朱莉TeenageRiot

棚,日記,備忘録

プレイリストまとめ

2021年9月から毎週10曲入りプレイリストを作り知人間で交換し合うというのを習慣的にやっていて、2年以上続けてく内に100本を超えてきたのでとくに気に入ってるものをまとめました。

元々TURNなどで知られるライターのtt氏(ttの記事一覧|note)がツイッターで一時期毎日のようにプレイリストを上げていて(最近は毎日というわけではありませんが週2~3以上をキープ)、自分とは違った世代、音楽観から選出される個人の感覚による文脈の接続、選曲を見るだけでも聞きなれた楽曲に違う角度が生まれたり個人史も見えてきたり、内容やその習慣自体にすごく影響を受けました。自分で音楽を掘ったり探したりする余裕がないときにも重宝させてもらっているし、サブスク特有のサジェストも勿論便利ですが、作風がまとまりすぎてずっと流していると食傷気味になってしまうことも時折あるのでそういうときにもかなりありがたい。ふとした時に新しいプレイリストがある安心感、流しててアンテナに引っ掛かったものが新しいきっかけになったことも数え切れないほどある。完全に真似事で始めた習慣ですが、自分はこの音楽をこういう聞き方をしている、という一つの目安にもなるなと思えたのが面白かったです。


 

今年行ったPot-pourri×DJまほうつかいの素晴らしいライブイベントに触発され帰りの電車で作ったプレイリスト。DJまほうつかいの西島大介先生は漫画家であり、中でもIKKIで連載していたディエンビエンフーという作品が僕はすごく好きで、ベトナム戦争のドキュメンタリー漫画なのだけどそのサントラをイメージしながら作りました。Pot-pourriのKankitsuはライブで披露されディエンビエンフーの大虐殺シーンで流れている妄想をしてしまったし、会場BGMだったDeerhoofもピッタリだし、狂気たっぷりで描かれるベトナム戦争の怪しさと荒廃とした雰囲気は4曲目~の儚く無機質ででも叙情も残した電子音楽郡のイメージと合うなと思っている。

 

 

今年リリースされたOGRE YOU ASSHOLEの新譜「家の外EP」がちょっと遅れてサブスク解禁されたのでせっかくなので使いたいなと思って作ったプレイリスト。Neu!やCANのオマージュが入ってたりクラスターを連想させる曲があったりしたのでその辺で囲いつつ、ルーツを共有するGanger、をミッシングリンクにして同時代ポストロックとしてBattlesとか丁度新譜聞いて近いものを感じたSquidを入れてます。

 

 

 上記の流れで次の週に作った、こちらもOGRE YOU ASSHOLEが発端となって作ったもので暴動以降のSlyのリズムボックスで同期したようなミニマルなファンクネスと、三部作以降のオウガで共有できるものがあるなと自分用のメモのように作ったプレイリスト。オウガ→Steely Danゆらゆら帝国、そして同じくファンクをやクラウトロックをルーツとしつつパンク以降の流れに合流させているようなSquid、同じくパンク/ハードコア出身ながらWARPからリリースしたchk chk chk(!!!)など、時代やシーンは違えど自分の中で腑に落ちる一括りをまとめた感じです。

 

 

明らかに上二つの流れで作られたプレイリスト。次週だし。でも今回はジャンル的な括りではなくもっと感覚的に、靄掛かったオウガやフィッシュマンズと言った音楽からミニマルさを地続きにして「舟」とか「波」とか、そういうワードから連想したくなる、より風景的な音楽を思いつき次第入れていった感じです。オウガの勝浦さんがTortoiseStereolabをフェイバリットに上げていたのを作り終わってから気づいて、無意識に引っ張られていた気もする。

 

 

2022年に見たメイドインアビス二期のアニメが本当に素晴らしくKevin Penkinによるサントラを当時聞きまくっていて、そして同年リリースされていたAlex Gの新譜にも個人的に通じるものを感じそこから発展させていったプレイリスト。作中に出てくる上昇負荷という要素(戻ろうとすると体が化物に変貌したり、五感を失ったりする)と合致するAlex GのWalk Awayの逆再生っぽい演出とかAnimal Collectiveの焦点が合わないようなサイケデリックさとかピッタリだなと思って膨らませていきました。

 

 

このまま自分のオールタイムベストとして差し出せそうなくらい好みが出たプレイリスト。全編スロウコア色強いですがSundownやOffshoreやEcho,Bravoと言った途中から爆発していく曲を所々散りばめることで、全然スロウコアじゃないけど爆発的にノイジーなOvlovをクライマックスにする理由にしていたような気がします。

