朱莉TeenageRiot

棚,日記,備忘録

discography⑧

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雑他に8枚。基本的にポストハードコア~エモ~ポストロックでしょうか。やっぱルイビルシーン周辺とかそれ以降って感じの音が好きですね。


 

Reiziger - Our Kobo(1998)

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Slint直系のルイビルのポストハードコアバンド達がもしそのままポストロックへと深化せずエモに向かったら・・・というイフが本当になってしまったようなバンドでその結果The Van Peltとかにも接近してる気がします。というわけでSlintのGood Morning,Captainとかの隙間のある硬質なギターリフとリズム隊のループ感でスロウコア~ポストハードコア~ポストロックまで想起する音の上、まさかのエモ直系の熱くメロディアスなボーカルが乗るというありそうであんまり似たバンド思いつかないし、元々SlintやRodanの名曲群はどれもこれもエモのクリーンパート→爆発と言った展開と近いとは思ってたんですが、実際にボーカルまでエモにしてしまうとここまでピッタリとハマるのかというくらい完璧です。めちゃくちゃいいですね。スロウコア+エモという意味ではKarateとかとも近いかも。

「Aspro 10 000」という曲ではミニマルに音紡いでスロウペースでじわじわくるの完全にルイビル直系だなとなるんですが、やはり曲展開の中で徐々に形を変えて新しい展開がやってくる中でエモ全開なボーカリゼーションにより非常にドラマティックな印象に変えてしまう。名曲です。Crainとかをめっちゃマイルドにした感じ。

 

 Shannon Wright - Dyed in the Wool(2001)

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アメリカのSSWであるShannon Wrightの3rd。再生して1音目の「Less Than a Morment」から張り詰めた緊張感が凄まじくアルビニ録音全開の衝撃のイントロ。ポストハードコアを通過してそうな硬質で冷たい質感のギターによる音の壁はもうこの手の音楽好きな人を一発でわし掴みにしてくであろうこと間違いないです。箱庭的録音の立体的ドラムがズンズン迫ってくる感じも凄まじいし、切迫した彼女のボーカルはやはりSSW的というか、もっとパーソナルなフォークロックとかにも通じる力強さがあって、スロウコアも想起する悲壮感はShipping NewsとLowを足して割ったような聞き方もできると思います。

アルビニ録音を追っていたら見つけたアーティストでかなりルイビルっぽいというかShipping New後期を思い出す感じでしたが、ハードコア出身では無さそうだし・・・ととりあえずバックグラウンド漁っていたらQuarterstick Recordsから出してるんですよね。ここTouch and Go傘下でRodan~June of 44~Shipping Newsはお馴染みでジェフ・ミューラー関連ほぼカバー、同じくRodanメンバーであるSSWのTara Jane O'neilや彼女のバンドであるSonora Pine、そしてRachel’sも全部このレーベル。というか今作Rachel’sとShipping Newsがレコーディングに参加しているらしく、普通にもうRodan関連作として聞けますね。

 

Shannon Wright - Over the Sun(2004)

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次作である4thでこちらも名盤。というかもうスティーヴ・アルビニ作品でも正直トップクラスに来るんじゃないかと言いたくなるくらい好きなアルバムです。前作「Dyed in th Wool」はもうShellacとか言いたくなっちゃうくらいドラムがガンガン前に出てきて存在感を発揮していたのも非常にアルビニ的でしたが、今作ドラムス変わったのもありよりリズムへのアプローチが強まった感じがして全体的に音の分離が非常にいいです。バンドの音全てが立体的なアルビニ録音の妙を楽しむといった感じで、これは今作ドラムス以外全てShannon Wright本人が一人で演奏しているというのもあるかもしれません。完全セルフプロデュースで音像を求め続けた結果というか、張り詰めた緊張感や鬼気迫るボーカルはそのまま全く違うバンドとしても聞けるというか。オルガンがメインの美しい曲もありますが個人的にB面から見せるマスロック・・・とまでは言わず歪んだギターによる捻じれたギターリフのループ感とドラムとの掛け合いと言ったポストハードコア的アンサンブルがめちゃくちゃ好きです。

結構PJ hervyと比較されることが多いイメージで言われてみればアルビニ録音だし悲壮感強いボーカルとか殺伐さとか確かに・・・となりますがその内面というか、ルーツ的には全く違うアーティストだと思います。とは言いつつ確かにPJ hervy好きな人はしっくり来そうではあるんですけどね。

