朱莉TeenageRiot

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discography③ Slint以降のポストロック~ポストハードコア

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SlintやJune of 44と言ったハードコア→ポストロックへの変遷を経てく内に生まれた、スロウコア/マスロック/ポストロックそのどれにも区分できそうでできなそうな立ち位置のポストハードコアバンドを「Slint以降」として好きなアルバムをまとめていきます。実際にSlintに影響を受けてる受けてないに関わらず同時代性の強いものを。


 

A Minor Forest - Inindependence(1998)

Amazon | Inindependence | A Minor Forest | 輸入盤 | 音楽

サンフランシスコ出身、メンバーは後にPinbackのツアーメンバーとしても参加したりシカゴ音響派とも近い33.3というバンドで活動するポストロックシーンの重要バンド。スロウコアを基調にしながら静→動とハードコアへと爆発させるSlint~June of 44などルイヴィルの血脈を感じさせますが、それら影響元と比べてもより長尺で爆発パートがやりすぎなくらい爆発させてたりと、その後って感じのする極端なカオティックさがすごく良い。またバースト後も長尺な間奏から所謂インスト系のポストロックとしても聞けそうな凝った展開が多くて、静パートもエモとかと遜色なかったりするのでかなり多彩。一応代表作は1stでこちらは2ndなんですがこっちのが好きです。1stはもう少しスロウコア寄りなので確かに聞きやすいかも。

 

A Mionor Forest - ...So, Were They in Some Sort of Fight?(1998)

A Minor Forest – So, Were They In Some Sort Of Fight? (1999, CD) - Discogs

3rdていうよりはコンピレーションのようですが解散前のラスト作で、まぁ本当にごった煮でストック音源全部ぶち込んでやったみたいな勢いがありアルバムとしての統一感はゼロですが、「Cocktail Party」「Well Swayed」は1stと2ndで突き詰めたスロウコアからハードコア化していく、もしくはスロウなハードコアともとれる系列の完成形と言えるほど洗練されててめちゃくちゃかっこいい。この路線で行けるとこまで行ってしまったような気もするしこの辺のジャンル好きなら間違いないです。と思いきや地下室で録ったようなローファイなインディーロックっていうかデモ?や土臭いフォーキーなアコースティック路線、唐突にやってくる謎のディスコなど文脈をぶった切っていて、整合性は考えられておらずまさしく混沌。

 

Lowercase - All Destructive Urges... Seem So Perfect(1996)

All Destructive Urges...Seem So Perfect | lowercase

Slintの系列で語られがちなジャンクロック/ポストハードコアバンドの1st。確かにSlintっぽさありますが静→動の対比はほとんどなく、いやなくはないけど静パート的なところもジャンクな録音に塗りつぶされてしまい常に狂気が充満してます。まるでデモ音源かと思うような音質の悪さ全てがプラスにしか働いてない、全身傷だらけなノイズまみれのポストハードコア。いつ崩れ落ちてしまうかわからない危うさもあり常に不穏です。ミディアムテンポで叩きつけるようにリフを繰り返しながらガシャガシャと全パートが衝突しバースト、捲し立てるようなドラムもどこか焦燥感があるしボーカルがのたうちまわるようにシャウトを撒き散らすの怖い。あと意外とメロディーが良くて1曲目のAs Your Mouthとか枯れたボーカルと荒れまくった演奏の対比が美しさすらあるし、Sometimes I Feel Like A Vampireは基本的に1フレーズの繰り返しですが、これもメロディーの良さからキャッチーにすら聞こえ2nd以降の路線が割と見えてくる。

 

Lowercase - Kill The Lights(1997)

Kill The Lights | lowercase

前作の路線を推し進め相変わらずスローテンポですが、続けて聞くと驚くくらい音質がクリアになっていてだからこそノイズパートとそれ意外の対比が激しくなりグッと聞きやすくなった。でも彼らのノイズパートって所謂ポストハードコア的な硬質なものではなく、今にも飛散してってしまいそうな不安定で地を引きずってボロボロになったみたいなノイズで、これは前作のジャンクな録音ならではなのかと思っていたけど今回も変わらないんですよ。そしてそれが、本当にとてつもなくかっこいい。狂気をコントロールしてるようにも思える1曲目「She Takes Me」から凄まじい緊張感で、メロディアスなおかげでこんだけ重くても割と聞きやすく、最初聞いたときかなり衝撃を受けこのままbandcampで全音源購入するに至った。「Neurasthenia」に関しては途中から音を減らし静謐な闇へと潜っていくのでこれはSlint的な路線としても聴けるし、ちゃんと次作に繋がります。ちなみに1st2nd共にジャンクロック名家Amphetamine Reptile Recordsからのリリース。今更だけど1stはすごくAmphetamine Reptile的だなと思う。

 

Lowercase - The Going Away Present(1998)

Lowercase – The Going Away Present (1999, CD) - Discogs

そして3rd、より音数を絞って隙間のあるアンサンブルが主体になっていて、長尺で凝った曲も多くSpiderland的なのはこちらでしょう。むしろSlintよりしっかり歌があって、枯れていて諦念まみれな歌はそのまま音数を減らし素っ気なくなったアンサンブルとの組み合わせがかなり良い。開幕「Floodlit」からギターの音色もボーカルもより抒情的になっていて、スロウコア~フォークロック的な風情を漂わせてますが、後半絶妙に爆発"させきらない"加減で攻めてくる。この煮えきれなさ、やはり不穏なLowercase節を垣間見せてくるんですがたまらんですね。「The Going Away Present」に関しては普通に聞きやすくてくたびれたインディーロックみたいになってるし、最後の「Thistrainwillnotstop」はSpiderland以降のイフのSlintとしても聴けそうな、ノイズ要素を捨てなかったThe For Carnationみたいな雰囲気があってこれも好きです。残念ながら最終作でこのあと解散。

 

90 Day Men - 1975-1977-1998 EP(1998)

1975-1977-1998 | 90 Day Men

ポストロックの文脈でも語られる90 Day Menの初期EPにしてマスロック寄りポストハードコアに歌を乗せた、というJune of 44好きとして個人的に間違いないアルバム。ジャンクでささくれだったギター音とマスロックを想起させるリフを断片的に見せながら、マスロック程キメや展開を重視せずに真っ当にポストハードコアをやってるという感じで、変幻自在に動く鋭角リフの中で進行していくのがめちゃくちゃスタイリッシュです。そしてB面では後のフルアルバムで見せる実験性もガンガン見せてくる。最後の「Hey, Citronella!」は今作唯一の六分超え、荒廃した空気を漂わせながら一度音をそぎ落としてドラマティックに静→動へと流れていく、次作へとしっかりと通じる大名曲。90 Day Menのアルバムの中では最もストレートに熱さを感じることができる作品だと思います。

 

90 Day Men - (It (Is) It) Critical Band(2000)

90 Day Men – (It (Is) It) Critical Band (2000, Vinyl) - Discogs

名盤。先ほどに続きこちら1stフルでSouthern Recordsよりデビュー、KarateやJoan of Arc、RexにSweep the Leg Johnnyなど近いフィーリングのバンドが多数在籍していたところで、個人的にハードコアからポストロックへの変遷を辿る上でTouch and Goと並んで外せない重要レーベルだと思います。まだハードコアの延長感の強かったEPからもう少し進み捻れてジャンクだったギターはもう少し音を絞ってより冷ややかで硬質、フレーズを聞かせるようになり、長尺の曲も増え更に凝った予測不能の曲展開やジャズ色も出てくるし、構成の妙やインプロっぽいさからもDon Caballero〜Rumah Sakitと言ったマス/ポストロックバンドもチラつく。あとこちらもよく引き合いに出されますがKing Crimsonっぽさもありますね。