 

 

天国大魔境という漫画が好きなのですがアニメ化が発表され、実際に映像や音楽を見てイメージが固まってしまう前に架空サントラを作ってみようというコンセプトで作ったプレイリスト。天国大魔境はポストアポカリプスな荒廃とした外の世界と、隔離された施設で何も知らされず生活している少年少女達に焦点をあてたすごくミニマルなパートが同時進行で描かれていて、その「外」と「施設」それぞれをイメージして選びました。とくに施設側は生まれたときからそこにいて、狭い世界で世間も常識も何も知らされない様は胎内みたいだなと思っていて、Alva NotoやOval、Sparklehorse/Fenneszの時間の流れを感じないビートレスなアンビエント風味な曲はそういうイメージで入れてます。

(ちなみに実際にアニメを見て答え合わせをしたところ牛尾憲輔による劇伴は本当に素晴らしく、そして漫画はすごくAKIRAっぽいのだけどそこを汲んだのか映画のAKIRAっぽい曲とかも出てきて完全にやられた!と思いました)

 

 

上記のプレイリストの流れから知人とAKIRAのサントラがかっこいいよという話をして、KANEDAを使ったものを作ろうとしたものの中々思いつかず、祭囃子がそれっぽいNUM-HEAVYMETALLIC、直接引用しているTOKYO、吉田一郎の僕と悪手もシーケンスがそれっぽいし、LEO今井が時折見せる和の雰囲気もサイバーパンクっぽさがあるなと思って、オリエンタルな要素を言い訳にして向井秀徳人脈に流れて行った感もあります。

 

 

2021年の年間ベストが上がってくる時期に色々読みながら聞いたbetcover!!の「幽霊」がめちゃかっこよくて作ったプレイリスト。幽霊、さわれないのに、戻らない、みたいなタイトルだけで空気を共有してそうな曲が集まっていて、OGRE YOU ASSHOLE、South Penguin、Wool&The Pants辺りから香るAORやファンクをそれぞれ違う形に虚無っぽく調理したグルーヴ感にバンド毎に違う色のミニマルさがあって好きだったりします。

 

 

Pot-pourriの液晶氏とドライブする機会があり、その中で話題に出てそのまま車内で流していたBaths/Cwondo/パソコン音楽クラブ、そして彼が参加しているPot-pourri、当時新譜が出たばかりでよく聞いていたWarpaint、その日行ったブックオフで買ったNav Katzeのリミックス・・・と言った具合に、日記のような、まるでセッションのようにしてできたにしては通して聞いててもかなり統一感のあるものが出来たので気に入っている。夜の車内にとても合うと思います。

 

 

チェンソーマンのアニメ化に際して妄想を爆発させた架空サントラのプレイリスト。元々BorisのPinkが真っ先に浮かんでFarewellもめっちゃ合うなとか、暗いIDMとかポストハードコアとか普段からよく聞くものが合致していたのもあり考えるだけでも楽しかったです。とくにSPOILMANのAmaryllisは狂気的なジャンクロックとおどろおどろしいシャウトが続く中チャーミングな歌詞による歪さがピッタリだと思っている。Matmosも合う。

 

 

クリスマスのプレイリストを作ろうと思って冒頭2曲から始まりそっから音楽性、アウトロから繋いだらかっこよさそうな曲とかを思いつき次第に数珠繋ぎにしていった結果ポストハードコア/ジャンクロック色がめちゃ強くなったプレイリスト。Touch and GoやAm Repの香りがしまくってて、送り合ってた相手が普段ポストハードコアを聞く人ではなかったので布教したかった気持ちも割とあり、LowercaseやUzedaはかなり自分の趣味が出てますね。ZAZEN BOYSのHIMITSU GRIL's TOP SECRETが入ったEPは全体的にすごくShellacっぽい色があると思ってます。

 

 

おすすめのジャズを送り合うみたいな流れになったときに作った全然嘘のプレイリスト。でも自分が普段聞いていて最も親しみ深いジャズに位置する音楽ってちゃんとこの辺かなという気もする。シカゴ人脈からスタートしながらもPramとかGangerはもう全く別の畑、しかしポストロックという巨大な括りの懐の広さも感じることができる。Squarepusherを入れるんならTortoiseはJettyだったかなと見返して少し思ったりもしました。

 

 