 

The Mercury Program - The Mercury Program(1999)

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ポストロック大御所。ポストロック名盤選みたいのでよく見るバンドだし昨年やってたオールタイムベスト投票でもかなり上位にあった3rdは有名ですが、1stの頃は後期の美しいインストバンドのイメージとは大きくかけ離れた音数の少ない冷やかなポストハードコアバンドをやっていて、ここがピンポイントでめちゃくちゃ好きなんですよね。てことで1st、この頃はJune of 44とかShipping Newsと言ったジェフ・ミューラー関連のルイビルのバンド達のもろフォロワーって感じで、インストの印象強いですがこの頃は普通にボーカルも入ってます。でその辺と比べてもミニマルで骨組みのみの隙間の多いセッションとループはジャズを感じるとこもあるし、その中で誇張しすぎない程度に浮遊感のあるビブラフォンが乗るというサウンドで、ボーカルもルイビル直系らしくポエトリーディング~歌の中間とも言え非常に抒情的でギターの音は間違いなくハードコア通過後の冷やかさ。めちゃ良いですね。ポストハードコアにもマスロックにもポストロックにもどれにも"ギリギリならない"といった塩梅のアルバム。

 

The Mercury Program - From the Vapor of Gasoline(2000)

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彼らの代表作にしてポストロック史に残る名盤「A Date Learn the Language」を目前にした2ndですが全く違うし、僕はこの頃のアルバムが好きすぎて逆に世間一般的イメージの彼らはまた別の新しいバンドを聴くような印象になってしまう。そんな作品で1stの延長ですがもう少し音分厚く・・・というか大分ノイジーになっていて、もう完全にSlintフォロワーが行くとこまで行って完全なオリジナリティを確立させたポストハードコア名盤です。そしてこんだけボーカルがハマってるのにバッサリと次作からインスト化するの多少残念と言いたくなるほどで、歌がめちゃいいです、ジェフ・ミューラーが抒情的な歌ものやってるときを思い出すようなふわっと出てふわっと消えるような歌心溢れる囁きを「時々載せるだけ」なボーカル。一番好きなやつですね。あと前作以上にハードなおかげでビブラフォンの音が更に際立っててこんだけ硬質で緊張感溢れるサウンドの中でも浮遊感が絶妙です。

SlintやJune of 44と比べると全体に渡ってセッションっぽさがあってテンポも速いのでスロウコア感を抜いた感じでしょうか。ドラム主体で所々サウンドの材料はJune of 44的ですが組み立て方はもっとジャム感があるので、これをもっとスッキリして美的アンサンブルに寄せて名盤3rdになってくってのも納得。それ以降はそのままtoeとかEnemiesにも繋がれる感じですね。

 

 

Matmos - Matmos(1997)

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メンバーであるM.C.シュミットがサンプリングした音をドリュー・ダニエルが編集し繋げると言ったIDMユニットMatmosの1st。Warp勢と比べるとリズムへのアプローチってよりはサンプルをどう混ぜてどれだけ気持ちの良い音色でビートを作るかとかそういう方面で聞くようなイメージで、サンプル元もフィールドレコーディングや身の回りのものを叩いた音とかが多いらしく生音感強くかなりごちゃっとしてます。これを素材としてスッキリしたリズムが組まれていて混沌としているのにどこか聞きやすいです。

今ではIDMシーンの大御所でビョークとの共演で有名になったんでそっち方面の印象が強い人が多いと思いますが、元々メンバーのドリュー・ダニエルはMatmos結成前はCrainというハードコアバンドで活動していて、これがSlintやBastroと並ぶルイビルポストハードコアシーンの原初とも言えるバンドなんですよね。ということであのシーンのその後って見方ができるんですが、そうするとSlintはThe For Carnation、BastroはTortoiseGastr Del Sol、とそれぞれ音響へと向かいポストロック化するのでその辺と並べて聞けるアルバムだと思います。ポストロックという言葉自体が曖昧で音楽的一致感もそんなにないし、ルイビルのハードコアバンド達がその後実験的な方向へ進んでいったという目線ではJune of 44の「Anahata」やTortoiseの「TNT」はどちらもバンド演奏を素材として切り貼りして作ってるという、やってること自体も近いんですよね。というより2020年に出たJune of 44最新作ではMatmosはリミックスで1曲参加しているのがもう答えだと思うし、そこではJune of 44のセッションを素材にしたかなりカオスなリミックスをやっててめちゃくちゃMatmos的、20年越しの夢のコラボレーションが聴けます。

