朱莉TeenageRiot

棚,日記,備忘録

discography⑨

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Bonnie "Prince" Billy、Tara Jane O'Neilと言ったルイビル周辺のSSWからあとスロウコアを何枚か。


 

Bonnie "Prince" Billy - Arise Therefore(1996)

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Palace MusicやPalace Brothesなどで知られるウィル・オールダムによるBonnie Plince Billiy名義のアルバム。かなり多作なんで個人的に好きな(というか唯一ちゃんと聞けてる)ボニプリ時代の初期何枚かを。ハードコアシーンとも近いし。

でウィル・オールダム、今ではTortoiseとの共作だったりサントラ仕事で有名ですが元々出自はルイビルハードコアシーンと密接なところにいて、兄貴のネッド・オールダムはSlintの主要メンバー達と中学時代からの友人で前身バンドを組んでたり、ウィル・オールダム本人もPalace初期作のバンドメンバーはSlintの面々だったりするし、というかSpiderlandの水没したあのジャケットを撮影した人でもあります。で彼本人の作品・・・所謂オルタナ・カントリーシーンのアーティストなのですが個人的にアルビニ録音によるスロウコア~アメリカーナ寄りのアーティストという印象が強いです。

今作「Arise Therefore」はアルビニ録音によって録られた本当に「部屋丸ごともってきた感じ」をめちゃくちゃ感じるアルバムで、キック一音が密室の壁を伝って部屋中から体に入ってくるような・・・体の芯まで響いてくるような低音の上で、できるだけ最小限に紡がれる各パートによるスカスカながら重い音像。極限まで音を減らし、その空間や隙間そのものに重点を置いたカントリーとも言える作品でこれが本当に緊張感があり、この冷やかさからスロウコアを連想したりもします。ハードコアシーンとはちょっと距離あると思いますがSlintのSpiderlandとか好きな人にも。

 

Bonnie "Prince" Billy - Joya(1997) / I See A Darkness(1998)

そんで次作のJoyaと代表作と名高いI See A Darknessで個人的な好みとして上記のArise Thereforeを挙げたけど普通に聞きやすいのはこっちですね。Joyaは前作と比べてわかりやすく音が分厚く一曲目からもうオルガンの音がかなりフィーチャーされてて華やかさが増し、バンド感も強くて大分色が違いますがこちらも好きな作品。

I See A Darknessはなんとピッチフォークで10点を取ったということでもうインディーシーン名盤という感じですがJoyaでのバンド感は無く弾き語りSSW色がぐっと強まってますが、この隙間の多い静寂と常に同居したどんよりとした暗さを持ってるのは一貫してるなと思います。「Death To Everyone」ではこのドシンとしたミニマルなリズムで空間的に見せてくるのは非常にスロウコア的だと思うし、この部屋で鳴ってるような音響の拘りでスカスカのアメリカンルーツ的なフォークをやるってのがこの時期ウィル・オールダムでしょう。

 

Tara Jane O'Neil - Peregrine(2000) / Bones(2000)

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元RodanにしてSonora Pine、Retsinを率いたルイビル出身のSSW、今ではバンドよりたぶんこちらのソロ名義の方が有名かも。1stであるPeregrineはいかにも宅録、それこそRodan解散後に率いたRetsinを更に骨組みだけにしたような感じですが、とにかく彼女のメロディーセンスが全面に出た名作です。

そして同年に出たBonesも好きで、1st同様素朴な弾き語りを想起させるような1、2曲目、エレクトロニクスを導入したインストを挟んで「Bullhorn Moon」では両方の側面を持つ展開を見せて驚きます。無添加なローファイSSWだと思っていたら急に電子音が自然に合流してきて、以降はリズムマシンの上で弾き語りをするような、かと言って完全にエレクトロに寄らずかなりアナログ感の強い「宅録ポストロック」的な曲が多くて不思議な感触です。

 

Rex - C(1996)

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96年発のRexの2ndで個人的スロウコア名盤選というのを組むとしたら絶対に外せないバンド。シーンにおいてもかなり重要作というかやっぱりスロウコアってのはポストロックの原型だったんだなというのがよくわかるアルバムだと思うし、ポストロックやりながらアメリカーナな方向行った人もいるんで分けるってより同居してるような感じですよね。

でRex、ドラムはCodeineの2ndやJune of 44、HiMで知られるダグ・シャリンが叩いていて僕もここから掘りました。「New Son」「Jubin」と言った楽曲でバンド全体でドライブしてくようなラウドな展開を見せるのでスロウコアにしては割と展開が多い作品で、ここでのダグ・シャリンがJune of 44も想起させる程パワフルなドラムをバカスカ叩き彼のドラミングを軸にして曲を動かしてく流れがとにかくめちゃくちゃかっこいいですね。ボーカルの枯れた雰囲気からRed Red Meatとか好きな人にも絶対間違いないアルバム(あそこまでギター重くはないけど)。

 

Rex - 3(1997)

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で3rd、前作と比べるとより牧歌的な雰囲気も出てきてルーツ色強いフォークロックとかアメリカーナ方面の歌ものスロウコアとして聞くならこちらのが純度高いと思います。アコースティック主体の曲も多くてチェロやオルガンも自然に合流してくるんですが、USインディーとして聞きたくなるくらい所謂サッドコア的な冷たさはほとんどなく、上記のTara Jane O'Neilが率いるThe Sonora Pineとかなり近いものを感じていてRodan~June of 44関連作としてもセットで是非。2曲目の「Jet」はこの吹き抜けのいい雰囲気の中ダグ・シャリンのドラムを堪能するというスロウコアにしてはかなりリラックスした空気で聴ける曲で中々新鮮。ちなみにダグ・シャリンはRex解散後ソロプロジェクトとしてHiMを結成するのですが初期作品のレコーディングはRexのメンバーで実質変名バンドに近い形になってます。

ちなみに両作ともSouthern Records。以前同ブログでも触れた90 Day MenやSweep the Leg Johnny、そして最近再発されたKarateも同レーベルで個人的にどれもこれもポストロックベストと言いたくなるようなアルバムばかり出しててめちゃくちゃ好きなとこです。廃盤ばかりなのが悲しい。

 

Bluetile Lounge - Lowercase(1995)

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スロウコア自体が好きというよりはスロウコア的側面が強いインディーロックとかポストロックが好きみたいなとこが個人的にあるんですが、Bluetile Loungeに関して言えば僕の中で「最もスロウコアらしい」バンドであり、というかマイベストと言っても過言ではないくらい好きなアルバム。

スロウコアを聞くときのシチュエーションってとにかく寒い日の風呂上りに毛布にくるまって暖を取っているときのサントラというか、無心なってただ一人延々と流していたくなるような5曲46分。1曲1曲が長尺ですが物憂げなGalaxy 500とも言いたくなるローファイで繊細な音をスロウペースで紡ぎながら、じわじわと熱量を上げてくのは美しすぎて本当に夢見心地なアルバム。轟音にまでは行かなくとも琴線に触れる優しいメロディを徐々に、本当に徐々に少しずつ積み上げていつの間にか感情が昂っていくのはまさしくこれぞエモ、です。The Wrensとか好きな人にも。穏やかなんですがずっと孤独感が付きまとうのもすごくスロウコアらしいし、Bluetile Loungeはそこにそっと寄り添ってくれるような音楽なんですね。

オーストラリアのバンドですが2ndはSmells Like Recordsから出しててここBlonde Redheadも初期作を出していたり、そもそもSonic Youthのメンバーのレーベルですが実際Sonic Youth周辺とかあの辺と交流があったようですね。てことで2ndはもうちょっとノイジーというか轟音寄りにいきますがどちらも名盤。

