littlegirlhiaceのトリビュート作品Yes,We Love littlegirlhiace ~Tribute to littlegirlhiace~について書きました。
Yes,We Love littlegirlhiace ~Tribute to littlegirlhiace~vol.1/vol.2

Yes,We Love littlegirlhiace ~Tribute to littlegirlhiace~はlittlegirlhiace活動10周年を記念して発表されたトリビュート作品。ツイッターで誰かが発したツイートを発端に話が広がり、ふにゃっち氏本人から2025年3月末までに音源を送ってくれたらそれをまとめてリリースするという旨の呟きが投稿。それ以降1年近くの時間をかけて数々のアーティストがカバー曲をアップしていき、最終的に全40曲39組が集結しbandcampでリリースされることに。


littlegirlhiaceことふにゃっち氏の、完全にソロだからこそできる生々しくパーソナルな歌詞と好きなコンテンツの二次創作ともとれる形で融合した作風はやっぱり今思い返しても衝撃的だったし、こんなに思い切ったことを歌っていいんだと励みになった方も数多くいるのではないかと思う。ふにゃっち氏はちょっとした思いつきでも周りをどんどん巻き込んでいく方だと思っていて、それこそずっとジャケットを担当しているnota氏(FUZZKLAXON)との関係や、INTO KIVOTOSでの特典イラストで自分含めたくさんの絵描きを「音楽アルバム風コラージュイラスト」として参加させてくれたり、REVERSED BOOKSHELFやGIRLS BOUTというインターネットから関東圏外まで広く誘って新しいシーンを作ってくような企画を定期的に開いたり、ART-SCHOOLという共通点からPot-pourriやSleepinsideといったバンドと対バンして間口を広げたり、純粋な音楽性に限らず創作への向き合い方で共通項があるLily Furyと対バン/リミックスで共作したりなど、興味を持ったものに対してどんどんアプローチしていくフットワークの軽さ、やりたいことに妥協が無く自分から規模を広げていくスタイルそのものに自分はすごくリスペクトの念を抱いている。
そして先にも触れた二次創作的な作風、例えばエリカでのガールズ&パンツァーやアカネでのグリッドマン、INTO KIVOTOSにおけるブルーアーカイブだったり、普段宅録や音楽を趣味としているわけではない外側のファンへも枝を伸ばせる要素があり、そういった層にしっかりアプローチできる強固なソングライティング、キャッチーなフレーズの宝庫でもある(そして固有名詞や直接的な表現を避けあくまで元ネタを知らずとも楽しめる距離感のバランスも素晴らしい)。元々そういったアニメやゲームのファンだった人はふにゃっちさん自身に親近感が湧いてしまうだろうし、SNSが徹底して個人的で日常生活や趣味の流行とそのときの音楽性が強固に結びついていること、一人であるが故にバンドと演者がイコールで繋がっていてふにゃっち氏本人がlittlegirlhiaceという一つの存在であるという事実に、やっぱりみんな憧れるのではないのかなぁと思う。
そんなことをこういったトリビュート作品の面々や、すごく力の籠った、そして愛に溢れたカバー曲達を流していて思わずにはいれらないし、ついつい涙が出てきてしまう。自分自身その磁場に引き寄せられていった一人だし、ZINEを作ったりイラスト活動がここまで長く続いたり、ブログを書いたりしていることも決して無関係ではないだろう。ふにゃっち氏の活動に触発され、勇気づけられたり何かに向かうようになった人達はたくさんいるのではないかと、そういう人達が集ったのが今作だろうし、トリビュートってなんて美しいのだろうと思わされてしまう。littlegirlhiace活動10周年、本当におめでとうございます。
今回曲ではなく文章でもイラストでもなんでも参加可能ということで、自分はINTO KIVOTOSのイラスト寄稿とMISS THE GIRLのジャケなどの接点もあってイラストと文章で参加させていただきました。こちらに貼っておきます。曲目はSWEETEST BITEで架空のシングルとしてのジャケを意識。アルバム自体はカバーというのもありサブスクにはなくbandcampで無料ダウンロードが可能。自分の作品は解答したフォルダの中に直接画像ファイルとして添付されていて、こちらでは未発表の没案(Sleepytime Trio風ジャケ)と背景メインの別バージョンが見れたりします。文章はライナーノーツ風のテキスト。この曲のリファレンスになった銚子旅行に自分も同行していて、そのときのこと、アマガミという作品について書いてます。長いので本記事の最後に添付しておきます。
