朱莉TeenageRiot

棚,日記,備忘録

discography②

個人的に好きなポストハードコアを8枚挙げてきます。前にポストハードコアにのめり込んだときNOTEにざっと感想書いたんですがあれを解体して個別でやってく感じです。今回はマイベストでもあるUnwoundオリンピア周辺を。

 


Unwound - New Plastic Ideas(1994)

New Plastic Ideas | Unwound

強烈なフィードバックノイズに呑まれながら始まる名盤2nd。当時Sonic YouthFugaziの中間と言われてたバンドですが、Sonic Youth的な音色で聞かせるアンビエントに寄ったようなノイズでは無く、純粋に硬質なポストハードコアの後ろで轟音ノイズがひたすら埋め尽くしていて全てを飲み込むロック的カタルシス満載のアルバム。ポストハードコアの不協和音混じりながらフレーズの形もしっかりあり、それらが湾曲して各々のフレーズと繋ぎ合わせたような硬質な質感と、そしてこのジャンクロックやAmrepとかとも通じそうなノイズまみれの荒れた音が完璧に融合している。曲展開もドラマティックだしメロディーも聞きやすいしでエモからもアクセスできる初期Unwoundのポストハードコア大名盤。スクリーモしきらないシャウトみたいのも好きですね。「Enverope」とか暗黒エモとしても聞けなくもないと思う。

 

UnwoundUnwound(1995)

Unwound (Unwound album) - Wikipedia

初期作のコンピレーションで実際は92~93年頃の録音でほんとに初期の初期、この頃は今では知られるメンバーとも違うし彼らのアルバムの中でもとくにハードコア色が強いオリジナルのスタジオ盤とは少し違った立ち位置のアルバム。彼らはほとんどのアルバムがKill Rock Starsで実はライオットガールムーヴメントに囲まれたバンドだったんですが、その割にはかなりディスコーダント、オリンピア周辺の同シーンポストハードコアと言えばKarpやLyncですがUnwoundSonic Youthと対バンしたりBrond Redheadにメンバーが参加したりなど、割とノイズミュージック寄りのインディーバンドとして交流があったというか当時は知られてたんじゃないかと思う。

今作、先ほどのKill Rock Starsではなくサンディエゴのカオティック・ハードコアを代表するGravity Recordsよりリリースされててそれも割と納得するようなアルバムになってます。言われてみれば初期UnwoundのノイズまみれのハードコアはGravityのめちゃくちゃに自由なカオティック方面の派生として見えてくる線もある気がする。今作はジャスティンが全編に渡ってシャウトをしまくり全パート一つの和音になってしまったかのような音の塊とも言えるくぐもった爆音がノイズと共に疾走。エッジの効いたギターリフがガンガン飛んでくるとこも割とUnwoudのキャリアの中では珍しい気もする。

 

Unwound - Repetition(1996)

Repetition (Unwound album) - Wikipedia

4th。初期作と比べるとかなりスッキリした印象で、ローファイで全部飲み込む勢いだった初期のサウンドと比べると非常に分離が良いというか、住み分けされたアンサンブルがしっかり聴けてしかもめちゃくちゃ練られている。三人の独特なフレーズの絡み合いと言ったバンドの妙を聞かせた上で、それでもって今まで以上にスマートで硬質な不協和音ノイズパートを挿入するノイズロック~ポストパンクを行き来して中間を行ったようなサウンド。後期Unwoundの開幕であり代表作。比較的ポップでジャスティンの縦横無尽のギターワークはShellacやJesus Lizardと言ったアルビニ系列からFugaziの2nd~4th辺りのもう少しディスコーダントなポストハードコアともリンクしてきます。彼らを象徴する曲でもあり、循環するギターリフがあまりにもかっこよすぎる「Corpes Pose」は本当に名曲で、少し冷めたジャスティンのボーカルとリフとの掛け合い、反復するリズム隊全ての歯車が綺麗に噛み合っている。

 

Unwound - A Single History: 1991–1997(1999)

