朱莉TeenageRiot

棚,日記,備忘録

SONICMANIAでAutechreを見た

行ってきたので日記です。


初参戦。自分は元々フェス自体に若干の苦手意識がありよっぽど特別なラインナップがない限り行くことはなく、最後に行ったのも2019年のライジングサン、こちらもナンバーガール再結成が目当てでした(無くなったけど)。

そして今回はAutechre・・・まぁね、Autechre来るのなら行くしかないでしょうと。一時期本当に熱狂的に嵌っていて、元々00年代にギターロックを聴いて育ちそのまま海外のロックを遡って聞いてきた音楽遍歴がある自分ですがずっと電子音楽とは距離があったのを、ぐっと身近なものにしてくれたのはAutechreだった。そこからIDMというジャンルを知ってWARPだったりヒップホップやエレクトロニカに繋がってったわけだけど、Confieldのボーナストラックでついてきたライブ音源の「Mcr Quarter」のあまりに破壊的な音に衝撃を受け、真っ暗で何も見えない空間でセトリは無く完全即興で彼らのサウンドを体験するというその特異なライブ形式、ここ最近の膨大すぎてとても追えたものじゃないリリース量のライブ音源をつまみ食いするだけでも肌にピリピリとくるような迫力から期待だけが胸の中で大きくなっていった。2018年の来日公演を逃した自分としては4月にソニックマニア初出演が決まった次の瞬間には他のラインナップを確認することもなくとりあえずチケットを確保していました。

そんくらい楽しみだったAutechre、それはもうライブを見たという感想では正直しっくりこないまさに"体験"というか、フェス自体が非日常を楽しむものだという意識はあるし他のラインナップにもそういう要素は勿論あるけど(ThundercatやFlying Lotusサイバーパンク感もすごかったので)、Autechreに関してはもう通常のステージングから完全に逸脱していて異質としか言いようがない。お馴染みの真っ暗な空間でライブをするというスタイルを幕張メッセ内でもそのまま再現していて、ついちょっと前まで電気グルーヴやずっと真夜中でいいのにがライブをしていて遠めでも見れていたステージの入口に突如巨大な真っ黒い布の膜が出現。自分はこのためにこのイベントにきたも同然なのでAutechreシャツに全身黒ずくめという完全にセットに合わせた服装で来ていたのですが、それでも半信半疑だったこの形式を、フェスという全てを開放して気軽に楽しめるはずのイベントで一区画まるごと隔離してしまうステージはもうイベントの趣旨を超えた非日常、あの黒い布の膜に飲み込まれ入場したらしたで最低限の視界の中実験的で常に形を変えるカオスな鉄の音が四方八方に飛び交いこれを全身で浴びる。これはライブなんでしょうか?少なくとも、自分が今まで人生で体験したライブの中で最も真っ向から鳴ってる音に、音楽に対峙した瞬間でした。

たぶんほとんど即興、止まることなく1時間ぶっ続けで、はっきりこの曲だってのはないけど最新作であるところのSIGN/PLUSからExai期を踏襲した音色、まるで鉄の空洞をぶっ叩いた音を加工してぐにゃぐにゃに引き伸ばしたり刻んだようなものをランダムに配置しまくって、一応区切りになるキックみたいのはあるけどとても乗れるものではないヘヴィ・アンビエントみたいな感じ。リズムと呼べるのか怪しい音の連続と闇の中で見つめ合ってしっくりくるビートを見つけるような側面もあるし、音色に浸る時間とビートに乗る時間の境界がずっと曖昧なのは代表曲「Dropp」をExai期の感覚で一つの空間へと昇華したイメージも湧く。大体全部で一時間あったのですが正直時間の感覚はほぼ消え、この何かが渦巻き蠢くような空間にただただ漂うばかりだったのがラスト10分くらいのところで急展開、Gantz Grafの「Cap.lv」やLP5の「Acroyear II」を思い出す小刻みで金属的なシーケンスをビートにしたような爆踊り仕様へと移行、畳み掛けるように「Pro Radii」「Laughing Quarter」のような所謂ライブアンセム的なポジションの曲を想起させる攻撃的な展開に震える。ライブを終えたあとにステージに光が入り真っ暗闇の中うっすら見えていたセットの奥にはしっかりショーン・ブースとロブ・ブラウンがいて、大きな歓声が沸きあがる瞬間はかなり感極まるものがありました。

まず間違いなく今まで見た全てのライブの中でも、見た直後という補正もありますが長年待った甲斐もあって「ベストアクト」だと言いたい。とりあえず、無事Autechreを見れたことを数年前の自分に教えてあげたい。

 


写真にも残らない程に暗かったので見たものを忘れたくなく帰宅後即描き始めたうろ覚えのイラスト。とにかくステージ外からも聞こえた蠢くようなヤバイ音、一人一人あの黒い幕に入場していく異質な光景、入場して天井から届くうっすらとした光を頼りに人と人の間をすり抜け足早に最前へと向かったときの高揚感は二度と忘れないでしょう。