ピッチフォークや海外wikiではSlintやJune of 44と比較されていることからそう言った要素も強く、「Dialed In」「Jupiter and Io」では不穏に渦巻いていくセッションの中でスポークンワーズが乗り影響を感じずにはいられない。特にベースラインがやりすぎなくらいうねっていてこれが曲の主導権を握りなが渦巻いていくところは非常にJune of 44的だと思います。「Missouri Kids Cuss」はかなりストレートな曲で最終的にはノイズで全部塗りつぶしていくところがカタルシス満載、直球のオルタナでこちらも大好きな曲です。フロントマンであるブライアン・ケースはThe 90 Day Men解散後Sonic Youthのスティーヴ・シェリーらとDisappearsを結成したり、現在はFACSでポストパンクをやっていますが彼のキャリアでも最も好きなアルバムはこれかもしれない。

 

90 Day Men - To Everybody(2002)

Amazon | To Everybody | 90 Day Men | 輸入盤 | 音楽

前作の作風とまるで違い続けて聞くと1曲目のイントロからかなり衝撃度高いでしょう。より生々しい録音で狭いハコに押し込みながらもオルガンを全面に押し出し不穏で壮大な世界を広げていく。ほとんどの曲がスローペースになっていて、この徹底的に生音に拘ったようなドラムやギターの質感から密室にぎゅっと押し込められてしまったような、スケール感のある演奏と相反した音響がとてもポストロック的で一瞬で虜になる。今までの変則的ながら割とギターがメインのバンドとして聞いていた自分としてはかなり実験的に聞こえてくるし、今作はクラシックに影響を受けたとのことですが、そもそも彼らのことをポストハードコアとして聞いていた自分は最初から誤解してたのでは無いかとすら思う。ちゃんと地続きなんですよ、地続きなのに全くの別物になっている。オルガンが多いのもありますが陰鬱なボーカルもより深みを増していて、耽美な質感も出てきて後期Blond Redheadやゴスとも近い距離感かも。それこそ海外レビューではSpiderlandと引き合いに出されてましたが、個人的には全くの別物、完全に独自の世界観ですね。

 


 

 


関連記事

発端となったシーンについて。本当にこのシーン周辺が好きです・・・。

discography②

個人的に好きなポストハードコアを8枚挙げてきます。前にポストハードコアにのめり込んだときNOTEにざっと感想書いたんですがあれを解体して個別でやってく感じです。今回はマイベストでもあるUnwoundオリンピア周辺を。

 


Unwound - New Plastic Ideas(1994)

New Plastic Ideas | Unwound

強烈なフィードバックノイズに呑まれながら始まる名盤2nd。当時Sonic YouthFugaziの中間と言われてたバンドですが、Sonic Youth的な音色で聞かせるアンビエントに寄ったようなノイズでは無く、純粋に硬質なポストハードコアの後ろで轟音ノイズがひたすら埋め尽くしていて全てを飲み込むロック的カタルシス満載のアルバム。ポストハードコアの不協和音混じりながらフレーズの形もしっかりあり、それらが湾曲して各々のフレーズと繋ぎ合わせたような硬質な質感と、そしてこのジャンクロックやAmrepとかとも通じそうなノイズまみれの荒れた音が完璧に融合している。曲展開もドラマティックだしメロディーも聞きやすいしでエモからもアクセスできる初期Unwoundのポストハードコア大名盤。スクリーモしきらないシャウトみたいのも好きですね。「Enverope」とか暗黒エモとしても聞けなくもないと思う。

 

UnwoundUnwound(1995)

Unwound (Unwound album) - Wikipedia

初期作のコンピレーションで実際は92~93年頃の録音でほんとに初期の初期、この頃は今では知られるメンバーとも違うし彼らのアルバムの中でもとくにハードコア色が強いオリジナルのスタジオ盤とは少し違った立ち位置のアルバム。彼らはほとんどのアルバムがKill Rock Starsで実はライオットガールムーヴメントに囲まれたバンドだったんですが、その割にはかなりディスコーダント、オリンピア周辺の同シーンポストハードコアと言えばKarpやLyncですがUnwoundSonic Youthと対バンしたりBrond Redheadにメンバーが参加したりなど、割とノイズミュージック寄りのインディーバンドとして交流があったというか当時は知られてたんじゃないかと思う。

今作、先ほどのKill Rock Starsではなくサンディエゴのカオティック・ハードコアを代表するGravity Recordsよりリリースされててそれも割と納得するようなアルバムになってます。言われてみれば初期UnwoundのノイズまみれのハードコアはGravityのめちゃくちゃに自由なカオティック方面の派生として見えてくる線もある気がする。今作はジャスティンが全編に渡ってシャウトをしまくり全パート一つの和音になってしまったかのような音の塊とも言えるくぐもった爆音がノイズと共に疾走。エッジの効いたギターリフがガンガン飛んでくるとこも割とUnwoudのキャリアの中では珍しい気もする。

 

Unwound - Repetition(1996)

Repetition (Unwound album) - Wikipedia

4th。初期作と比べるとかなりスッキリした印象で、ローファイで全部飲み込む勢いだった初期のサウンドと比べると非常に分離が良いというか、住み分けされたアンサンブルがしっかり聴けてしかもめちゃくちゃ練られている。三人の独特なフレーズの絡み合いと言ったバンドの妙を聞かせた上で、それでもって今まで以上にスマートで硬質な不協和音ノイズパートを挿入するノイズロック~ポストパンクを行き来して中間を行ったようなサウンド。後期Unwoundの開幕であり代表作。比較的ポップでジャスティンの縦横無尽のギターワークはShellacやJesus Lizardと言ったアルビニ系列からFugaziの2nd~4th辺りのもう少しディスコーダントなポストハードコアともリンクしてきます。彼らを象徴する曲でもあり、循環するギターリフがあまりにもかっこよすぎる「Corpes Pose」は本当に名曲で、少し冷めたジャスティンのボーカルとリフとの掛け合い、反復するリズム隊全ての歯車が綺麗に噛み合っている。

 

Unwound - A Single History: 1991–1997(1999)

Amazon Music - UnwoundのA Single History: 1991-1997 - Amazon.co.jp

シングルコレクションということですが92年~97年の彼らの作品を集めているので割とそのままアルバムとして聞けてしまうくらい統一感があり、上記のRepetitionと並んでバンドのイメージを最も固めやすい名盤。とくに「Everything Is Weird」「MK Ultra」はジャスティンの不協和音ギターフレーズの繰り返しから轟音ノイズロックへと変化していく彼らの王道とも言える曲でCorpse Poseに負けず劣らずの名曲続き。「Crab Nebula」「Negated」等の初期のくぐもった録音とノイジーな轟音が混ざった鈍器のようなハードコアナンバーもあるし本当に全部かっこいい。アルバム間の隙間を埋めるどころか、これ自体が必聴ナンバーだらけである程度網羅できます。アルバム曲と被りもなし。とくに「Seen Not Heard」はWireJoy Divisionなどを思い出す瞬間もあったり「Plight」と言ったMinutemenのカバーもあるので、ポストパンクをよりハードにしたような聞き方もできるて、ミュータント的な進化をしていくバンドの中では今作はルーツも垣間見えてくるという意味でも聞きやすい。

 

Unwound - Challenge for a Civilized Society(1998)

