朱莉TeenageRiot

棚,日記,備忘録

Smashing Pumpkinsとグランジとオルタナティヴ

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広義な意味での「オルタナティヴ・ロック」が好きになったのはSmashing Pumpkinsがきっかけであり、そこから辿った音楽も多いのでその辺についての雑記です。


 

オルタナティヴ・ロックという曖昧なジャンルの中でも割と代表格として扱われているSmashing Pumpkins。自分のファーストコンタクトも中古の音楽雑誌を漁ってて、NirvanaやPeal Jamと共に「90年代のグランジを代表するバンドの一角」という紹介を見たのがきっかけでした。で周辺のバンドやシーンのことを知る内に、Smashing Pumpkinsって思ったより音楽ジャンルとしてのグランジ的ではないというか、聞きながらどんどん新しい視点を貰ったというのがありました。

 

そもそもグランジというムーヴメント、知れば知る程シアトルを中心としたMother Love Bone、Peal JamやSoundgardenと言ったハードロック直系こそが王道で、Nirvanaがたまたま一番売れてグランジの顔になってしまったというだけで彼らも随分とパンク寄りな気がします。BleachはまだしもNevermindはとくにそう感じていて、Smashing Pumpkinsもその中で並べると割と異質。ゴスの影響も強いので元々のルーツというか、バンドの持つ「ハードロックぽさ」にも違いがあるように思える。

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NirvanaNevermind、Peal JamのTen、SoundgardenのBadmotorfinger、これら全てが91年に発表されていて先日ギターマガジンのオルタナ特集でも名前が挙がってました。そしてスマパンの1stであるGishも同年であり同時代性があるので同じ括りだったのも頷けるし、グランジと言えばこの辺が最も象徴的な作品かと思われますが、今もう一度聞いてみるとPeal JamとSoundgardenはかなりハードロック色が強く、ストレートに地域性みたいなものも見えてきます。

Smashing Pumkinsはシアトルではなくシカゴだし、バンドのルーツとしては「ポストパンク」「ゴス」としての色が強いスタートだったようで、こちらアルバム出す前の初期音源

もろThe Cureやネオサイケの雰囲気があってちゃんとのまま今のスタイルにも地続きになってるので納得できるしめちゃくちゃ良い。シアトルではハードコアやパンクが根付いたライブハウスが中心にあったというのも大きいと思いますが、やっぱり違うルーツを感じるし、ここが自分がSmashing Pumpkinsに惹かれた大きな要因の一つだと思ってます。

そしてネオサイケ=シューゲイザー前夜のイメージが自分には割とあるんですがそこともしっかりリンクするというか、直接的に言及しているインタビューや記事を見つけたってわけではないけど、ビリー・コーガンは影響を受けたバンドにMy Bloody Valentineを挙げているし、そして当時ツアーの前座としてHum、そしてSwervedriverとの3バンドで回っていたというのがすごく象徴的に感じる。他にもMedicineという同時期のシューゲイザーバンドの曲をEPでビリー・コーガンがリミックス、しかもスマパンのドラマーであるジミー・チェンバレンが参加なんてこともありました。

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Humはエモグランジやスペースロックとも呼ばれているジャンルで、シューゲイザーのノイズ要素をアメリカのグランジやハードコア経由のヘヴィさで再解釈したバンド、Swervedriverマイブラ周辺のシューゲイザーの一角とされていてクリエイション発なのもその印象に貢献してると思いますが、USオルタナとして聞ける側面も強く、後のエモグランジ勢とスプリットを出したりもしています。

でこちらの2バンドは「グランジ」に分類されることはなく、かと言って王道のシューゲイザーとしても若干違和感が残る。ここを経由することでスマパンの持つシューゲでもグランジでもはみ出てしまう、ただ間違いなくシンパシーがあるバランス感が所謂「オルタナ」っぽいイメージができるというか、これによってシアトルのグランジとは違った透明感や耽美さ、2ndに強く出てくるギターの轟音要素に関係してくるんじゃないかという気がする。