 

Tortoise & Bonnie "Prince" Billy - The Brave And The Bold(2004)

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最後に上記でもちょっと触れたTortoise&Bonnie Prince Billyのコラボで実は最近買ったんですがこれが本当に素晴らしかったです。元々Thrill JockeyとDrag Cityという90年代シカゴシーンを代表するようなポストロック~アメリカーナ~ジャズ文脈が入り乱れるあの辺のスーパーコラボって感じですが、それこそ全然Tortoiseらしくも無ければBonnie Prince Billyらしくも無くジャズでもカントリーでもなく、間違いなくポストロックを経過したサウンドプロダクションでバンドの音自体はもろTortoise「Standards」のちょい重めのエレクトリックな音直系なんですが、延長線上の感じはあんまなくむしろTortoiseファンはこういう演奏が聴けるのかなりレアなのでは・・・。ウィル・オールダムもいつもの枯れたSSW的歌唱とはまた違ったスタイルで、ラフでかつタイトとも言えるカバー集になってます。

曲によってテーマは余りにもバラバラでBruce SpringsteenElton JohnからMinuitemenやLungfishと言ったハードコアシーンにDEVOまで、どれも共通するルーツなんでしょうけど、しかしながら統一感あるのも不思議。ある意味着飾ってないど真ん中スタイルなのかもしれないです。個人的にポストロック経由のシカゴ産歌ものロックという意味ではGREAT3とかをちょっと連想しました(これまた大分的外れな気がするが・・・)。もうちょっと聞き込みます。これもデヴィッド・グラブス経由というかルイビルから脈々と続くシカゴシーンのスーパーコラボですね。

 


 

最終的にRodan~June of 44のメンバー関連がかなり多いので以前書いたまとめの延長という色が強かった気がします。ウィル・オールダムに関しても完全に以前のSlint記事の捕捉みたいな感じですね。

 

Snail Mailとか

Snail Mail - Lush(2018)

Matador が18歳の若きソングライター Snail Mail とサイン!デビューアルバム『Lush』をリリース! | indienative

1st。2018年と言えば自分はちょうどSpotifyを導入した頃でそれにより現行の海外のインディーロックとかを掘るようになった頃で、丁度シーンも盛り上がってて各所で話題作が上がってきてる中で聞いたのが今作でした。

あのとき割と、オルタナ寄りというかローファイとかUSインディー色の強いSSWが同時期にアルバムを出しててSNSとかでもインディーロック好きな人達の中でもトレンドというか、よく聞かれてた印象があります。近い感じのだとSoccer MommyとかCourtney Barnettとかいたし(漏れなく好きだった)、Phoebe BridgersとLucy DacusとJulien Bakerがコラボしたboygeniusの結成が2018年で割りとそれを象徴してる気がするし、丁度そんな感じで周辺アーティストとかをよく聞いててそん中でもとくに好きだったのがSnail Mailでした。あとはAlvvaysとかも好きだったかな。

でSnail Mail、16歳で出したEPでピッチフォークで絶賛され話題になりそこからの1stということでいきなりマタドールから出すし、なんとギターを元HeliumのMary Timonyから習いそしてLiz Phairのコピバンをしていたという謎にすごい出自で90sインディーオルタナ大好物みたいな空気+Kurt Vileと言った感じ。Helium程ギター歪んでなくあくまでクリーントーンがメインですね。

ただKurt Vileとか、あの辺のアメリカーナとかフォークロックとかそういうルーツ的な方向にも行ってないし、割と10年代流行っていたベッドルーム~チルな方向のインディーロックにも行ってなくてその塩梅というか、どこか気怠そうなちょっとぶっきらぼうなでも親しみあるメロディーを歌うボーカルの感じとか、やっぱ本当に昔ながらの90sインディーロック、Pavement以降みたいな空気感と近くてそこが割と好きでした。ゆったりとした曲が多くてどことなく切なさというか常にノスタルジックな湿った空気があるのも良い。

てわけで大好きなアルバム。Pristine、めっちゃいい曲ですね。昔これ聞いてなんかサーストン・ムーアのソロとかSonic Youthが歌もの寄りの曲やってるときのギターっぽい感じするとかTwitterでツイートした覚えありますが、今聞くとそうかな?て思いつつさっきインタビュー読んでたら好きなアーティストとしてSonic Youthを語っていて割と的を射てたのか・・・?となりました。

 

Snail Mail - Valentine(2021)

Snail Mail Valentine

で2nd、先行トラックのValentineってのが良すぎて、前作って割とゆったりとした空気感のあるアルバムというか徐々に徐々にノスタルジックに盛り上げてくって感じだったんですがこの曲は割とラウド&クワイエットでSnail Mailにしては珍しく特大カタルシスがあってめちゃよかったです。結構ギターも重い感じだったし。ただアルバムとしては全面的にエレクトロニクスを導入してて、それこそ同じくリードトラックのBen Frankinとかも割と前作を踏襲したUSインディーライクな雰囲気もありつつ打ち込みによるリズムの妙みたいのがイントロからガッツリ出てて象徴的な気がします。でこの路線だとForever (Sailing)って曲が良い感じにシンセなのかギターなのかわからないちょっと80sっぽい音になってたりしてて、これはこれで結構好きだし、あとボーカリストとしてかなりハスキーになっていてそれも相まってかもですがAutomateとか単純にメロディーが良すぎる・・・。

個人的にやっぱ無添加のローファイっぽさあった前作の空気感の方が好きですが、でも前作聞いた時点で次作はもっと綺麗に作り込んでくるだろうから1stが一番好きってずっと言うタイプのアーティストだろうなというのはなんとなく察してました。あとアコースティック色強い曲が増えてて、今作に関してのインタビューとかメディアとか見てるとやっぱ歌詞とか精神性に強く切り込んだものが多いからそういう側面が強いんだろうなと思います。まだそっちにはのめり込めてないですね。ライナー読むとWaxahatcheeとめちゃ仲良いみたいでたぶんプロデューサーもそこ繋がり?で、Waxahatcheeはマージだし、マージだったりマタドールだったりHeliumだったりと未だに聞いたり掘ったりしてしまう90sのUSインディーから脈々と続いてる感じは少し安心感を覚えたりします。マックもソロ出したし・・・。

 

 

 

でHelium、今聞き返しても大好きなバンドだ・・・となってしまったんですがこれは名盤1st。あとHeliumっぽい10年代インディーロックと言えばSnail Mailよりもうちょい早いですがSpeedy Ortizってバンドがこれまた最高というかかなり近い雰囲気で聞けてこちらも名盤です。Cloud Nothingsと同じレーベルだしこの周辺も大好きですが、なんとSpeedy Ortizの前身?というかソロもつい最近(というかSnail Mailと1週間違いで)出てました・・・。完全に同時期ですが気づきませんでした。

アイカツ!のSignalaize!という曲について

STAR☆ANIS - Signalize!/CALENDAR GIRL

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アイカツ!第一期OPにして作曲はCOALTAR OF THE DEEPERSや特撮で知られるNARASAKI。アニメシリーズのスタートを飾る本当に入口となるべき曲ですが、女児向けアイドルアニメのOPとしては信じられないほどに渋い変化球の曲でイントロから釘付けになり、そして妙にシリアスな歌詞にも驚きつつクレジット眺めてたら出てきたNARASAKIの文字ににやつきがとまらなくなった人は僕だけじゃないと思います。そして本編でも第1話中盤からアイドル界を象徴するスター神崎美月によるMove on now!がこれまたかなり攻めた楽曲で「え、アイカツってこんな感じだったの?」となったし、EDのカレンダーガールのアニソン界での確固たる地位も含め、音楽ファンとしては素通りできないアニメだというのをまじまじと見せ付けられるんですね。