Challenge for a Civilized Society.jpg

今まで短期間でスタジオに籠りライブのようにレコーディングしていた彼らが、今作はプロデュースを重視し時間をかけ音を練りあげたとのことでとにかくドラムの音が気持ちいいくらい前面に出てますね。そのおかげか今までと比べビート重視で聞けるようなイメージがあるし、アングラらしい籠った音質だった初期から比べるとかなり楽器の分離が良いというか、1曲目の「Date」でもバンドのイメージに合致した不協和音ノイズギターをかき鳴らしながらもそこには飲み込まれないドラムのビートが先行してきてえらくスタイリッシュです。「NO TECH!」もそうで性急で歯切れのいいリズムはポストパンクとの共通点も多々ある。「Side Effects Of Being Tired」は長尺ながらイントロから前作やSingle Historyともリンクしてくるジャスティンのギターワークとリズム隊の絡みが極上、イントロから声を上げたくなるくらいストレートにかっこいい硬質なポストハードコアですが、後半は次作、最終作「Leaves Turn Inside You」へと繋がってくるような実験的な展開を見せてきます。同じく長尺の最終曲「What Went Wrong」もじわじわと不穏な暗黒世界へバンドサウンドのみで到達しつつ、アウトロの静謐な闇はやはり次作を想起してしまう。ポストプロダクション的な要素とバンドのぶつかり合いが各々いいバランスで引っ張りあってる作品。

 

Unwound - Leaves Turn Inside You(2001)

解散前ラストアルバムで2年近くの月日をかけて作られた傑作。前作通りプロデュース重視、今作はほぼジャスティンが一年近くスタジオに入って作った曲郡がベースになってるようでそのおかげか暗黒ポストパンクをベースにノイズ~ドローンと言った今までに無かった実験的要素も強く、ポストハードコアの枠を超えてポストロックの枠で語られる名盤。とは言いつつ、後のポストロックを知ってるとポストロックとしてこれ聞くってのも全然しっくりこない、しかしそれでこそオリジネイターでありポストパンクの名盤としての貫禄もめちゃくちゃある。

結構Unwoundと言えばこれって方も多いと思いますが、正直今作を最初に聞くのは間違っているような気がして(例えるならRadioheadを聴くってなってBendsもOK Computerも聞かずにKid A行っちゃう感じ)、到達点及び特異点。このアルバム一枚で完結させるならいいと思いますが、初期のハードコア~ジャンクロック的な轟音がほぼ無いので順を追って聞いた自分は慣れるまで時間が掛かりました。ジャスティンのボーカルも陶酔感たっぷりでシャウトもほぼしなくなりぼんやりと焦点が合わない感じで、ただマスロック文脈でも語られることもある今作、この三人でしかできないでしょと言いたくなる捩れたフレーズが沢山飛び出してくる。轟音要素ない分隙間が見え、そういったバンドそのものの自然体のバンドアンサンブルで聞くという側面は今までで一番強いかも。そこをピックアップして聞くだけでも充分魅力的です。完全に理解しきることなんて一生できないんだろうなっていう底が知れないアルバムで、それぞれ方向性は違うにせよ、同じようにハードコアの延長からポストロック化していったJune of 44やTortoiseとの同時代性を感じる。

B面は意外とポストハードコアな曲も多いんですがそんな中でも作り込まれた左右チャンネルを行き来する多重コーラスのボーカルはサイケデリックな雰囲気を醸し出す「October All Over」とかはもうヤバイですね。ベストまである。今までバンドサウンドの裏から滲み出ていた不穏なダークさが完全に表に出てきて、幽玄な空気がバンドまるごとすっぽり飲み込んでしまったような作品。後半のアンビエンス漂いまくった実験的な「Radio Gra」から続く「Below the Salt」はイントロのドローン的なノイズとオルガンはもうアンビエントとしても聴けそうで、こっからスカスカなスロウコアへと移っていくのがもう聞いていて景色が見えてくるようだ。バンドは崩壊寸前、ライブツアー中に911が起き中断、そのまま解散してしまったとのことですが最終作にしてとんでもない名盤。

 

Lync - These Are Not Fall Colors(1994)

These Are Not Fall Colors | Lync

先に一度触れたLyncというバンドの1st。Unwoundが所属していたKill Rock Starsというレーベルはハードコアシーンと若干距離があり、所属していたバンドもライオットガールの中心となったBikini KillやSleater-Kinneyなどのパンク~グランジで語られるバンドが多く、またオリンピアと言えばもう一つKレコーズで有名でUSインディーの聖地でもあった。KのオーナーであるBeat Happeningのキャルヴィン・ジョンソンを筆頭にModest MouseやQuasiなどもこの辺で、レーベルは違えどUnwoundのレコーディングや機材の貸し出しなども彼が協力していたようなので決して無関係ではなく、この地域のインディーシーン総本山という感じでした。で同郷オリンピアのLyncは勿論そのシーン真っ只中から出てきたバンドで、当時Unwoundと交流も深くたった一枚を残して解散したわけですが、そんな一枚がとにかく最高のアルバム。上記のKレコーズから出ていてめちゃくちゃ録音の悪い不協和音ギターの上で余りにも親しみやすくポップなボーカルが乗っていて、丁度ポストハードコアとUSインディーの橋渡しになる最適解とも言える音楽性。メロディアスなハードコアってそれつまりエモなのではとなるのですが、94年ということでまだ前夜、その様式美にハマってない自然発生したエモ近隣シーン、いや、これも一つのエモと言える音でしょう。

 

Survival Knife - Survivalized(2014)

Unwound解散後10年以上経った2014年、バンド活動をやめていたジャスティンが再び音楽をやろうということで結成。でUnwoundのラストアルバム「Leaves Turn Inside You」で見せた実験性を推し進めるのではなく、純粋なパンクロックの衝動に回帰しかつてKill Rock SetarsのレーベルメイトであったBikini KillやSleatr-Kinneyにも通じるストレートでパンキッシュなロックアルバム。熱い。

とは言いつつ詰め込んだ曲展開はUnwoundをやはり連想しますね。ノイズロック要素を減らしてディスコーダントに突き詰めてったら・・・というこの路線も全然あったのかもと色々考えてしまうけど、それでも一度バンドをやめギターを手放し、大学へ入り音楽を引退したジャスティンが今になってこうやってまたバンドをやってくれることが嬉しくてしょうがない。そういった目線で聞くとすごく生き生きとしたアルバムに聞こえてくる。

 


 

 


関連記事

ここの上位互換です。

 

最高のインタビューを。他にもオフィシャルで全歴史をまとめたサイトもありますね。

 

discography①

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ちょいと前に出たギターマガジン4月号のグランジ・オルタナ特集を読み触発されたので、紹介されてた「91年の名盤選」にちょっと触れつつ、個人的に好きなアルバムやグランジというジャンルについて自分の認識を掘り下げます。

 


Nirvana - Nevermind(1991)

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語りつくされた名盤なのでとくに言うことないですが、いつ聞いてもとにかく曲が良すぎる・・・。Smells Like Teen Spiritはもちろんですが個人的に衝撃を受けたのはBreedで、洋楽初心者という状況でこれを聞き、メロコア的なポップさも無ければメタルやハードロックと言った大仰さもなくこんなにダーティに疾走してく洋楽あるんだ・・・と驚いた記憶が。グランジってよく「ハードロックでもパンクでもない音楽」と形容されるイメージありますが、素直にそれを体験していたのかもしれません。

