朱莉TeenageRiot

棚,日記,備忘録

Squid 渋谷WWW X

11月27日、渋谷のWWW Xにて行われたSquid来日公演に行ってきました。今年聴いた新譜の中でも特に聞き返すことが多く、下半期聴いていた音楽も彼らのアルバムやインタビューを見て影響されたものが多かったので一つの締めのような気持ちもありました。見た直後にSNSにて衝動的に感想を連続で投稿したのでそれをまとめて再編集、加筆したライブレポになります。

Squid。元々公開されていたライブ動画からもドラムがボーカルを担当し他4人のメンバーは曲ごと、もしくは曲の途中でも楽器を持ち替えコーラスやボーカルまで変更しながら演奏するスタイルで、やはり生で見ることで音源だけでは気づけなかった箇所など再発見がとても多く、どの曲でも練られた交錯するリズムとミニマルな反復を主としたグルーヴ重視のものが多いのもあり、視覚的にも身体的にも非常に楽しい。音源の時点で予想はしてましたがすごくライブバンドで、その日のモードもすごく演奏の色に反映されそうだし、これを現地で定期的にライブに通える人たちが心底羨ましくなってしまいます。

入場して開幕のSwingからすでに他曲ではベースを弾いたりしているローリー・ナンカイヴェルがホーンとパーカッションによる参加で、低音はおそらくシンセが担当、そしてローリーは曲の中で楽器だけに捉われず機材をいじっている時間もすごく多いし、そもそも彼の後ろにベース及びギターが3本立っていることからもそれは象徴的。曲によってはツインギターの片方がベースを弾くこともあればメンバー3人が機材をずっといじっている場合もあるし、彼らはポストパンクと呼ばれながらもそれをやっているつもりはおそらく無く、というかこの自由奔放なスタイルは音楽におけるあらゆる境界を縦横無尽に、いや彼らは境界を認識すらしていないのかもしれない。僕はどうしてもファンクバンドとして聴いてしまうというか、強烈なファンクネスを感じるGSK〜Narratorの流れは本当に心の底からぶち上がって体を揺さぶられてしまった。元々Squidをきっかけに今年の下半期はずっとファンクの旧譜を漁っていたので、改めてSquid新譜を聴いていた6月から数ヶ月を自分なりに導線を辿って何周かした上でそれを再確認するような体験でした。しかもより肉体的な、バンドの動きを目前で見れる生演奏を通して今年の自分の音楽体験の原点に立ち返るような感じで、実は同日渋谷にてAlex Gの来日講演も行われていて特に新譜は昨年死ぬほど聴き倒したため直前までとてつもなく悩んだのですが(今でも見れなかったことを少し悔しく思います)、それでも、やっぱり今年聴いてきた音楽や今の自分の傾向を考えると(Pot-pourriや5kaiのライブに通っていたというのを考えても)Squidを見たかったという気持ちが勝った。各メンバー楽器を持ち替えながらもずっと中心でドラムボーカルに徹するオリー・ジャッジも凄まじく、溜めと緩急のあるシャウトを所々挟むボーカルが生で見るとまさに一つのビートを生む打楽器みたいで、そこに強烈にファンクを想起させられてしまう。Sly的というか。演奏しているドラムではシンプルな縦ノリの中でもボーカルが強烈に左右に振ってくるというか、これ自身がグルーヴの一つの肝になってるのも実感させられました。

PaddlingやPeal St.と言った1stにおける高速ナンバーはハードテクノ通過後のNeu!とも言えるスタイルで、どの曲もアウトロでアンビエントみたいな残響パートを途中からアレンジして次の曲のイントロのシーケンスと同期してくスタイルもインプロとはまた別の、まるでNeu!がジャズやファンクに転向して半電子音化した異形のジャムバンドという感じ。この曲間のパターンもその時々のメンバーのモードやセトリによって変わりそうだし、やはりライブに通いたいなと思わされてしまう。あとすごく印象的だったのが2nd収録のUndergrowthで、Swingでも思ったのですがライブで見るとホーンの存在感が数倍になるくらい曲のど真ん中に鎮座していて、音源と変わりなくても視覚的な印象や単純に音量だったり、それ一つの要素で自分の聞く姿勢がそっくり変わってしまう楽しさがありますよね。Undergrouwhはもうとにかくこのじわじわと弱火で熱していくような、ねっとりとしたグルーヴがホーンのインパクトのおかげでよりジャズやファンク的に聞こえ、スロウペースでリズムを形作るフレーズのミニマルさを保持しながら、各パートが展開を見せ拡散してくバンドを一度全て収束させるシンセによる切り返しもキメとして恐ろしく決まっている。生で見ることで本当に曲のイメージがガラリと変わるし、この曲のアウトロにおける重厚なドローンノイズによるジャムセッション的なパートもライブで超進化してました(セトリを見るに別の曲名が与えられていた)。

ファンク的、とは言いましたがそれはあくまで自分の聞き方/楽しみ方であって、反復ではあれどファンクやテクノのように踊らせるためにやってる感じはあまり無く、むしろ共通したリフやループを曲の中でそこまで使い回さず一方通行でどんどん上から展開してくのはジャズとかプログレ的だとすら思います。曲ごとに体制を変えながらもSquid足りえるのはやはりこの弾力たっぷりのギターリフのセンスとドラム及びそれを牽引するボーカルで、好き放題やりながらも一貫したものをずっと感じるのはこの全部一本筋を通す針金のようなバンドの芯も正面から見ることができてとても楽しかったです。

以上でした。セトリを再現したプレイリストを貼っておきます。