朱莉TeenageRiot

棚,日記,備忘録

記録シリーズ:Slintから辿るルイビルのポストロック

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Slint、ケンタッキー州ルイビルのバンドにしてポストロック〜マスロックの元祖やスロウコア、ハードコア由来の音楽ジャンルに多大な影響を及ぼしたバンドです。ルイビル周辺のポストハードコアが僕は一番好きなのですが、この辺のシーンを掘るとポストロックのルーツがハードコアというのがどんどん輪郭が見えてくるというかわかってくるようなとこがあり、その中心となるアルバムが2ndのSpiderland、ついこの前30周年ということで海外のインタビューがちょっと話題になり読んでみたところ個人的に熱が再燃。

その流れで海外メディアのインタビュー記事を漁っていたら色々新しい情報もあったのでSlintやメンバーのその後、周辺シーンについて各アルバム自分の感想を書いておこうと思います。

 


 

Slint - Tweez(1989)

TWEEZ (LP)/SLINT/スリント/ポスト・ロック始祖1stアルバム|ROCK / POPS /  INDIE|ディスクユニオン・オンラインショップ|diskunion.net

アルビニ録音。Spiderlandとは大分毛色が違うアルバムで、89年ということでポストハードコア前夜感が強いですね。FugaziShellacと同じく既存のハードコアサウンドからの脱却を図ったようにも感じますし、変則的なリフが入り乱れ1曲1曲は短いんですが何度も展開していくところはちょっとマスロックっぽいかも。MiniutemenやThis Heatと言ったポストパンクからの流れでも聞けそうですがとにかくノイジーでこのジャンク感はアルビニ率いたBig BlackRapemanの音色を思い出します。

ちなみにベーシストだったイーサン・バックラーは今作で脱退。彼が作曲の主体となっていたらしく2ndと毛色が違うのは彼の影響が大きかったのでしょう。

 

Slint - Spiderland(1991)

2nd。スロウコアとも言える最小限に抑えられた静謐な演奏にスポークンワーズなボーカルを乗せ、不安定なのか規則的なのかが曖昧な揺れるギターをタイトなドラムが繋ぎとめループしていきます。いつ破裂するかわからない不穏な緊張感の中このフレーズの塊を繰り返しながらギターをバーストさせ轟音で飲み込んでいく、という手法は同じくルイビルのポストロックRodanやJune of 44にも繋がる方法で、Mogwaiなどの極端な静→道の展開を見せカタルシスを得るポストロックのルーツとなるんですが、手法自体は継承されてもフォロワーと呼ばれるバンド達からは感じることができない陰鬱さや張り詰めた緊張感はやはり凄まじいです。当時20歳なるかならないかの少年達がそれぞれの感性で作り上げたオリジネイター、原初とも言える"生の音"の貫禄がすごい。

発売時には既に解散、リリース時もインタビューなどのメディアでの露出を避けていたようで、90年代は本当に未発見のオーパーツとも言える作品だったようです。今でこそ伝説として語り継がれていますが、これは実際にMogwaiがヒットを飛ばしたからこそ彼らがルーツとして名前を挙げたからのようで、このハードコアともポストロックともとれない音のアンダーグラウンドで蠢いてる感じは当時発見されたときはすごかっただろうなと…。しかもメンバーのデヴィッド・パホはSlint解散後のジョン・マッケンタイア率いるTortoiseに合流するので、まさしくポストロックブームの大元とも言えます。

 

Slint - Slint(1994)

Amazon.co.jp: Slint: 音楽

解散後の94年リリース、未発表曲ですが録音は89年ということでTweez~Spiderlandを繋ぐシングルで、Tweezのジャンクな変則ポストハードコア~Spiderlandのポストロックへと至る中間という感じで、緊張感溢れるインストマスロックとも言える「Glenn」「Rhoda」の2曲入り。Spiderland程スロウではなく淡々と闇に潜っていくようなループからギターが炸裂していきます。

元々「Nosferatu Man」「Washer」等Spiderlandの名曲群もインストとして作ったデモ版がデラックスエディションにあるんですが、Slintがマスロックの元祖として評価されるのがこの辺聞いてるとわかる気がしますね。

 
Rodan / June of 44 / Shipping News

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ルイビルのポストハードコアという観点で語るのなら絶対に外すことのできない重要バンド、それがRodanで1st発売時は1994年とSlintからちょっと経ちますが、メンバーも同郷ということでSlint解散後もRodanのメンバーと幾度となく交流があります。