今聞くとBleachと比べてかなりパンク寄りですね。元来ルーツを辿るとパール・ジャムサウンドガーデンなどのハードロック寄りのバンドがグランジ本来の特徴だと思うんですが、ニルヴァーナが一番売れグランジ=ニルヴァーナというイメージのままムーヴメントが広まり、世間的なイメージが書き換えられてしまった印象があります。

 

Peal Jam - Ten(1991)

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昔ちょっと苦手意識あったバンドで、よくグランジと言えばニルヴァーナと並んで語られますよね。てことで近い音だと思って聞くと全く感触が違いハードロック色が強く、ニールヤングとかのアメリカンなフォークロックをルーツとしてるというのもあり聞き方が全く異なるかと。というかコラボもしていたりグランジの始まりはニールヤングのライブ盤だという話もありますね。

もうちょっと土臭いイメージありましたが開幕「Once」「Even Flow」からめちゃくちゃハードなギターが炸裂しまくってこんな重かったっけ?て思いつつカラッとしたハードロックで今の僕には最高のアルバムかもしれません・・・。B面落ち着いてくるところもパワフルなリフで引っ張ってく感じはかなり聞きやすいです。サウンドガーデンとかアリス・イン・チェインズとかのドロついたヘヴィネスとした感じもないですね。昔は多分ニルヴァーナのパンキッシュさが好きでそのイメージに引っ張られちゃってたのかな・・・。

 

Soundgarden - Badmotorfinger(1991)

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グランジバンドのルーツやインタビューを漁るとブラック・サバスをルーツとして挙げてることが多く、グランジというジャンルで最も影響力のあったメルヴィンズがもろサバスフォロワーというのもありますが、僕が最初にブラック・サバスと関連付けたきっかけはこのバンドでした。ボーカルはサバスってよりツェッペリンロバート・プラントを想起させつつもう少しそれを荒々しくしたようなとこがありますが、「Outshined」のドロドロとした暗黒ギターリフは最初これサバスのInto the Voidや4thのハードロック色強くなってきた頃を強烈にフラッシュバックしましたね。

 

Smashing Pumpkins - Gish(1991)

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そもそもグランジじゃなくね?て思うんですが、有名なエピソードですがニルヴァーナと発売時期が被ったせいで関連付けられてしまった印象があります。グランジをハードロック~メタルブームが通過したあとのアメリカンロックという見方をすると当てはまりませんが、ニルヴァーナの項目であったパンクでもハードロックでもないサウンドという意味では割と聞けるかも。ピンク・フロイドやラッシュを度々フェイバリットに上げていたりキュアーやバウハウスを敬愛してるところから、彼ら特融の透明感やちょっとサイケな雰囲気の出で立ちが見えてくる気がします。

とは言いつつも僕は最初何も知らず普通にグランジだと思って聞いていたし、めちゃくちゃ疾走感があり尚且つほかのグランジバンドのマッチョさがない耽美さに惹かれてましたね。あとリフがこの頃からめちゃくちゃかっこいい。てか上げた4つのバンド全部キャッチーなギターリフを繰り返すタイプの名曲が入ってるのでグランジってこの時代のリフがかっこよくて重い音楽のことを言うもんだと思っちゃってました。

 

Bikini Kill - Pussy Whipped(1993)

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ライオットガールをグランジムーヴメントに入れていいのかってとこではありますが、オリンピアということでグランジの中心となったシアトルの近所ですし、結構バンド間の交流も深く、というかカートの元カノだしね。ただ社会的な側面が強い分サウンドだけで語るのは微妙かなとも思うんですが、とにかく破壊的なパンクロックで、ハードコアにもメロコアにも行かずストレートにパンクをかき鳴らし叫びをあげる個人的に大好きなバンドです。ネヴァーマインド聞いてグランジに興味を持った人はセットで語れがちなパールジャムサウンドガーデンを聞くんじゃなく、ビキニキル聞いた方が結構しっくりくると思います。ライオットガールムーヴメントそのものを象徴する名曲「Rabel Girl」収録。

 

Black Sabbath

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グランジバンドじゃないのにここ入れるといろんな人に怒られそうですが、僕がグランジバンドを聞いてて求めてる部分や一番引かれる部分を追求してくと最終的にオジー期のサバスに辿り着きます。グランジは当時のメタルやハードロックを淘汰したと言われますが、サバスやツェッペリンエアロスミスなどの70年代のハードロックは結構直接のフォロワーというか、カートコバーンもリスペクトを語ってるイメージありますね。

でこの頃のサバスはヘヴィ・サイケ・ブルースとも言えるとにかくギターリフを繰り返す作風はキャッチーなフレーズながらも陰を落としたおどろおどろしさがある初期の1st~2ndの初期の名曲群はもろに想起しますし、4thに関してはツェッペリンとかにも接近したようなパワフルな面もルーツとして聞けるんじゃないかなぁと。

 

Screaming Trees - Sweet Oblivion(1992)

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元々80年代中期から活動してきたのでかなり古参、ジョシュ・オムQOTSAから辿ってくる人が多い印象があります。60年代のサイケデリックロック~ブルースの影響が強くそれらをハードロック通過後の音で再度やっているというような質感でラフなパールジャムサウンドガーデンと言った聞き方もできるかなと。

Meat Puppets - II(1984)

Meat Puppets - Too High To Die(1994)

Meat Puppets – 'Meat Puppets II': Round 105 – Rob's choice – Devon Record  Club Too High To Die/Meat Puppets収録曲・試聴・音楽ダウンロード 【mysound】

そしてミートパペッツ、カート・コバーンがカバーしていたことで知られますが全然グランジバンドというわけではないですね。しかしグランジ勢に大きな影響を与えたというバンドで80年代はブラック・フラッグ率いるSSTでハードコアを基調に徐々にサイケ~カントリーの影響が強くなり、90年代はグランジに合わせてアメリカンロック化していきます。

 

上記ミート・パペッツ、スクリーミング・トゥリーズどちらもも80年代にSSTからアルバムを出していて、ハードコアの影響がまだ強いんですがそんな中でも急にアコースティック路線な曲が入ってきたりこの頃から後のルーツロック回帰を思わせる要素が入ってて、同時期にDischordやワシントンDCで活動していたハードコアバンドとはかなり色が違います。90年代、彼らはワイヤーやダブの影響が強くなって硬質なポストハードコアに変化しいくのに対し、グランジアメリカンなルーツロックな方向へ舵を切ってくその原初のようなものが既に出てるんですよね。この辺のポストハードコアとグランジって対極だよなぁというのと、これらを「オルタナ」の枠に入れて語るか語るまいかって結構人によって個性出ると思っていて話してて楽しい部分ですね。

 

Red Red Meat - Jimmy Wine Majestic(1994)

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こちらもシアトルのバンドでサブポップから出ていてジャケもグランジっぽいですが、実際には全く違ったサウンドで成功を収めたというバンドです。ブルースやカントリーと言ったアメリカのルーツロックの要素を背景としていて、スクリーミング・トゥリーズ後期からハードロック色を薄めもう少しカントリーとかに接近したらこうなる気がします。時折ヘヴィなギターが挿入されるのはやっぱり時代でしょうか、でもこのバランスがめちゃくちゃ好きで、グランジサウンドのままペイヴメントのようなインディーロックをやっていたヘリウムとか、あと結構セバドーとかと並べても聞ける感じがします。

 

Seaweed - Four(1993)

