朱莉TeenageRiot

棚,日記,備忘録

Butter Sugar Toast - Extended Play I(2022)

最近リリースされためちゃくちゃかっこいい国内ポストハードコア作品についてです。


 

Butter Sugar Toast - Extended Play I(2022)

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Butter Sugar Toast初EP。ボーカルTakujiro氏の強烈なDischord Recordsへの憧憬はいたるところから伝わるんですがかと言ってFugaziフォロワーだとかディスコーダントだなんて言葉一つで例えられるような音楽性ではなく、もうその手のポストハードコア~ノイズロック周辺を全て取り込んでオリジナルとして衝動たっぷりに出力された衝撃の六曲。まるでHeroinを原体験してるかのような印象すら抱かせてくれる、そういったHeroin以降のサンディエゴのカオティック勢~Repititaion以前の初期Unwound、ポストパンクにも通じそうなキリキリとしたノイズと緊張感からはThe ExやUzedaといった硬質なジャンクロックも思い出すし、Slintのような静寂の中に狂気を孕んだような緊張感とダイナミズム、そして聞いてるだけで腹の底から熱いものがこみあげてくるようなエモさがあってHoover→Four Hundred Yearsのラインと近いものも感じます。

初ライブを見たんですが本当に衝撃だった。SPOILMANやAKUTAGAWA FANCLUB、Teenager Kick Assと言った本当に初ステージとは思えない程シーンを象徴するような錚々たる面子に囲まれたにも関わらず、そこに全く負けることの無い劇的パフォーマンスに完全にその場で言葉を失ったし、同会場にいた人はたぶんみんな同じ気持ちだったと思います。その初ライブから1ヶ月でレコーディングされたスピード感はこのリアルタイムの空気そのまま保存したかのような恐ろしく生々しいDIY感にまみれた録音、フィジカルの方では一つ一つハンドメイドで作りジャケの絵も手書きのため同じものは存在しないという制作スタイルまでハードコアシーンへのリスペクトを感じるし、この徹底ぷりに脱帽。

スロウコア色がとても強い一曲目の「Sink」を聞くと本当に泣いてしまいそうになるくらい僕にとって"エモ"として刺さってくる。これがライブ一発目で披露されたとき今一番聴きたい音楽が今一番完璧な会場で鳴っているというこの感情を一生忘れることはないだろう。どの曲も衝撃ですが最後のMushroom Kingdom~Undietの疾走間とライブハウス中を包み込む(というか収まりきらないような)過激なノイズと爆音にぶっ飛ばされた。とくにUndietはゴリゴリのベースラインをノイズの隙間からうまく聞かせることでしっかり轟音ノイズの中に1本軸を作ることで生まれるグルーヴ、隙間を作ることによるノイズでのカタルシスが本当に気持ちよくてかなり中毒性がある曲です。家で聞いてても叫び声を上げるのを我慢できなくなるような感じ。bandcampのEPの方ではライブ音源もセットでついてくるのでこちらも是非オススメ。

 

The Keeley/SPOILMAN - Peaky(2022)

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そしてこちらも今年出たばかりのSPOILMAN及び盟友The Keelyeのスプリットシングル。関連作としてどうぞ。ジャケがめちゃくちゃかっこいい。Butter Sugar Toastをライブハウスに引っ張り出したのもツイッターで投稿されたスタジオ演奏動画を見たSPOILMANのカシマさんが声を掛けという繋がりもいいです。完全にリンクしたサウンドだしもし自分が海外からこれらのバンドをインターネット等を通して知ったらこのアンダーグラウンドシーンに恋焦がれただろうし、そんなシーンが国内リアルタイムで今かなり近い位置から体感できているというのは一音楽ファンとして本当に恵まれていると心から思います。

The Keeleyは元々ポストハードコアというよりはインダストリアル~ポストパンクのような鋭利でノーウェーブ的な聞き方をしてたバンドで、昨年のEPとかもかなりエクスペリメンタルなビートミュージック的側面があったんですが今回かなり生々しいバンド形態の色の強い曲に。SPOILMANとセットで聞くからこそってのもあるかもしれない。人力Ministryのような、ポストハードコア色強いとは言いつつもやはりソリッドなポストパンク~インダストリアルのメタリックなヘヴィさも存分に滲み出た「硬質なジャンクロック感」はもうポストパンクと融合して全身刃物になったUnsaneという感じ。

そしてSPOILMAN、もうSPOILMAN節が全身から滲み出たギターリフでじわじわと這いよる不穏さはもう貫禄すらあるのですが、今回スプリットというのもあって録音にThe Keeleyのメンバーが関わったらしく今までとは違った方向性、曲自体はかなりSPOILMANでもギターのソリッド感がめちゃくちゃ増してて金属的なサウンドになってます。例えば前作は全体的にかなりスカスカでギターよりもリズム隊の絡み合いを楽しむといった側面が強く、ポストハードコアというよりはMinutemenとかを聞く感覚で聞いたんですが、今回はむしろギターサウンドが前面に出ててカオスなギタープレイの内側にリズム隊が内包された感じというか、パート毎の分離が良かった昨年の2ndとは全く違う感覚で聞けます。というよりそのおかげでカシマさんのギタリストとしての魅力を存分に楽しめるんですが最終曲Pure Pukeでのこの録音による高速ジャンクギターは圧巻、ジャンクな質感と芯の通ったソリッドさみたいのが同居してて凄まじいです。もうすぐリリースされるらしい次作も楽しみ。