そして改めてアルバム本編について、流石に曲が多いのと、全てのアーティストの解説を入れると本当に膨大な文章になってしまうため(自分が把握できてない部分も多数あり)、今回は全体の印象ととくに好きな部分に少しだけ触れていきたい。vol.1はずっとlittlegirlhiaceのジャケを描いているnota氏の曲があったり先ほどのREVERSED BOOKSHELFやGIRLS BOUTで共演したアーティストが多数収録されていて(nota氏本人もFUZZKLAXONとして出演)、再生するやいなやM1のオズワルド氏によるリムってよから電子音に置き換わったギターリフによって原曲のイメージ、先入観を大きく塗り替えられ、カバー集である今作の良さをいきなり思い知る。M2のmurray a capeも前述したイベントに参加したバンドで、M8の妹ほしいほしいブルースのEmpty Classroomも同イベントに参加。murray a capeのカバーは拡散しまくったギターワークにバンドらしさが滲み出ていて、Empty Classroomはバンドの生々しい疾走感がパッケージングされている。妹ほしいほしいブルースはnota氏によるブライアン・セッツァーを思い出すぺこーらに、告白しようと思ってる。のカバーと続けて配置されていて、この部分だけ全体通してとくにロックンロール色が強くニヤリとする。Empty Classroomはボーカルである坂口達也氏とドラマーであるポタキ氏もソロ名義でも参加、バンドのアプローチとの違いがもろに出ていてこういうのを並べて聞ける楽しさもトリビュートの醍醐味だなと思う。
M3のundecided hischoolによるlilyはポストハードコアを思い出すかなり硬質でソリッドなバンドサウンド、ほぼ轟音と化した重いギターとガシャガシャしたリズム隊が個人的にかなり好みな名カバー。ギターロックと合流した北海道ハードコアの行く先の一つではないかと思ってしまう。undecided hischoolことねごさんとは個人的に交流があり、ライブハウスでもよく話すのだが、表立ったバンド活動や作品のリリースはなくともSoundcloud(Stream undecided hischool music | Listen to songs, albums, playlists for free on SoundCloud)でナイスな名曲をたくさん発表している。lilyのカバーが気に入った人は是非チェックしてほしい。海外におけるEmo DiaryやZum Audioといった名コンピではそのコンピ以外では名前を見ることができないアーティストの曲が多数あったりして、discogsで検索しても情報が全く出てこないのだが、きっと現地の人達にしか伝わってなかった、現場にしかいないかっこいい曲を作る方々を広く聴かせたのではないかと想像してしまう。こういうリリースがない現場の方々をフックアップできるのもコンピレーションのすごくいいところだなぁと勝手に重ねてグッときてしまった。
M11のRABBIT KILLS MEはlittlegirlhiaceのライブの際にサポートベーシストとして参加するmint氏によるカバーで、ナンバガっぽかった原曲のイメージをガラリと塗り替える、スロウペースで硬くて重いリズム隊と轟音が重なるシューゲ寄りギターロック。マジでかっこいい。mint氏が以前活動していたJunebouvieというバンドはWhirrの曲名から取られていて今回のカバーもWhirr風。一見ヘヴィだけどそれはズッシリ構えたリズム隊のイメージも大きく、ギター自体はドリーミーな浮遊感があってソングライティングの良さが前面に浮き出ている。Plastic Treeも思い出すが、mintさん主催のライブイベントはPlastic Treeがよく流れている。M12のヤドアエ・クノーによる(don't stand so)close to meはイントロの歌声から知らない場所へ連れていかれてしまう魔力が籠っていて、弾き語りかと思いきや後からヌルッと電子音のシーケンスが参加したりじわじわと蝕むノイズが走ったり、緻密な世界観構築に一瞬で吸い込まれる。聞き慣れた原曲の歌詞が異物感を伴って表出してくることにもびっくりしてしまうし、どことなく新居昭乃も思い出す。ヤドアエ・クノーは全く心当たりない名義だが、歌声に記名性がありすぎること、アコギが入った時点で気づいた人も多いのではないだろうか。ちなみにParadisを初めて聞いたのはlittlegirlhiaceとの対バンだった。