Four

当時グランジが下火になってきた時代にシアトル発、サブポップ産のグランジバンドという推され方をしてしまったせいでイマイチ正当に評価されなかった・・・とレコ屋の解説記事で読んだのですが、実際に聞いてみると確かにグランジにしてはポストハードコアとかのが近い気がします。とはいいつつハードコアによくある硬質で金属的な音ではなく、確かにグランジ的なパワフルなサウンドだったりはするんですけどね、結構メロディアスだし。個人的にはSAMIAMとかのが近い気が・・・。そして割と近い境遇のバンドとしてこちら

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サニーデイリアルエステイトを思い出します。エモの大御所ですがシーウィードと同じく「シアトル発 サブポップ産」のバンドで、ただグランジムーヴメントに括られることはなくむしろエモの萌芽として語り継がれることになったわけですが、シアトルのバンドとして聞いてみるとニルヴァーナ以降の空気がかなりあってハードコア→ポストハードコア→エモという流れとはちょっと違う気がします。ただボーカルの歌唱法やメロディーに関しては完全に後世のエモに影響を与えていて、エモってボーカルの印象というかボーカルにかなり趣を置いてるとこあるよなと少し考えたりします。

 

終わりです。ギタマガにあった向井秀徳×吉野寿オルタナ談義が「オルタナティブ」という内容で始まりつつもグランジの話になったとき二人とも「通ってない」と言ったのが面白く、そのままハスカー・ドゥやダイナソージュニア、ソニック・ユースの話題で盛り上がるのですが、これで一般的に有名なグランジオルタナティブの距離感について色々思うことがありました。

そんな中、僕は「こういう感じで聞いてます」「この辺のアルバムが好きです」というのをひたすらまとめたくなった・・・という記事になります。

 


関連記事

先日公開され、個人的にギタマガ読んだ人は是非セットでと言いたくなる程の記事でした。というかこれに触発されました。

 

そしてこの辺、グランジというジャンルがシアトル、そしてサブポップから広まったということや、広まる前のムーヴメントの核となったグリーン・リヴァー、メルヴィンズ、ブラック・フラッグ等の説明をとくにしないで進めてしまいましたが、このサイトが非常にわかりやすいです。是非。

こちら一つの記事で大まかなディスコグラフィを網羅していてディスクガイドとして非常にわかりやすいですね。

 

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記録シリーズ:Slintから辿るルイビルのポストロック

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Slint、ケンタッキー州ルイビルのバンドにしてポストロック〜マスロックの元祖やスロウコア、ハードコア由来の音楽ジャンルに多大な影響を及ぼしたバンドです。ルイビル周辺のポストハードコアが僕は一番好きなのですが、この辺のシーンを掘るとポストロックのルーツがハードコアというのがどんどん輪郭が見えてくるというかわかってくるようなとこがあり、その中心となるアルバムが2ndのSpiderland、ついこの前30周年ということで海外のインタビューがちょっと話題になり読んでみたところ個人的に熱が再燃。

その流れで海外メディアのインタビュー記事を漁っていたら色々新しい情報もあったのでSlintやメンバーのその後、周辺シーンについて各アルバム自分の感想を書いておこうと思います。

 


 

Slint - Tweez(1989)

TWEEZ (LP)/SLINT/スリント/ポスト・ロック始祖1stアルバム|ROCK / POPS /  INDIE|ディスクユニオン・オンラインショップ|diskunion.net

アルビニ録音。Spiderlandとは大分毛色が違うアルバムで、89年ということでポストハードコア前夜感が強いですね。FugaziShellacと同じく既存のハードコアサウンドからの脱却を図ったようにも感じますし、変則的なリフが入り乱れ1曲1曲は短いんですが何度も展開していくところはちょっとマスロックっぽいかも。MiniutemenやThis Heatと言ったポストパンクからの流れでも聞けそうですがとにかくノイジーでこのジャンク感はアルビニ率いたBig BlackRapemanの音色を思い出します。

ちなみにベーシストだったイーサン・バックラーは今作で脱退。彼が作曲の主体となっていたらしく2ndと毛色が違うのは彼の影響が大きかったのでしょう。

 

Slint - Spiderland(1991)

2nd。スロウコアとも言える最小限に抑えられた静謐な演奏にスポークンワーズなボーカルを乗せ、不安定なのか規則的なのかが曖昧な揺れるギターをタイトなドラムが繋ぎとめループしていきます。いつ破裂するかわからない不穏な緊張感の中このフレーズの塊を繰り返しながらギターをバーストさせ轟音で飲み込んでいく、という手法は同じくルイビルのポストロックRodanやJune of 44にも繋がる方法で、Mogwaiなどの極端な静→道の展開を見せカタルシスを得るポストロックのルーツとなるんですが、手法自体は継承されてもフォロワーと呼ばれるバンド達からは感じることができない陰鬱さや張り詰めた緊張感はやはり凄まじいです。当時20歳なるかならないかの少年達がそれぞれの感性で作り上げたオリジネイター、原初とも言える"生の音"の貫禄がすごい。

発売時には既に解散、リリース時もインタビューなどのメディアでの露出を避けていたようで、90年代は本当に未発見のオーパーツとも言える作品だったようです。今でこそ伝説として語り継がれていますが、これは実際にMogwaiがヒットを飛ばしたからこそ彼らがルーツとして名前を挙げたからのようで、このハードコアともポストロックともとれない音のアンダーグラウンドで蠢いてる感じは当時発見されたときはすごかっただろうなと…。しかもメンバーのデヴィッド・パホはSlint解散後のジョン・マッケンタイア率いるTortoiseに合流するので、まさしくポストロックブームの大元とも言えます。

 

Slint - Slint(1994)

Amazon.co.jp: Slint: 音楽

解散後の94年リリース、未発表曲ですが録音は89年ということでTweez~Spiderlandを繋ぐシングルで、Tweezのジャンクな変則ポストハードコア~Spiderlandのポストロックへと至る中間という感じで、緊張感溢れるインストマスロックとも言える「Glenn」「Rhoda」の2曲入り。Spiderland程スロウではなく淡々と闇に潜っていくようなループからギターが炸裂していきます。

元々「Nosferatu Man」「Washer」等Spiderlandの名曲群もインストとして作ったデモ版がデラックスエディションにあるんですが、Slintがマスロックの元祖として評価されるのがこの辺聞いてるとわかる気がしますね。

 
Rodan / June of 44 / Shipping News

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ルイビルのポストハードコアという観点で語るのなら絶対に外すことのできない重要バンド、それがRodanで1st発売時は1994年とSlintからちょっと経ちますが、メンバーも同郷ということでSlint解散後もRodanのメンバーと幾度となく交流があります。

RodanはSpiderlandで定義した"遅いハードコア"とも言えるスロウコアと溶け合ったあの音楽性を更に独自解釈で拡大、後のポストロックに大きな影響を及ぼします。そしてRodanのメンバーが解散後に組んだJune of 44やRachel’sにShipping News、同じくメンバーであり後にSSWとなるTara Jane O'Neilと彼女のバンドであるThe Sonora Pine、Retsin、全てがルイビルを中心に派生していきます。この辺のメンバーの変遷や音楽性を辿るのが非常に面白く、僕がこの辺のジャンルを好きになったきっかけでもあり別記事を書いてますのでよろしければ。

 

The For Carnation - The For Carnation(2000)

The For Carnation

そしてThe For Carnation、スロウコアとして有名ですがSlintのフロントマンであったブライアン・マクマハンが解散後に組んだバンドで唯一のフルアルバム。Spiderlandの路線を更にそぎ落とし、深く沈み込むような陰鬱な世界観を推し進め、ギターの歪みは無くなりダブ要素も取り入れよりリズムを主体としループしていきます。しかし時折挿入される最小限のギターフレーズや囁くようなボーカルを聞いてるとこの静寂っぷりはやっぱりマクマハンだな~と思うわけですが、Spiderlandで彼が何をしたかったのかがぼんやり見えてくるような気もしてきます。

