朱莉TeenageRiot

棚,日記,備忘録

MyGO!!!!!というバンドについて

MyGO!!!!!のアルバム迷跡波及び跡暖空の感想記事です。


 

MyGO!!!!! - 迷跡波(2023)

2023年リリースのMyGO!!!!!の1st。結成当初作られた楽曲はメロコア色が強く、バンド活動を経る中でボーカル及び作詞を担当する高松燈の言葉を強調するかのようなポエトリー要素が加わりポストハードコアからエモ、ポストロックのフィーリングが出てくる経過がわかる13曲50分のフルアルバム。M2の壱雫空とM3の碧天伴走はパンクの色が濃く、メロコアとは言っても2000年前後のポップパンク的なものというよりはハードコアを通過したEpitaph系を素直に思い出す重さもあるけど、高松燈のウェットで内向きな歌詞や透明感のある歌声はそういった音楽ジャンルの文脈から一旦梯子を外してしまう独自のカラーがあり、個人的には一線引いた向こう側にある音楽として聴ける。

元々ライターのs.h.i.氏がSNS上でMyGO!!!!!の音楽をenvyや明日の叙景と並べて紹介していたのをきっかけに聞き始めたのだけど、実際アップルミュージックでは当時叙情系ハードコアと紹介されていたらしい。アルバム内でもその路線はM6の潜在表明とM9の詩超絆は顕著で、中でも詩超絆はアルバム内でもハイライトとなるバンドの核のような一曲。歌というよりは朗読に近いボーカルから円を描くような反復のアンサンブルが熱を上げてバーストしていく展開は直球でenvyを思い出す。バンド活動初期に高松燈が演奏もなく詩を朗読するだけのライブ活動をしていた時期があり、途中からメンバーであるリードギターの要楽奈とドラムの椎名立希が即興でトラック的な演奏をインプロで肉付けする中で偶然できた楽曲で、朗読時代のライブ映像も見たけど切実であどけない高松燈の佇まいは言葉の強さが何倍にも強調されてちょっとTHA BLUE HERBも思い出した。元々パンク色が強かった初期の楽曲から素直に歌詞を聞かせるような現在の方向に舵を切った瞬間だったと思う。故に潜在表明もこれ以降の曲だろうし、そもそもUSのポストハードコア~ポストロックのバンドにはボーカルに歌というよりは呟きをそのまま載せるスポークンワーズが多用されるので素直にポストロックのラインに繋ぐことができる。とくにM7は音一会はくだらない一日(reboundの頃)を思い出したし、この路線を象徴する潜在表明→音一会という流れがとても好き。2lcd/Pot-pourriの液晶氏は詩超絆をTouché AmoréのNon Fiction→Stepsに例えていたけど(Is Survived Byというアルバム内の一連の流れ)、Touché Amoré自体がenvyと密接な関係にあるバンドだし、自分はNon FictionをChrisite Front Driveの系譜だと思っていたのでこの辺を経由することで静→動のコントラストが激しい90sエモを連想することも可能だと思う。個人的には直球で初期のMogwaiも連想する。

詩超絆が生まれて以降の楽曲としては冒頭に置かれているM1の迷星叫とライブでハイライトとなるM10の迷路日々があって、迷星叫でのクリーントーンの流麗なアルペジオと隙間を強調するアンサンブルはエモ路線へと通じる部分が垣間見える。イントロからアクセル全開で爆走する迷路日々は個人的に現MyGO!!!!!全楽曲を入れてもベストトラック。この曲のギタープレイもザクザクとリズムを刻むメロコア路線ではなく、詩超絆での要楽奈のギタープレイを踏襲したものであるように聞こえるし、作曲担当の椎名立希のインプロ以降の意識の変化を想像してしまう。M5の歌いましょう鳴らしましょうも新機軸で、アルバム内で最も疾走感のある楽曲でまだメロコアからのフィードバックが強かった最初期のACIDMANの速い曲とか同時代性の強いBRAHMANも思い出す。M8の春日影は曲名にMyGO!!!!!バージョンとある通り元々前身バンドであるCRYCHICの楽曲で、作曲も脱退した当時のメンバーが担当してるためアルバム内でちょっと作風が違うけど、バンドの原点でもありこの位置で収録されたと思われる。この春日影のギターフレーズが詩超絆のアウトロで引用されてるのもにくい。