NARASAKI氏はディーパーズ、特撮は勿論他にもPlastic Treeやastrobriteなど僕が大好きなバンドにも関わりつつはなまる幼稚園覆面系ノイズ輪るピングドラムといったアニメタイアップでシューゲイザーを流すという両方のオタクとしては夢みたいな方ですが、今作は初期アイカツ!楽曲らしくディスコ調の歌もの。しかしシューゲイザーでもやる轟音の中でもどこかノスタルジックなコード感みたいのがシンセの音色からもめちゃくちゃ出ていて、夢心地で浮遊感のあるメロディーラインにどことなくニューウェーブを思い出して、重厚な音作りもやっぱりNARASAKIだなとなります。色々予想外だった上に自分の趣味をストレートに貫いてきて最初聞いたとき本当に衝撃でした。

メインターゲット層にはたぶん序盤毎話流れるアイドル活動!(曲名)の方がAKB48風のド王道アイドルポップスで人気があると思いますが、Signalize!は繰り返し聞くことで徐々に好きになってく・・・というかそれこそ小学生時代に何度も聞いたこの曲を時間が経ってから聴くことでめちゃくちゃ深く刺さってくるとかそういうポジションだと思います。

第40話にて、熱狂的アイドルファンだった霧矢あおいが何故自分からアイドルを目指すようになったかを掘り下げる回があるのですが、実は小学生のときに主人公である星宮いちごとのある出来事をきっかけに人前で踊る機会があり、もしかして「見るだけ」ではなく「やる側」になることができるんじゃないか?ということに気づいてしまうエピソードがあるんですよ。何故、第1話であおいがアイドルファンですら無かったいちごをアイドルの道に誘ったのか、個人的にちょっと強引にすら思えたんですがまぁ女児アニメの導入だし、中学生だし単に趣味を親友に布教したかったからってのもあると思うんですが、そもそも根幹にこのエピソードがあったことを考えるととてもそれだけじゃ語れないバックグラウンドを想像してしまいます。

僕はこれにとてつもなく感情移入してしまい、例えばこのブログだってそうだし、絵を描き始めたことや、DTMを始めたこと、クラブに通うようになったこと、全部が全部やる前はすごく遠く雲の上に思えてしまうようなものが誰かにきっかけをもらい、もしかしたら「自分もできるかもしれない」と始めた途端に世界が変わったように見える。今でもこのときの感動を忘れたことはないし強く自分の中で節目として残り続けてるわけですが、そういった気持ちを思い出す回でした。

そしてその回のラストステージで流れた曲がこの「Signalize!」で、そもそも40話時点ではもうOPは変わっててそれが再び流れるという展開自体も熱いですが、歌詞とこのエピソードのリンク具合が凄まじく伏線回収・・・というよりこのために作られたのではと思ってしまう程で、完全に僕の中で「特別な曲」になった瞬間でした。「答えはもっと空の彼方」「いいえ違うよ僕の目にも見えた地の果て」はまさしく大好きだったアイドルに自分もなれると気づいたときのあおいだし(ここに個人的な体験談も重ねてしまいます)、「残酷な夢が夢で夢になるんだ」は本当に象徴的なフレーズです。憧れに向かって一歩踏み出すという歌詞は第一話での星宮いちごにも当てはまりますが、その更に大元となったあおいの、このときのことを歌ってたんじゃないかなぁという気すらしてきます。歌い出しもあおいだしね。

 

ちなみにこの曲、記念すべき第一回OPを飾るにも関わらずやはりカレンダーガールの印象が強烈なのか、Spotifyでの人気はそこまで高くなかったりします(いや高いんですが個人的にもう少し上だと思っていた)。それは曲自体が変化球なのもあるとは思うし、本編でも一期で「神回」扱いされてるのは37話や50話だったりするんですが、第40話は本当にたまたま自分の中の思い出とリンクしたってだけだと思うんですが、そういう意味でも個人的にとても大切な曲ですね。

 

楽曲に関する解説はwikipediaの情報量が凄まじく本当に驚きました。

そして個別ではこちら

必見です。大好きなブログで他にもアイカツ楽曲を多数扱ってますが普段はクラシックメインのブログで、元々がファンク畑の方のようで非常に専門的に楽曲の分析を行いつつただの一アニメファンとして、オタク目線でもアニソンを語るという側面も強くありアニソンに関して一番読みたかった文章って僕は間違いなくこれなんですよ。楽曲元ネタや音楽性に関しての引用元や小ネタもかなりコアなとこついてくるし、これを読むことでアイカツ!楽曲のアニソンファンが多ジャンルの音楽にアクセスするきっかけにもなるし、逆に普段アニソンに触れない人でもアイカツの曲が音楽好きならば無視できるものではないということがよくわかるブログだと思います。現在も更新継続中で非常に楽しみです。

 

ちなみに先ほどのSpotify上の再生数というのはこちらを参照させて頂いてます。

 

ちなみに個人的に大好きなNARASAKIワークスの曲。上記でも触れててアニソンですがこちらは覆面系ノイズでボーカルは早見沙織ですが、彼女のソロ名義のアルバムでもNARASAKIが提供してたりします。


そしてディーパーズ名義でDear Future。ピングドラムのEDでこれが流れたとき鳥肌が立ったことを覚えています。これらの中で最後に知ったのがアイカツ!だったのでSignalize!を聞いたときの喜びは本当にすごかった・・・。

discography⑧

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雑他に8枚。基本的にポストハードコア~エモ~ポストロックでしょうか。やっぱルイビルシーン周辺とかそれ以降って感じの音が好きですね。


 

Reiziger - Our Kobo(1998)

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Slint直系のルイビルのポストハードコアバンド達がもしそのままポストロックへと深化せずエモに向かったら・・・というイフが本当になってしまったようなバンドでその結果The Van Peltとかにも接近してる気がします。というわけでSlintのGood Morning,Captainとかの隙間のある硬質なギターリフとリズム隊のループ感でスロウコア~ポストハードコア~ポストロックまで想起する音の上、まさかのエモ直系の熱くメロディアスなボーカルが乗るというありそうであんまり似たバンド思いつかないし、元々SlintやRodanの名曲群はどれもこれもエモのクリーンパート→爆発と言った展開と近いとは思ってたんですが、実際にボーカルまでエモにしてしまうとここまでピッタリとハマるのかというくらい完璧です。めちゃくちゃいいですね。スロウコア+エモという意味ではKarateとかとも近いかも。

「Aspro 10 000」という曲ではミニマルに音紡いでスロウペースでじわじわくるの完全にルイビル直系だなとなるんですが、やはり曲展開の中で徐々に形を変えて新しい展開がやってくる中でエモ全開なボーカリゼーションにより非常にドラマティックな印象に変えてしまう。名曲です。Crainとかをめっちゃマイルドにした感じ。

 

 Shannon Wright - Dyed in the Wool(2001)

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アメリカのSSWであるShannon Wrightの3rd。再生して1音目の「Less Than a Morment」から張り詰めた緊張感が凄まじくアルビニ録音全開の衝撃のイントロ。ポストハードコアを通過してそうな硬質で冷たい質感のギターによる音の壁はもうこの手の音楽好きな人を一発でわし掴みにしてくであろうこと間違いないです。箱庭的録音の立体的ドラムがズンズン迫ってくる感じも凄まじいし、切迫した彼女のボーカルはやはりSSW的というか、もっとパーソナルなフォークロックとかにも通じる力強さがあって、スロウコアも想起する悲壮感はShipping NewsとLowを足して割ったような聞き方もできると思います。

