年間ベスト2
自分のを書いた直後に各メディアやブログの年間ベストを一通り読んでてこれあったのか・・・みたいな新しく衝撃を受けた作品がやっぱ多数あったのと、普通に忘れてたやつや、新しい気づきがあったもの、あと前回の時点で書いたけど全体のまとまり考えてオミットしたもの、全部まとめてみました。影響を受けた、シンパシーを感じた記事も最後に挙げていきます。
Little Kid - A Million Easy Payments(2024)

トロント出身Little Kidの新譜。上半期かなり聞いてた作品で改めて聞き返してこれはしっかり記録するべきだろと強く思った作品。歌が良すぎる、演奏が良すぎる、以外にあんまり伝えるべき言葉はない良質なインディーフォークですが、今回割とUSインディー以降の音楽性ってよりはもっと純粋にストレートなフォークロックとして聴けると思います。M2のBad Energyは大名曲。起伏は少ないけどしっかり泣ける最低限の歌メロと、フォークらしい、淡々とした繰り返しに見えてしっかりと生命が息づいていくようなリズム隊の反復がすごく良い。隙間をより強調するように奥に配置されたピアノの音とか浮遊感のある電子音のアレンジはポストロック~スロウコア好きな方にもいけるかと。長々と続けた後にぶつ切りで終わって、間髪入れずに軽やかのアコギが流れてくるM3までの流れ含めて良いですね。M4のAlways Changeでも溜めのあるリズム隊のプレイからゆったりと時間が過ぎてく感覚がたまらない。M6のSomewhere in Betweenもとても優しいメロディでちょっとRexも思い出す。そもそもジャケが良すぎるので、このジャケ見てアンテナが反応したインディーロック好きな人はたぶん絶対間違いないです。
Orchid Mantis - i only remember the good parts(2024)

Little Kidと並び上半期多く聞いていた愛聴盤。今思うと時期的にしょうがないんだけど、年間ベストって寒い時期に書くのもあってエモやスロウコア系に寄ってしまう気がする。もし春手前~初夏くらいまでの、徐々に暖かくなってくる頃に書いていたらこういう感じだったかもなと、ちょうどリリース時期も上半期だったので強く思い出しました。アトランタ出身のベッドルームな宅禄インディーフォークOrchid Mantisの新譜。アナログ感が強く優しく包み込むようなぼんやりとした宅録サウンドがいかにもなローファイフォーク+スロウコアな質感、囁くような希薄なボーカルのトラックを複数重ねて生み出される揺らぎと暖かみがとにかく心地が良く、夕暮れ時とかに聞くとほろりとくる。陶酔的に繰り返されるフレーズはVelvet UndergroundのSunday Morningの系譜としても聞けるかもというくらい夢見心地な気持ちになる。M11のdidn't meanはゲストを迎えて女性ボーカルが参加することでアルバム内ではかなりムーディな色が強い曲で、先行するオルガンの旋律と歌メロが泣ける名曲。Little Kidと並び、こういうセンチメンタルでゆったりとしたインディーロックに弱いですね。Little Kidと同じくジャケットが素晴らしいのでこの時点でピンとくるものあれば絶対に間違いないかと。
C Trutle - Expensive Thrills(2024)

PavementとかThe Vasellinsが好きな人には絶対刺さるであろう2024年のジャンクなインディーロックベスト作品。ガシャガシャとしたローファイで荒々しいバンドサウンド、くだけた雰囲気の男女ツインボーカルのハーモニーがかなりキャッチーに乗るというまさに90sのUSインディーと通じるポップネスがストレートに響いてきてめちゃくちゃ刺さった。なんとなくジャケットの雰囲気からK RecordsとかSimple MachinesとかMergeとか、あの辺の90sのオブスキュアなUSインディー系の再発なのかな・・・と思って聞いたんですが全然そんなことはなく、普通にロンドン出身の4人組ロックバンド。でも確実にそのラインで聞ける作品。ほんのりエモのエッセンスも入っていてM1のHave You Ever Heard A Turtle Sing?から純粋にギターロック好きな人をがっしりと掴んでくる名曲。ぶっきらぼうなシャウトも最高だし、ノイジーなサウンドとツインボーカルの対比が良い。
Autopolitan - Autopolitan(2024)

