朱莉TeenageRiot

棚,日記,備忘録

レッド・ツェッペリン:ビカミング

レッド・ツェッペリンの映画を見たので感想です。

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メンバーそれぞれが自分たちの出自~バンド結成まで時代を合わせて交互に語り、その合間で影響を受けたアーティストや自分たちのバンドの音源及び演奏が挿入されるという形式のドキュメンタリー作品で、既に亡くなってしまっているボンゾことドラマーのジョン・ボーナムについては当時の音声と映像を繋ぎ合わせたものが一応初公開という形で収録(あまりインタビューや音声が残ってなかったらしい)。ジミー・ペイジ以外のメンバーの過去についてはあまり自分から調べたこともなかったためすごく新鮮で、時代の空気も見えてきてかなり面白かった。

 


 

自分は国内バンドのファンからスタートしてロック史を洋楽から順々に辿って行こうとなったときに60s~70sの代表的なアルバムを、主にローリングストーン誌の名盤リストをガイドとしながら調べていって、ビートルズの変遷やストーンズキンクスにフーといったブリティッシュ・インヴェイジョンからジミヘンへ、少しずつ時代を進めていってツェッペリンやサバスといった大きな音楽性の飛躍に胸をわくわくさせながら聞いた。何よりジミヘンのぶっとく変幻自在のギターワークはあくまでオールディーズとしてのイメージが強かった60sのバンドの音からハッキリと今の音楽とのリンクが見えた瞬間で、そこからリフという形を伴ってより鋭利に音楽性を変化させていくツェッペリンとの出会いで完全に今の自分の音楽趣味と繋がった感覚がありとても興奮した。同時代だとイエスやキンクリにもびっくりしたし、この時期の音楽は掘ること自体が本当に楽しかった。とくにツェッペリン(以下ZEP)に関してはアルバム毎の変幻自在さ含めてとても好きで、どれが一番好きかって聞かれてもパッとすぐには出てこないし、比べられないくらいたくさん聞いた。それこそNUMBER GIRLのファンだった自分はライブ盤での音源のアレンジや変貌っぷりに衝撃を受けたのだが、ZEPも同じくライブ盤のバリエーションが多数あってその都度違う楽しみ方ができたのも良かった。

後にオルタナにハマりグランジを掘る中でNirvanaSoundgardenSmashing Pumpkinsといったバンドの中にギターリフからZEPと(あとサバスと)重ねて聞いていた部分が強くあるし、今ではオルタナと言えばシューゲイザーやインディーロックが自然と交わった意味で使われることが多いけど、自分が洋楽を掘っていた時期はまだ各種メディアや音楽雑誌ではオルタナグランジといった見方が多く、そういった観点からZEP自体がオルタナの祖なのではないかと思って聞いていた記憶がある。あとはZAZEN BOYSのライブに通っていた時期でもあるため、ZAZEN BOYSが法被を着たLed Zeppelinを自称していたことからも自分の中で特別視していた部分が大きい。Riff Manの移民の歌風のアレンジも大好きだった。