そしてやはり切り離せないのがゴスの要素。実際にビリー・コーガンのソロ作品やアドア期を作る際にザ・キュアーの作品を参照したと言っていてカバーもやってます。

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とくにキュアーの「Disingration」でアメリカで大ヒットしたアルバムですが、時代的にも89年とドンピシャ、エモやメタルシーンにも影響を与えた作品でネオサイケ~シューゲイザーとリンクするとこもあるし、スマパンと共通項かなりあると思うのでこちらも並べて聞きたい。逆に00年代以降にヘヴィになってくThe Cureが今度はスマパンっぽいとこあったり、スマパン自体もSense FieldやJejuneと言ったエモシーンに影響与えてたりします。

 

日本で言うオルタナバンドってグランジと同時にシューゲイザーの要素が強いことが多く、広義の意味でのオルタナ、イメージやルーツとして90年代のスマッシング・パンプキンズはかなり近いとこにいると思います。Plastic Treeのようなバンドもいたり、多方面でオマージュも多いし。

そしてビリー本人が「8歳のときに衝撃を受けたレコード」として語るブラック・サバス

 「血まみれの安息日」の画像検索結果f:id:babylon5000:20210221023024p:plain

ヘヴィロックの元祖としてホラー要素の強いコンセプチュアルなアルバムを発表していたオジー期のブラック・サバスが、サイケデリックプログレにまで接近し始めた73年以降のアルバムをリアルタイムで聞いてたっぽい言及が割とあるんですよね。プログレバンドと言えば、度々影響を語るRushの2112以降のギターリフのヘヴィさはスマパンを想起させる面もあるし、ヘヴィロック趣味の少年がニューウェーブやネオサイケに触発されてある程度形としてまとまったのがGishだったような気がする。


前置き・・・というかスマパンについての自分の情報まとめって感じですが、あと個人的に気に入っている90年代のアルバムを中心にディスコグラフィというか感想です。散々語られてる気はしますが・・・

 

Gish(1991)

 

91年作の1st。この頃はハードロック色が強く、Led Zeppelinや初期Rushを想起するようなギターリフ+ベースがなぞるように付随してくスタイルなんですが、既にゴス~ポストパンクを通過したというのも納得の透明感と冷ややかな質感があり、ビリー・コーガンの毒っ気のある声質も完全にハマっていてこの時点でグランジとはちょっと色が違いますね。

バンドの骨組みはすでに完成されてる感じがあり、Sivaでは超かっこいいギターリフから展開して一度深く潜るような静のパート → ギターソロ+爆発といういつものスタイルが既に見えてます。完全にコンセプチュアルというかプロデュースされた2ndと比べると粗削りですが、この頃にしかない爆発しきらずクールなまま突っ走っていくような疾走感や勢いがあり個人的にかなり好きなアルバムです。メロウな曲も次作の轟音路線と比べるとサイケ寄りな印象も。

 

Siameas Dream(1993)

 「サイアミーズドリーム」の画像検索結果

いつ見てもジャケが最高・・・。

大名曲Todayを筆頭に「Rocket」「Mayonaise」等のもう他のフォロワーや同時代のオルタナバンドの追随を許さない圧倒的オリジナリティがあり、やっぱりビリー・コーガンの人を選ぶかもしれない毒っ気もあればときに誰よりも甘いこの声質と、この重厚なギターの轟音で埋め尽くされたサウンドの中で浮き出るメランコリックなメロディーラインは相反するようで非常に幻想的、今聞いても全く古びれないです。あとジミー・チェンバレンの大暴れっぷりがこの頃もう加速しまくっていて「Quiet」とか「Geek USA」はもうドラミングすごすぎる。手数が多いのも勿論ですが手数が多いだけじゃなく、ここ叩くと重くなるっていうポイントで確実に踏み抜くヘヴィドラマーとしての貫禄もあって、スマパンのメタリックなリフと絡みついた結果似たようなバンドが思いつかない完全に「スマパンの音」とも言える速くて重いサウンドが完成されている。結構重いのに全体的に透明感あるのもやっぱニューウェーブとかゴスとかの耽美要素なのか、感覚的なものですがやっぱり同時代のグランジともシューゲイザーとも距離あると思います。

 

Mellon Collie and the Infinite Sadness(1995)

 「メロンコリーそして終わりのない悲しみ」の画像検索結果

2枚組でしかもオルタナグランジがブーム的には逆風だった時期とのことですが見事高セールスを記録した最強のアルバム。僕もやっぱりベストとして挙げたくなるし、2枚組アルバムとしての長さを全く感じない通して聞きたくなる名盤。