M16の豆もやし好き助氏のローファイ弾き語り風nameless witchesは爽やかな原曲とはまた違ったくたびれた情緒とメロディの良さが相乗効果を生んでいて個人的にとても好き。コンピとはいえ2枚組の割り振り方や構成含めしっかり練られたアルバムで、豆もやし好き助氏のカバーをスイッチとして終盤へなだれ込む流れはふにゃっちさん本人も楽しく選曲したのではないだろうか。ポタキ氏によるナンバガ+The Loft的なUKギターポップを思い出すジャリジャリとした連載少女はカバー元の更に元ネタであるthe pillowsがUSインディーやパワーポップに向かったことを考えるとルーツを共有したパラレルにも聞こえてくる。続く小雨ちゃんによるSENTIMENTAL ADDICTIONはDAWで切り貼りされたサンプルのループによるマシンビートと微シューゲイズなノイズ、メランコリックな歌が混ざり合い完全に小雨ちゃんナイズドされてしまい、歌声というか編集の記名性と原曲の良さが噛み合っていつ聞いてもびっくりする。2lcdによるengage ringは実はトリビュート制作発表後に初めて公開されTLに衝撃を与えた名カバー。原曲のNew Orderっぽさを過剰に塗り替えた高速ドラムンベース、サンプリングされたギターと潰れたノイズと疾走するいくつもの電子音が重なり合い、バンドサウンドともIDMともインダストリアルとも一口で括れない2lcdの異形さが全開。原曲の零れ落ちてしまったものを掬い取ってくれるような雰囲気に対し、こっちはやりきれない念が内側で渦巻いて引き裂かれていくようなまた違ったニュアンスがある。あとライブ版engage ringのバンドアレンジが展開に仕込まれているのも熱い。Lily Furyの死神のバラッドはエレクトロニクスに振り切ったとても美しいカバーで、アタックの強いドラムのループはlittlegirlhiace特有のゴスゴスとしたバンドサウンドを連想。最終的に全部の音が合流し一つのグリッチへと昇華していくエモーショナルな流れはエンドロールとして完成されすぎていて涙が出てしまう。死神のバラッドは元アルバムでは1曲目を飾るのだが、トリビュート作品における最終曲という立ち位置で聴くとその歌詞にもまた違った受け取り方ができるのも良い。小雨ちゃんと2lcdは一緒にART-SCOOLのカバーを共作しているし、続く2lcd→Lily Furyという並びも熱く、2lcd=液晶氏が参加するPot-pourriと、Lily Furyがlittlegirlhiaceの企画で対バンしたときの記憶は今でも鮮明に覚えている(前述のParadisもこのとき)。vol.1はこの弾き語りからUKロック風→曲を経るにつれ徐々に電子音とDAW要素が強くなっていく流れにすごくグッときてしまう。
元々ふにゃっち氏はlittlegirlhiaceとしてバンドでライブをするようになるよりも前からクラブでアニソン弾き語りをしていて、10周年を機にそれに立ち返った30分超に渡るアニソン弾き語り集がボーナストラックとして最後に収録。littlegirlhiaceのルーツとして確実にこれがあることが強く実感できる(たまにマジでそのままlittlegirlhiaceっぽいのがあってビビってしまう)。
vol.1とは対照的なマニアンクヌス氏による弾き語りから始まるvol.2は前半バンドサウンドのカバーが多めで、M2のSleepinsideのengage ringはlittlegirlhiaceがライブで演奏する3ピースの疾走感強めのアレンジに対し、ペースを落としてメロディのメロウさを改めて再発見する趣がある。シンセのフレーズをギターリフに置き換えて多層的に重ねるアレンジもバンドの個が出ててめちゃくちゃいい。littlegirlhiaceの公式(?)インタビューで知られるヨシオテクニカ氏もサテラで参加、歌声やリフのアレンジからlittlegirlhiaceをギターロック出身のJ-POPとして再解釈するような雰囲気がある。M6の坂口達也氏のリムってよはバンド感強めの原曲から大きく飛躍したNew OrderのThe Perfect Kissも連想してしまうディーパーズ風ニューウェーブ。ダビーなイントロとぐしゃっとしたギターの音から死ぬほどかっこよく、ヌッと入っては消える電子音の数々や多数のリフレインが行き来する完全に未知の曲。アニソンのサンプリングが仕込まれているところも系譜を感じるし最後のシンセもNew Orderっぽい。ちょっと諦観のあるボーカルで歌詞のイメージがよりシリアスに聞こえてくるし、完全ソロによる打ち込み故の隙間を見せる美学もあって全編通してすごく美しい名カバー。