アルビニ録音を追っていたら見つけたアーティストでかなりルイビルっぽいというかShipping New後期を思い出す感じでしたが、ハードコア出身では無さそうだし・・・ととりあえずバックグラウンド漁っていたらQuarterstick Recordsから出してるんですよね。ここTouch and Go傘下でRodan~June of 44~Shipping Newsはお馴染みでジェフ・ミューラー関連ほぼカバー、同じくRodanメンバーであるSSWのTara Jane O'neilや彼女のバンドであるSonora Pine、そしてRachel’sも全部このレーベル。というか今作Rachel’sとShipping Newsがレコーディングに参加しているらしく、普通にもうRodan関連作として聞けますね。

 

Shannon Wright - Over the Sun(2004)

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次作である4thでこちらも名盤。というかもうスティーヴ・アルビニ作品でも正直トップクラスに来るんじゃないかと言いたくなるくらい好きなアルバムです。前作「Dyed in th Wool」はもうShellacとか言いたくなっちゃうくらいドラムがガンガン前に出てきて存在感を発揮していたのも非常にアルビニ的でしたが、今作ドラムス変わったのもありよりリズムへのアプローチが強まった感じがして全体的に音の分離が非常にいいです。バンドの音全てが立体的なアルビニ録音の妙を楽しむといった感じで、これは今作ドラムス以外全てShannon Wright本人が一人で演奏しているというのもあるかもしれません。完全セルフプロデュースで音像を求め続けた結果というか、張り詰めた緊張感や鬼気迫るボーカルはそのまま全く違うバンドとしても聞けるというか。オルガンがメインの美しい曲もありますが個人的にB面から見せるマスロック・・・とまでは言わず歪んだギターによる捻じれたギターリフのループ感とドラムとの掛け合いと言ったポストハードコア的アンサンブルがめちゃくちゃ好きです。

結構PJ hervyと比較されることが多いイメージで言われてみればアルビニ録音だし悲壮感強いボーカルとか殺伐さとか確かに・・・となりますがその内面というか、ルーツ的には全く違うアーティストだと思います。とは言いつつ確かにPJ hervy好きな人はしっくり来そうではあるんですけどね。

 

The Mercury Program - The Mercury Program(1999)

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ポストロック大御所。ポストロック名盤選みたいのでよく見るバンドだし昨年やってたオールタイムベスト投票でもかなり上位にあった3rdは有名ですが、1stの頃は後期の美しいインストバンドのイメージとは大きくかけ離れた音数の少ない冷やかなポストハードコアバンドをやっていて、ここがピンポイントでめちゃくちゃ好きなんですよね。てことで1st、この頃はJune of 44とかShipping Newsと言ったジェフ・ミューラー関連のルイビルのバンド達のもろフォロワーって感じで、インストの印象強いですがこの頃は普通にボーカルも入ってます。でその辺と比べてもミニマルで骨組みのみの隙間の多いセッションとループはジャズを感じるとこもあるし、その中で誇張しすぎない程度に浮遊感のあるビブラフォンが乗るというサウンドで、ボーカルもルイビル直系らしくポエトリーディング~歌の中間とも言え非常に抒情的でギターの音は間違いなくハードコア通過後の冷やかさ。めちゃ良いですね。ポストハードコアにもマスロックにもポストロックにもどれにも"ギリギリならない"といった塩梅のアルバム。

 

The Mercury Program - From the Vapor of Gasoline(2000)

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彼らの代表作にしてポストロック史に残る名盤「A Date Learn the Language」を目前にした2ndですが全く違うし、僕はこの頃のアルバムが好きすぎて逆に世間一般的イメージの彼らはまた別の新しいバンドを聴くような印象になってしまう。そんな作品で1stの延長ですがもう少し音分厚く・・・というか大分ノイジーになっていて、もう完全にSlintフォロワーが行くとこまで行って完全なオリジナリティを確立させたポストハードコア名盤です。そしてこんだけボーカルがハマってるのにバッサリと次作からインスト化するの多少残念と言いたくなるほどで、歌がめちゃいいです、ジェフ・ミューラーが抒情的な歌ものやってるときを思い出すようなふわっと出てふわっと消えるような歌心溢れる囁きを「時々載せるだけ」なボーカル。一番好きなやつですね。あと前作以上にハードなおかげでビブラフォンの音が更に際立っててこんだけ硬質で緊張感溢れるサウンドの中でも浮遊感が絶妙です。

SlintやJune of 44と比べると全体に渡ってセッションっぽさがあってテンポも速いのでスロウコア感を抜いた感じでしょうか。ドラム主体で所々サウンドの材料はJune of 44的ですが組み立て方はもっとジャム感があるので、これをもっとスッキリして美的アンサンブルに寄せて名盤3rdになってくってのも納得。それ以降はそのままtoeとかEnemiesにも繋がれる感じですね。

 

 

Matmos - Matmos(1997)

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メンバーであるM.C.シュミットがサンプリングした音をドリュー・ダニエルが編集し繋げると言ったIDMユニットMatmosの1st。Warp勢と比べるとリズムへのアプローチってよりはサンプルをどう混ぜてどれだけ気持ちの良い音色でビートを作るかとかそういう方面で聞くようなイメージで、サンプル元もフィールドレコーディングや身の回りのものを叩いた音とかが多いらしく生音感強くかなりごちゃっとしてます。これを素材としてスッキリしたリズムが組まれていて混沌としているのにどこか聞きやすいです。

今ではIDMシーンの大御所でビョークとの共演で有名になったんでそっち方面の印象が強い人が多いと思いますが、元々メンバーのドリュー・ダニエルはMatmos結成前はCrainというハードコアバンドで活動していて、これがSlintやBastroと並ぶルイビルポストハードコアシーンの原初とも言えるバンドなんですよね。ということであのシーンのその後って見方ができるんですが、そうするとSlintはThe For Carnation、BastroはTortoiseGastr Del Sol、とそれぞれ音響へと向かいポストロック化するのでその辺と並べて聞けるアルバムだと思います。ポストロックという言葉自体が曖昧で音楽的一致感もそんなにないし、ルイビルのハードコアバンド達がその後実験的な方向へ進んでいったという目線ではJune of 44の「Anahata」やTortoiseの「TNT」はどちらもバンド演奏を素材として切り貼りして作ってるという、やってること自体も近いんですよね。というより2020年に出たJune of 44最新作ではMatmosはリミックスで1曲参加しているのがもう答えだと思うし、そこではJune of 44のセッションを素材にしたかなりカオスなリミックスをやっててめちゃくちゃMatmos的、20年越しの夢のコラボレーションが聴けます。

 

Roadside Monument - Eight Hours Away From Being A Man(1997)

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大好きなポストハードコアバンド。ジャケもめちゃくちゃかっこいいですね。内容も間違いないんですがいきなり開幕カオティックで激情たっぷりな爆裂ハードコア「Sperm Ridden Burden」から開始するので、ジャケの感じとかボーカルもエモ直系にもいきそうな熱さでそういう感じか・・・と聞いてると、それは本当に一面だけでしかなく(というか一曲目のインパクト強すぎなだけで実際激しい曲のが少ないです)時折スロウコアとも言える程の静寂を見せる瞬間があるんですよ。かと言って静寂と激動を行き来する極端ではなく一定のテンションの中で素直にコロコロと表情が変わってく感じで、スクリーモ寄りの場面でLovitt Recordを連想したりスロウコア経由でSlintやJune of 44辺りと接続・・・できそうでできない感じとか、カンザスのエモがチラつく感じとか、あくまで言われればわかるかも程度を維持してるというか、その状態で素直にポストハードコアやってる感じがあります。あと全体的に枯れた質感もまた独自の雰囲気であんまり結び付けづらいし、乾いたMineralとして聞くのがしっくりくるかもしれない。

