朱莉TeenageRiot

棚,日記,備忘録

記録シリーズ:OGRE YOU ASSHOLE / 音楽性から辿る周辺バンド

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ディスコグラフィに引き続き書いていきます。二つの記事で何度か名前を出したバンドや影響力が強いと感じるもの、その中でも個人的に好きなバンドについて。

  


 

基本的にオウガをきっかけに聞いたアーティスト及びインタビュー当で言及があったものを並べていきます。全体的にUSインディー期に偏っちゃいますが、最初にまず各所で言われているゆらゆら帝国 -空洞です- との関連性ですね。homely以降の三部作、インタビューやレビュー記事などどこへ行っても「空洞です」と比較されます。

 

ゆらゆら帝国 - 空洞です(2007)

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実際に石原洋+中村宗一郎が手掛けたということで録音の質感はかなり近く、ただ表層的な部分が似通っていてもただその中身、とくに本来の姿が露出するライブでの表現は完全に別物ですし、ゆらゆら帝国と比べることを前提としたインタビューや評価を見ると本質を捉え損ねてしまってるように感じ少々残念な気持ちになります。だとしても入り口として「空洞ですが好き」という方に勧めやすいサウンドってのは否定できず、それこそサウンドの質感だけでもオウガやゆらゆら帝国を聞いてるという方は少なくないとも思うんですけどね。

そしてインタビューにて実際に「直接的に影響は受けてない」と公言していて、よく比較されるhomleyも空洞ですを意識してあの音になったわけではなく「先にこういう世界観、歌詞のアルバムを作る」とコンセプトを決め、それに合わせたサウンドを模索した中でAORに行った・・・という経緯があります。でその際に相性のいい機材を中村宗一郎が、アイデアを石原洋が・・・という感じなんですよね。空洞ですに近づけた、というより、方向性を模索した中で近づいていったという感じです。

そもそもサイケと呼ばれつつそのサイケデリアのルーツもちょっと違い、ルーツを並べて聞き比べるのも面白いです。オウガはやはり90年代のインディーやオルタナ~ポストロック的なとこからのサイケゆらゆら帝国60~70年代のブルースやロックンロールがベースにあるサイケだと思っていて、両バンド共に完全にサイケ化する前にやってた音楽もそのルーツがもろに出てる感じなんですよ。そこに石原洋によるプロダクションを受けた結果が今の形なので、一致するのは「両者交流の深い石原洋の音楽趣味」ではないかと。作曲だけではなくライブにも参加するようなので、もうメンバーが一人被っているという状況だったんだと思います。

 

それがよくわかるのがこちらのソロ作「formula」ですね。

 石原洋 - formula(2020)

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町の雑踏を合計40分録音しその遠くから微かに石原洋の弾き語りとバンド演奏が聞こえてくる・・・という、雑踏がメインなので声も演奏も遠いんですがこのかき消え具合というか、ノイズミュージックやアンビエント聞いてる心地よさと弾き語りが共存している感覚、そしてメロディーが結構強いので石原洋のふわっとしたボーカルでもこの雑踏に決して消されることはないんですよ。昨年の愛聴盤ですが、ここからオウガにもゆら帝にもアクセスすることができると思います。というか単純に石原洋のメロディー自体も近い気が・・・

 

そして個人的に面白いなと思っているのはオウガ、そして坂本慎太郎、双方が石原洋プロデュースを抜け独立した以降の音が逆に近いものを感じるんですよね。坂本慎太郎のソロですが

ナマで踊ろう(2014)

できれば愛を(2016)

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どちらもAOR~ファンク趣向から音数を減らし更にソフトに向かった結果歌が強くなり・・・というところとか。

 

そして関連性があるというわけではないですが、石原洋+坂本慎太郎という二人が手掛けたこともあるのと個人的に近いものを感じるこちらのバンド

Nisennenmondai - Destination Tokyo(2009)

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にせんねんもんだい。このアルバム聴いておったまげたんですよね。AOR色やメロウさは全く無いのでちょっと毛色が違うバンドですが、最初は破壊的爆音ノイズをぶちかましてた彼女達が、どんどんストイックに音をそぎ落としミニマルミュージックを人力でやり始めるその経過に近いものを感じたり、ダンスミュージックの均等なリズムの気持ちよさとその反復を生演奏によるロック的ダイナミズムで昇華してくところ・・・そのロックでもありディスコでもあるバランスが完璧なアルバムだと思いました。

でそれにオウガと通じるものを少し感じたんですよね、ライブ盤も凄まじくそのセッションの熱気など、個人的に両者セットで聞きたいバンド、と僕が勝手に思っていて、先のスタジオ盤とこちらのライブ盤は非常にオススメです。

NISENNENMONDAI LIVE!!!(2011)

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あとはちょっとだけ触れた初期のとり、ねじ、ろくおん

Nisennenmondai - sorede souzousuru neji(2004)

Nisennenmondai - rockon(2006)

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はポストパンクやクラウトロックなど、あのスカスカな音楽をとにかく音割れするような大音量ギターノイズで塗りつぶしてノイズポップ化させたアルバムとも言えます。

お互い交流があるわけではないですが、2013年にスペインからエスプレンドー・ジオメトリコが来日したときの対バンがOGRE YOU ASSHOLEとNISENNENMONDAIだったのが個人的にかなりニヤリとしました。ジオメトリコ自体もインダストリアルなのですが、反復のボディ・ビートとノイズにまみれてく音楽性が両者を関連付けるのにも最適だと思いますし、ブッカーの方マジでナイスだ・・・。

 