 

Roadside Monument - Eight Hours Away From Being A Man(1997)

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大好きなポストハードコアバンド。ジャケもめちゃくちゃかっこいいですね。内容も間違いないんですがいきなり開幕カオティックで激情たっぷりな爆裂ハードコア「Sperm Ridden Burden」から開始するので、ジャケの感じとかボーカルもエモ直系にもいきそうな熱さでそういう感じか・・・と聞いてると、それは本当に一面だけでしかなく(というか一曲目のインパクト強すぎなだけで実際激しい曲のが少ないです)時折スロウコアとも言える程の静寂を見せる瞬間があるんですよ。かと言って静寂と激動を行き来する極端ではなく一定のテンションの中で素直にコロコロと表情が変わってく感じで、スクリーモ寄りの場面でLovitt Recordを連想したりスロウコア経由でSlintやJune of 44辺りと接続・・・できそうでできない感じとか、カンザスのエモがチラつく感じとか、あくまで言われればわかるかも程度を維持してるというか、その状態で素直にポストハードコアやってる感じがあります。あと全体的に枯れた質感もまた独自の雰囲気であんまり結び付けづらいし、乾いたMineralとして聞くのがしっくりくるかもしれない。

 

Roadside Monument - I Am The Day Of Current Taste(1998)

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3rdで最終作ですがもうエモの領域にまで来ていて、個人的には前作のどこにも定着せずといった良い感じの折衷具合が好きだったので少し寂しいですが、これはこれで轟音バンドサウンドのままどんどん展開していくところはマスロックを感じつつそこまでは行かない感じでJ・ロビンスとかあの辺をイメージして聞くとめちゃくちゃかっこいです。とか言ってdiscogs見に行ったら本当にJ・ロビンスプロデュースでちょっと自分でも笑ってしまったんですが、まさにその系譜でJawboxを更にハードにしたような、Arcwelderを轟音寄りにしたような感じ。ちなみに解散後メンバーはまた全く違う方向性のUnwed Sailorというバンドになりインストポストロックの大御所へとなってくんですが、こちらでは結構スロウコア感が強くてそこがまた前作「Eight Hours Away From Being A Man」の乾いたスロウコア感と通じてくるところがあったりもします。

 

 


 

 


結局また近いシーンについてバラバラに書いてしまったんで近いうちどっかまとめます。連想ゲーム的にネタ探してるとつい同系列になってしまうというか、今回もSlint以降、とほぼ同じ枠ですね。

 

 

Bedhead / The New Year

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最近またちょっとスロウコアブームが来てるのでRodanとかに次いでよく聞くBedhead及びその続編とも言えるThe New Yearの全アルバム感想です。


 

Bedhead - WhatFunLifeWas(1994)

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Bedheadの1st。Yo La TengoやRodanと言ったインディーロックの要素とポストロックの要素どちらも持つバンドが好きな方は無添加でそのど真ん中をやってる今作を聞くべきだし、Rodanが残したスロウコアきっての大名曲「Bible Silver Corner」に心を打たれた人はRodanを聞くのではなくこれを聞くべきでしょう。あの曲をゆったりバンドサウンドの歌もので再編成したような曲がたくさん入ってるしボーカルもRodanのジェフ・ミューラーのシャウトしない版、Slintのマクマハンとも通じるボソボソとしたポエトリーと歌の中間とも言えるもので近いフィーリングで聞けます、こっちの方がよりメロディアスかな。

名曲「Bedside Table」を筆頭にギターフレーズのループが中心のシンプルな曲が多いんですがとにかくグッドメロディで聞きやすく、途中からギターがフィードバックノイズにまみれ爆音と化しドラムもやかましくなってくってタイプの曲が多いですね。「The Unnpredictable Landlord」ではカタルシスを迎えたあとにハーモニクスでフレーズ再度弾く部分はやっぱりポストロックも感じる激エモーショナル展開で、エモやポストロックの源泉とも言える作品の一つだと思います。

 

Bedhead - Beheaded(1996)

