10月にリリースされた1/8計画の1stアルバム。10/19に都内でレコ発となるjakとPSP Socialとのライブイベントが開かれ、今回はリリースされたアルバムの感想とライブについても少し触れていきます。

1/8計画による8曲28分の1stミニアルバム。色んな可能性を見せてくれる様々なタイプの楽曲が収録されているが、90sルイビルに思いを馳せるようなポストロック黎明期の静パートを大切にしたポストハードコア~そしてその後のエモやエモリバを通過した現行スロウコア。日本語の歌ものとしての柔らかさも大切にしていて、90s当時のポストロックの輪郭を強烈に残した作風に昨今のRun For CoverやExploding In Sound辺りのインディーロックとはまた一線引いたところにあるような気がする。neutrinoやdianogahといったアルビニ録音の生音ポストロックと一致する空気感、uri gagarnとのリンクも多数感じられてこんなん好きじゃないわけないじゃんというくらい喰らってしまった。
M1のEmbarrassed Pt.1はLungfishに通じるリズム隊の円を描くような反復の良さがあって、Lungfishが持っていた土臭さの代わりに、Galaxy 500やDusterにも通じてきそうな浮遊感のある酩酊の美学がある。続くPt.2はタイトル的に地続きかと思うが結構違うタイプの楽曲で、エモ/ポストロック色の強い轟音インストゥルメンタル。シューゲイザーってよりは個人的に初期Yume Bitsuとかも思い出す。AADAはストレートにエモの香りもある爽やかなナンバー。イントロから繰り返されるギターリフは親しみがあってちょっとパホ(Papa M/Aerial M)を思い出したりもして、それをうまくエモナイズドした曲ではないかと思う。このギターリフの人懐っこさと風通しの良さが、次のガガーリンのギターリフをより印象付けてると思う。
M4のガガーリンは既にライブでもハイライトとして演奏されていた爆泣きスロウコア。柔らかいソングライティングで歌心のあるCodeine、と言いたくなるけど、Codeineの冷めた無機質なリフとは明らかに違う質感のある、暖かく日常に寄り添ってくれるような、それでいてとても寂れた哀愁もある、ちょっとBOaTのROROとかも想起させる非常に映像的なギターリフ。これを主体に、Slint的な硬質で溜めの強いドラム、そして静寂を一気に開放する轟音の静→動のカタルシスは涙無しには聞けない。スロウコアを聞いてて思い起こされる荒廃とした秋の情景や、枯れのある冬景色とはまたちょっと違った、日本の大自然が思い浮かぶ暖かさのある曲をCodeine/Slint系譜の音でやっているのが聞き馴染みがあるのにとても新鮮。この日本の情景っぽさはとくに最後のギターソロが物語ってると思う。ライブも最高だった。またガガーリンという曲目にユーリ・ガガーリンが元ネタであろうuri gagarnへのリスペクトがどうしても頭をよぎってしまう。
Interlude#1というインストを挟み一際ヘヴィなギターリフが印象的な(untitled)へ。RodanのRustyやJune of 44の1st2nd~Shellacラインから抒情的なスロウコアに移行、エッジの効いたイントロから線の細いギターと隙間を見せる対比が美しくて涙。一曲でこれ全部やっちゃうんだ・・・という、ポストハードコアの無茶苦茶に詰め込んだあの継ぎ接ぎ感っていうのがたっぷり詰まってる。最初聞いたときあまりにも好きな音しか最後まで出てこないのでその場で叫びながら立ち上がってしまった。ジェフ・ミューラーの系譜であり、後にスロウコアにもマスロックにも通じる彼らがやっていた長尺曲をそのまんま現代にアップデートしたような一曲。タイトルがuri gagarnの1stと同名なのも熱い。イントロはキンクリのLarks' Tongues in Aspic, Part Twoっぽく、ザクザクしたヘヴィなギターリフはRodanには無いメタリックな質感もあり、Humが曲中一瞬メタルになる瞬間や昨今のVINCE;NTを思い出してとても高揚する。バーストする瞬間はdeathcrashや往年のエモに通じる部分も。Rodanのthe Everyday World of Bodiesをライブで聞くことはもう叶わないが、Rodanのthe Everyday World of Bodiesをライブで聞くような体験がしたい人は、1/8計画のライブに行くと良い。