Amazon Music - UnwoundのA Single History: 1991-1997 - Amazon.co.jp

シングルコレクションということですが92年~97年の彼らの作品を集めているので割とそのままアルバムとして聞けてしまうくらい統一感があり、上記のRepetitionと並んでバンドのイメージを最も固めやすい名盤。とくに「Everything Is Weird」「MK Ultra」はジャスティンの不協和音ギターフレーズの繰り返しから轟音ノイズロックへと変化していく彼らの王道とも言える曲でCorpse Poseに負けず劣らずの名曲続き。「Crab Nebula」「Negated」等の初期のくぐもった録音とノイジーな轟音が混ざった鈍器のようなハードコアナンバーもあるし本当に全部かっこいい。アルバム間の隙間を埋めるどころか、これ自体が必聴ナンバーだらけである程度網羅できます。アルバム曲と被りもなし。とくに「Seen Not Heard」はWireJoy Divisionなどを思い出す瞬間もあったり「Plight」と言ったMinutemenのカバーもあるので、ポストパンクをよりハードにしたような聞き方もできるて、ミュータント的な進化をしていくバンドの中では今作はルーツも垣間見えてくるという意味でも聞きやすい。

 

Unwound - Challenge for a Civilized Society(1998)

Challenge for a Civilized Society.jpg

今まで短期間でスタジオに籠りライブのようにレコーディングしていた彼らが、今作はプロデュースを重視し時間をかけ音を練りあげたとのことでとにかくドラムの音が気持ちいいくらい前面に出てますね。そのおかげか今までと比べビート重視で聞けるようなイメージがあるし、アングラらしい籠った音質だった初期から比べるとかなり楽器の分離が良いというか、1曲目の「Date」でもバンドのイメージに合致した不協和音ノイズギターをかき鳴らしながらもそこには飲み込まれないドラムのビートが先行してきてえらくスタイリッシュです。「NO TECH!」もそうで性急で歯切れのいいリズムはポストパンクとの共通点も多々ある。「Side Effects Of Being Tired」は長尺ながらイントロから前作やSingle Historyともリンクしてくるジャスティンのギターワークとリズム隊の絡みが極上、イントロから声を上げたくなるくらいストレートにかっこいい硬質なポストハードコアですが、後半は次作、最終作「Leaves Turn Inside You」へと繋がってくるような実験的な展開を見せてきます。同じく長尺の最終曲「What Went Wrong」もじわじわと不穏な暗黒世界へバンドサウンドのみで到達しつつ、アウトロの静謐な闇はやはり次作を想起してしまう。ポストプロダクション的な要素とバンドのぶつかり合いが各々いいバランスで引っ張りあってる作品。

 

Unwound - Leaves Turn Inside You(2001)

解散前ラストアルバムで2年近くの月日をかけて作られた傑作。前作通りプロデュース重視、今作はほぼジャスティンが一年近くスタジオに入って作った曲郡がベースになってるようでそのおかげか暗黒ポストパンクをベースにノイズ~ドローンと言った今までに無かった実験的要素も強く、ポストハードコアの枠を超えてポストロックの枠で語られる名盤。とは言いつつ、後のポストロックを知ってるとポストロックとしてこれ聞くってのも全然しっくりこない、しかしそれでこそオリジネイターでありポストパンクの名盤としての貫禄もめちゃくちゃある。

結構Unwoundと言えばこれって方も多いと思いますが、正直今作を最初に聞くのは間違っているような気がして(例えるならRadioheadを聴くってなってBendsもOK Computerも聞かずにKid A行っちゃう感じ)、到達点及び特異点。このアルバム一枚で完結させるならいいと思いますが、初期のハードコア~ジャンクロック的な轟音がほぼ無いので順を追って聞いた自分は慣れるまで時間が掛かりました。ジャスティンのボーカルも陶酔感たっぷりでシャウトもほぼしなくなりぼんやりと焦点が合わない感じで、ただマスロック文脈でも語られることもある今作、この三人でしかできないでしょと言いたくなる捩れたフレーズが沢山飛び出してくる。轟音要素ない分隙間が見え、そういったバンドそのものの自然体のバンドアンサンブルで聞くという側面は今までで一番強いかも。そこをピックアップして聞くだけでも充分魅力的です。完全に理解しきることなんて一生できないんだろうなっていう底が知れないアルバムで、それぞれ方向性は違うにせよ、同じようにハードコアの延長からポストロック化していったJune of 44やTortoiseとの同時代性を感じる。