PerfectNISEMONO氏によるnameless witchesはメロディックで超エクストリームなアレンジで、洪水の如く怒涛の音が押し寄せる展開に最初聞いたとき結構びっくりしたのだが、チルハナという全く別の曲のギターフレーズが盛り込まれている。本人による解説note(カバーセルフライナーノーツ ~littlegirlhiace10周年によせて~|にせもの@えり天)を見たところどっちもカバーしたかったが故に両方の要素を詰め込んだと書いてあってこの自由さがお祭り感のある企画の色が出てていいなと思った。こういう各視点のライナーを読めるのも楽しい。バンド名を冠する代表曲のリトルガールハイエースをカバーしてた人がほとんどいなかったのが結構意外だったけど、その唯一がM10の繁山亮氏でほんのりエモリバ風、というかエモに思いっきり歌ものを載せるとこうなるのかという新鮮さもあって、イントロのちょっと湿っぽいギター音一発でかなりやられてしまう。ベントラーカオル氏やシベリア氏といった、littlegirlhiaceのライブにおけるサポートメンバーも全員ソロで参加していてこちらもvol.2に収録。シベリア氏のhellsee girlはまちカドまぞくのOPをオマージュした渋谷系カバーでかなり感動した。あと普段ボカロを聴くことが自分はほとんどないんだけど今回のコンピを通して電子音声の作品が結構あって、今ってもう人が歌ってるのとほぼ遜色ないような調教ができてしまえるんだっていう驚きもあった。M17でlilyをカバーしているヘクターさんはアルマの手紙という自分が超リスペクトを掲げている音楽ブログの管理人であり(リンク欄にあります)、Syrup16gの愛好者であり、自分は彼がSoundcloudに上げている多数の弾き語りの大ファンである。新しい曲を聴けるという事実だけでとても嬉しいのだが、相変わらず歌声とドラムの音が死ぬほど良い。音の響きそのものがウォールオブサウンド的に層を作ってる感じはどことなくサイケデリックな雰囲気があるし、終盤丸ごとオリジナルの一説が挿入される原曲にはないアウトロもしっくりハマっている。
vol.2も同じくアニソン弾き語りトラックが30分超ボートラとして入っていて、ふにゃっち氏のセルフライナーを読むたびに貪欲に最近の流行とかポップスのエッセンスを取り込んでいて驚くのだけど、カバー集を聞いてても昔からの名曲に限らず昨今のアニソンが多数収録。あと昔ツイッターに投稿されたゆゆ式のせーのっ!のカバーが歌声にハマりすぎててすごく好きだったのだが、今回17分30分~から結構ガッツリやってくれててこれも嬉しい。
以上でした。リリースから大分経ってしまったけど改めて聞き返しても素晴らしいコンピだなと思います。10周年記念ワンマンが6月にあり、オープニングアクトとしてふにゃっちソロ(アニソン弾き語り)が出演というかつての経歴や今作のボートラと連動したライブもありました。そして先月OUT OF HIACEという再録ベストが10周年企画としてリリース、今まで全ての音源で全パート一人で演奏していたlittlegirlhiaceとしては初の、ライブにおけるサポートメンバーが参加した完全なるバンド編成、トリビュートにもそれぞれソロで収録されていたmint氏、シベリア氏、ベントラーカオル氏のプレイが堪能できます。見知った名曲群がかなりグルーヴィーな演奏で生まれ変わっていて圧巻。というか本当に名曲の数々で積み上げてきた歴史のすごさを改めて思い知らされる。音源とは大きく変わった、ライブでは定番と化していたengage ringのバンドアレンジがついに音源として聞けます。あと新曲のtunerがめちゃくちゃ良い。ちょうど2022年までの音源で統一されていて、23年のINTO KIVOTOS、24年のMISS THE GIRLは集大成とも言えるコンセプト作品だったので、これから初めて聞くって方はOUT OF HIACEとこの2作からチェックするのが入りやすいかと思います。
関連記事
各種ディスコグラフィ。
最後にトリビュートに収録させていただいたイラスト及びSWEETEST BITEに纏わる自分のテキストを貼って終わります。

