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SPOILMAN - HARMONY(2022)

SPOILMAN - HARMONY(2022)

気が狂ってる。狂気を全身に身にまとった新しいSPOILMANワールド全開の衝撃作。先行配信もPVも無し、全曲新曲という1年足らずにこれが出てきたことに驚いてしまうほど前作から突拍子もない変化を遂げていて、いきなり1曲目の「Cairo」では前作でのパンキッシュなイメージがずっとあったSPOILMANからはかけ離れた12分の大作で内5分がギターソロとかなり攻めてます。それ以外のパートもかなり展開が多く、とくに耳元でのたうち回るように不規則に駆け回るドラムがとにかくものすごくてホラー映画みたい。1st「BODY」でのノイジーで爆発的ポストハードコアメドレーとも言えるラスト数曲をぶっ続け12分即興的にやったような印象もあって、ライブでのインプロゼーション要素をうまいこと音源に落としこもうというのが割と今作の特徴かもしれない。2曲目の「Tiramisu」もそうで以前ライブで見た長尺のノイズパートがそのまま音源に入ってまさに今即興で鳴らしているような、現場にいるんじゃないかと肌先まで伝わるライブハウスの空気感が完璧に音源に保存されてます。開幕2曲からもうアルビニ録音だとかShellacやらJesus LizardやらMinutemenやらそういった今まで彼らの作品から感じてきた影響や文脈についてもうそんなこと言ってる場合じゃないだろというくらい全部断ち切って、アンダーグラウンドの孤高の帝王のような、ノイズとフリーキーなボーカルとアンサンブルの同居の仕方がコンセプトアルバムにすら聞こえる独壇場。

そして個人的に結構刺さってきたのが「Neight Fence」「Happy Life」辺りの路線で、シンプルながらじわじわと迫ってくる不穏なリズム隊とこのスカスカっぷり、スロウコアとも比較できそうな「静」方面の中から狂気が滲み出ていて、この2曲での団地ノ宮の弥子氏を迎えた女性ボーカルとの掛け合いが絶大にこのアルバムの解像度を上げてくれてて、それこそ今までのポストハードコア~ジャンクロックなスタイルからじゃ絶対体験できなかった、破滅的で、少し耽美な・・・ちょっとBlonde Redheadとかも思い出すような、この世のものとは思えない空気がある。最終曲「Sewer Dwellers」はこの路線の究極とも言えるスポークンワーズっぽさもあるカシマさんのボーカルが淡々と続きながらもどこかポップ、と思いきや徐々に徐々に胸の奥が詰まるような体の内の奥から何かが張り裂けて出てくるかのような、新しい生命体が生まれるその瞬間を見ているような耳元にじわじわ迫ってくる生々しすぎるドラムの録音にゾワっとする。

数か月前に出た前作スプリットに収録されてた「Pure Puke」ではカシマさんのフリーキーなボーカルをまるでギタープレイに投影したかのような、気狂いジャンクギターと言いたくなるマスロックとはまた違う奇怪なフレーズを弾きじゃくる姿が見受けられそのまま疾走していく3分足らずのパンクロック(?)にすごく惹かれ、このミュータント感は新境地かとも思ったわけですが、それどころじゃなかったし、Pure Pukeはたぶん今作が作られるであろう地盤から出てきた、それこそ新しいSPOILMANからの1st~2ndの従来の作風をリメイクという聞き方もできたのかもしれない。そして今作はその地盤から、これまでの再出力とは遠くかけ離れた・・・今までのスタイルから完全に脱して凶悪なノイズが至る所から体を蝕んでいくような、かといってノイズミュージックやノイズロックのような前衛的な空気は無く、あくまで3人がバンドで合わせている姿を想像できるような音に仕上がってるのがとてもSPOILMANらしく、そしてSPOILMANでしかありえない〇〇のフォロワーと言う聞き方を一切させない確固たる作品。90年代にリアルタイムでTouch and GoやSkin GraftやAmphetamine Reptileのリリースを追っていた人の気持ちは自分にはわからないが、それでもこの時代に毎年出るSPOILMANの新作を楽しみにしながらライブに通うことができるのを、本当に嬉しく思います。最高。

 

 

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