映画とは関係ない部分で長々と語ってしまったけど、そもそも朱莉TeenageRiotでZEPについて書いたことはほぼなかったし、パンク以前の音楽についてちゃんと触れた記事もあまりないため、一応こういった経緯で聞いた/触れていたという旨を事前に置いておきたかった。つまるところビカミングは元々HR/HMやZEPのファンではない、及び聞いたことがないという方でも、割とこういった文脈で見れば新鮮に楽しめるのではないか、少しでも物差しが増えるのではないか、という前置きでもあるし、純粋に若者四人の青春の一ページとして、新しい音楽を切り開いた瞬間の記録としても楽しめる。オルタナの祖、というのは少々誇張しすぎたかもしれないが、実際ハードロック的なのは2ndまでで、3rd~8thに渡って似たようなアルバムは一つもないと言っても過言ではないくらい毎度新しい実験をしているし、4thがリリースされStairway to Heavenが話題になった当時からハードロックとして括ることにバンド自身だけでなくメディアやシーン内で否定的な意見が出るほどだった。何より今回の映画でもしっかりフィーチャーされていたのだが、レコード会社の幹部をレコーディング現場には一切立ち入らせないだとか、販促のためのシングルを切らず、アルバムとしてのトータル作品しかリリースしない約束をしていたり、とにかく徹底したセルフ・プロデュース、ジミー・ペイジのレコーディングに対する強い拘りと実験、広がり続ける音楽性などにオルタナティヴな精神性があると思う。先日出した音楽ZINE(limbo 曙橋作品集/私的アルビニ名盤選 - 朱莉TeenageRiot)には"レッド・ツェッペリンスティーヴ・アルビニ"というコラムを記載したのだが、ここでもこういった話を別方面から膨らませている。実際にジミー・ペイジロバート・プラントが90sにもう一度組んだプロジェクトでアルビニ録音をしている、というのもあるのだが、商業主義を徹底して嫌うスティーヴ・アルビニは売れてるアーティストが嫌いというより、レコード会社が利益のためにバンドの音楽性に介入する行為を嫌っていた。故に、むしろ徹底して自分たちの音を追求するツェッペリンは史上最も売れたバンドと言われる存在でありながら共通項を見出せるなと、今回の映画ではそういった面がちゃんと垣間見えたと思う(正直リリース時期が被っていたため緊張したのだがほっとした)。

 

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映画について。まずIMAXで見たというのもあってドラムの音がヤバすぎる。ZEPと言えばボンゾのドラム、というくらいドラムがすごいバンドであることは有名だけど、このデカい映画館の音響で、それこそベーシストのジョンジーことジョン・ポール・ジョーンズが何度も語っていたボンゾのキックのパワフルさだったりとか、力強く立体的なアンサンブルだったりとか、とにかく生で体感するかのごとく聞けたことが嬉しい。そして本編、序盤は幼少期から音楽の道へと進んでいく各メンバーの振り返りトークがメインで、その中でそれぞれが当時憧れた、大きなリファレンスとなったであろうアーティストのライブシーンが都度挿入されていく。例えばボーカルのロバート・プラントは結構真っすぐにリトル・リチャードの大ファンで、実際にリトル・リチャードの演奏の上を自由に横断する、伸びやかだか時折がなり立てて尖ったフックを作るフロントマンとしてのパワフルなステージングを見ることで、そもそも歌唱自体も割と直系に感じてしまうほどプラントと重なって見えてくる。これだけでも大きな発見だし、ボンゾのジェームス・ブラウンの回想も本当に素晴らしい。JBのライブ映像と言えば自分はファンク確立期、60s後期~70sのものを見ることが多く、実際名盤とされているライブ盤もその時期のものが多いのだが、まだ若いボンゾが影響を受けたと語るのは1960年前後である。故にJBバンドがまだThe Famous Flamesだった頃のライブシーンが挿入されたのだが、カッチリとリズムを刻むファンクが定義される以前のため自分としてもすごく新鮮。ただこの頃からボルテージを上げてドライブするドラ厶が要にあったことがちゃんとわかるし、これがラウドでグルーヴィーというボンゾのスタイルに繋がるものがありぶち上がってしまった。そして映画終盤、おそらく69年前後のツアーでZEPのライブにJBバンドのメンバーが来ていたと告げられる場面があるのだが、その時期こそジャボことクライド・スタフルフィールドが在籍していたJBファンクの全盛期でもある。