 

Roadside Monument - I Am The Day Of Current Taste(1998)

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3rdで最終作ですがもうエモの領域にまで来ていて、個人的には前作のどこにも定着せずといった良い感じの折衷具合が好きだったので少し寂しいですが、これはこれで轟音バンドサウンドのままどんどん展開していくところはマスロックを感じつつそこまでは行かない感じでJ・ロビンスとかあの辺をイメージして聞くとめちゃくちゃかっこいです。とか言ってdiscogs見に行ったら本当にJ・ロビンスプロデュースでちょっと自分でも笑ってしまったんですが、まさにその系譜でJawboxを更にハードにしたような、Arcwelderを轟音寄りにしたような感じ。ちなみに解散後メンバーはまた全く違う方向性のUnwed Sailorというバンドになりインストポストロックの大御所へとなってくんですが、こちらでは結構スロウコア感が強くてそこがまた前作「Eight Hours Away From Being A Man」の乾いたスロウコア感と通じてくるところがあったりもします。

 

 


 

 


結局また近いシーンについてバラバラに書いてしまったんで近いうちどっかまとめます。連想ゲーム的にネタ探してるとつい同系列になってしまうというか、今回もSlint以降、とほぼ同じ枠ですね。

 

 

Bedhead / The New Year

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最近またちょっとスロウコアブームが来てるのでRodanとかに次いでよく聞くBedhead及びその続編とも言えるThe New Yearの全アルバム感想です。


 

Bedhead - WhatFunLifeWas(1994)

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Bedheadの1st。Yo La TengoやRodanと言ったインディーロックの要素とポストロックの要素どちらも持つバンドが好きな方は無添加でそのど真ん中をやってる今作を聞くべきだし、Rodanが残したスロウコアきっての大名曲「Bible Silver Corner」に心を打たれた人はRodanを聞くのではなくこれを聞くべきでしょう。あの曲をゆったりバンドサウンドの歌もので再編成したような曲がたくさん入ってるしボーカルもRodanのジェフ・ミューラーのシャウトしない版、Slintのマクマハンとも通じるボソボソとしたポエトリーと歌の中間とも言えるもので近いフィーリングで聞けます、こっちの方がよりメロディアスかな。

名曲「Bedside Table」を筆頭にギターフレーズのループが中心のシンプルな曲が多いんですがとにかくグッドメロディで聞きやすく、途中からギターがフィードバックノイズにまみれ爆音と化しドラムもやかましくなってくってタイプの曲が多いですね。「The Unnpredictable Landlord」ではカタルシスを迎えたあとにハーモニクスでフレーズ再度弾く部分はやっぱりポストロックも感じる激エモーショナル展開で、エモやポストロックの源泉とも言える作品の一つだと思います。

 

Bedhead - Beheaded(1996)

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2nd。サウンド的に大きな変化はないんですが曲のテンポはより遅くなり、全体的にくたびれた雰囲気も出てきてスロウコア度は一気に増します。

元々Bedheadはメンバーにバイオリンを入れたかったらしいんですが誘うことができず断念、じゃあギターの音で再現しようと意識し始めたことでトリプルギター体制での"常に誰かしらがフレーズを紡いでいる状態"を持続させたらしいです。でもBedheadの1stの印象って割と轟音でカタルシスを得るタイプの印象でバイオリン入るイメージあまり湧かなかったんですが、The Sonora Pineや33.3などの後続のスロウコアはメンバーにチェロやバイオリンが参加しているので、後追いで考えるとやはりスロウコアに弦楽器が入るのはかなり理に叶うというか、むしろかなり早かったのではという気すらしますね。で1stの感想でRodanと近い感じで聴けると書いたんですがおそらく原因はこの辺にあって、Rodanのギターフレーズの紡ぎ方って割とBedheadがやっているバイオリンを意識したプレイと似通ってる気すらするし、実際に後続のRachel'sではRodanの曲のバイオリンバージョンとも言える曲までやってるのでかなり納得。

で今作スロウコア度が増したということでその「バイオリンのようにギターフレーズが紡がれていく感じ」を最も実感できるアルバムだと思います。前作と比べるとボーカルも結構聞き取りやすくなっていてThe New Yearで本格化してくる歌ものとしての味わい深さも滲み出てきました。1stのように一気に盛り上がって多幸感溢れる展開があるというよりはじわじわと徐々に音を分厚くしてくようなイメージで、爆発パートも前作程ドラムがラウドになってないのも含め次アルバムへと続きます。

 

Bedhead - Transaction De Novo(1998)

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3rdアルバムで大名盤。今作からスティーヴ・アルビニ録音でTouch And Goから再発とこの時期のインディーロックで一番間違いない組み合わせですね。

で内容としてはThe New Yearのプロトタイプとも言え・・・いやむしろThe New Yearの1stがBedheadの4thって方が正しいか。それについては後述しますがとにかく前作、前々作の総決算をアルビニ録音による生々しい箱庭サウンドで録った作品で、音の生々しさ重視のためトリプルギターによる音の紡ぎ合いと言った要素はかなりそぎ落とされてしまってますがその分線の細いタイトなギターの紡ぎ合いとその上で浮き上がってくるメロディーが極上。この後LowやMagnolia Electric Co.にも続くスロウペースだからこその音と音の隙間の広さやリズムに重きを置いた"アルビニ録音によるスロウコア"の金字塔的作品の一つでしょう。しかもBedheadなのであんまり悲壮感だったり殺伐さはなくてサウンドは硬質なのにどこかユルく聞けてしまう、この絶妙さは同じくアルビニ録音で知られるSilkwormと通じるとこがあるし、Silkwormも00年代以降アメリカーナ~フォークロック化しますがその時期にBedheadのカデーンもメンバーとして参加するので完全に関連作ですね。

純粋にどの曲も良い曲しかない・・・というシンプルに名盤なんですがとくに「More Than Ever」「Parade」は上記での"アルビニ録音のスロウコア"のうまみがたっぷり詰まった名曲。初期の爆裂ノイジーっぷりは完全に失われてるんですがその分音の引き算、足し算の塩梅が最高で、ノイズパートの名残とも言える絶妙にやりすぎないギターの重ね合いがスロウコアの静寂ループの中から時々顔を見せるのがとにかく最高です。B面からは意外にもバラエティに富んでいてスライドギターが出てきたりアップテンポのエイトビートな曲も出てくるし、なにより驚きなのが「Psychosomatica」で、ジャンクロック~ポストハードコア感満載な不協和音ギターを前面に押し出した今までの彼らからは想像もつかない曲でこれをアルビニ録音でやるのはもう完全に確信犯。

 

The New Year - Newness Ends(2001)

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1st。Bedhead解散後にバンドの核とも言えるカデーン兄弟によって作られたバンドで当初はプロジェクト的な感じでメンバーも流動的だったようで今作からTouch and Goに。で作風なんですが先ほど述べた通り・・・もしBedheadが解散しなかったらこんなアルバムになる予定だったよと本人達が言う通りもろTransaction De Novoの延長、しかもスティーヴ・アルビニ録音で個人的に前作以上にアッパーな曲が多い気がするし「Carne Levare」「The Block That Doesn't Exist」とかめちゃくちゃキャッチーで疾走感ある曲で、ギターのちょっとジャキッとしたタイトな質感とどんどんドライブしてくドラムはもうマイルドにしまくったポストハードコア経由のインディーロックという感じ。