Cloud NothingsのTJデューク率いるAutopolitanの1stアルバム。前情報ありきで聞いたからそういうレンズが入ってたことは否めませんが、結構ほんとにAttack On Memory~Here And Nowhere Else期のとにかく走っていたCloud Nothngsのギターロックど真ん中チューンを風通しよくラフに録ったみたいな音楽性。あそこまで焦燥感のある切羽詰まった雰囲気はなくとも、それでも確実に影を落とした、ちょっと気怠げだけど思いっきり突っ走ってる感じがとても好き。M1のAs It WereはThe Strokesを思い出すほどに真っすぐで直線的なアンサンブル、ちょっとJoy Divisionもチラつきつつ、でもポストパンクの系譜には入らない絶妙なインディーロック。灰色の空に黒一色の遊具みたいなオブジェクトがぽつんとある単色ジャケットの素っ気なさが割とそのままサウンドにも反映されてる。M3のIII PlaceとはM9のSide By BlindedはとくにCloud Nothingsと通じる部分があるかと。あとM4のBig Voiceも好き。速いから。曲名も良い。
Von Spar / Eiko Ishibashi / Joe Talia / Tatsuhisa Yamamoto - Album I(2024)

すごすぎてたまげました。Von Sparを中心とした石橋英子、山本達久、ジョー・タリアによるコラボ作品。1/8計画の葱さんの年間ベストで初めてアルバムの存在を知り、それからずっと聞いていて間違いなく2024年ベスト作品の一つだと思います。M1のIはフリーインプロ的な解体されたアンサンブルを一つの極上のアンビエントとして聞くようなイントロで、隙間が見えるセッションは緊張感があり、このままゆったりと漂ってくだけかと思いきや、中盤から挿入される流麗なギターフレーズは思ったよりポストロック~インディーロック的な聞き馴染みのある音色とフレーズで、バンド作品として大きく間口を広げてくれることに驚いた。終始静謐と共にある作品かと思ってたのでギャップもあり没入、その後の展開もすごくドラマティックで夢中になって聞き終えてしまいました。M2のIIはめっちゃ踊れる。バンド要素を結構強く残したまま、エレクトロニカのように音響とテクスチャで聞くような雰囲気が両立されてるのもすごいし、セッションを収めた密室作品的な色が強いのも個人的に完璧すぎる。The Dylan Group~Mice Paradeみたいな00年代前後のアダム・ピアース関連のポストロックや、Broakbackとも近い雰囲気で聞けるのではないかと思います。
Still House Plnats - If I don't make it, I love u(2024)

話題作。3ピースですがボーカル+ギター+ドラム体制なので楽器のパートは2つ、必要最低限の音しか鳴ってないスカスカの反復音楽で、ジャキっとした硬質なギターのリフレインは90sポストハードコア~ポストロック前夜を感じずにはいられない。ハードコアの系譜ながら耽美でゴスな雰囲気は90 Day Menを思い出すし、M5のProbablyにおける空間を感じさせる素っ気ないギタープレイと淡々としたドラムの、それぞれお互いが隙間を強調するようなアンサンブルはCodeineやSlintといったハードコア系譜のスロウコアを重ねて聞ける。ベースレスということでスカスカの反復がどことなく殺伐とした空気まであり、ここに割とソウルフルなボーカルが乗ること、そこを割とフィーチャーしてることからもジャンルの軸がわからなくなるマジックがあると思う。インタビューを読んだら影響を受けたアーティストにBluetile Loungeを挙げていて、個人的にスロウコアでランキングを作れと言われたら1位にしたくなる作品がBluetile Loungeの1stってくらい愛聴した作品なので、ここまで音源を聞いて想起するアーティストも実際に影響を公言しているアーティストも自分が普段愛聴している範囲と似通ってるバンドが話題になること自体が珍しく、それも嬉しかったです。
Dirty Three - Love Changes Everything(2024)