 

 

なんとなくライブをイメージしたプレイリスト。10年台以降の尋常じゃないリリース量、とにかく音源が膨大なので全部チェックしてるわけではないのと、ライブ自体も頭の中にぼんやりと残ったイメージからですが参考までに。人によって違うものができそうだし、それを見比べるのも楽しそうです。記事中に触れた曲も多いので参考にしてもらえれば。

 

こちらは全く関係ないですが数年前に作って毎年夏に聞くプレイリスト。ちょっと今回のセトリとは大分イメージ違いますが、90-00年代の代表曲多めなのもありマイベストとも言える内容です。

 


関連記事

かなり前に書いたAutechreのまとめ記事。元々Noteで公開してたものを朱莉TeenageRiotを作ったことで移転させたものですが、実はこのブログでも一番最初にまとめたdiscography群なのでそういう感慨深さもちょっとある。

 


以下他のアクトの感想。あんまり周れてないです。

 

Thundercat

完全に初見。何曲か聴いたことはあれど正直ほぼ事前情報無しのぶっつけでなんとなく見たんですが完全にやられて没入、ずっと真夜中でいいのにと被ってたから途中そっち抜けて見に行こうかなとか考えていたのにそんな暇も無いまま80分完走してました。

まず開幕2曲から人力Squarepusher、つまるところShobaleader Oneのような全員ソロみたいな肉薄したセッションが何故か噛み合い、目配せしながら徐々に熱量を上げてく瞬間は正直もっと狭いハコでバンドの呼吸を感じながら見たいと強く思う。こういうインプロ色強いリズムの取り方が曖昧な長尺曲を序盤とラストに重点的に置きながら、途中からカッチリしたリズムのソウルフィーリングの強いメロウな歌もので風通しよくする構成もよくて、初見で魅入って完走してしまった要素の一つにこのセトリの妙もあったと思います。次が気になるというか。

あと坂本龍一を追悼するMCから千のナイフのカバーをやっていてこちらも泣ける。YMO以降のものではなくおそらく最初のソロ「千のナイフ」のバージョンを踏襲していて、ギターソロは鍵盤に置き換えられてますがかなり雰囲気が近いし、ソロの間の少し溜めのあるリズム隊は原曲での水中で泡がはじけるようなシーケンスを楽器に置き換えたようなイメージでかなり踊れて、原曲をリスペクトしつつグルーヴを調理してる感じがめちゃよかったです。メインとなるメロディにThundercat本人によるコーラスも加えられていてメロウでこのバージョン何度でも聞きたい・・・。

音源バージョン。ライブではもうちょっとハイテンポなアレンジでしたがこちらもこれはこれでめちゃくちゃ良い。

当たり前ですが、どの曲も録音物としてプロデュースされたものではなく生演奏なので、隙間が見える素材そのものの状態で聞くといつホーン聞こえてきても違和感ないだろうなと思えるくらい70sのニューソウルの延長に聞こえてくるのも新鮮。最近その辺をよく聞いてたのでおそろしく自然に入ってきたのもあるかも。

 

Flying Lotus

Thundercatより続いて同じステージなのかなり統一感あっていいですね。序盤はYasukeやサイバーパンク的なイメージ通りの硬派なDJからスタート、かと思いきや途中からハウスぶち上げクラブDJみたいになって雰囲気変わりすぎて困惑していたら、直後に目まぐるしく画面が入れ替わるサイケなVJに切り替わり、Los Angelesを更にカットアップしてランダムにぶち撒けた暗黒世界のような、ハウスパートからは想像できないくらい対照的なモードに入りそのままThundercatが参加。まるでスピリチュアル・ジャズのような様相を見せる電子音とベースのセッションが始まりこの後半がものすごく濃かったです。そのままThundercatがボーカルを取ることで代表曲のBlack Goldへとシームレスに繋がり、サイケなムードのトラックとしっかり地続きであることがわかったのも良い。

 

この後のJames Blakeは体力が無く断念。しかし遠めで見てるだけでも幽玄な世界観をバンドサウンドで細々とやってくのはめちゃくちゃかっこよかった。Perfume電気グルーヴも遠くからなんとなく見ただけでも知ってる曲が多く非常に楽しい。低音がヤバいので距離あってもしっかり踊れますね。やはりAutechreが異常だったけど、フェスだけあってこの解放感は本当に心地がいい。電子音楽が多かったのもありクラブっぽいセットも多くて、自分が幕張のフェスによく参加してたのはもう10年近く前だけどその間にクラブに通うようになったり自分自身の変化も多く、クラブでのラウンジで人と駄弁ったり壁際でツイッターやるのと近い感覚で所々で休憩しつつラフに楽しめました。ソニックマニアは深夜だけあって落ち着いて周れるし、幕張ってこの手のフェスにしてはダントツでトイレが快適だし休憩できるスペースがそこかしこにある。自分のようなフェス自体久しぶりの人間にもハードルが低く、また来たいと素直に思えて良かったです。あとずっと飯食ってました。