個人的に好きなポストハードコアを8枚挙げてきます。前にポストハードコアにのめり込んだときNOTEにざっと感想書いたんですがあれを解体して個別でやってく感じです、今回はUnwoundとオリンピア周辺+αを。
Unwound - New Plastic Ideas(1994)
強烈なフィードバックノイズに呑まれながら始まる名盤2nd。Unwound、この手のジャンルではマジで好きなバンドですね。当時Sonic YouthとFugaziの中間と言われてたみたいで納得ですが、全然アバンギャルドな印象はなく、それこそSonic Youthはノイズをロック的なカタルシスではなく音色を聞かせるというか、ちょっとアンビエントとかに寄るイメージあるんですよね。あれと比べると純粋に硬質なポストハードコアの後ろで轟音ノイズがひたすら埋め尽くしていてロック的カタルシス満載でかなり聞きやすかったです。ていうかこういうノイズロックずっと聞きたかったまであり、割と曲展開もドラマティックだしメロディーも聞きやすいしでかなりオススメ。スクリーモしきらないシャウトみたいのも好きで「Enverope」とか暗黒エモとしても聞けなくもない(?)かも。
初期作のコンピレーションで実際は92~93年頃の録音でほんとに初期の初期、メンバーも違うし・・・ということで彼らのアルバムの中でもとくにハードコア色が強い一枚となってます。というのもUnwoundと言えば全アルバムKill Rock Starsで実はライオットガールムーヴメントに囲まれたバンドだったんですが、その割にはかなりディスコーダントでこの辺のハードコア寄りのバンドってあとKarpとかしか思いつきませんがSonic Youthと対バンしたりBrond Redheadにメンバーが参加したりなど、割とノイズミュージック寄りのインディーバンドとして交流があったようです。
今作、先ほどのKill Rock Starsではなくサンディエゴのカオティック・ハードコア代表とも言えるGravity Recordsよりリリースされてて割と納得するというか、言われてみるとUnwoundのノイズまみれのままストレートにハードコアやったら確かにGravityっぽさあるんですよね。Dischordのバンドと並べても聞いても全然しっくりくるかも。ジャスティンが全編に渡ってシャウトをし、全パート一つの和音になってしまったかのような音の塊とも言えるくぐもった爆音がノイズと共に疾走していきます。
Unwound - Repetition(1996)
4th。初期作と比べるとかなりスッキリした印象で、三人の独特のフレーズの絡み合いと言ったバンドの妙を聞かせた上でノイズパートを挿入するというノイズロック~ポストパンクを行き来したようなサウンドをハードコアのフィルターでやっているという感じで後期Unwoundの開幕であり代表作。比較的ポップでジャスティンの縦横無尽のギターワークはShellacやJesus Lizardと言ったアルビニ系列からFugaziの2nd~4th辺りのもう少しディスコーダントなポストハードコアともリンクしてくるかと。「Corpes Pose」はマジで名曲です、彼らを象徴する一曲。
Unwound - A Single History: 1991–1997(1999)
シングルコレクションということですが92年~97年の彼らの作品を集めているので割とそのままアルバムとして聞けてしまうくらい統一感があり、上記のRepetitionと並んでバンドのイメージを最も固めやすい名盤。とくに「Everything Is Weird」「MK Ultra」辺りはジャスティンの不協和音ギターフレーズの繰り返しから轟音ノイズロックへと変化していく彼らの王道とも言える曲や、「Crab Nebula」「Negated」等の初期のくぐもった録音とノイジーな轟音が混ざった鈍器のようなハードコアナンバーもありある程度網羅できます。アルバム曲と被りもなし。とくに「Seen Not Heard」はWireやJoy Divisionなどを思い出す瞬間もあったり「Plight」と言ったMinutemenのカバーもあるので、ポストパンクをよりハードにしたような聞き方もできるかと。
Unwound - Challenge for a Civilized Society(1998)
今まで短期間でスタジオに籠りライブっぽく録っていたということですが、今作はプロデュース性を重視し時間をかけ音を練りあげたとのことでとにかくドラムの音が気持ちいいくらい前面に出てますね。そのおかげか今までのアルバムと比べビート重視で聞けるようなイメージがあるし、オリンピアらしい籠った音質だった初期から比べるとかなり楽器の分離が良いというか、で尚且つ各パート硬質な質感がえらくスタイリッシュです。NO TECH!とか。そしてこのスタジオワークが土台となって最終作であり実験的な「Leaves Turn Inside You」へと繋がっていくわけですが・・・
Lync - These Are Not Fall Colors(1994)
Unwoundが所属していたKill Rock Starsというレーベルはハードコアシーンと若干距離があり、所属していたバンドもライオットガールの中心となったBikini KillやSleater-Kinneyなどのパンク~グランジで語られるバンドが多かったんですよ。またオリンピアと言えばもう一つKレコーズで有名でUSインディーの聖地でもあり、オーナーであるBeat Happeningのカルヴィン・ジョンソンを筆頭にModest MouseやQuasiなどもこの辺で、レーベルは違えどUnwoundのレコーディングや機材の貸し出しなどもカルヴィン・ジョンソンが協力していたようです。この地域のインディーシーン総本山ですね。
そんな中で、当時Unwoundとも交流のあった同郷オリンピアのLync、たった一枚を残して解散したわけですがマジで最高なアルバム。上記のKレコーズから出ていてめちゃくちゃ録音の悪い不協和音ギターの上で余りにも親しみやすくポップなボーカルが乗っていて、丁度ポストハードコアとUSインディーの橋渡しとも言える音を鳴らしてます。でメロディアスなハードコアってそれつまりエモでは・・・?て思うわけですが、94年ということでまだ前夜、その様式美にハマってない音なのがいいんですよね。
The Pine - The Pine(2003)
Lyncを聞いていてふとよぎったんですが個人的ベスト・エモバンドです。00年代の洗練されたエモ~エモリバイバル勢とはかなり色が違い、Hüsker DüやDinosaur Jr.などの黎明期にハードコアにメロディーを与えたバンド達のことを思い出してしまうような荒々しさがあります。この激ローファイな轟音の中メロディアスなボーカルがぶっきらぼうに乗っていて、全然聞こえないんですがこの擦れた叫びに泣けてしまうところとか、日本のバンドだとブッチャーズとか好きな人にもオススメです。
Survival Knife - Survivalized(2014)
Unwound解散後10年以上経った2014年、バンド活動をやめていたジャスティンが再び音楽をやろうということで結成。でUnwoundのラストアルバム「Leaves Turn Inside You」で見せた実験性を推し進めるのではなく、純粋なパンクロックの衝動に回帰しかつてKill Rock SetarsのレーベルメイトであったBikini KillやSleatr-Kinneyにも通じるところがあります。
とは言いつつ詰め込んだ曲展開はUnwoundをやはり連想しますね。ノイズロック要素を減らしてディスコーダントに突き詰めてったら・・・というこの路線も全然あったのかも。
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ここの上位互換です。
最高のインタビューを。他にもオフィシャルで全歴史をまとめたサイトもありますね。