朱莉TeenageRiot

棚,日記,備忘録

the pillowsの好きなアルバム

the pillowsに関して現在の活動をちゃんと追えている状態ではないんですが、一時期の自分にとっては間違いなく一番好きなバンドとして長く君臨してたのもあって、思い入れのある時期だけまとめます。邦楽に関しては定期的にまとめてきたけどpillowsは好きな枚数が多くて一個分けたかったというのもありますね。


 

Please Mr.Lostman(1997)

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代表作。バンドの創始者だったリーダーが脱退して残ったメンバーでもうやめようかと何度も考えたみたいですが、最後にやりたい路線やってやり切ろうとレーベルの反対を押し切ってまで出した「ストレンジカメレオン」がしっかり受け入れられこの後の活動に繋がったという有名なエピソードに惹かれて聞いたこと覚えてます。実際もう解散寸前というか、フロントマンの山中さわおのどうしようもない孤独や不平不満をぶちまけたようなストレンジカメレオン、に続くTRIP DANCERやSwankey Streetと言った同路線のシングル三部作、そしてそれに連なる表題曲でもあるPlease Mr.Lostmanという文句無し名曲が並び、ロック路線へと大きく舵を切り後のpillowsのイメージを作り上げた第三期開幕のアルバム。この体制で20年以上経つ今でもずっと続いてるのですっかり1st的ポジションで語られること多いですが、キャリア的には5thになりますね。

元々ネオアコAORに傾倒してたジャンルをやってたのもありバンド名の由来もチェリーレッドのギターポップ名コンピ「pillows and players」から取ってるし、この頃はまだ以前のUKロック然とした空気がめちゃ濃く残ってて、SUICIDE DIVINGとかかなりマンチェっぽい。「彼女は今日、」「ICE PICK」ら辺もUKロックで今聞くとTRIP DANCERはもろSome Might Sayだし・・・となるんですがこれは後のpillowsもそうなんですが、中々ダンスミュージックの方にはいかないんですよね(二期までではちょっとあった)。メンバー全員ローゼズ大好きでもFools Goldには寄せないしこの後の彼らのキャリアからもそういグルーヴ重視の方向にはガッツリやることない気がしてて、シューゲイザーにも行かずUSオルタナやインディーロックと融合してやってくのはさわおさんのポップミュージック趣向というかやっぱメロディーが第一だよねって部分なんじゃないかと勝手に思ってます。

歌詞については語りつくせないくらい名曲だらけのアルバムで、「僕らは間違いながら何度も傷ついたけど 信号が何色でもブレーキなんて踏めない」「僕の振りかざす手があの空に届いて あの星を盗み出せたら何か変わるのか」などなどいつ見ても泣けるわけですが、この辺から感じるやるせなさというか、売れて色んな人に認められたいという気持ちとセルアウトすることへの反発に自分から板ばさみになってるようなのが伝わってくるのもすごく良いんですよね。一度売れ筋を目指したにも関わらず失敗してしまった第二期があったからこそってのもあると思うんですが、そういう作品が出る経緯含め大好きなアルバムでした。

 

LITTLE BUSTERS(1998)

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これも代表作。BUMP OF CHICKENによるハイブリッドレインボウのカバーが有名になったおかげで原曲体験として聞いた人も多いんじゃない?て思うけどまさしく僕がそれで、これを聞いて関連作とか前後作とかバンドのことを調べてく内に上記のロストマンという会心作のこと知ったりしました。そしてロストマン成功により自信をつけたさわおさんが今後その路線で行くのを決定付けた作品というか、決意表明なのが今作だと思います。てかジャケ良すぎ。

この後アメリカのオルタナティヴ・ロックへどんどん傾倒するpillowsだけどこの頃はまだUKロック路線みたいのも残ってて、そのおかげでUSのグランジオルタナなザラついた音とブリットポップマンチェスターっぽい空気感が溶け合っていて1曲の中でも同居していることもあり、割とこの後の所謂00年代ギターロックという邦楽の路線にも繋がってく要素とかもあったりして、このざっくりとした「90年台っぽさ」みたいのがとても愛しくなるアルバム。前作を踏襲したしんみりとした空気感もどことなくそれっぽいですね。

開幕の「Hello, Welcome to Bubbletown's Happy Zoo」はもろthat dogだけどヘヴィなギターサウンドグランジとも接続できると思うし、名曲ハイブリッドレインボウは元ネタがBlurのsong2だという意見もあるようですが言われてみるとリフは近くて(でも時期近すぎて微妙だと思います)、あの頃のBlur自体がUKブリットポップからUSのインディーロックに寄ってもろNirvanaPavementに影響を受けていた時期なので、出自というか同じ時期に同じバンド達を体験したってのも含めてリンクしてくるんじゃないかなぁと。

