朱莉TeenageRiot

棚,日記,備忘録

10/3 DMBQとOGRE YOU ASSHOLE

メモ代わりの軽い感想です。

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行ってきました。OGRE YOU ASSHOLE×DMBQという熱すぎる対バンにラインナップ発表された時点で即チケット購入。今やってる姿はどちらも全く別物ですが、大きな区分で言う「サイケデリック・ロック」という繋がりはありつつも完全に独自のスタイルを確立させたバンド同士の対バンで面子の時点でとても楽しみでした。


 

OGRE YOU ASSHOLE

セットリスト

ハンドルを放す前に
素敵な予感(alternate ver.)

見えないルール
他人の夢

本当に素晴らしい。何度見ても飽きないしこれからも通い続けるんだろうなと思います。4か月振りでしたが今回も変わらず「ハンドルを放す前に」からのスタートで、隙間のあるアンサンブル、そして全ての音にリバーブやディレイがかかったような心地の良いダビーな音空間に浸る。続いて素敵な予感はまさかのalternate ver.で、このバージョン久しぶりに聞いた気がしますがこちらも激ヘヴィなダブ仕様、イントロからまるでMassive Attackかと思ってしまうほどに重低音なベースの音がえげつない。とてつもなく不穏で、まるで機械のようにフレーズをループさせ、突如出戸さんによる耳をふさぎたくなるような最悪のギターノイズ(褒め言葉)が発せられます。数年前にLIQUIDで同曲を聞いたときこのノイズソロの音量がデカすぎてライブハウス全体が揺れたんじゃないかというくらい、包み込まれたことを思い出す。終わった今思えばこれはDMBQとの対バンを意識してのセトリだったかのような気さえします。

(ライブで聞くと本当に凄まじい曲)

そしてアンセムの朝へと。ここで少し前回のライブについて。ブログには書いてなかったのですが4か月前の6月21日、D.A.N及び鬼の右腕との対バンのOptimoがあり行ってきたのですが、そのときの朝が新バージョンで更に拡張されていて今回もそれと近かったような(若干ギターリフ違うか?)。元々この曲はミニマルなループ、少ない素材でどうフロアを暖めていくかという曲だったと思うのですが、そのときのバージョンは馬渕さんのギターリフのバリエーションが増え空間的な上下するフレーズが導入されてたり、いつもなら終わる展開のところで多幸感溢れる大団円のようなパートが用意されてたり、10分以上同フレーズを繰り返し続けていた清水さんのベースに新しいフレーズが導入されてたりと、より拡張され、これまでとは違ったドラマティックな曲になった印象でした。

かつてのオウガは、ロープやフラッグと言ったわかりやすくカタルシスを得るアンセムが存在していたので(音源としてはworkshop1がわかりやすいかと)、朝はそことはまた別ベクトルの安易に爆発させない美学というか、一定のテンションを維持したまま肉体的に心地よく揺れる曲だったと思います。ここ2年でロープやフラッグをやらなくなり、代わりにハンドルを放す前にや他人の夢といったスロウでメロウな曲を配置することが多くなったことで、今までの朝とはまた違った要素を、曲の中でドラマ性を増やすことで拡張してきたように思えます。セトリと共に曲の形態も変わっていくし、更にその日のテンションだったりコンディションも繁栄されると思うんですが、朝という曲の性質上それをすごく感じやすく、曲自体が生きている感じがしてやっぱりリアルタイムで通うことで変化を楽しむことができるのがとても嬉しいと改めて実感しました。

 

続く"見えないルール"は安定のアンセムなんですが、いつもなら最後全てをかっさらう馬渕さんの痙攣のようなノイズギターソロが「ソロ」ぽい立ち位置ではなく、ノイズを基調としつつもそれがメインというよりは、おかまいなしとばかりにリズム隊も一緒にガンガン前に出てくる感じで、しかもギターソロ後も別に何事もなかったかのように新しい展開へ繋がってくという形態になっていて驚きでした。ギターソロが最後のカタルシスを得る場ではなく、いや間違いなくここはぶち上がるのですが、それさえも数ある展開の一つという位置に昇華されたわけです。この辺はもう特にグルーヴィーな曲を2連発やって数か月ぶりに聞けた喜びに加え、どちらの曲もよりドラマティックな変貌を遂げていたので高揚しすぎて曲間や無音の時間でも体を揺らすのを我慢できず、昂りを抑えられない状況でした。本当にオウガのライブに行くのは楽しいです。

最後は激メロウな他人の夢で終了。完璧。対バンということで1時間で終わるセットでしたがその1時間の中にも素敵な予感→朝→見えないルールと長尺の曲が中間に配置された非常に濃厚なセトリ、スッキリ見れるサイズ感で疲れすぎず最後までバリエーション豊かに楽しめ、意外とこれくらいで見れるのが一番丁度いいのかもという気持ちにもなります。

 


 

