先月SPOILMANによるライブアルバム「20231223 Live at 滝野川西区民センター」がリリースされました。このアルバムの元になったライブにも自分は参加していてそのときのレポート及びアルバム感想です。

昨年12月に東京都内のある公民館をレンタルして開かれたSPOILMANによるフリーワンマンライブ。入場無料でDIY感に溢れたステージがロケーションからして最高。本当に普通の公民館で児童センターでもあるので、入り口では子供向けのかわいらしい看板が出迎えてくれたり、下の階で囲碁やカラオケ大会が開かれていたり、元々ファンではないたまたま通りかかった地元民が見に来ていたり、SPOILMANが持っている狂気的な音楽性の中で垣間見えるユーモアやシュールさとも完璧にマッチした会場だったと思います。演奏の方はとてつもなく熱が籠っていて、昨年2枚組のアルバムリリース後全国ツアーを回っていたのもあってライブ活動を繰り返した先での最高のコンディション、特別なロケーションもあってこちらとしてもずっと高揚感があり、まさに2023年SPOILMANの活動の総括とも言える集大成的な一日だったと思います。曲を解体していくかのようなバラバラなドラムがあのルームリバーブ満載の体育館で行われると今まで見たSPOILMANのどのライブよりも凄まじい生音感があり、ランダム性があるようでバンド全体でキメを挟むときはぴったり呼吸が一つになる練度たっぷりのフリーキーなアンサンブルは本当に圧巻。
全編動画で公開されていて、音についての感想は録音だとまたイメージ変わっちゃうと思うんですが、独特のロケーションと会場の雰囲気は伝わるかと思うので参考にしていただければ。普段あまりMCをしないバンドのはずが今回特別な場というのもあってメンバーの関係性が見えるような掛け合いも新鮮。個人的にライブで見たのは初の「Pure Puke」、そして10分超えの大曲「Cairo」がラストだったのが熱い。90年台にガレージや野外で演奏していた、FugaziやUnwoundやFour Hundred Yearsといったポストハードコアバンドの動画を何度も見漁っては憧れていた自分が、まさか生きている内に同じような体験ができるとは思ってもみず、そういった意味でも心から興奮しました。元々SPOILMANは1stリリースの活動初期はスタジオライブを主とした活動に拘っていて、それはNirvanaといったバンドがかつてDIYなガレージなどでライブしていたことに対する憧れだったと語っていたことがあり、あの頃の伏線回収という意味でも本当に嬉しい体験でした。
SPOILMAN - BASTERD NERD PIG(2023)

そして一番驚いたのは会場でしれっと新しいアルバムリリースがアナウンスされていたこと。その翌日に早速サブスクも解禁されたという驚異のスピード感、そもそも2023年既に2枚リリースしているので3枚目?どういうこと?となったし、直前に公開された新曲のMVはそのままアルバムリリースの先駆けてのことだと判明。内容としてはシンプルにRamonesみたいなSPOILMANとしては結構新鮮な疾走感溢れる原初のパンクロックを思い出すような、ガレージロック的な軽やかなポップさのあるアルバムでブライアン・セッツァーもチラつくし、グランジにしてはパンク色の強かったMudhoneyなども思い出す。とにかく最初から最後まで"ラフ"という言葉を使いたくなる、サウンド面でも新たな試みが見えた大作UNDERTOW/COMBERという2枚組の直後にツアーをしながらレコーディングしたというフットワークの軽さが、良い意味でサウンドに影響を与えたように感じるし、現状のバンドそのままの姿で3人で突っ走ってく気持ちよさがフラットに反映された無添加な作品だと思う。2分未満で終わってしまうThe Keelyのカバーである「Vanilla Vanilla Vanilla」も原曲にあった激情的なノイズ要素をスカスカで乾いた今作のサウンドで無理矢理押し切った印象があってとてもSPOILMANらしいし、今作この一発録りのスカスカなサウンドだからこそ、バンドの持つ肉感とシンプルなリフのキャッチーさが際立ったアルバムかと。同じくスカスカだからこそグルーヴが露出していた2nd「SOLID GREEN」とも近い雰囲気があります。そして今回「静」寄りの楽曲がどれもこれもめちゃくちゃ自分のツボに刺さってくる。もろNirvanaな「The Room」はこのくたびれ感がHARMONYでの枯れた作風とも今改めてマッチしたような雰囲気があるし、「Fire Starter」「All Right Now」はヤバイ。Shipping News期のシンプルにギターと歌が染みたジェフ・ミューラーを思い出してしまう瞬間も多数あるし、ライブ動画のエンドロールにも使われているAll Right Nowはスロウコア色も強く、個人的にベストトラックまであります。
音源とは全く関係ないですが、このライブの帰り道の景色を元に描いたイラスト。
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