あれこれやりたいこと、溢れ出るアイデアをもう全部自分たちのフォーマットで再出力してしまおうと、影響元がパっと頭に浮かばないくらい多作なのにも関わらず完璧に昇華された作品。サイアミーズのメロウ路線の曲はどれも割と近いフォーマットで轟音+美しいメロディって感じだったと思いますが、今作では「Beautiful」とかヒップホップっぽいリズム+ベッドルームな曲になってたり「Lily」「We Only Come Out At Night」とかは全体的にドリーミーな空気感があるもののソフトな質感で今までにない程ポップに聞こえる。このメロウ路線のバラエティっぷりすごいんですが、録音の質感とか統一されてるおかげで散漫に感じず通して聴きやすいのがやっぱりアルバムとして良いですね。そして代表曲の1979、アコースティックで浮遊感漂うギターリフも中毒性あるんですがやっぱりジミー・チェンバレンのドラムの同期したような均一なビート感、なのに絶妙に生演奏じゃないと出せない揺れのようなものがあって、言うか後のスマパンでも多用されてますが完全に発明だと思います。あと地味に弾き語りのStumbleineが大好き。

そしてヘヴィ路線、もろグランジでどんよりと重いリフを繰り返しながらサビで大爆発するBullet With Butterfly Wingsはもう彼らのグランジバンドとしての顔とも言える曲で、僕は最初これをyoutubeで見て素直にNirvanaとかと並べて聞いてたんですが今聞いても最高にかっこいい。今までのスマパン以上に静→動の爆発っぷりが強調されてるのもグランジらしい。あとZeroとかもメタリックな暗黒リフでじわじわと迫ってくるのがダークなスマパンの象徴とも言える曲ですし、ぶちギレたシャウトが聞ける「Bodies」「XYU」など・・・とこうやって書くとヘヴィロックのアルバムな気もしてきます。そんなこともないんですけど。

 

Adore(1998)

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ここまで幾度なくジミー・チェンバレンのドラムが・・・と書いてきましたが薬物が原因でバンドを脱退、全編打ち込みとエレクトロサウンドをメインとして作られたのがこのAdoreです。

最初聞く前はチェンバレンいないスマパンに対してあまり期待してなかったのですが聞いたら素晴らしすぎて一瞬で掌を返した。あっという間に虜になりました。前作、前々作とあったメロウ路線が好きな人は一番ハマるかもしれないし、エレクトロ要素強めってことで彼のルーツ的にニューウェーブになるかと思いきや、意外と音数を減らしたビートが先行してくるトラックがめちゃくちゃかっこいい。当時の流行的にもヒップホップの意識も感じるし、アコースティックメインの美しい曲も多く前情報より全然聞きやすかった。個人的に同時代ではデヴィッド・ボウイのOutsideとの関連性も感じます。

続くマシーナやこれまでのヘヴィ路線からインダストリアルに向かう道もあった気もしますが、ビリー・コーガン自体がそういうグランジ/オルタナの流れで語られることにうんざりしていたようなのである意味チェンバレン脱退がうまいことプラスに働いたという側面もあるかも。この後戻ってきたチェンバレンとともに2000年にマシーナを作り解散、そしてズワンやらソロやら色々あるのですが一旦オリジナルアルバムはここまで。

 

Pisces Iscariot(1994)

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そしてこの時期のスマパンを語る上で絶対に外せないのがこちらのパイシーズ・イスカリオット。B面集なのですが、1st2ndのサイアミーズまでの音源でB面集と思えない程に統一感があり、この頃の音もっと聞きたいって人は必聴です。メロンコリーも良いけど初期のバンドの衝動たっぷりな時期が記録されてるのはこちらですね。

とくに「Hello Kity Katt」はベストソングで、この頃のスマパンによくあった轟音ギター+チェンバレンの高速ドラムで疾走するタイプの曲で、イントロ2秒のドラムとギターの掛け合いで一瞬でスマパンだとわかる程濃厚。あとこの曲グランジ等の手法にあるわかりやすくサビで爆発、という展開が無く、むしろ分厚いギターサウンドに常時覆われているのにメロディーだけでフックを持ってくる展開が、低空を疾走してく感じが最高にクールです。ビリー・コーガンのメロディーセンスが一番光る曲だと思います。