あとは特筆すべきは吉田仁のプロデュースによるギターの爆音感が凄まじく気持ちよくて、これはグランジ色強い次作で更に顕著になりますがとくにアナザーモーニングはイントロの出音のインパクトはいつ聴いてもめちゃくちゃかっこいいですね。でこれRideの「Like a Daydream」をpillows風に解釈した曲だと思います、Rideのときもアルバムであの曲のインパクトすごかったし。歌詞も「ああ今日は新しい僕の誕生日なんだ」と言ったこのときの心境をもろ表しててどん底で出したロストマンを評価してくれたファンへの感謝というか、ハイブリッドレインボウの「ほとんど沈んでるみたいな飛行船」「明日を持ってる」とか、こういうありのままの自分達をうまく昇華した名曲がたっぷり詰まったアルバムであり、この後長きに渡る活動の中で歌詞が再登場することもあったりして、pillowsのバンド通してのストーリー性(あとからついてきたって感じだけど)の強さもよく出た曲だと思います。

 

RUNNERS HIGH(1999)

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いつ聴いても最高・・・。確かこれくらいの時期にnoodlesと出会ってアメリカのオルタナに目覚めたと言っててその路線もろで、吉田仁プロデュースのエッジの聞いた爆音ギターサウンドが色濃く出た作品で数曲を除いてほとんどの曲が爆音です。しかもめちゃ音の分離がいいのもあってリズム隊もラウドに響くしでガンガン脳内に入ってきます。

開幕のSad Sad Kiddieから極端なまでに振り切られた爆音ギターのスイッチのオンオフがとにかく気持ちのいい過剰なラウド&クワイエット、毒っ気たっぷりな1曲目から最高ですね。NirvanaのLove Buzzを想起しつつグランジ一辺倒てわけではなくthat dogやPixiesのようなユニークな要素がメインに出ちゃってるのがよくわかる曲で、Wake Up Frenzyとかは次作にも出てくるDinosaur Jr.及びJ・マスキス感もかなりあります。

個人的に大好きなのがインスタントミュージック、ポップな入りでメロディーもメロウだし、アルバム内でもユル目の曲だと思って聞いてると批判的な歌詞が中々に強烈、でもってサビになるとやっぱり爆音ギターがこれでもかってくらい炸裂していくグランジである必要性たっぷりな曲。あとWhite Ashは彼らにしては珍しいくらいパンキッシュでめちゃくちゃかっこいいんですが、後にトリビュートにも参加するWhite Ashのバンド名の由来になった曲でもあるようですね。

 

HAPPY BIVOUAC(1999)

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年内二枚目で凄まじいリリース速度を誇ってますが、本当にロストマン以降評価されたことによる吹っ切れたpillowsはもう今が売れてようが売れてまいが関係ないって感じのアクセル全力で踏みっぱなしで爆走していきます。てことで1999年作。ありのままの自分を歌詞に投影することの喜びに満ち溢れてるという感じで間違いなく全盛期、幸せな登山なんていうタイトルがそのままそれを表してるし、まだもうやりたいことやりたいようにやってるようなエネルギッシュな空気が音から滲み出ていて本当に好きな時期ですね。

グランジ色っというかギターのヘヴィな感じは少しずつ抑え目になってきてその分Dinosaur Jr.とかPavement、Built To Spillと言ったUSインディー色かなり強まってきてて、ああいうヘロヘロながらどこかエモーショナルなインディーロックをかなり感じるし「LAST DINOSAUR」なんていう曲名はもろリスペクトだし、後にリメイクで有名になるFunny Bunnyもこの頃はシングルですら無い一アルバム曲ですがスカスカでローファイなユルさかなりUSインディー(というよりLiz Phairを)思い出します。あとは有名だけど「Back Seat Dog」「Kim Deal」と言ったPixiesやBreedersへのオマージュがそれを物語ってる気がするし、今聴くと開幕のビバークもBuilt To Spill、Beautiful Morning With Youではギターにマスキスの感じあると思います。あとは捻くれギターリフから始まるカーニバルはシングルとは思えないくらいずっとダウナーな雰囲気が続くんですがこれも大好きな曲です。

この辺のジャンルをかなりリアルタイムで取り込んで反映してたんだなってのがよくわかるアルバムで、PavementのWoowee Zowee(3rd)とthe pillowsのHAPPY BIVOUACはもうこういう音楽が好きですと自己紹介替わりにできるアルバム。

 

Ride on shooting star(2000)

