朱莉TeenageRiot

棚,日記,備忘録

ZAZEN BOYS - らんど(2024)

 

 

ZAZEN BOYS - らんど(2024)

2024年にリリースされたZAZEN BOYSの6枚目のアルバム。前作すとーりーずから12年、長かった。待ちわびた。この間に向井秀徳も大きく環境が変化しただろうし、メンバーの交代や各種コラボレーション、メディアへの露出、ナンバーガールの再結成など、活動の幅を広げる中で、ここにきて今どういったモードなのか、スタジオアルバムという纏まった作品としてはどんな音楽性になっているのか、全く想像できなかった。自分自身すとーりーずリリース直後にライブに通い詰めたあの頃とは大きく音楽趣味は変わってしまったし、向井秀徳が残したあらゆる音楽を、ルーツとして大きく影響を受けたけど、今彼らから出てくる音源が自分にフィットするのか、期待する気持ちと同時に、ちゃんと受け止められるかどうか不安な思いも強かった。バンドを好きでいた期間が長ければ長いほどこういった複雑な気持ちは募ると思うけど、久しぶりにそれを痛感することになった。

 

永遠少女のMVが2023年12月に発表。それは完全に杞憂だったと知る。重い。肌に突き刺さるような生々しいバンドの音、切実すぎる詩、完全に喰らってしまって食い入るようにMVに釘付けになった。前作から12年もの月日を経て、この年になって今なお最高傑作として新しい代表曲がZAZEN BOYSから出てくることに、喜びと畏怖の念が同時にある。イントロのリフ一発目から鋭すぎる。ZAZEN BOYS 4~すとーりーずの流れってかなりファンキーだったと思うけど、永遠少女は割とシンプルなギターリフとリズム隊のフレーズの反復と歌のみっていうわかりやすい構成で、特出してファンクでもポストハードコアでもない。それでいてここまで鋭利に突き刺さってくるのは長年積み上げてきたバンドの年輪を存分に感じる。向井秀徳ってNUMBER GIRL時代からわかりやすくエモとかノスタルジーって言葉で括ることができない、完全に個の情景を持っていたと思うけど、改めて永遠少女に籠った情念でそれを思い出した。切ない。

らんど、今作は松下敦加入以降のPrince ミーツ Shellacみたいな雰囲気からそのまま地続きでありつつ、かなり歌に比重を置いた作品だと思う。ファンクの色が強い、踊れるアルバムではあれど、気軽に流していてもついつい耳に入ってくる言葉の一つ一つが胸に突き刺さってくる。バンドのグルーヴを曝け出すような、そぎ落とされた生音っぽいサウンドはちょっと1stも思い出す(MIYAのプレイにひなっちを重ねてるところもあるかも)。DANBIRAやバラクーダはストレートにファンクだし、エッジの効いた鋭利な音でカッチリとメリハリの良いグルーヴを奏でるという意味ではJBのライブ盤などを想起した。あとはギターがメロディアスなのが印象的で、ソリッドで鋭利なギターリフっていうのもZAZENの味だとは思うけど、今作「ブルーサンダー」「八方美人」あたりでのギターはそれとはちょっと違った、グルーヴ重視ってよりは完全にメロウでギターが一つのメロディを歌っていて泣ける。とくに八方美人に感しては歌詞のインパクトも強くて、向井秀徳語り部のようなボーカルと、寂しくて寂しくて仕方がないんだろうなという心情の吐露、そして隙間を埋めるセンチメンタルなギターフレーズが凄まじくかみ合っていて涙が出てくる。

杉並の少年は元々ライブで何度も披露されてた曲ではあるけど、今作を象徴した1曲。それこそHIMITSU GIRL'S TOP SECRETとかRiff Manと同じ系譜としても聴ける、ソリッドなギターリフの反復とキメを中心としたナンバーではあるけど、ただHIMITSU GIRL'S TOP SECRETとかRiff Manもアンサンブルで聞かせる曲で決して歌ものではなかった。杉並の少年は、歌ものである。あんまり「歌ってるZAZEN BOYS」て今まで多くなくて、ライブ音源ではお馴染みの「感覚的にNG」とか4thにおける「SABAKU」は歌ものの代表曲だと思うけど、ここまでグルーヴに寄せたナンバーでそれを両立させたのって個人的にはとても新鮮だったし、それ故にアンサンブルにぶち上がってる横でセンチメンタルな歌が寂れた情景を描き出す新境地に至った名曲。本当に素晴らしい。「公園には誰もいない」はゆったりとしたナンバーで、ここでも胸に突き刺さるメロウなギターフレーズが生きてくる。「YAKIIMO」はミニマルなビートを前面に出すことでかなり殺伐としていて、音楽的には今までで最もポップなアルバムな気もするのに、実は歌われている内容は最もヘヴィなアルバムではないかと思う。

最後の胸焼けうどんの作り方はZEP風パロエィのイントロの笑った。法被を着たLed Zeppelinを目指したZAZEN BOYSが、初めてハッキリと音楽的にLed Zeppellinをやったのではないかと(ライブ盤のRiff Manとかはあったけど音源では初めてかと)思う。おちゃらけ枠だと思うけど、アルバムのカラーや流れ的にそこまで笑えないのが良い。向井秀徳は音源においてシリアスな言葉を積み上げてきたけど、ライブ会場でのおふざけって結構その真剣さの照れ隠しなのではないかと思ってしまうことがある。ASOBIの歌詞でも同じことを思う。向井秀徳はいつだって孤独で、自分がどんな人間か、どんなことを思っているのか、常に俯瞰してしまう、俯瞰しすぎてしまう人間なのだと思う。世の中のこともこれからの自分のことも全部俯瞰しては孤独になり、常に誰かに言葉を伝えたいという思いが常にあふれ出て、しょうがないのではないかと思う。らんどは、本当にこれまで積み上げてきたものの果てにある作品だと思うし、入り口を広くしながらも、底が見えないくらい深い何かが、まだ垣間見えるような作品になっている。この年になって円熟しながらもバンドの代表作を、最高傑作をアップデートしてくるZAZEN BOYSに震えてしまった。

 

あと今回アナログ版も出ていてこっちも凄まじかった。2枚組4面に分けられていてA面ラストが八方美人、最後の"愛してくれよ 寂しいんだよこっちは こんな夜は こんな朝は"で曲が終わり、無音の中で盤を交換する時間が染みる。ラストのD面、静寂の中で針を落とした瞬間永遠少女のイントロが始まるところもヤバい。