2024年どんな年だったか聞かれたらDirty Threeがアルバムを出した年って答えると思う。ポストロック大御所Dirty Threeの2012年以来12年ぶりの新作。コンポーザーであるミック・ターナーはMess Esqueでの活動もあるし、そちらのプロジェクトもDirty Threeと通じる音楽性だったけど今回かなり趣が違います。M1の再生数秒からザラザラとしたギターが炸裂し、巨躯をゆっくりと引きずって立ち上がるかのような歪んだギターを前面に押し出した巨大なセッションへ。今までの密室音楽的な彼らのスタイルとは完全に別物でめちゃくちゃたまげた。後半のアグレッシブなドラムのプレイにも驚いたし、密室ではなく外に向けて駆け出していくような、純粋にバンドを鳴らす喜びが伝わるような躍動感に溢れた快活な作品だと思う。それがDirty Threeから出てくること自体に驚いた。M2~M4あたりの壮大なポストクラシカル路線は割と彼らのイメージの延長線上にある、バンドによるアンビエントのようなナンバーで、アルビニ録音による大名盤Ocean Songsも思い出す。そしてM5~M6にかけてじわじわと溜めてから大爆発していくドラマティックな展開も新鮮。ラスト本当にぶち上がりました。

1月リリースで確か2024年一番最初に聞いた新譜がこれで超たまげた記憶がある。異色のロックデュオOr Best Offerのデビューアルバム。Gastr Del Sol含めたデヴィッド・グラブスのソロ作品諸々やCerberous Shoalみたいな音の実験の様相をそのまま音響作品として記録した90sポストロック黎明期をガッツリ感じるけど(あとちょっとFenneszも)、割としっかり歌とリフの反復があって、結構根元は普通にフォークやインディーロックがあるんじゃないかってくらいの親しみやすさもある。人懐っこいようで掴みどころがないポロポロとつま弾かれるギタープレイと、常に揺らいでいて焦点が合わない、轟音とはまた違う、巨大な音がずっとそこで揺れているみたいな音の雰囲気が今まで聞いてきたポストロックやシューゲイザーともまた違った触感で、簡単に咀嚼できない、不思議な魅力がある作品。意外とインプロっぽいアルバムなのかなとも思ったりします。
Her New Knife - Her Ner Knife on Audiotree Live(2024)

正直昨年最もリピートしたアルバムの一つだと思う。体感。元々年間ベストで書こうとしてたんですがライブ音源を収めたEPっていう企画盤なのもあり別で書いた方がいいかなとなった分をここで載せます。結局自分はこういう硬質で金属的なギターサウンドがジャリジャリと鳴っていれば本能的に好きになってしまうことを実感させられた作品。とくにM3のv estigoって曲は2024年えんえんとリピートしていた曲であまりにも好みすぎる。スロウコアとまでは言わずとも起伏の少ないぐったりとしたくたびれたボーカル、でもちゃんとグッドメロディである程度歌で聞かせるインディーロック然としたバランスが本当に絶妙。M1のdancer inから普通にユルいエモとしても聴けると思う。ちょっとSlintっぽいリフが垣間見えるのも良い。ジャリジャリとしてるのに隙間というか空間がわかるのはラフなスタジオライブだからこそ、このこじんまりとした感じが音楽性と合っていて、ライブ盤だからこそツボを刺激された気もします。

リーガルリリー、ダンジョン飯のEDで流れたキラキラの灰が良すぎてそのまま過去作を辿りハマった。こんなに真っすぐスマパンの1979歌謡を人気漫画のアニメタイアップとして2024年に地上波に流すことがまず結構嬉しい。その前の作品でももろThe Smithsや初期Radioheadを堂々とやったり歌詞にトゥナイトが出てきていて、そういったオマージュに90sの海外のロックバンドからの引用のアイデアで溢れていたART-SCHOOLやthe pillowsを思い出さずにはいられず、彼らに作られてきた自分の音楽観を重ねてしまって熱い気持ちになりました(てか普通に「あと10秒で」ていう歌詞が出てくる)。そういえば22年のCとし生けるものでも惑星トラッシュって曲で真っすぐTonight,Tonightをやっていてキラキラの灰へ続くものがあったことに気づく。スマパン好きすぎるでしょう。超わかるが。しっかりバンドの持つ歌とメロディがあるので完全に昇華されていて、あどけない声色ですごく真っすぐに無邪気にチクっと現実を突き刺す毒のあるリリックがなんか全部すっぽり一点に収束されていくのがすごい。天然っぽくもあるけど、もう長いこと活動してく中で培った円熟が出たアルバムでもあると思う。

