生む。M5のねつけないもエレクトロニクスによって大きく印象が変わっていて、持続するようなドローン的な低音は歌メロの不穏さを際立たせていてかなりヘヴィに。ラストのあの気分でもう一度は超メロウなクラウトワーク歌謡。元々好きな曲だけど、音源とは違ったミニマリズムを見せているのが良い。というか元々ハンドルを放す前にが60~70年代当時の機材を使って作られたらしいし、まるで当時のライブを、ある程度アーカイブ化され、オウガなりにアップデートされた状態で追体験するような気持ちになれる。M7のワイパーのみ初期のフォグランプからの名曲。フォグランプ自体が後のクラウトロックを予期さえるものもあったのだが、9分超に渡る今回のアレンジはその最たるものになっていて、とは言いつつ初期の曲らしいUSインディー由来のメランコリックなリフレイン2本はかなりキャッチー。メロもポップ。しかし、やっぱりドロドロとした音響で再構築されていてこれも素晴らしい。

2020年リリースの三作目。2019年以降オウガのライブも徐々に変化していて、バンドの代表曲でありライブでも一番の沸点とも言えるロープやフラッグが演奏されない日も割と多くなってきたのだけど、その代わり新たなアンセムとして生まれたのが最新作に収録の朝や動物的/人間的だった。元々ライブで何度も演奏され変化した末のアルバム収録、しかし拍子抜けしてしまうくらい(これはこれで違う良さがあるのだが)ライブと比べるとすごく素朴なアレンジだったのが、今作を聴くことでようやくその変遷、違う姿を垣間見ることができる。
M1の新しい人から音源ではベッドルーム的にも聴けるふわっとした質感だったのだが、ライブによるリバーブとより強調されたギターの揺らぎで陶酔するようなメロウさが倍増。そして出戸さんのボーカルも音源の起伏の少ない感じがかなりエモーショナルになっててこれも良い。これはworkshop全般に言えることで一作目の時点で思った人は多いかと思うし、こういう企画盤の1曲目としてもすごく良いと思う。
そして朝、初めて聞いたのは2019年初頭にあったコナン・モカシンとの対バンで、ライブで定番のロープを思わせるイントロのシーケンス、そして体感10分近く、下手したらそれを超える長尺のダンスナンバーで確実に新たな扉を開いてる感じがして衝撃を受けた。今までのアンセムと違い安易に「爆発させない」美学を感じる曲で、ダンスミュージックの均等に配置されたビートを生演奏ならではのリズム隊の揺らぎの中、その曲の骨組み的なフレーズをどんどん入れ替え足していったりを繰り返す。じわじわと変化をつける反復によって自然とフロアを高揚させ温めていくという新しい彼らのライブの形であり、11分に渡って体の動かし方を少しずつ変えて良くフロアの雰囲気も見事に保存されている。
ラストの動物的/人間的はボートらっぽい雰囲気もあるガチのライブ音源、しかも野音の録音のため超ローファイで、まるでカセットテープから流れてくるようなドラムとかもう完全にぐしゃっと割れた荒々しさと素朴なノスタルジーが同居した最高のエンドロール。丁度新しい人の1年前に先行シングルとしてリリースされた名曲で、当時は川崎のベイキャンプ直前にリリース→そのまま初披露って流れだったのだが、この頃ってどんどんやってる音楽が難解になっていった時期と重なっていて、そのタイミングとしては異例なほどストレートに壮大でメロウな歌ものだったことでまた衝撃を受けた。メロディもポップだし、何より歌詞が珍しく直球でエモーショナルだった。その後もライブのラストナンバーとして何度も素晴らしい夜をまとめてきた曲だけど、今回こうやって最終曲、しかもworkshopらしいスタジオ編集も入れてこない粋な演出にとてつもなくグッと来てしまう。名盤でしょう。

workshopではないけど是非触れておきたい関連作品。未発表音源をまとめたテイク2とも言える作品で「バックシート」「バランス」「また明日」等の初期曲がAOR風の後期のふわっとした作風に書き換えられているのがとても良い。バンドの変遷やライブにおけるアレンジの視点を探るという意味でも重要。とくにまた明日などはかなり風通しの良いソウル/ファンク色を強めていて、homely辺りのナンバーがどうしてああいうファンクになっていったかのルーツを辿ることもできる。ハンドルを放す前にでも見れたSlyやCurtis Mayfieldっぽいフィーリングもこちらにある。原曲からチャーミングな歌メロがこういう演奏によってよりポップに拡張されてるのも新鮮だし、純粋に曲の良さに感動してしまう。
そして素敵な予感 (alternate version)は実はworkshop3のものとも違ったアレンジだけど、実はこのalternate versionのライブが本当にヤバくてこの音源はそれをかなり再現されていて必聴。というのもあってworkshop3から続けて載せたのだけど、地響きするんじゃないかというくらいの暗黒ノイズにより塗りつぶされたダブへと変貌、ファンク路線とはまた違った跳ねたリズム隊の浮き沈みするようなグルーヴ感も曲にすごく合っていて、割と前、workshop1~2の時期からよく演奏されていたけどここで収録されたことがとても嬉しい。
終わりです。バンドを聴くという上でそのバンドのライブに行く、ライブアルバムを聞いてその変化を楽しむ、というのは深く掘り下げるには基本的に通る道だとは思うんですが、オウガに関してはその重要度が特別高いと思われます。最初にも触れましたが、難解だと思っていた音楽がとにかくめちゃくちゃ踊れてめちゃくちゃ轟音を浴びれる、これだけで印象がガラリと変わると思うんですよ。自分もこういう楽しみ方をリアルタイムで追えているのは初めて、ここまでライブに通っているバンドは他にいません。
最後に参考にさせて頂いたインタビューをいくつか
ロープ、が最初は観客に嫌がられていた曲だったのが今や一番盛り上がる曲になっていた・・・のくだり、笑えますが非常に面白いですね。より魅力が伝わると思います。
あとこちらも。
終わりです。
おまけ