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2nd。サウンド的に大きな変化はないんですが曲のテンポはより遅くなり、全体的にくたびれた雰囲気も出てきてスロウコア度は一気に増します。

元々Bedheadはメンバーにバイオリンを入れたかったらしいんですが誘うことができず断念、じゃあギターの音で再現しようと意識し始めたことでトリプルギター体制での"常に誰かしらがフレーズを紡いでいる状態"を持続させたらしいです。でもBedheadの1stの印象って割と轟音でカタルシスを得るタイプの印象でバイオリン入るイメージあまり湧かなかったんですが、The Sonora Pineや33.3などの後続のスロウコアはメンバーにチェロやバイオリンが参加しているので、後追いで考えるとやはりスロウコアに弦楽器が入るのはかなり理に叶うというか、むしろかなり早かったのではという気すらしますね。で1stの感想でRodanと近い感じで聴けると書いたんですがおそらく原因はこの辺にあって、Rodanのギターフレーズの紡ぎ方って割とBedheadがやっているバイオリンを意識したプレイと似通ってる気すらするし、実際に後続のRachel'sではRodanの曲のバイオリンバージョンとも言える曲までやってるのでかなり納得。

で今作スロウコア度が増したということでその「バイオリンのようにギターフレーズが紡がれていく感じ」を最も実感できるアルバムだと思います。前作と比べるとボーカルも結構聞き取りやすくなっていてThe New Yearで本格化してくる歌ものとしての味わい深さも滲み出てきました。1stのように一気に盛り上がって多幸感溢れる展開があるというよりはじわじわと徐々に音を分厚くしてくようなイメージで、爆発パートも前作程ドラムがラウドになってないのも含め次アルバムへと続きます。

 

Bedhead - Transaction De Novo(1998)

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3rdアルバムで大名盤。今作からスティーヴ・アルビニ録音でTouch And Goから再発とこの時期のインディーロックで一番間違いない組み合わせですね。

で内容としてはThe New Yearのプロトタイプとも言え・・・いやむしろThe New Yearの1stがBedheadの4thって方が正しいか。それについては後述しますがとにかく前作、前々作の総決算をアルビニ録音による生々しい箱庭サウンドで録った作品で、音の生々しさ重視のためトリプルギターによる音の紡ぎ合いと言った要素はかなりそぎ落とされてしまってますがその分線の細いタイトなギターの紡ぎ合いとその上で浮き上がってくるメロディーが極上。この後LowやMagnolia Electric Co.にも続くスロウペースだからこその音と音の隙間の広さやリズムに重きを置いた"アルビニ録音によるスロウコア"の金字塔的作品の一つでしょう。しかもBedheadなのであんまり悲壮感だったり殺伐さはなくてサウンドは硬質なのにどこかユルく聞けてしまう、この絶妙さは同じくアルビニ録音で知られるSilkwormと通じるとこがあるし、Silkwormも00年代以降アメリカーナ~フォークロック化しますがその時期にBedheadのカデーンもメンバーとして参加するので完全に関連作ですね。

純粋にどの曲も良い曲しかない・・・というシンプルに名盤なんですがとくに「More Than Ever」「Parade」は上記での"アルビニ録音のスロウコア"のうまみがたっぷり詰まった名曲。初期の爆裂ノイジーっぷりは完全に失われてるんですがその分音の引き算、足し算の塩梅が最高で、ノイズパートの名残とも言える絶妙にやりすぎないギターの重ね合いがスロウコアの静寂ループの中から時々顔を見せるのがとにかく最高です。B面からは意外にもバラエティに富んでいてスライドギターが出てきたりアップテンポのエイトビートな曲も出てくるし、なにより驚きなのが「Psychosomatica」で、ジャンクロック~ポストハードコア感満載な不協和音ギターを前面に押し出した今までの彼らからは想像もつかない曲でこれをアルビニ録音でやるのはもう完全に確信犯。

 

The New Year - Newness Ends(2001)