The Smileの3rd。同年に出た2ndのWall Of Eyesがあんまりハマらなかったんだけど、割と反動というか対照的な曲がたくさん入った今作は幾何学的でミニマルなギターリフとバンド感満載なグルーヴィーなロックバンドの作品として超好きに。ジャンルにカテゴライズすることが野暮だってくらいオリジナルな音楽をやってることは承知の上で、個人的には今作はポストパンク~ポストロックのアルバムとして聞けてしまい、Don Caballero~初期Battlesにおけるイアン・ウィリアムスのギタープレイやその系譜であろうFoalsを思い出したりもします。何よりM3のZero Sunは本当にぶち上がった。めちゃくちゃ踊れる。M6のDon't Get Me Startedもふわふわとした密室音楽路線かと思いきや後半大化けして不穏なダンスナンバーへ。アンビエンス漂う内へ内へと潜っていくような音は2ndにも通じつつ、これでもしっかり爆踊りできるのが良い。M8のThe Slipは弾力のあるビートの上で歯切れのいいギターのカッティングがジャキジャキで最高。かなり肉体的なアルバムで、この路線なら正直とてもライブに行きたい。
The Smile - Wall Of Eyes(2024)

リリース時自分には難しくて中々良さがわからなかったThe Smileの2nd。3rdでハマりそちらをずっと聞いていたけど、みんなの年間ベストを読んでいたら普通に2ndの方が評価高いことが多く、色々と新しい視点を得た状態で聞いたら3rdとの繋がりも見えてきて愛聴盤になりました。スケールの大きい広がりのある電子音や大仰なアレンジをあえて密室音楽として一つ小さいハコに詰め込んだみたいなアルバムで、地に足のついてない浮遊空間が夢見心地すぎてヤバい。M2のTeleharmonicで完全に昇天。続くM3のRead The Roadは各種記事でも触れられていたけど後半Sonic Youthになる部分があり、しかもNYC Ghosts & FlowersやMurray Streetという自分が最も好きな時期を思い出すのもグッときます。この曲と続くM4のUnder of Pillowではすでに3rdに続く幾何学的なギタープレイがフィーチャーされてたことにも今更気づく。ただやっぱり3rdのようにバンドとして全体でドライブするわけではなく、リフ自体があくまで重ねられている音色の一つとしての存在感が強いように思う。B面はアンビエントの音の揺らぎをバンドとして出力したような佇まいで唯一無二。M7のBending Hecticでバーストするのが熱い。

今作もたくさん聞きました。この歌詞、このスタイルでも別にヴィジュアル系を茶化しているような感じは一切なく、ドープなオタクとしてあらゆるオマージュを織り交ぜた結果ここまで昇華されているのが本当にすごい。行き過ぎたリスペクトの果てとも言えるし、ルーツの更にルーツであるネオサイケっぽいサウンドが垣間見える瞬間が良い。スワロウテイルとか最高ですね。あとLOST CHILDは轟音オルタナでPlastic Tree思い出して笑顔に。カインズホーム大きすぎてビバホームくらいある←ありえない歌詞すぎて大好き。かなり耽美(決定)で超ワロタ
Giant Tortoises at Full Speed - Thin Wall(2024)

Piu Mossoのもやしん氏を中心としたスリーピースバンドの1stアルバム。Fugazi + People In The Boxみたいなジャリジャリとしたギターロックで最高。Piu Mossoはアイデア一発を膨らませてったような、音が歪んでく超かっこいい瞬間そのものを無理やり曲へと昇華させてくみたいな作風だったと勝手に思い込んでるんですが、Giant Tortoises at Full Speedではそれをバンド、歌ものの範疇でやってのけたような印象を受けました。3ピースのスッキリとした風通しの良いアンサンブルの中で曲そのものが一回捩れる瞬間みたいのがフックとしてどっかにある。普通にポップな歌ものとして聞けるくらいキャッチーなのに突如時空が捻じれるみたいなそういう仕掛けがそこかしこにあるし、歪みまくったギターソロもそれをより強調してる。
Sleepinside - Ctrl + C & Ctrl + V(2024)