B面は意外とポストハードコアな曲も多いんですがそんな中でも作り込まれた左右チャンネルを行き来する多重コーラスのボーカルはサイケデリックな雰囲気を醸し出す「October All Over」とかはもうヤバイですね。ベストまである。今までバンドサウンドの裏から滲み出ていた不穏なダークさが完全に表に出てきて、幽玄な空気がバンドまるごとすっぽり飲み込んでしまったような作品。後半のアンビエンス漂いまくった実験的な「Radio Gra」から続く「Below the Salt」はイントロのドローン的なノイズとオルガンはもうアンビエントとしても聴けそうで、こっからスカスカなスロウコアへと移っていくのがもう聞いていて景色が見えてくるようだ。バンドは崩壊寸前、ライブツアー中に911が起き中断、そのまま解散してしまったとのことですが最終作にしてとんでもない名盤。

 

Lync - These Are Not Fall Colors(1994)

These Are Not Fall Colors | Lync

先に一度触れたLyncというバンドの1st。Unwoundが所属していたKill Rock Starsというレーベルはハードコアシーンと若干距離があり、所属していたバンドもライオットガールの中心となったBikini KillやSleater-Kinneyなどのパンク~グランジで語られるバンドが多く、またオリンピアと言えばもう一つKレコーズで有名でUSインディーの聖地でもあった。KのオーナーであるBeat Happeningのキャルヴィン・ジョンソンを筆頭にModest MouseやQuasiなどもこの辺で、レーベルは違えどUnwoundのレコーディングや機材の貸し出しなども彼が協力していたようなので決して無関係ではなく、この地域のインディーシーン総本山という感じでした。で同郷オリンピアのLyncは勿論そのシーン真っ只中から出てきたバンドで、当時Unwoundと交流も深くたった一枚を残して解散したわけですが、そんな一枚がとにかく最高のアルバム。上記のKレコーズから出ていてめちゃくちゃ録音の悪い不協和音ギターの上で余りにも親しみやすくポップなボーカルが乗っていて、丁度ポストハードコアとUSインディーの橋渡しになる最適解とも言える音楽性。メロディアスなハードコアってそれつまりエモなのではとなるのですが、94年ということでまだ前夜、その様式美にハマってない自然発生したエモ近隣シーン、いや、これも一つのエモと言える音でしょう。

 

Survival Knife - Survivalized(2014)

Unwound解散後10年以上経った2014年、バンド活動をやめていたジャスティンが再び音楽をやろうということで結成。でUnwoundのラストアルバム「Leaves Turn Inside You」で見せた実験性を推し進めるのではなく、純粋なパンクロックの衝動に回帰しかつてKill Rock SetarsのレーベルメイトであったBikini KillやSleatr-Kinneyにも通じるストレートでパンキッシュなロックアルバム。熱い。

とは言いつつ詰め込んだ曲展開はUnwoundをやはり連想しますね。ノイズロック要素を減らしてディスコーダントに突き詰めてったら・・・というこの路線も全然あったのかもと色々考えてしまうけど、それでも一度バンドをやめギターを手放し、大学へ入り音楽を引退したジャスティンが今になってこうやってまたバンドをやってくれることが嬉しくてしょうがない。そういった目線で聞くとすごく生き生きとしたアルバムに聞こえてくる。

 


 

 


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ここの上位互換です。

 

最高のインタビューを。他にもオフィシャルで全歴史をまとめたサイトもありますね。