冒頭でも述べた通りジミー・ペイジ以外のメンバーの変遷はあまり知らなかったため、マルチプレイヤーでもあるジョン・ポール・ジョーンズのルーツがしっかりわかる音楽一家だったこととか、あとはボンゾとロバート・プラントが古くからの友人で最早旧知の仲というのが二人の語り口からもよくわかりつい笑顔になってしまう。セッションマンとしてあらゆるアーティストのレコーディングに参加するギター青年ジミー・ペイジと、60s中期~後期にかけて家もバンドのあてもなく彷徨うロバート・プラントはすごく対照的に写ったし、後に出会うこと自体不思議な邂逅でそれ自体が魅力的だった。残りのメンバーを集めるという流れできっとスタジオセッションで数々の人脈があったであろうジミー・ペイジの意見を遮って(実際ジョンジーはこの流れで合流しているし)、すごすぎるドラマーがいるとボンゾを提案するロバート・プラントのシーンはグッときた。尚且つボンゾは奥さんからプラントとはもうつるむなって怒られていて、最初は嫌々だったっぽいのも面白いし、そのまま吸い寄せられるように4人がバンドになっていく様が、実際にノンフィクションの当時の映像を交えて描かれるシーンは本当に感動してしまった。ボンゾもジョンジーも初スタジオからすごいエネルギーを感じたことが画面上からも迸っていて、最強の4人が揃ったという確信が各メンバーの笑顔からまじまじと伝わってくる。本当に忘れられない瞬間だったんだなと。そして今、目の前で明らかに新しい音楽が誕生している瞬間を画面越しでも見れたことがすごく喜ばしい。ここは本当に熱く、今思い返しても泣きそうになってくる。

後半は1st~2ndのリリースとツアーの流れで、母国UKでは当初あまり受け入れられず、いきなりUSでヒットしたというのが後のHR/HMの流れを考えると(とくに初期の音楽性と)リンクするなと思った。また当時の対バンの記録が次々と流れるシーンも興味深く、Vanilla Fudgeが一緒にツアーしたということで彼らのライブシーンも見ることができ、カーマイン・アピスとボンゾというお互いバンドの顔となるパワフルなドラマーがいたことや(アピスはこの後ジェフ・ベックと組むためThe Yardbirdからの交錯があってちょっと面白い)、ブルースやハードロックといった枠組みに収まらない懐の見えなさに共通項がある充実したツアーだなと思った。そもそもボンゾはアピスから大きな影響を受けていたらしい。あとはツアーの面々にAlice Cooperの名前があったのも驚いた。そしてやっぱり演奏シーンに字幕があるのがシンプルに嬉しい。前にストップメイキングセンスを見たときと同じ感想ではあるのだが、映画だと字幕のおかげで歌詞を体感しながらライブ体験(に近い物)ができるというのが新鮮で、予告でも幾度となく流れるGood Times Bad Timesは強烈なインパクトを残すイントロ、そしてプラントのボーカルがあの歌詞で歌い上げるという部分に幾度なく聞いてきた曲にも関わらず新しいカタルシスがあった。何より改めてじっくり聞くとボンゾがこの時点で超フリーキーにかましていて笑ってしまうほどかっこいい。

他のライブ映像で個人的に記憶に残っているのはDazed and Confused。重苦しいサイケデリックなヘヴィ・ブルースで会場の緊張感をそのまんまパッケージングしたテイクで、Creamのようにライブ盤における即興展開で長尺に変貌するこの曲が、何故ライブで人気だったのかが視覚的によくわかるようになっていて、ボウイング奏法によるフレーズというよりは音色、ノイズを垂れ流して彩っていく様は演奏してる姿を見ることに大きな意義がある。あとは個人的に好きなRamble OnやBring It on Homeがガッツリ紹介されていたのも嬉しいが、あくまでドキュメンタリーとしての音源紹介のためライブを楽しむための映画ではないのは注意。