冬に車内で聞きたい音楽ベストとして作ったプレイリスト。冬が繁忙期だったのでいつも帰りが遅く、寒い中どこも閉じて暗くなった繁華街を車で走りながら、そのシチュエーションで一番聞きたい音楽をまとめました。ほぼスロウコアですがまるで毛布みたいな音楽だなと思ってます。PhiladelphiaKaty Songは沁みすぎる。実は以前書いた音楽を聴く環境について / 車内音楽まとめ - 朱莉TeenageRiotはこのプレイリストが発端となってます。

 

 

Lily FuryのAnthorogyというアルバムを今年よく聞いていて、その中でBrocadeという曲がBorisのLoopriderを初めて聞いたときをフラッシュバックするような、アルバム内でジャンルごった煮な大作を終えた後に始まるストレートな名曲という立ち位置で、そこから影響を公言しているディーパーズだったり、そのNARASAKIが今年リリースしたアイカツ!の新曲でもあるSign? Go! Dream!!のジャンルの横断の仕方にもLily Furyとシンパシーを感じたり・・・みたいな、一連の自分の中であった感情の動きを、そのままメモするように作ったプレイリスト。

 

 

Mogwaiの1stだけがずっとサブスクに無かったのですが昨年いつの間にか解禁されていたので作った秋口にピッタリな涼しげなプレイリスト。スロウコアとポストロックの境界ギリギリにいるアーティストだけを狙って入れたような、90s末期のプレ・ポストロック的な空気が存分に出たかなと思う。

 

 

先のものと同じく秋口にピッタリなプレイリスト。スロウコア・・・っぽくも見えるけど言うほどでもなく、フォーキーな風通しの良さがありつつでもアコギってわけではない、涼しげでノスタルジックなUSインディーみたいな、Yo La Tengoや後期Red House Paintersを一緒にしたかっただけ感もある。元々好んで聞いてたとこなので気を抜くとこういうの一生作ってる気がします。

 

 

アニメゆるキャン△のEDだったふゆびよりという曲のタイアップだったYURUSUという曲があるのですが、ふゆびよりのアコースティックなSSWってイメージを完全に覆すCorneliusみたいなナンバーだったのに衝撃を受け、それを使いたくて本家と坂本真綾入れて作ったプレイリスト。恋する日常も衝撃でした。知人が割とアニソンやボカロ好きのイメージがあったのでそこからも触れやすそうなものを後半に入れてます。雨の日に聞きたい。

 

 

またしても架空サントラ。昨年全話無料公開されててドハマりした宝石の国をイメージしてます。最初のTJOはもろ第一話冒頭のイメージ。孤独の発明とか互いの宇宙とかタイトルもイメージと合ったり、宝石なので無機物としての低体温っぽさをtoeのアンサンブルと重ねていた気がする。「平熱の街」てタイトルも。あとで実際にアニメ化したときの音楽をハイスイノナサの照井さんが担当したと知ってかなり嬉しく、その曲もかなりかっこよくて最後に入れた気がします。

 

 

シューゲイズ/スロウコア/アンビエント辺りの空気がブレンドされたBark Psychosisから始まり、そっから各所に派生しつつ同じ空気感を持つアーティストで纏めたプレイリスト。あんまり1ジャンルで一括りにするのも面白くないかもと意図的にバラけさした気がするけど、どことなくスペーシーな空気があります。半分くらいは宝石の国プレイリストの没曲になったものだったりします。

 


以上でした。所謂ツイッターを通して知り合った普段から自主的に音楽を掘ったり作ったりしているようなリスナーの方々ではなく、むしろ全くそこに馴染みのない、全く別の趣味の繋がりで知り合った知人たちとプレイリスト交換をしていたので「ある程度名盤を知っている」というわけではない方に向けて作るという経験が結構新鮮。故に先入観に囚われず、10曲1時間以内を目安に雰囲気やコンセプトを重視した結果自分の脳内で無意識にしていたカテゴライズを可視化する役目を果たしたり、そもそも最近聞いてなかったかつて好きだった音楽を思い出し棚卸する感覚もあった。この2年間で知人の音楽趣味の傾向も固まってきた感じがあるし、また毎月感想を貰えるのもありそれで選曲の傾向が変わったりするし、これ以降も作り続けると思うので気が向いたら纏めるかもしれません。

正直この習慣が始まってから新しい音源を掘ることも少なくなったのですが、それはそれとして音楽を聴くという行為自体を更に豊かにしてくれる実感があり、"現行シーンを追う"みたいな行為とは遠く離れた、純粋に音楽を楽しむという経験が結構久しぶりでした。プレイリスト制作自体が僕は一つの創作だと思うし、やってよかったなと今は思います。

 

冒頭で触れたtt氏のnoteです。全部追えてるわけではないですがとても参考になります。