 

The For Carnation - Promised Works

Amazon Music - The For CarnationのPromised Works - Amazon.co.jp

アルバムではなく間で出した初期EPをまとめたコンピレーションなのですが、個人的に大好きな一枚。スロウコアというよりもう弾き語りの曲もあるんですが、ギターの音も最小限でありマクマハンのボーカルもいつものごとく消え入ってしまいそうな繊細なもの・・・なんですが、「On The Swing」では歌心に溢れててすごく風通しがいいんですよ。SlintからThe For Carnationのキャリアの中でこんなにラフでポップな歌を聞かせたのはここくらいじゃないでしょうが。A面は他の曲もインディーロックとして聞けそうな心地良さがあります。

Spiderlandを作ったとき、彼らはフォークやカントリーと言ったアメリカのルーツミュージック的なSSWをよく聞いていたとインタビューで見ましたが、そういう色が濃く出てるのかもしれません。そもそもSlint解散後にあのSpiderlandの水没したジャケットを撮影したウィル・オーダムも元々はそういったSSWで、サポートメンバーとして参加してたこともあるんですよね。色々繋がってくる・・・。

 

Crain - Speed(1992)

80年代後期~90年代に掛けて活動していたルイビルのポストハードコアバンドで、メンバーのドリュー・ダニエルは後にビョークとの共演やIDMで知られるMatmosになります。全くの別ジャンルですが彼のルーツはここで、June of 44の最新作ではMatmosとしてマッケンタイアと共に作品に参加していて最初はなんでMatmos?と思ってたんですが、Rodanのメンバーとは高校時代からの付き合いでとくに中心人物であるジェフ・ミューラーとジェイソン・ノーブルとはかなり古い仲のよう。

でCrain、コンピレーション一枚で長らくCD化もされてなかったようですが、実験的要素が薄く代わりにバンドとしての楽器のぶつかり合いに特化したBastroと言った感じでしょうか。とにかくハードだし高速だしで、若干マスっぽい色もある鋭利なギターフレーズが飛散しぶつかり合いながらもかなりキッチリと音が敷き詰められていて、めちゃくちゃスタイリッシュなポストハードコアを聞かせてくれますが超かっこいいです。この中では最もパンキッシュかも。そして名曲「Kneel」はまさしくルイビルとも言える緊張感全開の曲でSlintやJune of 44との共鳴を強く感じます。

 

The Telephon Man - The Telephone Man 1992-1994

Telephone Man : The Telephone Man 1992-1994 [CD]

90年代初頭にルイビルで活動してたポストロックバンドということですが当時カセットのみのリリースをまとめた編集版。Temporary Residenceによる再発でCrainもここのレーベルだしこのレーベル自体が割とこの辺のシーン通過後のポストロックをかなり扱っていて直系でもあります。

そして時期が92-94ということでもろSpiderlandからRodanのRustyが出る期間であり、当時メンバー間で交流があったかどうかは不明ですが音楽性もまんまその辺と呼応したハードコア由来のスロウコア~スポークンワーズを乗せバーストしていくといういかにもなルイビルな音です。こちらは割とエモともリンクしそうな曲もあったり静寂パートのないヘヴィなスロウコアと言った曲もありA Minor Forest的だったり、編集版だけあってバラエティに富んでます。そしてとある曲ではもろRodanのBible Silver CornerやExoskeltonと同じフレーズが登場してきて、Telephon Manはメンバーが美術系の学校出身らしいですがRodanのメンバーも同じく美術系の学校出身で、実際どういった繋がりがあったのか不明ですが何かしら交流はあったんじゃないかと思います。音楽性のみで聴いてもSlintから辿ってくならRodanやTelephon Man辺りが一番聞きやすいかも。

 

Evergreen - Evergreen(2003)

SlintのドラマーでありSpiderlandではDon Amanでボーカルとギターを担当したブリット・ウォルフォードが参加したルイビルのバンドで93年作。彼は同時期にThe Breedersにも参加してますね。ポストハードコアというよりはインディーロックやロックンロールという言葉を使いたくなるくらい聞きやすく、LastFMのタグではemoに分類されていて個人的にかなり好きなバンドです。純粋にパンクロックや80sのハードコア直系として聞けるような熱とキャッチーさがありますが所々不協和音が混じる緊張感もあり、「Glass Highway」等スローテンポの曲ではその辺のバランス感が丁度いいです。

 

 

Tortoise

TORTOISE / Millions Now Living Will Never Die (LP) - FILE-UNDER RECORDS トータス、アルバム『TNT』全曲再現ライヴのフルセットライヴ映像64分を公開 - amass

シカゴ音響派を代表するバンドですが、ポストロックシーンを漁る上では欠かせないですね。Bastroのジョン・マッケンタイア、そして代表作でもある上記の2枚(Millions Now Living Will Never Die / TNT)ではSlintのデヴィッド・パホが参加。そしてTortoiseはシカゴのジャズシーンとも絡みがありまた広がっていくのですが、その辺についてはWITHOUT SOUNDSの記事が非常に参考になります。そもそもここでのバンドメンバーの繋がりやシーン自体を一個にまとめたいというインスピレーションの元の一つでもありますし、シカゴ音響派について何一つ知らなくてもその変遷や音楽性は読み物としても非常に楽しめると思うので是非とも。また同ブログ内でマッケンタイア参加のSea And Cakeについても特集あり(こちらも本当にオススメ)。

 

Tortoise - Tortoise(1994)

Tortoiseの中では余り語られない1stアルバムですが実はSlintを軸としたルイビルの系譜として漁っていくのなら絶対に外せない、むしろ2nd以降のポストロックを代表する名盤達の更に奥に、こんなにも直球でスロウコアをやってたルーツがあったのかと驚いてしまったアルバム。Slintのパホが参加するのは2nd以降、それこそ上記の2枚からなんですが、まだ在籍してなかったこの1stが最もSlint的で2曲目の「Night Aire」は硬質で隙間だらけのドラムの音やスポークンワーズ、静寂から間をとって曲に深みを持たせてくるところも完全に直系。Slintファンなら絶対に好きになる音だと思うし、こっからパホ加入も納得どころかむしろストレートすぎて面白いです。しかもバンドのルーツ的にもジャズの色が既にあって、まだメインではないんですが隙間の多いスロウコアにそういった要素が付け加えてるだけでもアレンジとしてすごく良い、このまま2nd以降の路線に開花するのも頷けるような種まきがされてるというか、ちゃんと通じるのにこんなにも陰鬱なスロウコアなのも良い。こんな記事を書くくらい自分がそういう趣味ってのもありますが、Tortoiseの作品では最も好きなアルバムです。

 

Aerial M / Papa M / Pajo

Aerial M – Aerial M (1997, Card Sleeve, CD) - Discogs Amazon Music - Pajoの1968 - Amazon.co.jp

SlintのギタリストでありTortoiseにも参加したデヴィッド・パホのソロはまさしくSlintもTortoiseも感じることができるシカゴ~ルイビル両方を繋ぐ架け橋とも言える、そして尚且つ彼のラフな雰囲気も感じることができてインディーロックの軸でも聞けるのでここも堀甲斐がある。割と多作で名義もいくつかあり時期や音楽性のスタイルで使い分けてるようです。Aerial Mではアメリカーナな弾き語りをひたすら音響派の衣で覆ったフォーキーな質感のポストロックと言えるものになっていて、その後外郭を取っ払い内側を曝け出したであろうPajo名義のアルバムはもろにSSW的な作風へ回帰。打ち込み要素もあるアシッドフォークから純粋な弾き語りまであり、Aerial MはSlintのスロウコアな側面と呼応して聞ける部分もあるかも。