今回の映画はメンバーの幼少期~ツェッペリン結成~2ndリリースまでの流れを振り返る作品のため、それこそ音楽性が変貌する3rd以降の流れは語られておらず、Communication BreakdownというZEP随一のハードロックナンバーが何度も流れることもあり、HR/HMの祖としての側面が印象としては強く残るかと思う。この時点で2時間以上あるため尺的にどうしようもないのはわかるけど、自分は後期の流れが音楽的には最も好きなので多少残念ではある(だからこそ、映画を見た後に3rd以降を聞く人はその変遷が大きく楽しめるかなとも思う)。とくに大ブレイクした4thの制作やその後のバンドを取り巻く状況に関して、レコーディング環境自体が特異だったのもあってメンバーそれぞれからどう語られるのか見てみたかった気持ちもある。てっきり解散までやるのかと思っていたけど、バンドの終焉に関してはボンゾの急逝という事実がメンバー同士ずっと仲睦まじい様子が映像からも伝わってくるが故により一層悲惨に写ってしまったかもしれない。本当にずっと仲良しだったことがよくわかる映画だった。とくにボンゾは結婚シーン以外にも奥さんが多々出てくるし、ツアーをきっかけにホームシックになってしまうシーンもある。自分の世代ではボンゾと言えば今は亡き伝説のドラマーとして最初から知ったわけだけど、こうやって実際に喋っている姿やメンバーが彼について語る嬉しそうな姿を見たことで、音源を聞くだけでも既に大分しんみりしてしまう。そして彼がいてこそのZEPだったというのを、やっぱり今更実感してしまう部分もある・・・。

 


 

最後に好きな曲やアルバムをいくつか挙げて終わります。

ZEPの作品は多数あるけどヒット曲の中では有名なものが多い1st~4th期よりもAchilles last standやKashmirがとくに好きで、とくにKashmirは最近公開された新しいライブ音源がイントロから圧が凄まじすぎて感動した。

アルバム単位だとヒプノシスのジャケでも有名な5枚目の聖なる館が好きで、No Quarterといった静謐で怪しいドロドロとしたサイケデリックナンバーはベストに挙げたい。こういったスロウナンバーでこそ浮き上がってくる素っ気ないリズム隊の掛け合いすら極上のグルーヴがあることがわかるし、硬すぎない録音が本当に素晴らしい。あとはメロトロンの怪しい音色もしっくりハマっている。他にも3rdで飛躍させたトラッドやケルトの色が入ったアコースティック路線→ハードロックへとスイッチするOver the Hills and Far Awayや(故に3rdも好きである)、ドラマーのボンゾ主体で作られたファンクやレゲエといった変化球も多数入っていて、それでいて流れもしっかりある。あとは7枚目にあたるPresenceがかなり硬質で線の細いバンドのぶつかり合いが最も色濃い作品で、メタルだけでなくポストハードコアやマスロック側からも聴ける要素があると思うし、比較的とっつきやすい作品ではあるかと思う。

今回ビカミングで多く聞ける初期のハードナンバーが好きな方は是非ともライブ盤、中でもバンド全盛期のパワフルなぶつかり合いが完璧にパッケージングされたHow the West Was Wonをおすすめしたい。個人的にもうZEPだとか関係なく、ロックというジャンル全てのライブ盤を含めても史上最強なのではないかと思ってしまう凄まじい作品。冒頭のImmigrant Songは音源からは想像もつかないほどの爆音っぷりに自分はいきなりぶっ飛ばされてしまったし、HeartbreakerやBlack Dogといった立て続けに押し寄せるリフの応酬、大名曲Stairway to Heavenの美しくも重い、音源とはまた違ったプレイや、Disc2の約半分を占める25分に渡って繰り広げられる緊張感のあるDazed and Confusedの過密セッション(映画では一部分のみだったためフルではどうたったかを知れる)、また本編でも終盤のフックとして使われる大名曲Whole Lotta Loveが単なるハードロックナンバーではなくサイケデリックな巨大ブルースとして21分超まで膨張したDisc3など、この時点での集大成がここに詰まっている。Disc3は3枚の中で一番ロックンロール色が濃い。4th以降の極彩色のようなバンドカラーが見られるライブ盤ではないが、シンプルにバンドとしての躍動感がすごすぎる。何故伝説のバンドかがよくわかるライブ盤かと思う(ちなみに自分はこの頃のImmigrant Songのライブ映像が好きすぎてレッド・ツェッペリン DVDという映像作品を買ってよく見ていた)。