RodanはSpiderlandで定義した"遅いハードコア"とも言えるスロウコアと溶け合ったあの音楽性を更に独自解釈で拡大、後のポストロックに大きな影響を及ぼします。そしてRodanのメンバーが解散後に組んだJune of 44やRachel’sにShipping News、同じくメンバーであり後にSSWとなるTara Jane O'Neilと彼女のバンドであるThe Sonora Pine、Retsin、全てがルイビルを中心に派生していきます。この辺のメンバーの変遷や音楽性を辿るのが非常に面白く、僕がこの辺のジャンルを好きになったきっかけでもあり別記事を書いてますのでよろしければ。

 

The For Carnation - The For Carnation(2000)

The For Carnation

そしてThe For Carnation、スロウコアとして有名ですがSlintのフロントマンであったブライアン・マクマハンが解散後に組んだバンドで唯一のフルアルバム。Spiderlandの路線を更にそぎ落とし、深く沈み込むような陰鬱な世界観を推し進め、ギターの歪みは無くなりダブ要素も取り入れよりリズムを主体としループしていきます。しかし時折挿入される最小限のギターフレーズや囁くようなボーカルを聞いてるとこの静寂っぷりはやっぱりマクマハンだな~と思うわけですが、Spiderlandで彼が何をしたかったのかがぼんやり見えてくるような気もしてきます。

 

The For Carnation - Promised Works

Amazon Music - The For CarnationのPromised Works - Amazon.co.jp

アルバムではなく間で出した初期EPをまとめたコンピレーションなのですが、個人的に大好きな一枚。スロウコアというよりもう弾き語りの曲もあるんですが、ギターの音も最小限でありマクマハンのボーカルもいつものごとく消え入ってしまいそうな繊細なもの・・・なんですが、「On The Swing」では歌心に溢れててすごく風通しがいいんですよ。SlintからThe For Carnationのキャリアの中でこんなにラフでポップな歌を聞かせたのはここくらいじゃないでしょうが。A面は他の曲もインディーロックとして聞けそうな心地良さがあります。

Spiderlandを作ったとき、彼らはフォークやカントリーと言ったアメリカのルーツミュージック的なSSWをよく聞いていたとインタビューで見ましたが、そういう色が濃く出てるのかもしれません。そもそもSlint解散後にあのSpiderlandの水没したジャケットを撮影したウィル・オーダムも元々はそういったSSWで、サポートメンバーとして参加してたこともあるんですよね。色々繋がってくる・・・。

 

Crain - Speed(1992)

80年代後期~90年代に掛けて活動していたルイビルのポストハードコアバンドで、メンバーのドリュー・ダニエルは後にビョークとの共演やIDMで知られるMatmosになります。全くの別ジャンルですが彼のルーツはここで、June of 44の最新作ではMatmosとしてマッケンタイアと共に作品に参加していて最初はなんでMatmos?と思ってたんですが、Rodanのメンバーとは高校時代からの付き合いでとくに中心人物であるジェフ・ミューラーとジェイソン・ノーブルとはかなり古い仲のよう。

でCrain、コンピレーション一枚で長らくCD化もされてなかったようですが、実験的要素が薄く代わりにバンドとしての楽器のぶつかり合いに特化したBastroと言った感じでしょうか。とにかくハードだし高速だしで、若干マスっぽい色もある鋭利なギターフレーズが飛散しぶつかり合いながらもかなりキッチリと音が敷き詰められていて、めちゃくちゃスタイリッシュなポストハードコアを聞かせてくれますが超かっこいいです。この中では最もパンキッシュかも。そして名曲「Kneel」はまさしくルイビルとも言える緊張感全開の曲でSlintやJune of 44との共鳴を強く感じます。

 

The Telephon Man - The Telephone Man 1992-1994

Telephone Man : The Telephone Man 1992-1994 [CD]

90年代初頭にルイビルで活動してたポストロックバンドということですが当時カセットのみのリリースをまとめた編集版。Temporary Residenceによる再発でCrainもここのレーベルだしこのレーベル自体が割とこの辺のシーン通過後のポストロックをかなり扱っていて直系でもあります。

