朱莉TeenageRiot

棚,日記,備忘録

記録シリーズ:uri gagarn

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uri gagarn、日本のオルタナ~ポストハードコアシーンのバンドとしてはもう大御所感ありますが全アルバム感想。Slintとかのルイビル周辺のバンドやポストロック、スロウコアのルーツとしてハードコアへと目を向けるようになったのもこのバンドがきっかけでした。


 

(untitled)(2004)

uri gagarn: Stream

日本のポストハードコアの深淵uri gagarnによる伝説的1st。無題、そしてジャケットからすさまじい存在感ですがそれは1曲目「Mutant Case」から期待を裏切らず、ギター1本、とんでもない緊張感を孕んだ不規則で縦横無尽なフレーズを弾き、途中からリズム隊も参加しながら徐々に盛り上げていき最後はノイズギターソロへ。支離滅裂な歌詞もあり、徐々に脳内が狂気で侵されていくその様を音に封じ込めたかのようなこの1曲で完全にぶっ飛んでしまいこの手のジャンル・・・Shipping Newsやポストロックへとハマるきっかけとなりました。

日本でハードコアと言えばやっぱり北海道のイメージが強いですが、CowpersやNahtと言ったディスコーダントで硬質なハードコアとは全くタイプが違い、こちらはそれこそSlintやRodanと言ったルイヴィル系列に近い音を鳴らしてますが決してそのフォロワーでは収まらない底知れなさがあります。「Resister」「Detroit」はストレートに疾走感のあるポストハードコアですが不協和音的なギターワークは録音も相まってジャンクロック的で最後の「Maron」に関してはちょっとポストロックやスロウコアにも突っ込んだ10分にわたる長尺。A Minor Forestとも近いです。とても聞きやすい作品ではないですがこの空気感は唯一無二でしょう。

 

no.1 oracle(2005)

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2ndアルバムで前作から更に音をそぎ落としスカスカになってしまってて最初ポストパンクを連想しました。全体的に音数の少ないUnwoundって感じで更にとっつきづらくなってしまった印象が・・・。一度廃盤になった後再発ついでに初期音源のデモトラックが大幅に追加されてるんですが、1stにあった「Mutant Case」や「Detroit」と言ったヘヴィな曲が密室でそのまま取りましたって具合の音の悪さと相まって生々しさがアップし両方ともノイズギターのジャンクっぷりが凄まじく変貌。基本的に同じなのにこのノイズパートのせいでもう別物と言える程パワーアップしてしまってて最早ノイズロック、とにかく荒々しいカオスなギターノイズが好きな方は必聴です。

この後メンバーが脱退し活動休止、フロントマンである威文橋はcpとしてgroup_inouとして活動を始めるんですが自分も実はそちらから知りました。そもそもinouのトラックメイカーであるimaiも元々はuri gagarnのドラムとしてメンバーに誘ったところ断られ新しい提案で始まったのがgroup_inouらしいです。

 

my favorit skin(2014)

Amazon | my favorite skin | uri gagarn | J-POP | 音楽

2013年にnhhmbaseの二人が加わり再始動した3作目。2ndでは1stからさらに音をそぎ落としたアルバムでしたが今作で逆に轟音寄りに。とは言いつつも2曲目「Fly」から早速新規のリズム隊二人による強靭で不規則なビート感が凄まじくギターはほとんど最小限で前作までの流れを汲んでますが、ぼそぼそとボーカルが乗って突如スイッチが入ったように不協和音ジャンクギターをかき鳴らしシャウトしていくんですが、この何をしでかすかわからない得体の知れなさのようなものが滲み出ててめちゃくちゃかっこいいです。スイッチが切り替わる瞬間が見えないというかそういう不規則っぷりとポストハードコアってのはかなり親和性が高いと思います、マスロック的というか。そして「Doom」は珍しくストレートにハードな曲でメロディーもキャッチーなのでかなり聞きやすく、全く青臭くないですが轟音エモとしても聞ける要素もあります。ここまでの三作では最も聞きやすいアルバムかと。

 

Face(2016)

uri gagarn/Face(CD) - SENSELESS RECORDS

シングルですが3曲全てが前作と次作を繋ぐ重要なマスターピースとなってる上に全曲キラーチューンと言える程素晴らしいです・・・とくにタイトルトラックになってるFaceは今まで以上にポップなんですが3ピースのバンドサウンドのみでやるポストロックというか、ポストロックにまではまだ行かずともそれに近づいていて尚且つ歌もの色も強まってるという、ハードコアバンドが音を引いてポストロック化していった流れをuri gagarnという狭い殻の中でオリジナルのまま変わっていったような感触で、この路線が名盤「For」へと続きます。Calenderも前アルバムにあった轟音ハードコアの流れを汲んでますがこちらも1stや2ndと比べるとかなり聞きやすくライブの定番に。

 

For(2018)

Amazon Music - uri gagarnのFor - Amazon.co.jp

最新作にして名盤。1stの頃からあったルイヴィル特有のポストロックやスロウコアの空気が完全にuri gagarnの中で昇華された感じがあり、そこに今まではなかった歌もの要素が強まったことでかなり聞きやすくなり今までのアルバムとはちょっと雰囲気が違います。スロウコア程静寂ではありませんがスローテンポで隙間を生かしたアンサンブル、空間の奥行を感じる間の置き方はもう3ピースであることを最大限に生かした究極。ギターも今までの無機質で鋭い音ではなく暖かみがあり、そして静寂を生かした対比的な轟音パートも今までのような静→動の爆発的なものではなく自然に温めていく感じはこのバンドでしか聞けない味わい深さがあります。

僕はこのアルバムから入り、というかライブで見てとてつもなく衝撃を受けその場で全アルバムを購入したので思い入れ深いですね。とは言いつつ1st~3rdの毒のあるポストハードコアのあのカオスさが好きだった人は逆に戸惑うかもしれません。UnwoundやJune of 44、ディスコードの面々と並べて聞ける感じだったのが、今作ハードコア出身のUSインディーであるPinbackとかThree Mile PilotとかDuster、あと初期Karateも近いかもですね。

 

Swim(2019)

uri gagarn "Swim" (Cassette Tape) | BOY

シングルにしてマジで大名曲でもうFor以降のuri gagarnは3ピースバンドとして完全に完成してしまっている・・・。IjdbやFaceの路線なんですが、音数減ってるのにバンドサウンド色強いままポストロックへ向かってるような感覚があり、所謂ポストロック的な曲じゃないのに自然とその空気が滲み出てきちゃってるって感じはむしろポストロック前夜、オリジネイターであるRodanとかJune of 44がスロウコアやったときとかを思い出す先祖返り的な貫禄があります。あとが歌詞が今回かなり好きですね、ふわっとしたフレーズの一つ一つそれぞれがエモーショナルで・・・。

 

 


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バンドとして直接関連があるわけではないんですが、聞いててかなり通じるものを感じます。それどころか元々Rodan周辺のルイヴィルのシーンが大好きなんですが、その空気感を受け継いだ数少ない日本のバンドだと思っていてその旨をツイッターで発言したところuri gagarnの公式アカウントにRTされたこともあり、全く意識がないということはないと思いますがセットで是非とも・・・。 

 

こちらはSlint