ちなみに昨年12月に2ndがリリースタイミングで今作のLPがリリースされていてその際に聞き返したんですが、A面が序盤のメロコア路線、B面がM4の影色舞を除いてM5~M7の流れはハードコア色が強く、C面が春日影/詩超絆/迷路日々とアルバムのハイライトでありバンドの大きな変化も表したパート、D面で緩急をつけ今作唯一のアコースティックナンバーである栞で締めるというアルバム構成の妙が映える流れで新しい発見が多くてとても感動しました。

 

 

MyGO!!!!! - 跡暖空(2024)

みちのく、と読むらしい。冒頭からミディアムテンポで純粋にメロディの良さをじっくり聞かせるM1の歩拾道は「羽なんかない僕はこの足で這っていくだけ」と歌われていて、前作における「石の下の隠れていたかった」という歌詞とは対照的なこの清々しい吹っ切れ感はしっかり曲に反映されてるように思う。歩拾道はライブ映像をそのまま映画館で劇場公開するFILM LIVEという企画のエンドロールでサプライズ的に公開された曲でストリングスのアレンジが入ってることも驚いた。M2の明弦音はもう一人のギターである千早愛音の歌声をフィーチャーしたことでかなりポップに振り切っていてメロコア路線もここで復活。A面は非常にカラフルで色んなタイプの曲が並び、素直にパンクからエモ/ポストロックとジャンルの変遷をなぞった1stは実はすごく真っすぐで純度の高い作品だったことを改めて思い知る。というか活動初期は明確な方向性や音楽性のビジョンも定まってなかっただろうし、作曲をしている椎名立希がAfterglowのファンというのもあって彼女の趣向が前面に出ていただけで、バンドが安定してきた今フラットな状態で色んな引き出しを開けてる状態なのかなと思う。M5の端程山はバンド初の外部タイアップでMyGO!!!!!らしいギターロックながらとても風通しが良く、グラデーションをかけるように重なっていく2本のギターも動きのあるベースラインもどこか暖かみがある。The Promise Ringとかのちょっとインディーロック入ってきた頃のエモも思い出す。色々経た中で前進する現在が歌われている歌詞が泣ける。M6の処救生での研ぎ澄まされた鋭利な演奏はエモ/ポストハードコアの近隣にあるギターロックといった感じで、先述のFILM LIVEでも演奏するシーンがあってそれがとても素晴らしかった。

個人的にB面の流れがとても好きで、リードギターである要楽奈のプレイがフィーチャーされたM8の夜隠染はどことなくGRAPEVINEっぽい。M9の過惰幻は前アルバムのラストを飾った栞と同路線ながら朗読パートも交えてより深いとこに潜ったようにも感じていて、RadioheadがThe Bendsとかの頃にやってたアコースティックナンバーと近いフィーリングがある。punkvideoclubのきりぬ氏はこの曲をThe Gloria Recordと評していて(2024年 TOP 10アルバム – punkvideoclub)、The Gloria RecordはMineralのメンバーのバンドでもあり上記のChristie Front Driveと遠縁だなと思ったし、このベスト記事自体が海外のエモ/パワーポップ/インディーロックが多く選出されていて、並べて聞くことでMyGO!!!!!をどう聴いてるか見えてくる気がしてとても面白い。この過惰幻を皮切りになだれ込むラストの3曲はかなりパンキッシュで、とくにM10の回層浮とM11の砂寸奏はポストハードコア色が強く複雑に絡みあう各パートとまくしたてるようなキメの応酬、これまたポエトリー要素が自然と歌唱に組み込まれた高松燈のボーカリゼーションは完全に血肉化された貫禄があるし、9mmやcinema staffのようなバンドも思い出してポスト残響の香りがしてとても好き。以前対バンしたトゲナシトゲアリの1stは残響レコードがボカロ文脈に取り込まれた上での隔世遺伝的なポスト残響だったけど、こちらはenvyといった大元のポストロック直系の地続きで偶然ではあるけど対にあるように思う。ラストの焚音打は1st時点でシングルのB面として存在していた曲だけど、あえて前アルバムには収録されずに今作に持ち越され、その結果終盤のパンキッシュな流れから完璧なラストを飾ることに。冒頭の歩拾道から感じられるバンド自体の成長というか視点の変化とも噛み合う今の決意表明の一曲だし、回層浮→砂寸奏からの流れが本当に素晴らしい。何より実際ライブでのラストのアンコールでよく演奏されてきた文脈も吸収されていてグッとくる。2ndは通して聴くと個人的にThe Jazz Juneとかを聞きたくなる。