そして時期が92-94ということでもろSpiderlandからRodanのRustyが出る期間であり、当時メンバー間で交流があったかどうかは不明ですが音楽性もまんまその辺と呼応したハードコア由来のスロウコア~スポークンワーズを乗せバーストしていくといういかにもなルイビルな音です。こちらは割とエモともリンクしそうな曲もあったり静寂パートのないヘヴィなスロウコアと言った曲もありA Minor Forest的だったり、編集版だけあってバラエティに富んでます。そしてとある曲ではもろRodanのBible Silver CornerやExoskeltonと同じフレーズが登場してきて、Telephon Manはメンバーが美術系の学校出身らしいですがRodanのメンバーも同じく美術系の学校出身で、実際どういった繋がりがあったのか不明ですが何かしら交流はあったんじゃないかと思います。音楽性のみで聴いてもSlintから辿ってくならRodanやTelephon Man辺りが一番聞きやすいかも。

 

Evergreen - Evergreen(2003)

SlintのドラマーでありSpiderlandではDon Amanでボーカルとギターを担当したブリット・ウォルフォードが参加したルイビルのバンドで93年作。彼は同時期にThe Breedersにも参加してますね。ポストハードコアというよりはインディーロックやロックンロールという言葉を使いたくなるくらい聞きやすく、LastFMのタグではemoに分類されていて個人的にかなり好きなバンドです。純粋にパンクロックや80sのハードコア直系として聞けるような熱とキャッチーさがありますが所々不協和音が混じる緊張感もあり、「Glass Highway」等スローテンポの曲ではその辺のバランス感が丁度いいです。

 

 

Tortoise

TORTOISE / Millions Now Living Will Never Die (LP) - FILE-UNDER RECORDS トータス、アルバム『TNT』全曲再現ライヴのフルセットライヴ映像64分を公開 - amass

シカゴ音響派を代表するバンドですが、ポストロックシーンを漁る上では欠かせないですね。Bastroのジョン・マッケンタイア、そして代表作でもある上記の2枚(Millions Now Living Will Never Die / TNT)ではSlintのデヴィッド・パホが参加。そしてTortoiseはシカゴのジャズシーンとも絡みがありまた広がっていくのですが、その辺についてはWITHOUT SOUNDSの記事が非常に参考になります。そもそもここでのバンドメンバーの繋がりやシーン自体を一個にまとめたいというインスピレーションの元の一つでもありますし、シカゴ音響派について何一つ知らなくてもその変遷や音楽性は読み物としても非常に楽しめると思うので是非とも。また同ブログ内でマッケンタイア参加のSea And Cakeについても特集あり(こちらも本当にオススメ)。

 

Tortoise - Tortoise(1994)

Tortoiseの中では余り語られない1stアルバムですが実はSlintを軸としたルイビルの系譜として漁っていくのなら絶対に外せない、むしろ2nd以降のポストロックを代表する名盤達の更に奥に、こんなにも直球でスロウコアをやってたルーツがあったのかと驚いてしまったアルバム。Slintのパホが参加するのは2nd以降、それこそ上記の2枚からなんですが、まだ在籍してなかったこの1stが最もSlint的で2曲目の「Night Aire」は硬質で隙間だらけのドラムの音やスポークンワーズ、静寂から間をとって曲に深みを持たせてくるところも完全に直系。Slintファンなら絶対に好きになる音だと思うし、こっからパホ加入も納得どころかむしろストレートすぎて面白いです。しかもバンドのルーツ的にもジャズの色が既にあって、まだメインではないんですが隙間の多いスロウコアにそういった要素が付け加えてるだけでもアレンジとしてすごく良い、このまま2nd以降の路線に開花するのも頷けるような種まきがされてるというか、ちゃんと通じるのにこんなにも陰鬱なスロウコアなのも良い。こんな記事を書くくらい自分がそういう趣味ってのもありますが、Tortoiseの作品では最も好きなアルバムです。

 

Aerial M / Papa M / Pajo

Aerial M – Aerial M (1997, Card Sleeve, CD) - Discogs Amazon Music - Pajoの1968 - Amazon.co.jp