DMBQ

90年台初頭から活動しているので大ベテラン。まず僕はDMBQに関しては全リリースは追えてないしライブも初めてなんですが、名盤と呼ばれている2000年の「Jinni」そしてその前作であり代表曲Shoot meが収録された99年作「I know your sweet」、そして2001年作の「Annular Music」はかなり愛聴盤でした。続編も数枚聞きつつ、しかし最新作である2018年作「Keeenly」はもうドローンのようなアルバムでDMBQらしいヘヴィなサイケデリック・ブルースやリフ主体のロックンロール路線から、どちらかと言うとBorisの「Amplifier Worship」を思い出す実験的な作風に変貌していてちょっとのめり込めなかったのも確かです。事前情報一切ゼロ、果たして高速で爆音のロックンロールやロックの原体験を思い出させてくれるギターリフと暴力的ノイズで畳みかけてくる初期路線なのか、ボアダムスで活動していたキャリアを感じさせる最新作のヘヴィなノイズ~ドローン路線なのか、もしくはいいとこどりなのか・・・。とりあえず音出しの時点でちょっと軽く弾いたくらいのギターの音が余りにも爆音すぎて爆笑。これでライブしたら絶対災害です。

(Magcal Relationは初期DMBQの個人的ベスト曲)

結論から言うと、ほぼほぼ後者の現在「Keeenly」路線だったと思います。つまりまだ理解できてなかった部分、なんですが、しかしもう完全に惚れた。ヤバすぎる。この世の終わりみたいな爆音ギターがライブハウス全体を包み込み、もう絶対これ耳やられたと確信する程のノイズ、とにかく体の中震えてるし内臓まで響くんじゃないかと、そしてこれまた重低音爆音ベースにも驚きつつ、インプロ的な不規則なドラムが参加してきてこれは曲の体裁を保ってるのか?と不安になるがとにかくかっこいい、完全にKeeenlyの真髄というか、本当の姿を垣間見た。まさに全身で体感する音楽でした。アルバムで聞いたときしっくりこなかったのですが、それは結局向き合い方がよくわかってなかったというのもあるし、自分が愛聴していた旧作など初期の先入観も邪魔していたのでしょう。ライブハウスというのはそういうの全て取っ払って閉ざされた密室で展開された新しい世界に没入させてくれる素晴らしい場所だし、爆音は雑念を消しスマホも見れない状況でとにかく釘付けにされる。実験的なドローン路線とは言いつつしっかり昔ながらの増子さんのシャウトが乗っていて、何が言いたいのかよくわからないし、演奏中に何故か自分を繰り返し殴るし、破壊的だけど冷静にギターソロを弾くのあの全身を使ったパフォーマンスに一体この人は何を表現したいんだろうか、体内を渦巻く衝動がもう体に収まりきらないんじゃないかと、自然体が故に衝動そのまま体を飲み込んで全身が音楽と化してしまったかのようなその姿に、久しぶりに子供心のロックスターへの憧れを思い出すような、そんな大きすぎる感動があり、見ていて自然と涙が出てきました。

そして増子さんのパフォーマンスはかなり過激ですがどこか落ち着きがあるというか、冷静というか、クールなんですよね。佇まいがとても惹きつけられる。ノイズを吐き散らし自分を殴り大きく足を上げギターソロを弾く、しかしどこか理性的で、かつてDMBQが20年以上前のインタビューで言っていた「ハイテンション禁止」を思い出す。中盤以降、一休憩入れてから初期を思い出すヘヴィなリフものをかましてったのも印象的で、ミディアムテンポであまりにもノイジーだったのでもうこれは普通のドゥームメタルとかに足突っ込んだ感じで比較対象はSleepやBorisだと思います。アンコールでは最初期の名曲「Shoot me」を。高速のロックンロールなんですが、これも激ヘヴィに変貌していて曲調自体は軽いはずなんですが過剰にパワフルになり本当に気持ち良かったです。

正直耳栓を持ってくのが正解だったし、帰りの電車では知人と会話できないくらい耳がやられていた。1日寝たら回復しましたがツイッターを見ると音が大きすぎて途中退出した方もいたようで、まぁ本当に貴重な経験でした。

 

そして最新作、ライブを見た上で聞いたら本当に素晴らしかった。思ったより、というか自分が理解しようという姿勢が足りてなかっただけなんですが、かなりDMBQらしいんですよ。「So The Word of Good Spread」みたいな疾走ノイズチューンも残っているし。インタビューを読んだらビートに支配されたロック的なフォーマットから抜け出したかったと言ってて、それはベースのMakiと一緒にやってるビートレスのアンビエントユニットであるMoanでも如実に出ていると思うし、やっぱりボアダムスのメンバーとして活動してた時期の影響もあるんじゃないだろうか。それを取り入れつつ、でもDMBQらしさを捨てたくなくて、この時点で矛盾してしまっているんですが、しかしようやく互いを詰め込んだ落とし所が今作らしく、だからこそあのドラムなんだなと。アンビエンス漂いつつもガツンと爆音が鳴ってる感じってのが確かに出てるんですよ。増子さんのボーカルは相変わらずですが元々しっかり歌い上げるタイプではなかったからこそ、音の一つとしてこのアルバムでは本当にしっくりハマっている。実験的に聞こえるけどちゃんと全く新しい形でのサイケデリック・ブルースで、それを踏まえて聞くと本当に大傑作に聞こえてきた。ライブで聞く、とかインタビューを読む、とかで作品を見る角度や目線を増やしまくってようやく好きになれた気がします。