 

 

MyGO!!!!! - 聿日箋秋(2025)

先日公開されたばかりの新曲。昨年もずっとライブをやっていて、今後も大きな動きが既に告知されてるのでとても楽しみ。聿日箋秋と掌心正銘は両面2曲ともほんとにめちゃくちゃ名曲で、今回のシングルは先述ちょっと触れた前身バンドのCRYCHICに区切りをつけた後に作られた曲とのこと。MyGO!!!!!活動初期はCRYCHICでの人間関係に引きずられてバンド活動ができてなかった時期もあったけど(先述のメンバーが欠けた状態で詩を朗読するライブをしていたのもそこと関係している)、当時のメンバーと完全に和解し正式に解散ライブを行ったことで新しいモードに移行したらしい。聿日箋秋はMyGO!!!!!にしてはザラザラとした硬質なイントロとインパクトのある派手なギターリフを一回ぶっ飛ばし、その後音数を減らして地を這うようなリズム隊だけで進行していく部分はちょっとPixiesみたいでかっこいい。

今回B面の掌心正銘含めて高松燈の表現力豊かな歌唱がまた進化していて、必死に言葉を連ねていた1stの曲群と聞き比べると余裕すら感じられて胸が熱くなる。自分が昔よく聞いて育った00sのギターロックがチラつく部分もありどこか懐かしい気持ちにもなる。個人的に10年代中期~現在に至るまでのメジャーレーベルを経て吹き抜けがよくなったcinema staffとのリンクも感じるし、Empty Classroom及びソロでアルバムをリリースしている坂口達也氏も以前からそこに言及していて、メジャー以降のcinema staffとMyGO!!!!!を繋ぐ再生リストも公開している(シネマ迷子スタッフ - YouTube)。余談ではあるが残響時代のcinema staff(symmetronica/documentといったEPの頃)はNUMBER GIRLを起点に00sのマスエモやそのルーツであるDCやサンディエゴのハードコアも飲み込んで日本語の歌もので再編するという相当にエッジの効いた作風で、それはそれでとても好きだった。ちなみにMyGO!!!!!の作曲担当の椎名立希が影響を受けたAfterglow残響レコードと同時代性が強いTKから楽曲提供を受けていたりもする。

ちなみにCRYCHIC時代に在籍していた豊川祥子と若葉睦は現在Ave Mujicaにて活動中。キーボードでありバンドのコンポーザーでもある豊川祥子のゴシックな趣味が前面に出たメタル色強いバンドだけど(そもそもCRYCHICも彼女が高松燈に声をかけて結成されたバンドで、この時点でバンド名にどこかゴシックな響きがある)、最近公開された天球(そら)のMúsicaという新曲はDeftonesを思い出す轟音エモとして聴けそうでMyGO!!!!!を連想したのは自分だけではないはず。Ave Mujicaはヘヴィロック然としながらも色彩豊かな色んな路線の曲があり、組曲形式でリリースされたElementsというコンセプチュアルなEPのSymbol IV : Earthという曲ではこれまた近縁のエモやポストメタルの要素を感じることができ、活動の中で両バンドの共通項が徐々に出てくるのが個人的にとても熱い。

 


 

 