とは言いつつ「Reconstruction」「Gasoline」とかは割とパブリックイメージなBedhead調の曲ですが相変わらずスローペースでも全然静寂寄りじゃないし、歌の比重も増してる気がするし、Gasolineはもうキラーフレーズ繰り返すタイプの曲でスロウコア感をやんわり残したままポップになってて本当にキャッチーすぎる・・・。ReconstructionではBedhead程爆発させずにリフのテンションもそのままじわじわと絶頂に持ってくところはもう貫禄すらあります。

 

The New Year - The End Is Near(2004)

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1曲目の「The End's Not Near」からもう印象全く違ってびっくりですが大名盤、というか代表作としてよく挙げられる曲でめちゃくちゃ牧歌的なイントロと歌で、もうスロウコアってよりアメリカンルーツロックとかフォークとかSSW的な音になっていて割とThe New Yearと言えばこういイメージの人が多いと思われます。続く「Sinking Ship」も同系列。丁度この頃ってバンドのフロントマンであるカデーンがSilkwormにサポートとして参加してた時期で丁度Silkwormもアメリカーナ化してきた時期だしUSインディーと言えばWilcoとかも出てきて逆にWilcoはカントリーからポストロックに接続し始めたり、サブポップからはFleet Foxesとかも出てくるんで「USインディー」という概念がローファイな緩いオルタナからだんだんとルーツっぽい方向へ移行してきた印象があります。

しかしThe New Year、実はこのアルバムもそういう曲ばっかではなくむしろ3曲目「Chinese Handcuffs」はBedheadラストアルバムを想起させる静と動を行き来する冷たい感触でかなりかっこいいし、この鋭角なサウンドはもうアルビニ録音がめちゃくちゃ映えますね。他にも「18」は彼らにしては珍しく7分超の大作ですがバンドサウンドを突き詰めて自然とポストロック化してしまったという大名曲。個人的にBedehad初期とかにあったポストロックのプロトタイプっぽい雰囲気がここにきて戻ってきた感覚で、しかも繰り返されるリフの上を滑るメインギターは今のNew Yearだからこそな少しブルージーな空気もあるしで集大成とも言える曲になってます。

 

The New Year - The New Year(2008)

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前作までは一応三本のエレキギターが入るというBedheadから継承された作風で、音楽性もフォーキーになりながらどちらかと言えばやっぱりエレクトリックな音がメインでしたが、今作は一曲目の「Folios」からもうアコースティック色が強くてオルガンもガッツリ入ってきて完全に前作の序盤2曲を推し進めた感じです。彼らのアルバムはどれも第一にメロディーがめちゃくちゃ良かったですがおかげでそれが一際目立つ作品になってると思います。

とは言いつつ「The Company I Can Get」は割りと前作からあるアッパーな曲になってて前作~前々作で培ったアルビニ録音の硬質なサウンドを軸にした静と動のコントラストのあるタイプの曲で「X Off Days」はこれまた結構激しく、1曲目を除くと割とそこまで印象変わらないのですが本編はB面でしょう。ひたすらテキサスの地をドライブしてるときのサントラにしたくなるような牧歌的でフォーキーな曲が多くそしてやっぱオルガンがめちゃフィーチャーされてますね。雰囲気としては完全にIdahoとかと並べて聞けるようになっていてA面とB面でちょっと毛色が違う作品かもしれません。

 

The New Year - Snow(2017)

最新作でなんと9年の時を経てリリース。90sのポストロック前夜にインディーロックやってた人達は激動のシーンの中でどんどん新たなジャンルを突き進んでくイメージありますが、The New Yearはほんとに自然体にいつも通りを貫き通してますね。もう長いのもあって円熟しきったような貫禄を感じるくらいとにかく純粋に曲が良いのですが、アルビニっぽい硬質で空間的な質感は今作あんまりなくてむしろギターの音色を聴かせると言いますか浸透させてくような優しいタッチになっていて、後は「Snow」とか「The Beast」ではキーボードの音も相まってポストロックっぽい聞き方もできるかもしれないです。全体がそっちに寄ってると言うよりは自然体でインディーロックやってるだけでポストロック感が滲み出てきたとかそういうのに近いかも。あと大分時間経ってるはずなのに何故か声が若返ってるようにすら感じる・・・。

 

Bedhead - 1992-1998(2014)

Bedhead - LIVE 1998(2015)

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1st〜3rdとその他音源全てをまとめたコンピレーション。でアルバム未収録曲が結構あって中でもJoy DivisionのDisorderは必聴です、と言うかこれ結構当時話題になったらしいのでBedheadを知るきっかけになった人も多いと思います。ちなみに僕も完全に後追いですがこのカバーが最初に聞いた曲だったりしたんですがJoy Divisionのカバーでスロウコアやるって言うとGalaxy 500のceremonyを思い出すし、ピッチフォークでGalaxy 500とかヴェルヴェッツフォロワーとして評価されてるのはこの曲がきっかけな気がしてきました。元々メロディーが良いのでインディーロックとして最高な曲になってますので是非とも。

ライブ盤の方は1stの曲中心ですがむしろ1stはBedheadの中で最もリフが際立ってるし静→動へと爆発していく極端な曲が多いのでこれがライブ映えしないわけないですね。特にBedside TableとThe Unpredictable Landlordは聴く前から想像していましたが凄まじいことになってます。逆に轟音要素の少ない曲は音源よりどこか牧歌的な雰囲気がある気もしてめちゃくちゃ良いですね。

 


以上でした。個人的にIdahoとかRed House Paintersとかと近いタイプのバンドという印象だったのが一時期聞き返したところ意外とRodanとかとも近いなと思ってきてその辺から掘り下げていきました。

スロウコアと言えばハードコアやってた人達が反動でやってる印象があるのですが彼らの音からはあまりそれを感じず、しかしButthole Surfersのレーベルから出してるのでやっぱそうなのかなと思ったけどインタビューを見るとどうやら周りみんなハードコアやってたけど僕らだけ違った、でもみんな僕らの音楽性に寛容だった、とも言っててそのパターンもあるのか~となったけどいやそりゃあるよなと思ってしまいました。みんながハードコア出身ってわけじゃないもんね。

邦楽オールタイムベスト③

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前回前々回から続きます。


 

NUMBER GIRL - SAPPUKEI(2000)

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スタジオ盤で選ぶのならこれがベストかなぁ。久々に聞いてもやっぱりよくて、割とナンバガってスタジオ版よりライブの方が聞きやすくてオススメって話を見るしそれにも納得なんですが、あくまでそれはSCHOOL GIRLS DISTORTIONAL ADDICTが入門としてよく勧められる背景がある気がします。とくにSAPPUKEIはデイヴ・フリッドマン録音によってライブでは聞けないダイナミズムも多々あるし、とくにRapemanとかを思い出す拡散しまくった金属的ノイズとダブ処理が結び付けられてる感じは唯一無二。向井秀徳が彼に惚れ込むきっかけとなった破壊的ドラムサウンドは勿論、U-REIやABUSTRUCT TRUTHでのポストパンク由来のダブ~レゲエ通過のハードコアコーティングとも言える曲はいま聴くとベストだなと言いたくなってしまいます。

あとやっぱ歌詞と本格的に出てきた冷凍都市との対峙、そしてジャケが醸し出す世界観がたまらないですね。地方から出てきたときの孤独や焦燥感と言った閉鎖的感情が部屋で録ったような生々しい録音で「孤独主義者のくだらんさ」を歌うのはどこか一人暮らし感も想起するし、これに"殺風景"を名付けるのは余りにもかっこよすぎる。タイトル曲であるSappukeiの静と動の行き来も内面的な感情の動きを感じてエモーショナルになってしまう。やっぱり名盤。