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1st。Bedhead解散後にバンドの核とも言えるカデーン兄弟によって作られたバンドで当初はプロジェクト的な感じでメンバーも流動的だったようで今作からTouch and Goに。で作風なんですが先ほど述べた通り・・・もしBedheadが解散しなかったらこんなアルバムになる予定だったよと本人達が言う通りもろTransaction De Novoの延長、しかもスティーヴ・アルビニ録音で個人的に前作以上にアッパーな曲が多い気がするし「Carne Levare」「The Block That Doesn't Exist」とかめちゃくちゃキャッチーで疾走感ある曲で、ギターのちょっとジャキッとしたタイトな質感とどんどんドライブしてくドラムはもうマイルドにしまくったポストハードコア経由のインディーロックという感じ。

とは言いつつ「Reconstruction」「Gasoline」とかは割とパブリックイメージなBedhead調の曲ですが相変わらずスローペースでも全然静寂寄りじゃないし、歌の比重も増してる気がするし、Gasolineはもうキラーフレーズ繰り返すタイプの曲でスロウコア感をやんわり残したままポップになってて本当にキャッチーすぎる・・・。ReconstructionではBedhead程爆発させずにリフのテンションもそのままじわじわと絶頂に持ってくところはもう貫禄すらあります。

 

The New Year - The End Is Near(2004)

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1曲目の「The End's Not Near」からもう印象全く違ってびっくりですが大名盤、というか代表作としてよく挙げられる曲でめちゃくちゃ牧歌的なイントロと歌で、もうスロウコアってよりアメリカンルーツロックとかフォークとかSSW的な音になっていて割とThe New Yearと言えばこういイメージの人が多いと思われます。続く「Sinking Ship」も同系列。丁度この頃ってバンドのフロントマンであるカデーンがSilkwormにサポートとして参加してた時期で丁度Silkwormもアメリカーナ化してきた時期だしUSインディーと言えばWilcoとかも出てきて逆にWilcoはカントリーからポストロックに接続し始めたり、サブポップからはFleet Foxesとかも出てくるんで「USインディー」という概念がローファイな緩いオルタナからだんだんとルーツっぽい方向へ移行してきた印象があります。

しかしThe New Year、実はこのアルバムもそういう曲ばっかではなくむしろ3曲目「Chinese Handcuffs」はBedheadラストアルバムを想起させる静と動を行き来する冷たい感触でかなりかっこいいし、この鋭角なサウンドはもうアルビニ録音がめちゃくちゃ映えますね。他にも「18」は彼らにしては珍しく7分超の大作ですがバンドサウンドを突き詰めて自然とポストロック化してしまったという大名曲。個人的にBedehad初期とかにあったポストロックのプロトタイプっぽい雰囲気がここにきて戻ってきた感覚で、しかも繰り返されるリフの上を滑るメインギターは今のNew Yearだからこそな少しブルージーな空気もあるしで集大成とも言える曲になってます。

 

The New Year - The New Year(2008)

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前作までは一応三本のエレキギターが入るというBedheadから継承された作風で、音楽性もフォーキーになりながらどちらかと言えばやっぱりエレクトリックな音がメインでしたが、今作は一曲目の「Folios」からもうアコースティック色が強くてオルガンもガッツリ入ってきて完全に前作の序盤2曲を推し進めた感じです。彼らのアルバムはどれも第一にメロディーがめちゃくちゃ良かったですがおかげでそれが一際目立つ作品になってると思います。

とは言いつつ「The Company I Can Get」は割りと前作からあるアッパーな曲になってて前作~前々作で培ったアルビニ録音の硬質なサウンドを軸にした静と動のコントラストのあるタイプの曲で「X Off Days」はこれまた結構激しく、1曲目を除くと割とそこまで印象変わらないのですが本編はB面でしょう。ひたすらテキサスの地をドライブしてるときのサントラにしたくなるような牧歌的でフォーキーな曲が多くそしてやっぱオルガンがめちゃフィーチャーされてますね。雰囲気としては完全にIdahoとかと並べて聞けるようになっていてA面とB面でちょっと毛色が違う作品かもしれません。

 

The New Year - Snow(2017)

最新作でなんと9年の時を経てリリース。90sのポストロック前夜にインディーロックやってた人達は激動のシーンの中でどんどん新たなジャンルを突き進んでくイメージありますが、The New Yearはほんとに自然体にいつも通りを貫き通してますね。もう長いのもあって円熟しきったような貫禄を感じるくらいとにかく純粋に曲が良いのですが、アルビニっぽい硬質で空間的な質感は今作あんまりなくてむしろギターの音色を聴かせると言いますか浸透させてくような優しいタッチになっていて、後は「Snow」とか「The Beast」ではキーボードの音も相まってポストロックっぽい聞き方もできるかもしれないです。全体がそっちに寄ってると言うよりは自然体でインディーロックやってるだけでポストロック感が滲み出てきたとかそういうのに近いかも。あと大分時間経ってるはずなのに何故か声が若返ってるようにすら感じる・・・。