SlintのギタリストでありTortoiseにも参加したデヴィッド・パホのソロはまさしくSlintもTortoiseも感じることができるシカゴ~ルイビル両方を繋ぐ架け橋とも言える、そして尚且つ彼のラフな雰囲気も感じることができてインディーロックの軸でも聞けるのでここも堀甲斐がある。割と多作で名義もいくつかあり時期や音楽性のスタイルで使い分けてるようです。Aerial Mではアメリカーナな弾き語りをひたすら音響派の衣で覆ったフォーキーな質感のポストロックと言えるものになっていて、その後外郭を取っ払い内側を曝け出したであろうPajo名義のアルバムはもろにSSW的な作風へ回帰。打ち込み要素もあるアシッドフォークから純粋な弾き語りまであり、Aerial MはSlintのスロウコアな側面と呼応して聞ける部分もあるかも。

 

King Kong

  

そしてKing Kong、Slint結成時1stのベーシストだったイーサン・バックラーがTweezのアルビニ録音が気に入らず脱退、その後こちらをメインに活動していきます。ハードコア要素はほぼないので関連作としては微妙ですが、レゲエやファンクの要素も取り入れたインディーロックと言った感じでチープな録音やローファイな質感から黒さはあまりなく独特の緩い雰囲気があってローファイさ加減が良い。録音には普通にSlintの面々が参加してるので仲違いではなかったようだし、ここでもパホが参加していて彼の柱っぷりにも驚きます。Slint以降の他メンバーと比べるとKing Kongはポストロック化の一端を担う感じではなく、純粋に好きな音をそのまんま鳴らしてるって雰囲気が強くて最もラフで聞けますね。

 

Squirrel Bait

 

Slintのメンバーでギターとボーカルを担当していたブライアン・マクマハン、ドラマーのブリット・ウォルフォードがかつて在籍していたバンドで、Spiderlandを作る際はシカゴに移住し制作の中心となった二人なのでSlint直球でのルーツとも言えるバンドです。もろハードコアですが、1st2ndと共にメロディック系の流れでも全然聴けるというか85年にしてはかなり硬質、こんだけギターが分厚くてメロディーも強かったらあまり何も考えず純粋に心から滾るような熱さがある。普通にDCハードコアとか、キャッチーというかメロディでも聞けるという意味ではGorilla Biscuitsとか元祖なイメージありますが近い感覚で聞けてしまうかと。ギターリフの硬質な鋭角っぷりはしっかりと後の彼らのポストハードコア系譜にも通じると思うし、とにかく少年たちが突っ走ってる感がすごくいい作品群です。

そして驚きなのは他のメンバーで、なんと後のBastro~Gastr Del Solで有名なデヴィッド・グラブスがギターとして参加していてつまり後のSlint、そしてGastr Del SolTortoiseといったシカゴ音響派等、ポストロックの代表的バンドを辿っていくと最終的にここに行き着くという。ルイビルだけでなくシカゴも巻き込んで、このバンドを聞いただけではとても想像できませんが全てがここに戻ってくる。ポストロックの奥にはハードコアがいるという中心、爆心地がまさにここであり、今回触れてるバンド群全てのルーツとも言えますね。

 

Bastro - Sing The Troubled Beast / Diablo Guapo(2005)

Sing The Troubled Beast +Basto Diablo Guapo : Bastro | HMV&BOOKS online -  DC290

そしてBastro、先程のSquirrel Baitのギタリストであったデヴィッド・グラブスが結成したバンドで後にTortoiseやSea And Cakeで知られるジョン・マッケンタイアと合流。トリオとして以後発表された1989年〜1991年の2枚のアルバムのコンピレーションがこちらです。一応ポストハードコアになるんでしょうけど、Dischordとかの当時のハードコアと並べて聴いてもかなり異質な、まさにエモでも激情でもない後にマス~ポストロックへと向かっていくようなTouch and Go系譜のポストハードコアの中でもミュータントとも言える凄まじいバンド。

というよりまずジョン・マッケンタイアが本当にTortoiseと同一人物?と思ってしまう程ハードなドラムを叩いていてこれだけでも聞く価値あり。高速で繰り返されるギターリフも凄まじく、このギターとバチバチにやり合う、まさしくフレーズの塊とも言えるテクニカルなドラムの絡み合いは既にマスロックのルーツとしての説得力がある。そして混沌とも言えるジャンクなノイズギターがこんだけ乗ってるのにどこかスッキリとした音像で爆走してくバンドメンバーのアンサンブルも絶妙、それだけじゃなく後期の曲にはオルガンがメインのインストにも近い超絶不穏な曲やノイズワークをメインとしたインスト等、この頃から既に実験的な要素もあってバンドのエネルギーに満ち溢れたあまりにもすごすぎる楽曲群。これらがまとめられた最強のコンピレーションだしライナーノーツにはルイビルやシカゴのシーンにもしっかり触れられているのでマストでしょう。