 

uri gagarn - (untitled)(2004)

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group_inouでボーカルも務めてるフロントマンによるバンドで、実は自分はinou経由で知ったのですがそんなuri gagarnの1st。自分の大好きな90s以降の海外のアンダーグラウンドシーンを完全に消化し受け継いでいるバンドで、かつて全く予備知識なくライブを見て大きな衝撃を受けました。北海道ハードコアシーンやナンバーガールに憧れていたとのことで確かにあの辺と近いルーツであろうオルタナ~ポストハードコアの空気感かなりありますが、異常に緊張感というか不穏な空気を漂わせていてSonic YouthUnwoundと言ったバンドと比較されることが多いですね。ただ両者程に実験的な要素はなくあくまでジャンク~ノイズ要素の強いインディーロックという感じで聞けます。

個人的にuri gagarnにはハードコアバンドが徐々にポストロックへと深化していくその途中経過ともいえる音に近いものを感じていて、SlintやRodan~Shipping Newsといったルイビルのポストハードコアやスロウコアを強烈に思い出すシーンも多々あったり、Bedhead+A Minor Forestとも言える一曲目「Mutant Case」のイントロから溢れ出るスロウコア感、そこから徐々に狂っていき狂気的なノイズギターソロへ飲まれる様はグランジとかUSインディーとかが好きだった当時の自分には劇薬でした。一曲目で衝撃を受けたアルバムを挙げろと言われたら間違いなく上位に食い込みますね。

 

クラムボン - id(2002)

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普段あまり聞くタイプのバンドではないんですがこの時期のポストロック三部作である「id」「imagination」「てん、」は全部好きで、そん中から一枚挙げるとなったら今作。最初にハマったきっかけは音楽性よりもスリーピースバンドとしてのスタンスとか精神性にあって、1st~2nd辺りはすごくポップでシンプルな歌ものジャズロックという感じだったけど実際ルーツはバラバラの三人がストイックにやっててメディアや世間のイメージとはまるで違う内情があったらしく、インタビュアーと嚙み合わないことが多々あったというのに魅力を感じたりしてました。

でバンドとしても、アルバムを重ねる中でのマンネリ化を嫌ったらしく4th~6thのポストロック三部作もたぶんそういう流れだろうし、その後もセルフカバー作を定期的に出したり企画物のライブ盤を出したりカバーアルバムを2枚出したり・・・と本当に我が道を突き進んでてどっから聞いても楽しいバンドですね。でid、完全にポストロックでアダム・ピアース本人が参加してるMice Parade歌謡。どっちかというともうバンドサウンドの方が後ろになってしまってて名曲「雨」では完全に打ち込み+原田郁子の歌になってるしインスト曲も多く、「Eel Restaurant」ではドロドロのダブから最後ノイズでズタズタにしてく曲で全体的に美しいのに歪と言ったこのちぐはぐな感じ今作を象徴してる気がするし、今までこうなる兆候すらなかったバンドが突然変異してシカゴ音響派に寄ったのかっこよすぎでしょうと思ってました。

その中でも「Adolescence」「道」みたいなクラムボン節のポップな歌が載ってる曲もあるしで、とっつきづらいですが一度入り込んでしまえば最高に充実したアルバム。Dylan Groupとか好きな人にも。「Charm Point」はドリーミーな空気感で疾走しててノイジーだし今聞くとオルタナとかシューゲとも近い距離で聞けると思います。

 

 

Luminousorange - Drop You Vivid Colours(2002)

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こちらもナンバーガールから知ったバンドでコンピが有名ですがスタジオ作品としての統一感ならこれかなぁ。今作アヒトイナザワ中尾憲太郎というナンバーガール譲りの強靭なリズム隊なのでシューゲイザー版の近隣作としても聞けると思います。ちなみにライブでのサポートメンバーは現ZAZEN BOYSカシオメンだったりもするので完全にあの辺のオルタナシーンの渦中真っ只中といったアルバムですね。

Pale Saintsに影響を受けて結成されたバンドとのことですがPale Saintsはもうちょっとマイルドというかマンチェスター寄りな印象があって、こっちはUSオルタナを連想するジャキっとしたちょい重めのギターサウンドが印象的。浮遊感溢れるUK譲りのシューゲイズではなくUSオルタナ~インディーロックに近い地に足がついた質感で、Dropp NineteensとかSwirliesとかあの辺の現代ギターロックへと脈々と受け継がれてそうな「オルタナティヴ・ロック」の中に内包されたシューゲイズ感みたいのをを連想してこの原初感はかなり90年代をフラッシュバックします。あと曲の尺はそんなに長くないのに展開の多い複雑な曲構成で頭追いつきませんが、全然マスロックとかポストロック的ではなくあくまで全編をノイジーな轟音ギターが覆いつくしてしまってるのが全然類似作思いつかないし、そん中でも所々印象的なキラーフレーズやギターリフが飛び出してくるのについつい笑顔になる。

 

 

キウイロール - KIWIROLL ANTHOLOGY(2008)

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廃盤になってしまったアルバムやシングルを総括したコンピレーションで実際の活動時期は90年代~04年解散。これは08年の再発で完全に僕も後追いです。バカネジという大名曲を聴きぶっ飛んだ人はかなり多いと思うし僕自身漏れなくその一人なわけですが、所謂ポストハードコアとか激情系をよくここまでキャッチーにしたなぁと思えるくらいメロディーがとにかく耳に残るし、何より今にも壊れそうで未完成のまま爆走しているような擦り切れたボーカルはまさしくエモでした。チョモランマトマトとかはこのバンドからめちゃくちゃ影響受けたんだろうなぁ。

サウンドの方ですが同じく北海道のNAHTやCOWPERSといったポストハードコアとはちと毛色違っていて全然硬質に感じないというか、ローファイのままエモに向かったLovitt Recordsって感じがして「1から10」はFour Hundred Yearsをハードコアってよりエモとして聞く人にはめちゃくちゃ刺さるはず(刺さりました)。ポストハードコアに無理やり乗っけたようなぶっきらぼうな日本語はブッチャーズも連想するし、がむしゃらなシャウトは激情系にありがちなマッチョなスクリーモ感も全く無くむしろSuperchankとかPavementみたいなインディーロックのぶっ壊れ感覚でも近いかもです。

 

 

ZAZEN BOYS - すとーりーず(2012)

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ex.NUMBER GIRL向井秀徳による現在も活動中のバンドで僕が知ったときナンバガは当然解散、てことでリアタイで追ったりライブに行ってたのはこちらで現行最新作の5th。ZAZEN BOYS、初期はナンバガで歌っていた冷凍都市問題と地続きになっていて、それ以降もファンクに接近しますが元々ナンバガでもポストパンクを経由したダブ~レゲエだったり、そもそも比較されがちだったPop GroupやGang Of For自体がファンク寄りなので、ナンバガの時よりもうちょっと奥に行ってるって感じもします。昔からプリンスが好きとのことでその辺の影響がより色濃く出ながら、オルタナ~ポストハードコア経由のお馴染みのジャキジャキのギターサウンドやノイズが挿入されるという本当にかっこいいバンドでした。それでも全然ミクスチャー的な色が出ないのもすごかった。

