朱莉TeenageRiot

棚,日記,備忘録

邦楽オールタイムベスト⑤

今回は羅針盤とGREAT3です。


 

羅針盤 - ソングライン(2000)

最近サブスク解禁もされた羅針盤3rd。フロントマンである山本精一は元々はボアダムスROVOと言ったちょっと実験的なバンドの人という印象が少なからずありますが、そんな中羅針盤は弾き語りと近い感じで聞けるフォークロックとかそういう素直な日本の歌ものとして聞けるフォーマットでゆるやかにやっていてソングラインも割とその形(というか羅針盤は全部そう)。なんですけど、やっぱり、そういう出自が少なからず関係してると思われるような練りに練ったギターサウンドとか、ノイズとか音響とか、もう音色一発で感情全部持ってかれるような破壊力があってそれはもう1曲目「がれきの空」から完全にやられる。空間的なイントロのギターワークだけで涙を誘う。からの、今度は急に音減らしてゆったりとした歌ものが何事もなく始まるのも非常に彼ららしいですが、この最小限に音を絞ったアンサンブルはちょっとスロウコアを思い出したりしつつ、でもアメリカーナとは距離あるし、個人的に後期のOGRE YOU ASSHOLEと近い雰囲気も感じたり(これはまた後述)します。

続く「サークル」「リフレイン」からは割と軽快なフォークソングとかカントリーを想起する部分もありますがやっぱ曲は長尺で、全編通してスローペースのままギターの掛け合い中心にセッションしてくみたいな色が所々見えるのちょっとだけGrateful Deadのライブ盤思い出したりとか、Procol Harum風の曲もあるし、そいう60sサイケからのフィードバックみたいのもふんだんに出しつつこれはアドリブしやすそうだし、ライブアルバムとして残ってはないけど羅針盤って実はかなりライブバンドだったんじゃないかなぁと思います。インプロでいくらでも気持ちよくなってられそうだしギターの轟音も凄まじそうだし。

で轟音と言えばB面がまた神がかってて「波」はノイズの海の中で浮かび上がってくるフォークソングとも言える曲でシューゲイザーファンとかにも行けると思います。近いフィーリングというか。そっからねぇ・・・もう「ひとりのうみ」「ソングライン」「羅針盤」で終わるの、名曲だらけの圧巻のB面。個人的に表題曲である「ソングライン」ヤバイですこれは、ゆったりとしたフォークソング調、めくるめく変わってくメロディーの切り替えで展開していって、音だけでストーリー仕立てのようになってるし後半はどんどんサイケリア渦巻くノイズの中に潜っていき絶頂をキープしたままループしていくという。これはヤバイね、もう本当に心地がよくてプログレ・・・とも違うけどYo La Tengoとか好きな人にもめちゃくちゃオススメ。ノイジーな都市レコードとしても聴けます。

 

羅針盤 - 会えない人(2003)

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4曲入りEP、とは言いつつ相変わらず曲が長いから30分超えてて普通にフルアルバム聞く感覚で聞ける羅針盤で最も好きな一枚。OGRE YOU ASSHOLEの会場でよくご一緒していたネットの知人から是非聞いて欲しいと言われて知ったのでこのバンドと出会ったのもこの作品で、ソングラインと同様濃密なサイケ感、ノイズ要素もある長尺フォークソングみたいな印象を受けてOGRE YOU ASSHOLEのライブから確かにこれはかなり繋げることができるぞと感動したことを覚えてます。で調べてみたらなるほどボアダムスの人なのかと妙に納得したり・・・。

で今作、「会えない人」「さけび」とド名曲続きでソングライン(曲の方)の後半のループ感をより更に洗練したみたいな感じで、あの頃は割と曲展開がドラマティックでちゃんとカタルシスがあったんですが、今作はそういう感じではなく、むしろメインとなるループさせる歌メロそのものが初期の羅針盤楽曲のどれよりもキャッチーで、本当にアコギ一本で歌っても映えそうなポップさがあるんですよ。だからこそ曲展開をドラマティックへ・・・て方向じゃなく、むしろこのキャッチーな歌メロを主軸に繰り返しながらより轟音を、ノイズを浸透させてくという感じで、電子オルガンからは60sサイケの雰囲気もあるしで、よすぎる。本当に気持ちよすぎる。

「さけび」では延々とドライブしていたくなるような序盤のフォークロックから丁度中間より轟音ギターソロが炸裂し始めどんどんこれまたフィードバックノイズの海に潜ったりフォークロックに戻ったりをスイッチを切り替えるように行き来してくんですが、これも感動の連続でこんなんライブで見たら絶対絶頂していただろうなというの間違いなく、OGRE YOU ASSHOLEの「ロープ」「フラッグ」と言った大名曲で得られるカタルシスを、音源の、この10分で堪能することができる曲だと思います。オウガ程リズムに寄せてはないけど、その代わりメロディアスに寄せてるのがこっちだと思う。でニール・ヤングのカバー、これもルーツ開示というかまぁ当然だよねという感じではありますが最後「不明のうた」のちょっとミニマルな質感は後に続くアルバム「福音」「いるみ」に続くかと。