解散後フロントマンのデヴィッド・グラヴスはシカゴへ向かいGastr Del Solを開始、ジム・オルークと組んでマッケンタイアも度々合流していきますが、"ToritoiseやGaster Del Solのメンバーがかつて組んでいたハードコアバンド"では決して終わらせることができない実験性も伴った暗黒ノイズロック~ポストハードコアの大名盤です。サブスクには無いですがSpiderlandと並んで重要作品。

 

Bastro - Antlers(2005)

Amazon | Antlers: Live 1991 | Bastro | 輸入盤 | 音楽

ライブ盤なんですがアルバム収録のない曲の集まりで、1曲目の「Antlers」からBastroらしからぬゆったりとしたスローペースでじわじわと不穏に迫ってくる感じはSlintやJune of 44等の他のルイビルのバンドとも共鳴してくる。そして中盤に前作を想起する強烈なハードコアナンバーを挟み後半また化けます。「ライブ」というより各パートの絡みによる「音の実験」とも言えるような要素がかなり強く出てきて、終盤2曲に関してはもうGastr Del Solの原型と言っても差し支えなくなっており、バンドサウンドに囚われずより表現の幅を広げるためにああなっていったんだろうなぁと。

 

Gastr Del Sol

Amazon | Upgrade & Afterlife | Gastr Del Sol | 輸入盤 | 音楽 CAMOUFLEUR (LP)/GASTR DEL SOL/ガスター・デル・ソル|ROCK / POPS /  INDIE|ディスクユニオン・オンラインショップ|diskunion.net

そしてこちら、デヴィッド・グラヴスがBastro以降に辿り着く先でジム・オルークと組みポストロックを代表するバンド。あまりにも実験的でアンビエント的な効果音や空間に漂うサウンドが多く、ルイビルでも無ければハードコア要素も無いシカゴ音響派なので上記の作品群とは大分毛色が違いますが、Bastroのその後、そしてポストロックシーンを辿る場合非常に重要なバンドです。

 


関連記事

Slintと並び名前を挙げたRodanについて。共通項がめちゃくちゃあり、正直SlintよりRodanの方がとっつきやすいのではと思っているので是非とも。 

 

ジョン・マッケンタイア率いるTortoiseについてですが、バンドやシーンのことについては勿論、切り口も非常に面白く間違いないです。

 

 ざっくりとディスコグラフィを辿りたい方はこちら。

 

 参考資料にさせて頂いた30周年インタビュー。英語ですが各楽曲の解説など非常に濃厚です。

 


 

以上です。元々はRodanとJune of 44ってボーカル一緒だったの?というのを知り、調べてく内にSlintと同郷、そしてBasroが深く関わっていたり、メンバーが合流しTortoiseに繋がってきたり、Shipping Newsも元はRodanだったり・・・とどんどん点と点が繋がってくる感じが非常に面白くなってしまい、そのアーカイブを残しておきたいなぁという感じで書きました。ポストロックと言いつつかなり雑他になってしまいましたが、Slintっぽい音を求めて聞くのならRodan~June of 44周辺を聴くのが一番いいかもしれません。

 

そしてルイビルという地からどうしてここまで人脈が広がっていったのか・・・というのが非常に気になるとこですが、どうやらインディーバンド向けのハコが少なくシェアハウスなどで演奏していたため共通のメンバーが顔を合わせることが多かったようです。あとは80年代後期~90年代初頭のルイビルは大学にカレッジラジオが無かったこと、セッションミュージシャンが少なかったことから、外部地域の音楽性を取り入れることが少なく、Rodanのジェフ・ミューラー曰く「孤島にいるような感覚だった」とのこと。

それにより多数のバンドが派生~お互いに影響を受け合っていたのかなぁと思います。スティーヴ・アルビニがSlintとRodanについて「ルイビルという独特のバックグラウンドが無ければあの音楽性は生まれなかった」と言っていたのもそういった要素からかと。

 

以上でした。簡易ディスクガイド的な感覚で楽しんでもらえれば幸いです。