先日公開したチャットモンチーの記事で本書に触れたので、せっかくなら感想を残しておくかと思って書きました。大分前に読んだので要所要所読み返し思い出しながら書いています。

佐々木敦参加という帯を見て手に取る。イカ天という超大きなムーヴメントがあったことは知ってたけど具体的にどういうものだったのかあんま知らず、ブランキーとか人間椅子を輩出したそういう番組があった程度のぼんやりした印象でしかなかったのだが、想像以上に巨大な規模で本当にバンドアニメ系の世界観みたいに日本がなっていた時代があったんだなという事実に衝撃を受けた。にも関わらずたった2年で終わってしまったこと、あまり語り継がれてこなかった背景も少しずつ見えてくる。バンドリとかって本当にこの時代が元ネタなんだろうなー。当時はまだなにかしたい欲望だけがある若者が、手軽に自己表現をする場がなかったことも大きく結びついているっていうインターネットが当たり前になってしまった今の時代に慣れすぎた自分からしたらちょっと距離があり、しかしよく考えたらすぐわかりそうな当たり前の事実も言われてみてやっと気づいた。あと90s中盤以降から大J-POP時代、カラオケボックスの流行で音楽産業が一気に巨大になっていく経過についても触れていて、たぶんTSUTAYAとか地元の古CD屋の最盛期もそのあたりからだろうし、小学生だった00年代前半に父親に連れられてそういう店を回って見てた景色とも一致する。
取り上げられているイカ天出身のアーティストについて。ガチでほとんど聞いたことない。たま、人間椅子、リトルクリーチャーズなどなんとなく名前は知っているバンドがどれくらい大きな存在だったのか、特にたまがそんな社会現象かってくらい流行してた話も今聞くと意外だ。KERAさんがインタビューに出ていてナゴムレコードとの距離感もわかるし、リトルクリーチャーズは渋谷系との接点についても語られている。そもそもバンド名トーキングヘッズじゃんという当たり前の事実にも今更気づく。渋谷系は確かに書籍がたくさん出ているし時代も被っててもイカ天と並べて語られていることをあんま見かけない気がしたが、とにかく何か新しいことをやりたいエネルギーの発散場所だったイカ天に対し、もっと音楽オタク的な視点に向かってった渋谷系が対立構造になっていたというのもそもそも前提を知らなくてためになった。スイマーズとかサイバーニュウニュウとかイカ天世代からしたら当たり前だったらしいバンドに関しては正直バンド名すら初めて知ったし、外からじゃわからないものがたくさんあるなぁと思う。
番組の仕組みについても触れられていて、審査員たちそれぞれのキャラクターが立っていてそっちに人気があったというのも説得力があり、一人一人をフォーカスしながら番組の構造そのものに焦点をあてて語られている。この辺りめちゃくちゃ詳しく書かれていてテレビ番組の一つのデカい記録としても貴重だと思う。けいおん!やぼっちざろっくを絡めてバンドブームっていう点で結びつけていく後半はあまり乗れなかった。これは自分がそっち側の世代というのもあるだろうし、論自体が少なくとも自分や自分が見てきた周囲の方々には当てはまらなかった。ただ作者がけいおん!を見た時のショックはしっかり伝わってくるし、それがエネルギーになり、筆者が見てきた時代となにかが重なったこと、その熱量を元に作られた本なんだろうし、そういう記録を残したいという気持ちはとても共感する。
ネット上にもこんなにバンドブームについて纏めた巨大なアーカイブはないだろうし、当時の人たちの貴重な証言の数々が乗ってるのもすごい。ただイカ天関連のアーティストや音源は試しに聴いてもやっぱり自分はそこまで好みでないし、自分に合ったシーンではないなという実感もあるのだが、これを土壌にして広がっていった音楽にはちゃんと自分が好きなのは間違いないなぁと省みることもできる。楽しく読ませてもらいました。