 

King Kong

  

そしてKing Kong、Slint結成時1stのベーシストだったイーサン・バックラーがTweezのアルビニ録音が気に入らず脱退、その後こちらをメインに活動していきます。ハードコア要素はほぼないので関連作としては微妙ですが、レゲエやファンクの要素も取り入れたインディーロックと言った感じでチープな録音やローファイな質感から黒さはあまりなく独特の緩い雰囲気があってローファイさ加減が良い。録音には普通にSlintの面々が参加してるので仲違いではなかったようだし、ここでもパホが参加していて彼の柱っぷりにも驚きます。Slint以降の他メンバーと比べるとKing Kongはポストロック化の一端を担う感じではなく、純粋に好きな音をそのまんま鳴らしてるって雰囲気が強くて最もラフで聞けますね。

 

Squirrel Bait

 

Slintのメンバーでギターとボーカルを担当していたブライアン・マクマハン、ドラマーのブリット・ウォルフォードがかつて在籍していたバンドで、Spiderlandを作る際はシカゴに移住し制作の中心となった二人なのでSlint直球でのルーツとも言えるバンドです。もろハードコアですが、1st2ndと共にメロディック系の流れでも全然聴けるというか85年にしてはかなり硬質、こんだけギターが分厚くてメロディーも強かったらあまり何も考えず純粋に心から滾るような熱さがある。普通にDCハードコアとか、キャッチーというかメロディでも聞けるという意味ではGorilla Biscuitsとか元祖なイメージありますが近い感覚で聞けてしまうかと。ギターリフの硬質な鋭角っぷりはしっかりと後の彼らのポストハードコア系譜にも通じると思うし、とにかく少年たちが突っ走ってる感がすごくいい作品群です。

そして驚きなのは他のメンバーで、なんと後のBastro~Gastr Del Solで有名なデヴィッド・グラブスがギターとして参加していてつまり後のSlint、そしてGastr Del SolTortoiseといったシカゴ音響派等、ポストロックの代表的バンドを辿っていくと最終的にここに行き着くという。ルイビルだけでなくシカゴも巻き込んで、このバンドを聞いただけではとても想像できませんが全てがここに戻ってくる。ポストロックの奥にはハードコアがいるという中心、爆心地がまさにここであり、今回触れてるバンド群全てのルーツとも言えますね。

 

Bastro - Sing The Troubled Beast / Diablo Guapo(2005)

Sing The Troubled Beast +Basto Diablo Guapo : Bastro | HMV&BOOKS online -  DC290

そしてBastro、先程のSquirrel Baitのギタリストであったデヴィッド・グラブスが結成したバンドで後にTortoiseやSea And Cakeで知られるジョン・マッケンタイアと合流。トリオとして以後発表された1989年〜1991年の2枚のアルバムのコンピレーションがこちらです。一応ポストハードコアになるんでしょうけど、Dischordとかの当時のハードコアと並べて聴いてもかなり異質な、まさにエモでも激情でもない後にマス~ポストロックへと向かっていくようなTouch and Go系譜のポストハードコアの中でもミュータントとも言える凄まじいバンド。

というよりまずジョン・マッケンタイアが本当にTortoiseと同一人物?と思ってしまう程ハードなドラムを叩いていてこれだけでも聞く価値あり。高速で繰り返されるギターリフも凄まじく、このギターとバチバチにやり合う、まさしくフレーズの塊とも言えるテクニカルなドラムの絡み合いは既にマスロックのルーツとしての説得力がある。そして混沌とも言えるジャンクなノイズギターがこんだけ乗ってるのにどこかスッキリとした音像で爆走してくバンドメンバーのアンサンブルも絶妙、それだけじゃなく後期の曲にはオルガンがメインのインストにも近い超絶不穏な曲やノイズワークをメインとしたインスト等、この頃から既に実験的な要素もあってバンドのエネルギーに満ち溢れたあまりにもすごすぎる楽曲群。これらがまとめられた最強のコンピレーションだしライナーノーツにはルイビルやシカゴのシーンにもしっかり触れられているのでマストでしょう。

解散後フロントマンのデヴィッド・グラヴスはシカゴへ向かいGastr Del Solを開始、ジム・オルークと組んでマッケンタイアも度々合流していきますが、"ToritoiseやGaster Del Solのメンバーがかつて組んでいたハードコアバンド"では決して終わらせることができない実験性も伴った暗黒ノイズロック~ポストハードコアの大名盤です。サブスクには無いですがSpiderlandと並んで重要作品。

 

Bastro - Antlers(2005)

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ライブ盤なんですがアルバム収録のない曲の集まりで、1曲目の「Antlers」からBastroらしからぬゆったりとしたスローペースでじわじわと不穏に迫ってくる感じはSlintやJune of 44等の他のルイビルのバンドとも共鳴してくる。そして中盤に前作を想起する強烈なハードコアナンバーを挟み後半また化けます。「ライブ」というより各パートの絡みによる「音の実験」とも言えるような要素がかなり強く出てきて、終盤2曲に関してはもうGastr Del Solの原型と言っても差し支えなくなっており、バンドサウンドに囚われずより表現の幅を広げるためにああなっていったんだろうなぁと。

 

Gastr Del Sol

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そしてこちら、デヴィッド・グラヴスがBastro以降に辿り着く先でジム・オルークと組みポストロックを代表するバンド。あまりにも実験的でアンビエント的な効果音や空間に漂うサウンドが多く、ルイビルでも無ければハードコア要素も無いシカゴ音響派なので上記の作品群とは大分毛色が違いますが、Bastroのその後、そしてポストロックシーンを辿る場合非常に重要なバンドです。

 


関連記事

Slintと並び名前を挙げたRodanについて。共通項がめちゃくちゃあり、正直SlintよりRodanの方がとっつきやすいのではと思っているので是非とも。 

 

ジョン・マッケンタイア率いるTortoiseについてですが、バンドやシーンのことについては勿論、切り口も非常に面白く間違いないです。

 

 ざっくりとディスコグラフィを辿りたい方はこちら。

 

 参考資料にさせて頂いた30周年インタビュー。英語ですが各楽曲の解説など非常に濃厚です。

 


 

以上です。元々はRodanとJune of 44ってボーカル一緒だったの?というのを知り、調べてく内にSlintと同郷、そしてBasroが深く関わっていたり、メンバーが合流しTortoiseに繋がってきたり、Shipping Newsも元はRodanだったり・・・とどんどん点と点が繋がってくる感じが非常に面白くなってしまい、そのアーカイブを残しておきたいなぁという感じで書きました。ポストロックと言いつつかなり雑他になってしまいましたが、Slintっぽい音を求めて聞くのならRodan~June of 44周辺を聴くのが一番いいかもしれません。

 

そしてルイビルという地からどうしてここまで人脈が広がっていったのか・・・というのが非常に気になるとこですが、どうやらインディーバンド向けのハコが少なくシェアハウスなどで演奏していたため共通のメンバーが顔を合わせることが多かったようです。あとは80年代後期~90年代初頭のルイビルは大学にカレッジラジオが無かったこと、セッションミュージシャンが少なかったことから、外部地域の音楽性を取り入れることが少なく、Rodanのジェフ・ミューラー曰く「孤島にいるような感覚だった」とのこと。