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シングルだけど個人的に曲のパワーも3曲のまとまった作品としても傑作。フリクリだったりグランジのハムスターでおなじみのRide on shooting starはいつ聴いてもめちゃくちゃかっこよく、この時期のpillowsを象徴する曲で、直前のHAPPY BIVOUACやRUNNERS HIGHともまたちょっと違う作風ですがストレートにメロディーもギターリフもめちゃくちゃキャッチー、捻くれギターリフ路線ってのはこの後のアルバムでもずっと出てくる「pillowsの手癖感」みたいのが炸裂しまくり、そしてサビのカタルシスがめちゃ気持ちいい曲でもあります。

Skelton Liarは名曲。ギターの絡みとかリフの感じとかもろPavementですがあそこまでユルくはなくて、それこそグランジのラウド&クワイエット的カタルシスを得る展開はPavementとちょっとイメージが違うし、むしろここまでアッパーに仕上げてくるのはかなりpillows節を感じる。Subhumanは初期のUKっぽさ出しつつ少し浮遊感もあったりして濃密な3曲で全部キラーチューン。EPみたいな感じでよく聞いちゃうシングルですね。

 

Swankey Street(1996)/HYBRID RAINBOW(1997)

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この二作もB面含めて好きなシングル(あとジャケも最高)。ハイブリッド・レインボウのB面に入ってるBeautiful PictureはもろRadioheadだけど初期pillowsの持っていた何をやらかすかわからない怪しさとメロウな哀愁全部乗せって感じでめちゃくちゃかっこいいです。音までAirbagオマージュなのもこういうプロダクション彼らの中では珍しい気がする。TRIP DANCERに入ってるレッサーハムスターの憂鬱も二期以前を思い起こす曲ですがこれもノスタルジー全開で、ロストマンの名曲群とセットで是非。

NO SELF CONTROLL(1998)/CARNIVAL(1999)

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あとNo Self ControllのシングルでB面含めての3曲のバランスは個人的にRide on shooting starに並んで好きです。Wonderful SightはRadioheadの1stもろだし、3曲目のNightmareって曲が彼らにしてはかなり荒々しく、カーニバル(これもジャケが最高)のシングルB面のCome Downとか、この辺りの曲がアルバムの方であんまやらないというかあまり見せない一面のパンキッシュな路線でランナーズハイのWhite AshやビバークのAdviceとか好きな方は是非。

Another morning, Another pillows(2002)

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でサブスクにはないんですがこの辺のシングルが全部収録された「Another morning, Another pillows」は絶対に間違いないというか超名盤。全部聞けます。

 

上記4枚のアルバム+αでシングルとそれ以前の曲をちょっと入れてまとめたベスト「Fool on the planet」で一区切りって感じでしょうか、フリクリ効果で海外人気が出てくるのもこの頃だろうし(てかフリクリのサントラもほぼベスト的網羅具合ですね)。サウンド的には次作の「Smile」も割と延長線上(この4作より大分ローファイなサウンドで更にダイナソーっぽい曲とかあってこれも最高)で更に次の「Thank You My Twilight」からかなりハイファイな路線へと振り切りますが、この辺からさわおさんのメロディーセンスというかポップネスが炸裂しまくって、今回取り上げた所謂「オルタナティヴ・ロック然とした」色はどんどん薄まってパワーポップとか純粋なロックンロールに寄ってきます。Thank You My Twilightは丁度その中間って感じで、まだ曲とかは初期っぽいけどサウンドがめちゃクリアーですね。

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で後期のだと先ほどの「Thank You My Twilight」と2006年作の「MY FOOT」辺りが割と人気、というかすごく聞きやすくてMY FOOTは結構またマスキスのソロ作やLiz Phairを思い出すような曲あったりもして、最初名盤といわれてる90年台のアルバムから入ったんですがこっからの方が全然聞きやすかったなという気もします。ツインギター色も強くなってるしギターもクリーントーンがメインなので90sの作品とはまたちょっと色違いますが、このアルバムThe Strokes意識だともよく言われてますね。

 


以上でした。歴史を総括するような記事でもなくて好きな時期についてダラダラ書いたって感じですがこの後も大体好きです。最後にちょっと触れたMY FOOT以降にレーベルをavexに移して20周年記念だったり武道館ライブやったりとメジャー寄りに、音楽性もよりパワーポップに振り切り始めたり、反動的にその後もう一度解散の危機というか活動休止をした2013年作「トライアル」があったり、それ以降バンドの方やソロの方でまた色々と動きがあって、再始動した現在を第四期とする声もあるようですがちょっとまた違う作風になってきてます。多作なバンドで、他にも好きなアルバムちらほらあるし余り語られない初期作も名盤なので気が向いたらまたどこかで・・・。