もう一つインストのInterlude#2を挟み(ポストロック系譜のエレクトロニカみたいで個人的にかなり好みです)、ラストのOversleptはライブで見たときイントロにスロウコアパートが追加されたことで大分イメージが変わり、すごくアンセム然としていたことを思い出す。
現在国内で90sポストハードコアっぽいバンドとしては初期SPOILMANも想起しますが(今では全く違う方向へ突き進んでいったけど)、彼らの場合はいかにも"当時いそうな"感じであの時代にタイムスリップしたような大興奮があったのに対し、1/8計画は90年代のルイビルやシカゴへの強烈な憧憬を包み隠さず、今の視点で極限までリスペクトしてやりたいことかき集めましたみたいな雰囲気を感じます。そこに、個人的に当時っぽさとはまた違ったニュアンスがあって、音楽オタクっぽさが自分の感覚と近いような気がしてしまう。何より聞いてて連想させる音楽がuri gagarnの(untitled)だったりRodanのRustyだったり、自分がもうこの世で一番好きなアルバム何かって聞かれたら割と真っ先に思い浮かぶ作品がチラつくので、初めて聞いたときからものすごく近くにあるように錯覚してしまいました。
自分が行った企画ではないですが近い日付のライブ映像。本当に素晴らしかった。既にもうアルバム未収録の新曲が多く、動画内で演奏している開幕のTempleや続くNot For Saleは生で見たときギターリフの端々からルイビルっぽさがあってついつい笑顔になってしまう。バンドの音そのものがおどろおどろしい不協和音のように絡み合い、しかしそれ自体がとても美しく、支離滅裂なようで一瞬で調和したり静寂を挟んだり目まぐるしくバーストする様は聞いててとにかくぶち上がってしまう。Shipping Newsが現役時代に10年前を振り返ってRodanをセルフカバーしたみたいな貫禄が既にあり、初期のThe Mucry ProgramやAtivin、Shannon Wright、ルイビルのRodan~Slintから脈々と続くQuarterstick系譜の、その端っこに確実に位置するバンドになってると思います。4曲目のMistもすごい。こちらもライブでやっていてここまで濃度の高いスロウコアもやるバンドだとは思ってなく驚き、そしたら初期Codeine風味からアルビニ系の捻じれたノイズロックへと渡っていく。淡々と音を重ねる乾いたドラムのイメージが、曲が終わる頃にはガラリと変わっているのが良い。Lowercaseも思い出すこういった硬いスロウコアは間違いなく好物です。これを聞くと既に(untitled)のようなルイビル路線のRodan~June of 44から更に深いところまで潜ってしまっているように思える。来年もまた作品をリリースしたいと言っていたのでこの辺の楽曲がどうなっているのか今から既に楽しみです。
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この辺にピンとくるポストロックファンの方は是非とも開発日記を聞いてみてください。
イベントで共演したPSP Socialの新譜もリリース時に触れていて今年かなり聞いてました。共演本当に熱かった。同じく10月新譜をリリースしイベントで共演したjakもすごくて、こちらはもっと激情寄り、と思いきや分厚いエモやSlint系譜の曲もやっていて確実に一貫したものを感じれるイベント。jakが高速で次々と曲を披露していくのに対し、PSP Socialはもう音源とは別物のスケールの大きいセッションを織り交ぜ4~5曲で45分通したのも印象的。もし1990年にSlintやCrainの共演をルイビルで見ていたらこうだったのかなと思えるような一日でした。
以下シンパシーを感じるもの、記事内で触れたアーティストに関連するものを並べておきます。