Sleepinsideの2枚組大作。夏によく聞いてました。自分がジャケットの絵を担当したlittlegirlhiaceの新アルバム(littlegirlhiace - MISS THE GIRL(2024) - 朱莉TeenageRiot)のレコ発でlittlegirlhiaceとの対バンでライブも見れた。自分の世代が聞いてきたギターロックの闇鍋のようなアルバムで、ART-SCHOOLやNUMBER GIRLの影響を隠さないオルタナど真ん中。あとはM5のInternet Smells 病気やM8のベランダのようなわかりやすいNirvanaオマージュが散りばめられていて、しかもラウドなグランジではなくCome As You Areとかを思い出すジメジメとした気怠いリフをスローペースでゆったりと反復するあの感じが詰まっている。元ネタのグランジ周辺にあったHR/HM由来の土臭さをゴス系~Syrup16gとかの国内オルタナのエッセンスで中和することでオミットされてるのも良くて、Plastic Treeを思い出す瞬間がめちゃくちゃあります(とくにDisc2)。あと個人的にベストトラックがM18の花男。おそらく松本大洋の同名漫画がインスピレーション元だと思うけど、これがNUMBER GIRL風(DESTRUCTION BABYとDRUNK AFTERNOONが合体したような感じ)で演奏されているという事実に泣いた。ナンバガ+松本大洋って絶対妄想しますよね?あとM15のCHAINSAW IN THE GIG BAGも好きです。速いから。
Blue Bendy - So Medieval(2024)

Blue Bendyの1st。サウスロンドン系のバンドと交流が深いらしいですが、それこそBCNRやcarolineやdeathccrashの流れと共鳴したポストロックにエモ/インディーロックの情感を加えて歌の強さもしっかりあるハイブリッドな作品。割としっかりリフを聞かせる重心を落とした隙間のあるアンサンブルに、スポークンワーズというよりは"語り"と言いたくなる自由なボーカルが乗ることでビートに揺らぎを生む独特のタイム感がすごく良い。ジム・オルーク期以降のWilcoからカントリー成分を薄めて、純粋にポストロック禍のオルタナティヴ・ロックとして昇華したらというイフを想像したくなるバンド。

M1のBlesslessのイントロからBedhead~The New Yearをなぞったスロウコア直系でありながら隙間や静謐さな間を作るわけではなく、エッセンスを取り入れながらも素直にグッドメロディを囁くような歌で聞かせるインディーロック。M4とかM5みたいなシンセとギターの和音が結果的に轟音っぽく分厚いレイヤーを作ってくる曲がエモに通じる熱さがあって良い。waveform*やHorse Jumper of LoveといったRun For Coverのエモが入ったバンドから、Orchid MantisやLittle Kidのようなインディーフォーク系までいいとこどりをしたようなバンドだと思う。初期Hovvdyが好きな方も是非。
Metz - Up On Gravity Hill(2024)

Metz新譜。前作Atlas Vendingは大音量のドラムのダイナミズムを全面に押し出した破壊的な作品だったのに対し、今作Up On Gravity Hillは今までにないくらいポップネスに溢れた一枚。そぎ落とした、というよりは引き締まったという言葉を使いたくなるメリハリの効いたサウンドで、割としっかりリフやギターの音色、そして何より歌を聞かせる構成なのが予想外すぎる。キャッチーだけどしっかりMetzらしいタフな演奏がそこにはあって、ポストハードコアってよりSwervdriverを思い出す。とくに最終曲ではNarrow HeadとかCloakroomラインのヘヴィシューゲイズが出てきてこれをMetzがやるとは思ってなくてたまげました。
Bats & Mice - Ps: Seriously.(2024)

復活ありがとう。サッドエモのボス。以前このバンドのとあるアルバムについて書きたいがために周辺シーンのまとめた記事を書いたことがあります(記録シリーズ:Sleepytime Trioから辿るLovitt Records - 朱莉TeenageRiot)。
Three Second Kiss - From Fire I Save The Flame(2024)

イタリア発のThree Second Kissの12年ぶり新譜。90s~00sのポストハードコアからマスロックへと昇華されていくその途中経過、当時の大きな括りでのハードコア系譜のポストロックを象徴するバンドの一つであることは今作のジャケットをJune of 44のジェフ・ミューラーが担当していることからもわかるでしょう。M1のイントロからソリッドで金属的ででもヌメっとしたじわじわと来る不穏な音、そして炸裂するマスロッキンな不規則な絡み合いに笑顔で頷くことしかできない。かつてメンバーがゲスト参加したUzedaも思い出すけど、今作はもっとそぎ落とされていて、二転三転していくアンサンブルの流れがより強調されてるように感じる。
Big'n - End Comes Too Soon(2024)