 

Bedhead - 1992-1998(2014)

Bedhead - LIVE 1998(2015)

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1st〜3rdとその他音源全てをまとめたコンピレーション。でアルバム未収録曲が結構あって中でもJoy DivisionのDisorderは必聴です、と言うかこれ結構当時話題になったらしいのでBedheadを知るきっかけになった人も多いと思います。ちなみに僕も完全に後追いですがこのカバーが最初に聞いた曲だったりしたんですがJoy Divisionのカバーでスロウコアやるって言うとGalaxy 500のceremonyを思い出すし、ピッチフォークでGalaxy 500とかヴェルヴェッツフォロワーとして評価されてるのはこの曲がきっかけな気がしてきました。元々メロディーが良いのでインディーロックとして最高な曲になってますので是非とも。

ライブ盤の方は1stの曲中心ですがむしろ1stはBedheadの中で最もリフが際立ってるし静→動へと爆発していく極端な曲が多いのでこれがライブ映えしないわけないですね。特にBedside TableとThe Unpredictable Landlordは聴く前から想像していましたが凄まじいことになってます。逆に轟音要素の少ない曲は音源よりどこか牧歌的な雰囲気がある気もしてめちゃくちゃ良いですね。

 


以上でした。個人的にIdahoとかRed House Paintersとかと近いタイプのバンドという印象だったのが一時期聞き返したところ意外とRodanとかとも近いなと思ってきてその辺から掘り下げていきました。

スロウコアと言えばハードコアやってた人達が反動でやってる印象があるのですが彼らの音からはあまりそれを感じず、しかしButthole Surfersのレーベルから出してるのでやっぱそうなのかなと思ったけどインタビューを見るとどうやら周りみんなハードコアやってたけど僕らだけ違った、でもみんな僕らの音楽性に寛容だった、とも言っててそのパターンもあるのか~となったけどいやそりゃあるよなと思ってしまいました。みんながハードコア出身ってわけじゃないもんね。

邦楽オールタイムベスト③

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前回前々回から続きます。


 

NUMBER GIRL - SAPPUKEI(2000)

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スタジオ盤で選ぶのならこれがベストかなぁ。久々に聞いてもやっぱりよくて、割とナンバガってスタジオ版よりライブの方が聞きやすくてオススメって話を見るしそれにも納得なんですが、あくまでそれはSCHOOL GIRLS DISTORTIONAL ADDICTが入門としてよく勧められる背景がある気がします。とくにSAPPUKEIはデイヴ・フリッドマン録音によってライブでは聞けないダイナミズムも多々あるし、とくにRapemanとかを思い出す拡散しまくった金属的ノイズとダブ処理が結び付けられてる感じは唯一無二。向井秀徳が彼に惚れ込むきっかけとなった破壊的ドラムサウンドは勿論、U-REIやABUSTRUCT TRUTHでのポストパンク由来のダブ~レゲエ通過のハードコアコーティングとも言える曲はいま聴くとベストだなと言いたくなってしまいます。

あとやっぱ歌詞と本格的に出てきた冷凍都市との対峙、そしてジャケが醸し出す世界観がたまらないですね。地方から出てきたときの孤独や焦燥感と言った閉鎖的感情が部屋で録ったような生々しい録音で「孤独主義者のくだらんさ」を歌うのはどこか一人暮らし感も想起するし、これに"殺風景"を名付けるのは余りにもかっこよすぎる。タイトル曲であるSappukeiの静と動の行き来も内面的な感情の動きを感じてエモーショナルになってしまう。やっぱり名盤。

 

uri gagarn - (untitled)(2004)

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group_inouでボーカルも務めてるフロントマンによるバンドで、実は自分はinou経由で知ったのですがそんなuri gagarnの1st。自分の大好きな90s以降の海外のアンダーグラウンドシーンを完全に消化し受け継いでいるバンドで、かつて全く予備知識なくライブを見て大きな衝撃を受けました。北海道ハードコアシーンやナンバーガールに憧れていたとのことで確かにあの辺と近いルーツであろうオルタナ~ポストハードコアの空気感かなりありますが、異常に緊張感というか不穏な空気を漂わせていてSonic YouthUnwoundと言ったバンドと比較されることが多いですね。ただ両者程に実験的な要素はなくあくまでジャンク~ノイズ要素の強いインディーロックという感じで聞けます。