 

GREAT3 - METAL LUNCHBOX(1996)

GREAT3の2nd。アルバムタイトルにもなってる表題曲が大好きで、いきなりローゼズの2ndもろでめちゃかっこいいなと聞いてると途中ギターがジミヘンみたいになるとこでこれまた笑顔になるし、途中からローゼズにもジミヘンにも無いような哀愁漂ってきてGREAT3節全開のメロウネス出てくるの神バランスだなと思いました。

ローゼズに例えましたが他にもディスコやファンクを参照したであろう曲もあってというかDISCOMANというタイトルももろだけど、でもマンチェスターというかUKロック経由ってよりも純粋に80sのソウルやファンクに直接影響を受けてやってる感じもめちゃくちゃあるし、元々渋谷系に括られてたのも相まってこの頃からハッキリとしたルーツがわからないGREAT3の闇鍋感が全開。ギターポップ→マンチェとかシューゲイザーとかそういう流れがベースになったバンドはもっとわかりやすく「オルタナ」て言いたくなる感じになると、思いますがGREAT3にはそれを感じないというか・・・いや、影響はあるのかもしれないが、本人達のミックス具合やアウトプットがうますぎてそうならないのかもしれません。

ちょっと歌謡曲っぽく聞こえるのがミソかもしれないし、カオスというか、奥底が見えないというか、これは僕がグランジオルタナとかUSインディーとかシューゲイザーから出てきたリスナーってのもあるのでしょうが。しかしART-SCHOOLとかが大リスペクトしてるバンドじゃんGREAT3、この後ジャズの色も出てきたり00年代ではポストロック人脈とシカゴで合流するし、それも含めて本当に掴みどころがない。

 

GREAT3 - Without Onion(1998)

大名盤4th。個人的に90年台という括りで見てもトップクラスのアルバム。「Sabbath」て1曲目からも前作で見せたジャズっぽい片鱗を薄めてノイズと混ぜてフィルターかけちゃったみたいな、夢心地なんだけどちゃんと踊りたくなるくらいファンキーだし、完全に入り込んでしまう名曲。からの「Chop The Meat」で、これを数年前に知人にオススメしてもらってGREAT3と出会って衝動的に5thくらいまで借りたんですが、サイケなUKロックみたいなギターをこんなにアグレッシブにアッパーにしちゃってキラーチューンに仕立て上げるって感じで、Kula Shakerの1stの頃とか思い出すような前のめりすぎるドラム録音も衝撃で僕はこの曲聴いてファンになったと言っても過言ではないです。デカイ声で歌いたくなるようなサビの気持ち良い曲ですね。

「Golf」も最高でホワイトノイズみたいな心地いい夢見心地な世界に落とし込んでくれるけど、ボーカルはなんかもう一周して悟っちゃったような安らかなくたびれ感みたいのが出ててこれも1st2ndではあんま無かった感じだなと思うんですが、ピコピコ鳴ってる電子音とか水中で鳴ってるような透明感あるノイズとか、80年代っぽいメロウさと90年代のザラついた質感の融合だなという感じします。地味にART-SCHOOLのButterfly Kissの元ネタ。長尺のインスト曲も入ってるけどこれは電化マイルスっぽくて、数年後シカゴ行ってTortoiseマッケンタイアとアルバムを作る彼らですがここで繋がってくるというか、あの辺のポストロックのルーツとして電化マイルスは間違いなくあるはずなので、今聞くと伏線回収という感じ。でも今作音響へのアプローチや浮遊感が強くかなり実験的になってるしポストロック行くのもめっちゃ納得してしまった、シューゲイザー好きな人でもつまみ食いできる作品だと思います。でこんなにメロウで浮遊感ある音世界なのにドラムがめちゃ跳ねててタイトなのが最高すぎる、この感じGREAT3ならではって感じするし白根さんは本当に最高のドラマーだなと。

B面は結構今までのGREAT3のパブリックイメージそのままアップデートしましたという王道が続きますが「Kiss To Domino」とか「Soul Glow」とかほんとそんな感じで、Stone RosesとかThe Verveの2ndとかを思い出してたMetal Lunchbox期も思い出す感じで、どことなくバラエティ番組で流れてそうな雰囲気がありますよね。やっぱ総括+αていう最強のアルバムですよ、97年だしリアルタイムで聞いたら絶対大興奮しただろうなと本気で思う作品。