で今作、集大成にしてしかもポップという本当に隙のない名盤。「サイボーグのおばけ」「ポテトサラダ」は今まで通りキメも多様しつつとにかくユーモラスな歌詞がファンキーな曲調の中でハマってくお馴染みのナンバーですが、個人的にライブで見て衝撃を受けたのが「泥沼」です。NUM-AMI-DABUTZがPop Groupの「Y」だとしたら泥沼は「How Much Longer」でしょう。あと地味にZAZENではハッキリとした歌ものをやってこなかったのが前作ZAZEN BOYS4でそれも解禁、そういうナンバガ時代からある向井秀徳の切ない歌もの路線が色濃く出たのが「破裂音の朝」ですね。これと、あとSAPPUKEIの続きのようにも思える「天狗」は普通にナンバーガール時代を思い出してしまうくらいエモーショナルな名曲。あと「はあとぶれいく」もポップで聞き流せるけど夜中にギター持った向井さんがセンチメンタルに弾き語っている姿が想像できるような曲でめちゃくちゃゆるゆるなP.I.L歌謡というようなものになってます。

こういう今まで通りリズムでキメていくタイプの曲とキャリアを総括するレベルの壮大な名曲が全然違和感なく並んでいて尚且つ全体的にポップ・・・という、個人的に文句無し最高傑作と思っていて、もう8年以上リリースされてませんがぶっちゃけこれ出したらしょうがないかもという気持ちもあります。それでも聞きたいけど。

 

 

People In The Box - Ave Materia(2012)

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People In The Box、今聞くと代表作でもある前作Family Recordはマジで歴史に残るレベルの名盤だなとなるんですが、このバンドもこれという一枚を決めるのが非常に難しく当時一番ハマっていたAva Materiaを。残響出身だしマスロックとして語られてる印象ありましたが今作はストレートに歌もの要素が強くて聞きやすくて好きでした。

そもそもマスロックと呼ばれて連想する色々なバンドとPeopleを並べても違和感しかないし完全に影響だとか横の繋がりだとかを語る文脈から切り離されたバンドだと感じるし、18年作のkodomo rengouのインタビューで波多野さんは作曲の際に自分の聞いてる音楽からの影響を"封印"できると言ってるんですよね。残響のオーナーが言うには"相当ヤバいディガー"である波多野さんがそれを封印し純粋に作ってるっていうのがこの無添加な得体の知れなさというか奥が見えない音にとてつもなく説得力がありました。

今作歌ものが多いということでやっぱどうしても歌詞に目が行っちゃう作品で、"ゆうべ からだを売ってみたんだ こころを切り離すために" "絶対にからだから逃げられないと知った君は おかしくなってしまった"というおぞましい歌詞がこれでもかというくらい優しくポップな曲調で歌われるのは今まで以上にファンタジックな世界の皮を被った現実との対面という色がある気がして、歌詞と連動して二転三転してく演奏も相まってもうこれはプログレの域に突入してると思います。

で今作何が好きだったかと言うとFamily Recordではまだマスロッキンな曲が多く残響と接続できるのもわかる感じだったのが、アコースティックの色がぐっと増してて、曲の展開も複雑っちゃ複雑なんですけど歌が乗るところは割とシンプルにメロディーを聞かせるようになってていつも以上に温もりを感じて聞きやすいです。僕はどことなく、それこそ「時計回りの人々」「球体」からは箱庭の中で気づかぬ内に徐々に首が締まっていくような印象を受け、それが今まで以上に牧歌的で優しい音で紡がれているのが本当に"内側で鳴ってる音"という気がして、結構オウガのhomelyとかとも近い作品という感じがしました。

 

ASIAN KUNG-FU GENERATION - ファンクラブ(2006)

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アジカンで今でも一番聞くのなんだろうなと考えたところファンクラブで、定期的に聞いて影響を受けてる気がします。高校生のときは「桜草」とか「真冬のダンス」みたいな割と身近に感じれる虚しさが漂うポップソングみたいのが好きだったけど、この年齢まで積み上げてしまったものありきで聞くと"慌てなくたっていつか僕は消えてしまうけど""そうやって何度も逃げ出すから何もないんだよ"という1曲目の歌いだしからぶっ刺さってくるもんがあり「暗号のワルツ」がめちゃくちゃフェイバリットになってしまいました。

てわけでいつ聞いてもどっかしらハマるとこがあるアルバムで最後まで暗いムードが漂っていて、音楽性も初期のギターロックのフォーマットからは抜け出して所謂ポストロックやディスコパンクに近づいたと言われてる時期ですね。

前々からゴッチが「影響を受けた」「大好きだった」と語るバンドがそこまで反映されてるのか?というインプットとアウトプットのちぐはぐさがあったと思ってますが、実際初期はやりたいことよりも今の自分達のできる範囲でどれくらいかっこよくできるかを目指したと言ってた気がするのでそれは仕方がないのかもしれないし、そもそもゴッチの趣味が90年代頃とそれ以降どんどん変化してる気がします。それこそKANA-BOONと言ったハッキリと影響を公言して売れたフォロワー勢とあまり交流せずceroとか森は生きているとかスカートとかあの辺をフックアップしていたりとか、で実際それがアジカンの音と近いか?と言われるとやっぱり違って、ゴッチも初期の頃にできてしまったアジカンのフォーマットとやりたいことのズレの中で試行錯誤してたのがこの時期なのかな・・・とか思ってしまうし、その挾間で生まれたのがファンクラブなのかなという気もします。

音楽性については死ぬ程内容について語られてると思うし、あとはもう空白依存症の記事(ASIAN KUNG-FU GENERATION『ファンクラブ』(2006年): 空白依存症)が完璧なので今作が好きでまだ読んでない方は是非読んでください。僕はこれに多大な影響を受けました。あとどの曲も本当にドラムがかっこいいアルバムでワールドアパートとかブルートレインは今聞いても凄まじいですね。


 

終わりです。本当のルーツでありベストでもあるアジカンとかあの辺の00年代ギターロックについて書くのになんかすごく抵抗がありますね。次はpillowsかな・・・

 

 

恵庭椎ちゃん

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描きました。スーパーカブより恵庭椎ちゃん。

長かった・・・その間約二か月(というかそれ以上)、いかんせんお絵描き自体まともに勉強したことが無く、なんとなく一年半続けた来たという身としては難易度が高すぎた。てことで今までみたいに感覚では流石にもう出来ず描いてく中でパースだのなんだの色々知る必要があったし、資料集めのためにチャリやらその辺の街やら写真撮ったり・・・楽しかったけど。

で描いてた時間が長すぎてやり途中で俺自身がレベルアップするので、その結果最初の方にやった家とか床とか矛盾に気づいたりクオリティに差が出たりして、こりゃいかん・・・と描き直すんですよね。一生修正が終わらず、てことで予想以上の難産でしたがひとまず完成できてよかったです。

地味に背景のポスターとか凝ってスーパーカブアニメ版のポスター使ったりラーメン屋を実際によく行くところを参考にしたり、舞台周辺の土産屋とか行事調べるのも楽しかったです。。でアニメ、本当に素晴らしかった・・・ぶっちゃけ今期はかげきしょうじょ!!がつい先日最終話迎えましたが間違いなく年間ベスト級なんですが、ただアニメを見てこうスコンと頭をぶん殴られる感覚というか「すごいもの見たな」という感覚はスーパーカブ第一話に勝るものはなかったです。まだあるけど今年ダントツでベストアニメはこの二作かなぁ。スーパーカブを見ていると"今では自分の中で当たり前になってしまった日常のささいな幸せ"を再確認させてくれる余りにも丁寧な生活描写、そして無い無いの女の子を自称する女子高生がカブを手にし世界が少しずつ豊かになっていく様は見ているこちらが救われているような錯覚までありました。途中から友人も増え日常アニメとして普遍的になってくんですけどね、ちょっとアニメ自体の雰囲気も変わってきますが椎ちゃんはその頃に出てきます。

 

月姫が発売したり引っ越しがあったりと忙しくて全然なにも書けてませんが、ぼちぼち下書きは溜まってるのでまたどこかで・・・。