個人的にuri gagarnにはハードコアバンドが徐々にポストロックへと深化していくその途中経過ともいえる音に近いものを感じていて、SlintやRodan~Shipping Newsといったルイビルのポストハードコアやスロウコアを強烈に思い出すシーンも多々あったり、Bedhead+A Minor Forestとも言える一曲目「Mutant Case」のイントロから溢れ出るスロウコア感、そこから徐々に狂っていき狂気的なノイズギターソロへ飲まれる様はグランジとかUSインディーとかが好きだった当時の自分には劇薬でした。一曲目で衝撃を受けたアルバムを挙げろと言われたら間違いなく上位に食い込みますね。

 

クラムボン - id(2002)

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普段あまり聞くタイプのバンドではないんですがこの時期のポストロック三部作である「id」「imagination」「てん、」は全部好きで、そん中から一枚挙げるとなったら今作。最初にハマったきっかけは音楽性よりもスリーピースバンドとしてのスタンスとか精神性にあって、1st~2nd辺りはすごくポップでシンプルな歌ものジャズロックという感じだったけど実際ルーツはバラバラの三人がストイックにやっててメディアや世間のイメージとはまるで違う内情があったらしく、インタビュアーと嚙み合わないことが多々あったというのに魅力を感じたりしてました。

でバンドとしても、アルバムを重ねる中でのマンネリ化を嫌ったらしく4th~6thのポストロック三部作もたぶんそういう流れだろうし、その後もセルフカバー作を定期的に出したり企画物のライブ盤を出したりカバーアルバムを2枚出したり・・・と本当に我が道を突き進んでてどっから聞いても楽しいバンドですね。でid、完全にポストロックでアダム・ピアース本人が参加してるMice Parade歌謡。どっちかというともうバンドサウンドの方が後ろになってしまってて名曲「雨」では完全に打ち込み+原田郁子の歌になってるしインスト曲も多く、「Eel Restaurant」ではドロドロのダブから最後ノイズでズタズタにしてく曲で全体的に美しいのに歪と言ったこのちぐはぐな感じ今作を象徴してる気がするし、今までこうなる兆候すらなかったバンドが突然変異してシカゴ音響派に寄ったのかっこよすぎでしょうと思ってました。

その中でも「Adolescence」「道」みたいなクラムボン節のポップな歌が載ってる曲もあるしで、とっつきづらいですが一度入り込んでしまえば最高に充実したアルバム。Dylan Groupとか好きな人にも。「Charm Point」はドリーミーな空気感で疾走しててノイジーだし今聞くとオルタナとかシューゲとも近い距離で聞けると思います。

 

 

Luminousorange - Drop You Vivid Colours(2002)

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こちらもナンバーガールから知ったバンドでコンピが有名ですがスタジオ作品としての統一感ならこれかなぁ。今作アヒトイナザワ中尾憲太郎というナンバーガール譲りの強靭なリズム隊なのでシューゲイザー版の近隣作としても聞けると思います。ちなみにライブでのサポートメンバーは現ZAZEN BOYSカシオメンだったりもするので完全にあの辺のオルタナシーンの渦中真っ只中といったアルバムですね。

Pale Saintsに影響を受けて結成されたバンドとのことですがPale Saintsはもうちょっとマイルドというかマンチェスター寄りな印象があって、こっちはUSオルタナを連想するジャキっとしたちょい重めのギターサウンドが印象的。浮遊感溢れるUK譲りのシューゲイズではなくUSオルタナ~インディーロックに近い地に足がついた質感で、Dropp NineteensとかSwirliesとかあの辺の現代ギターロックへと脈々と受け継がれてそうな「オルタナティヴ・ロック」の中に内包されたシューゲイズ感みたいのをを連想してこの原初感はかなり90年代をフラッシュバックします。あと曲の尺はそんなに長くないのに展開の多い複雑な曲構成で頭追いつきませんが、全然マスロックとかポストロック的ではなくあくまで全編をノイジーな轟音ギターが覆いつくしてしまってるのが全然類似作思いつかないし、そん中でも所々印象的なキラーフレーズやギターリフが飛び出してくるのについつい笑顔になる。