MyGO!!!!!は2022年に始動したメディアミックス作品「BanG Dream!」内にあるプロジェクト。最初はメンバーの名前や顔を公開せずライブをしたりシングルをリリースしながら活動していて2023年4月にアニメの制作とキャストを解禁、7月からアニメ放送開始という流れがありました。バンドアニメや声優バンドの形式に苦手意識があった自分はバンドリも縁がない作品群だと勝手なイメージを形成していたけど、先述したs.h.i.氏による言及や周りの音楽関係の知人も見てる人が多く、どうやら今までのシリーズとは一回切り離して完全新作として見れる作品らしく試しに視聴。冒頭からあまりにも生々しいバンドの崩壊で物語が始まり、小さなスタジオの一室でリアルな言葉が飛び交う冒頭数分に自分が作品に対して持っていたイメージをすっかり塗り替えられ完全に飲み込まれました。すごく素朴に一つのバンドの終わりが描かれていて、全然大仰じゃないが故の生々しいどうしようもない喪失感が開幕から伝わるのが良かった。アニメの方のMyGO!!!!!はバンドの成り立ち自体が非常に不安定で、中~高生が一緒に集まってバンドという集団を形成する当たり前のことの難しさが描かれています。その等身大のぶつかり合いやすれ違い、そこに起因した苦悩や葛藤にやっぱりとても共感したし、だからこそ、不安定でありのままの言葉を数珠繋ぎにしていく作風と音楽性がマッチしていたように思う。バンドアニメにありがちないつの間にか曲ができてるっていう描写も全然なくて、メンバーが作曲段階で試行錯誤したり時間に追われる中アレンジを決めていく様子が見れるのも良かったし、その経過があるからこそライブで披露されること自体にカタルシスがある。寒色ベースの白を強調した光や全体的に彩度を落とした色彩もこれまでのバンドリ作品のカラフルなイメージとは完全に真逆だったし、バンドリが掲げてきたキラキラドキドキの青春バンドアニメといった側面と一向に結びつかない内向的な作風が長いこと続くのもスッと入れた。あとはアルバム感想で散々触れてきましたがエモ~ポストハードコアとリンクした音楽性で、なんだかんだ"鳴ってる音楽が好みと近い"というのも大きかったと思います(あとシリーズに対して無知すぎて声優もやりつつ演奏もしてライブもする事実が結構普通にびっくりした)。こちらは先に一度触れた迷路日々と迷星叫のアニメバージョン。

また上記で何度も触れましたがアルバム構成が本当にすごく良い、アニメに準じたアルバムって作中楽曲のコンピみたいな色が強くなってしまうけどそれが一切ない、一つのアーティストのスタジオアルバムとして曲順、流れも丁寧に作り込まれていて素直に聴けた。バンドリと言えばElements Garden主体のイメージがあったけど今回MyGO!!!!!の作曲はSUPA LOVEという新しいチームが担当していて、ほとんどの曲が同メンバーの演奏のためクレジットに統一感があったりメンバーの癖なども反映されている。曲同士に連続性があり同じトーンが維持されてるのも世界観を強固にしていて驚いた。ちなみにSUPA LOVEの長谷川大介氏は以前Aqua Timezのギターを弾いていて、Aqua Timez活動時期の楽曲でMyGO!!!!!に通じるものをピックアップしたプレイリストをbutohesのFgさんが公開してくれているので貼っておきます。Aqua Timezについて詳しくなかったのでギタリストとしての長谷川氏のプレイの共通項やこんな曲あるんだみたいな発見があってとても面白かったです。

ちなみに自分はMyGO!!!!!放送から一年半ちょいが経ち今では普通にバンドリにハマってアプリの方でイベスト消化中。ハロハピが大好き。MyGO!!!!!のキャラクターや物語のトーンは明らかにこれまでの作品と違いますが、結構ストーリー展開というかフォーマット自体はしっかりバンドリの伝統を受け継いだものであること、そして最後に高松燈にマイクを渡しバンド名を決定づけるきっかけになったのが1期の主人公である戸山香澄であったことも気づきました。つい最近まで放送していたMyGO!!!!!と直接繋がるAve Mujicaも面白かった。前身バンドの片割れでもあるAve MujicaはMyGO!!!!!本編最後にちょっと出てきてゴシックメタルを演奏するんですが、当時は流石に音楽性の差がありすぎたしあまりに唐突な登場に戸惑いの方が大きかった。でもここ1年で新しくアニメが放送されるにあたってリリースされた音源は音楽性の幅を広げていてどれもこれも素晴らしくそこで完全にファンになりました。とくにコンセプチュアルなElementsという組曲形式のEPや最新作のCompletenessの充実度はすごいです。上記でも触れた天球(そら)のMúsicaとSymbol IV : Earthもそこに収録されていてリンクする部分が多いので関連作としてもおすすめ。ちょうど先日Kアリーナで行われたMyGO!!!!!とAve Mujicaの共演ライブは本編の展開を踏襲した演劇的な要素も組み込まれていて、それでいてしっかり演奏の方もかっこよくフィジカルの力も感じてすごかった。

最後に文中で触れたいくつかの好きなアルバムを貼って終わります。

 

 

 


 

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文中でも触れたpunkvideoclubのきりぬさんがMyGO!!!!!の記事を書いてくれたのでリンクを貼っておきます。全く違う視点から切り込んだ非常に興味深い記事になってるので是非とも!パンク~メロコアファンは必見です。