28年ぶりのBig'nの新譜。ヤバすぎ。前作2ndは当時Touch and GoやAmphetamin Reptileと並びあの頃のジャンク・ポストハードコア及びノイズロックの名門Skin Graftからリリースされてるのも当時のシーンを象徴している。今作も完全にその延長線上、ShellacやThe Jesus Lizard直系の狂気に満ちたサウンドを今でもパワフルに鳴らしていてぶったまげました。ジャリッジャリのギターと無機質で淡々としたパワフルなドラム、マッチョなベース音と切り刻むみたいにメリハリのあるアンサンブルは全てを破壊するかの如く突き進む。マジで圧倒されました。
pile of hex - LIQUESCENCE(2024)

京都発で5kaiの後輩らしく昨年対バンイベントに行けなかったことをずっと悔やんでいる。スカスカのバンドサウンドは純粋に音が作る隙間そのものを聞くようなアルバムで、Smells Like~Touch and Go時代のBrond Redheadを極限までそぎ落としたような雰囲気も。意外とトラック的な整頓されたリズムのミニマルさも良くて、Still House Plantsとセットで聞くべき作品だと思います。

2月にリリースされたOmniの5年ぶり新譜。昨今の実験的なポストパンクシーンとは距離を置いた、聞き馴染みのある80s前後の純度の高いあの頃の音でインディーロックをやってるような素直な作風は相変わらずOmniならでは。今回はTelevisionの音でDevoをやったようなアルバムで脱臼したようなスカスカのギター、ツボだけをつくミニマルなアンサンブル、あと結構歌心があって今のインディーシーンからもすんなり入れそうな感じ。ex.Deerhunterというミッシングリンクも。フレッシュで生き生きとしてるというか、サウンドが跳ねてるように聞こえてくるポップネスに満ちた作品だと思う。
Xiu Xiu - 13" Frank Beltrame Italian Stiletto with Bison Horn Grips(2024)

一昨年あんなにも破壊的でエクスペリメンタルな音の深海に突っ込んでくみたいなアルバムを出してたXiu Xiuの新作がこんなにキラキラでポップなことあるんだというくらい驚いた作品。普通にインディーロックとして聞けるんですが、やっぱXiu Xiuなのでインダストリアル的な何重にも折り重なっていくノイズや電子音の渦は健在。でもかなりメロウ。間口を広げようとしてやってる感じが全然ないのに、自然とこれが両立してるのがすごい。
The Cure - Songs Of A Lost World(2024)

話題作。多作な上に全然作風バラバラなので、みんなにとってのThe Cureってなんなのか、そういう話題に尽きないバンドだとは思いますが、今回WITHOUT SOUNDSのサムさんのnoteで"神格化された自身に擬態してみせた作品"という評を見て改めて聞く視点をもらって衝撃を受けました(本当に名文なので是非)。僕はDisintegrationとかThe Topみたいな路線が好きでKiss Meが苦手ってタイプなので正直今作は好きすぎる。ネオサイケ~シューゲイザーという80s末期のUKオルタナ萌芽の要因となったあの頃をそのまま投影した感じがあって、轟音とはまたちょっと違った壮大な音のオーケストレーションの中でのどこか冷めたリズム隊の淡々とした反復は数々のバンドのルーツでありながらやっぱりあんまり似た音ないよなと改めて思う。M2のAnd Nothing of Foreverが好きです。ロバート・スミスによる最低限の泣きメロがセンチメンタルでトラックと相まって泣ける。M5のDron:Nodoroneはハードなマシンビートでこちらもかっこいい。The Cureって毎回挑戦のバンドで、いつの時代でもニューウェーブであることがすごくフレッシュだったと思うので、今作「いかにもThe Cureっぽい」ストレートな作品を出したことに寂しさや物足りなさを覚える人がいることも結構わかる。でもすごく個人的な音楽趣味としてはやっぱりダークのオルタナの祖として辿ったのもあり素直にグッときました。円熟に入ってるのかなと思う。

SymbolというタイトルをつけられたI~Ⅳまでの組曲とラストに先行シングルのEtherを置いたコンセプチュアルなミニアルバム。ハマりすぎてM4のSymbol Ⅳはリリース直後から現在に至るまでずっと聞いてます。ちょっとポストハードコアな触感があってMyGO!!!!!と遠縁で繋がるのが熱いし、このままDeafheavenみたいになってほしい。
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Part1です。