それにより多数のバンドが派生~お互いに影響を受け合っていたのかなぁと思います。スティーヴ・アルビニがSlintとRodanについて「ルイビルという独特のバックグラウンドが無ければあの音楽性は生まれなかった」と言っていたのもそういった要素からかと。

 

以上でした。簡易ディスクガイド的な感覚で楽しんでもらえれば幸いです。

 

 

20210426 slak / Gouge Away / Logh

slak

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最近知ってよく聞いてたやつを並べます。slakという東京で活動するインディーズバンドでたまたま好きなバンドやらジャンルやらで検索かけてたらヒットしたのですが、これがかなりツボでした。

2曲入りシングル。sassya-やロクトシチとスプリットを出したりもしてて完全にその辺のポストハードコアシーンとリンクしてきますね。ギターリフぶん回してく感じはBluetipやFaraquetと言った90sポストハードコアを思い出すんですがあの辺のDischord関連と比べるともうちょっと退廃的な音で、一度静寂を挟んでから延々とギターリフを循環させていくアウトロがめちゃくちゃ好きです。個人的にHooverとかの暗黒世界とも通じるとこあると思います。

で2曲目の「cares」は更に不穏さを増してて個人的にLowercaseとかのスロウコア~ポストハードコアなバンドも思い出したりするし、ただLowercase程Slintとかそっちには寄せないであくまでディスコーダントなサウンド+歌メロは結構エモとかにも通じる感じで1曲目「indecision」と同じく、後半で静寂を一度挟むことも相まってかなりドラマティックです。Bastroのライブ盤収録の「Antlers」とかをめちゃくちゃ思い出す名曲。

ハードコア出自バンドが静寂パートで見せる冷たい質感が個人的に大好きなんですがそこからじわじわと熱を上げていくアウトロがどちらもかなりツボで、わかりやすくギアを上げるというよりは静パートを挟むことで一度リセットしてループする中でいつの間にかぶち上がっている温度感と言いますか、ライブとかで聞いたらもう一生続けて欲しいだろうなと思います。しかも序盤だけ聞くとそこまで長尺な曲には思えない感じからここに到達していくのがたまらない・・・。

 

Gouge Away - Burnt Sugar(2018)

BURNT SUGAR/GOUGE AWAY/ボーナストラック収録|PUNK|ディスクユニオン・オンラインショップ|diskunion.net

ディスクユニオン新宿パンク館でレコメンドされていたので気になったんですよね。なんかJesus LizardとかUnwoundとかが引き合いに出されていてその二つとも勿論大好きというかもうフェイバリットなので期待しかなく、聞いたんですが本当にその頃の硬質ながらジャンクで疾走してく感じは衝動まみれで最高でした。というか本当に2018年?という感じで先の二つを挙げるのも非常に納得というか、ただそれらより更にエネルギッシュに爆走している感じがあり、ボーカルの絶叫具合からもちょっとカオティック通過した音だと思います。しかも00年代以降ではなく90年台のLovittとかあの辺のインディーっぽい荒々しさが濃い頃を思い出すのがまた最高。

 

Logh - Every Time A Bell Rings An Angel Gets His Wings(2002)

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スウェーデンのバンドで完全に旧譜ですがこれもめちゃくちゃハマってます。仄暗いサッドコア/スロウコアという感じでギターの質感とかはかなり冷たくてまさしく冬にピッタリのサウンド。今はちょっと季節外れですが、スロウコアだからこそ音の隙間のわかるサウンド+こういう冷ややかな淡々としたギターの質感ってのがもうめちゃくちゃに染みます。

で憂いを帯びたメロディーはちょっとエモいというか徐々に徐々に暖めていくような、スロウコア特有のスカスカだからこそ「一人で聞いてる感じ」の中で寄り添ってくれるような相反した感覚がたまらないです。あとは「The Passage」という曲での淡々としたミニマルだからこそ感じるドラムのグルーヴ感ってのもやっぱこの手のサッドコアからしか接種できない成分でこれも最高。淡々としたものだけではなく結構ギターの音色とか揺らぎを重視してスケール観広げてく曲とかもあってポストロックにも通じると思います。やっぱこういうの好きだな~。

 

 

最後に超かっこいいバンドもう一個貼って終わり。

20210329 black midi - John L

色々新譜が出てるのを適当に漁りつつblack midi新譜ということで。出すんだ。この前BCNRもShameもかなり好きだったしサウスロンドン熱いですね。


black midi、最初アルバム出したときも各所で話題になって来日行った知人も多かったし、僕はと言うと実はポストパンクもマスロックも好きだしよく比較されてたnhhmbaseZAZEN BOYSも好きだったのに何故かしっくり来ず・・・ということで葛藤していたバンドなのですが、新譜聞いてドハマリしました。2nd発売はもうちょっと先で先行シングルですね。

ギターリフ一本に合わせた各パートがフレーズをぶつけ合いときには強烈にユニゾンしながら、black midi得意の無機質なノイズと一体化したような強烈な音像で突っ走っていきます。どこへ向かっていくのかわからない音楽であり、あらゆる文脈を断ち切ったような・・・

とは言いつつ、おそらくZAZEN BOYSファンなら一発でHIMITSU GIRL'S TOP SECLETを思い出すこと間違いなし、だと思います。ライブバージョンの方とかもろでギターが一音繰り返しながら無に潜っていってその後拡大、という展開までそっくりだし、展開どころかリフの置き方やドラムの強調の仕方まで・・・

イントロはTaratine(ZAZEN BOYS4)っぽいし、途中でRiff man(ZAZEN BOYS3)のアルバム収録版にある一度演奏をストップ → 打ち鳴らすリフとリフ のくだりを思い出す箇所があったり、というか3分頃からの展開はRiff Manのライブバージョンも強烈に思い出します。

もう似てる似てないとかそういうレベルじゃないだろ・・・という気持ちになりつつも、それでドハマリしてしまう自分に「これはblack midiを好きになったというよりZAZEN BOYSが恋しくなってるだけなんじゃないか」という気持ちにもなり、なんだか申し訳ない・・・。

black midi、完全にオリジナルな音楽をやってる集団ということでサウスロンドンから広がった新世代の旗手なので、好きなバンド同士が繋がってく感じがしてすごく嬉しいんですよね。ZAZEN BOYSは2015年からコロナ禍までは毎年ワンマン通っていて自分の中でかなり補正かかっちゃってて、知らない人より無駄に関連付けちゃってる・・・てのはあると思いますが、どちらかのファンでもう一方と体験してないという方は是非とも。

Schlagenheim - Album by black midi | Spotify

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black midi、当時完全に好きなタイプなのにハマれなかったのなんでだろうと思い、とにかく聞きまくった覚えがあります。こういうのは感覚的なものの好みなので自分でもその理由ってのはわからないですね。マスロック文脈で語るにはハードコアとかポストロックとかの流れを汲んでるようにあまり思えず、クリムゾン・・・は影響下が多すぎてこの手の音鳴らしてたら全部関連付けられちゃいますよね。

Lightning Boltっぽいなと言っていた知人に結構納得しつつ、というかもう〇〇っぽいとか〇〇に影響を受けたとかのロック雑誌ありがちな評をすること自体がもうお門違いというか、バンド名が日本のインターネット文化が由来だったり音楽と関連するあらゆるカルチャーから影響を受けた人達から出てくる素の音だと思います。まさにロック以降、"ポスト"ロック的というか、いや音楽的にはポストロックじゃないんですけどね、そう考えるとポストパンクってのは本当にしっくりきますね。2nd楽しみだな。

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