そしてこちら、バンドの半生を辿るようなものでまず各アルバム制作時にメンバーどういう音楽を聞いていたか、最近余り触れられることないUSインディー期から当時比較されがちだったLCDラプチャー、フランツ等のポストパンリバイバル~ディスコパンクへの認識なども全部触れてます。そっからどうサイケ三部作へ至ったか、そして長野県の原村という浮世離れした土地から都市を見ていたという「あの音楽に至ったバックグラウンド」のようなものが読み物として非常に面白いです。

続編の方でも、周辺の邦楽ロックバンドと距離を感じ始めた時期やフェスでの場違い感、それ以降のサウンドの変化など・・・本当に充実しています。

 

割と2010年前後のUSインディーとも来日をきっかけに交流があったようで、中でもディアハンターとのことについて書かれていて音楽性が近いというわけではないんですが、直接的に引用ではないバンド本来のサイケデリックが音に滲み出てる感じは結構近いものがあると思ってます。僕が同時期にハマっていたので勝手に思い込んでるってのもありますが、この頃のディアハンターとオウガが対バンしていたのってかなり面白いなぁと思うんですよね。 

Deerhunter - Microcastle(2008)

Deerhunter - Halcyon Digest(2010)

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他にもクラウトロックに至るまで・・・の流れでステレオラブトータスの名前が出てきたり、とにかく今なおこの辺のUSインディーにどっぷりな自分はやっぱりしっくりくるのが納得できますね。

あと個人的にこちら

The Flaming Lips - The Soft Bulletin(1999)

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出戸さんがクラウトロックにハマる以前はこういう派手なサイケが好きだったと名前を挙げていて、石原洋と組み始めたデビュー初期はリップスを参考にしていたようで、その時期のピンホールやフォグランプにあるどこかメルヘンチックな・・・異次元の遊園地に迷い込んでしまったようなサウンドって割この辺と通じる気がします。バランスとかもかなりリップスぽいですね。

Silver Apples - Silver Apples(1968)

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そしてSilver Apples、60sサイケを代表するアメリカのバンドですが、当時の他のサイケバンドの中では今のクラブミュージックにも通じる反復の美学とも言えるものが生演奏でやられており、かなり新しい・・・最近のオウガのモードと近いものを感じます。それこそ「朝」とか。

 

そして出戸さんの影響を受けた9枚について語る・・・という動画があるのですが、そちらで言及されてたアルバム、アーティストから掘り下げていきます。

こちらリストですね

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テレヴィジョン、モデスト・マウスやヨ・ラ・テンゴは初期~中期にかけて非常に納得、そしてノイ!やCANはまさしく後期の主軸だと思います。CANのTago Magoはペーパークラフト辺り、ノイ!はロープですかね。

 

あとは前の記事で触れましたが、アルファベータ vs.ラムダは非常にビルト・トゥ・スピルを想起させます。

Built to Spill - Keep It Like a Secret(1999)

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こちらはKレコーズやUPを代表するバンドで、ベックやモデスト・マウスをルーツとする出戸さんがそのままUSインディーにハマってく過程で聞いたのかなぁと。

モデスト・マウスに関しては上記の動画の1stとあと個人的にこの2nd3rd

Modest Mouse - The Lonesome Crowded West(1997)

Modest Mouse - The Moon & Antarctica(2000)

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どっちも割と直接引用してるとこも感じたり、今では独自のスタイルを確立させたオウガが初期はボーカルまでストレートにモデスト・マウスを追っかけている・・・てのが感慨深いです。

そして以前にインタビューで触れていたスプーン

Spoon - Girls Can Tell(2000)

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ミニマルさを模索して最小限の音でやってるという部分で重なるところも感じたり、似てるってわけではないんですが、USインディーという出発点から音を引いてく手法というか。現在のスプーンはダンスミュージックの要素を取り入れてくんですが、そこもまたシンパシーを感じます。

あとはモデスト・マウスのメンバーが合流して活動してたこともあるこちらのレッド・スター・セオリーも非常にオススメです。

Red Stars Theory - Red Stars Theory(2001)

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くたびれたギターの感じや途中からエモーショナルに盛り上げていくところなど、ローファイな録音によりボーカルが楽器と混ざり合ってぐしゃっとした質感になってるとこもオウガの1stを思い出したり・・・ちょっとポストロック感が強い曲もありますね。

 

最後に昨年コロナ禍でライブが行われなくなり、そんな中で各メンバーが制作したプレイリストが公開されました。 

 

参考までに。やっぱ三部作の影響が顕著というか、以降って感じがしますね。ベッドルームっぽい現代のUSインディーからメロウなAORクラウトロックの影響の強そうなダンスミュージック等、やはり後期を連想するものが多いですが、ビートルズが出てきてちょっとびっくりしたり、ボウイの選曲にはかなり納得したり・・・。

そして僕はやはり「USインディー由来のロックバンドだった彼らがこれに近づこうとした」というのが好きみたいで、どうしてもロックの耳で聞いてしまいますね。だからこそライブではそれが前面に露出してくるところなど、たぶん、片方に寄らずそれを行き来するからこそ「バンドって生き物なんだな」というのを強く感じさせてくれるから好きなんだと思います。

 


以上、関連づけできそうな好きなバンド、アルバムをひたすら並べたかっただけの記事になります。どうしてもUSインディーが好きなのでその辺に偏ってしまいましたが、構成する9枚の中にある触れることのできなかった辺り、その周辺や70年代のAORや60年代サイケ、クラウトロックに焦点をあててみるともっと色々出てきそうですね。

自己満足ですが、実際にオウガから知った作品も非常に多いので少しでも参考になればと思います。

長尺だけど貼った記事と動画が余りに素晴らしすぎて完全にこの記事の上位互換になってますが・・・