 

 Aeroplane Flies High(1996)

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「smashing pumpkins zero」の画像検索結果 「smashing pumpkins bullet with butterfly wings」の画像検索結果

そしてB面集作品でもう一つ「Aeroplane Flies High」というメロンコリー期のシングルをまとめたBOXがあるのですが、これがシングル5枚、しかも1つにつき6曲前後入っていて、メイン曲以外はアルバム収録無しなのでミニアルバム5枚として聞くことができ無視できないほど重要作となってます。

とくに1979はジェームス・イハがフィーチャーされたメロウなオルタナポップが多く、この路線で推し進めても全然やっていけたんじゃ・・・てくらい素晴らしいです。メロンコリーと比べると純粋にバンドの音でメロウ路線をやってるという感じがします。Tonight, Tonightは最初から最後までアコースティックメインの最も優しいスマパンが聞けてコンセプチュアルなミニアルバムとも言えますし、この2作がとくに好きですね。あとはニューウェーブっぽいアプローチの曲が多くカーズやキュアーのカバーまで聞けたり、スマパンにしては音源からはっきりとルーツを垣間見ることも可能です。

こちらについては放蕩息子の迷走による全曲レビューが大変参考になりますので是非とも。僕はこの記事を読みBOX SETを買いました。

 


最後に関連作・・・とは言いつつも上記で述べた通りルーツを感じさせる要素が少ないと思っているので、ビリー・コーガンがフェイバリットとして挙げたバンドの中で僕がとくに好きなものや、スマパンと関連付けて聞けそうなものを何枚か書きます。

 

Hum

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スペースロックとも言われるグランジ~エモ~シューゲイザー全ての要素が前面に押し出されたバンド。バンド自体がスマパンの影響を公言しているようでとくに3rdのDownward Is Heavenwardあたりではとにかく重ねられた轟音ギターの奥深さは完全に独自のスタイルを確立させてます。個人的にかなり好きなバンドです。

 

Black Sabbath

「ブラックサバス 黒い安息日」の画像検索結果 「ブラックサバス パラの井戸」の画像検索結果

ビリー・コーガンが度々影響を公言しているバンドで前記事、本記事でも何度も参照させていただきました。ビリー・コーガン本人はフェイバリットとして徐々にプログレ化していった73年「Sabbath Bloody Sabbath」75年「Sabotage」辺りを挙げたのですが、単純にこの1st2ndが重いリフとキャッチーな歌という面で非常に聞きやすく、グランジ全体への影響も大きくオススメです。

 

The Cure

「The Cure disintegration」の画像検索結果 「The Cure アルバム れby-」の画像検索結果

こちらもソロ作ではコラボもする程ビリー・コーガンが憧れているバンドですね。で彼らは非常に多作な上アルバムごとにかなり色が違うので難しいんですが、89年作の「Disintegration」は透き通った幻想的な世界観をある程度ビートで聞けるロック内でやってるので近いかもしれません。それをさらにポップに推し進めた92年作の「Wish」も。とは言いつつ初期のポストパンク期のキュアーも通じるところがあるのでベスト盤でもいいかも・・・。

 

New Order

一時期のビリー・コーガンは彼らの追っかけをしていたらしく、メンバーから認知されるレベルで熱心なファンだったようです。後に彼らのアルバム「Get Ready」ではギターで参加したりもしています。キュアーと並びこの辺のシーンにどっぷりだったんでしょうね。ちょっとクラブの色が強いかもですが最も聞きやすいのが「権力と美学」です。

 

 

最後に参考資料としてこちら

hender-usuk.blogspot.com

キュアーのアルバム解説なのですが、度々スマパンの名前が出てきてどのアルバム、どういった影響があったか非常にわかりやすく書かれています。また他に同作から影響を受けたバンドにどういったものがいるかといのもわかるので、キュアー経由で同じ方向性のフォロワーを探すことができたり・・・というような見方もでき、非常に参考にさせて頂きました。

 


以上でした。記事内で触れたバンドはまだまだいるのですが、どれもスマパンから直で飛ぶ感じではないかな・・・となり、そもそも関連作で辿ってくという感じではなく、90年代の同シーンのバンド達で聞き比べた方が楽しい気もしますね。