 

 

キウイロール - KIWIROLL ANTHOLOGY(2008)

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廃盤になってしまったアルバムやシングルを総括したコンピレーションで実際の活動時期は90年代~04年解散。これは08年の再発で完全に僕も後追いです。バカネジという大名曲を聴きぶっ飛んだ人はかなり多いと思うし僕自身漏れなくその一人なわけですが、所謂ポストハードコアとか激情系をよくここまでキャッチーにしたなぁと思えるくらいメロディーがとにかく耳に残るし、何より今にも壊れそうで未完成のまま爆走しているような擦り切れたボーカルはまさしくエモでした。チョモランマトマトとかはこのバンドからめちゃくちゃ影響受けたんだろうなぁ。

サウンドの方ですが同じく北海道のNAHTやCOWPERSといったポストハードコアとはちと毛色違っていて全然硬質に感じないというか、ローファイのままエモに向かったLovitt Recordsって感じがして「1から10」はFour Hundred Yearsをハードコアってよりエモとして聞く人にはめちゃくちゃ刺さるはず(刺さりました)。ポストハードコアに無理やり乗っけたようなぶっきらぼうな日本語はブッチャーズも連想するし、がむしゃらなシャウトは激情系にありがちなマッチョなスクリーモ感も全く無くむしろSuperchankとかPavementみたいなインディーロックのぶっ壊れ感覚でも近いかもです。

 

 

ZAZEN BOYS - すとーりーず(2012)

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ex.NUMBER GIRL向井秀徳による現在も活動中のバンドで僕が知ったときナンバガは当然解散、てことでリアタイで追ったりライブに行ってたのはこちらで現行最新作の5th。ZAZEN BOYS、初期はナンバガで歌っていた冷凍都市問題と地続きになっていて、それ以降もファンクに接近しますが元々ナンバガでもポストパンクを経由したダブ~レゲエだったり、そもそも比較されがちだったPop GroupやGang Of For自体がファンク寄りなので、ナンバガの時よりもうちょっと奥に行ってるって感じもします。昔からプリンスが好きとのことでその辺の影響がより色濃く出ながら、オルタナ~ポストハードコア経由のお馴染みのジャキジャキのギターサウンドやノイズが挿入されるという本当にかっこいいバンドでした。それでも全然ミクスチャー的な色が出ないのもすごかった。

で今作、集大成にしてしかもポップという本当に隙のない名盤。「サイボーグのおばけ」「ポテトサラダ」は今まで通りキメも多様しつつとにかくユーモラスな歌詞がファンキーな曲調の中でハマってくお馴染みのナンバーですが、個人的にライブで見て衝撃を受けたのが「泥沼」です。NUM-AMI-DABUTZがPop Groupの「Y」だとしたら泥沼は「How Much Longer」でしょう。あと地味にZAZENではハッキリとした歌ものをやってこなかったのが前作ZAZEN BOYS4でそれも解禁、そういうナンバガ時代からある向井秀徳の切ない歌もの路線が色濃く出たのが「破裂音の朝」ですね。これと、あとSAPPUKEIの続きのようにも思える「天狗」は普通にナンバーガール時代を思い出してしまうくらいエモーショナルな名曲。あと「はあとぶれいく」もポップで聞き流せるけど夜中にギター持った向井さんがセンチメンタルに弾き語っている姿が想像できるような曲でめちゃくちゃゆるゆるなP.I.L歌謡というようなものになってます。

こういう今まで通りリズムでキメていくタイプの曲とキャリアを総括するレベルの壮大な名曲が全然違和感なく並んでいて尚且つ全体的にポップ・・・という、個人的に文句無し最高傑作と思っていて、もう8年以上リリースされてませんがぶっちゃけこれ出したらしょうがないかもという気持ちもあります。それでも聞きたいけど。

 

 

People In The Box - Ave Materia(2012)

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People In The Box、今聞くと代表作でもある前作Family Recordはマジで歴史に残るレベルの名盤だなとなるんですが、このバンドもこれという一枚を決めるのが非常に難しく当時一番ハマっていたAva Materiaを。残響出身だしマスロックとして語られてる印象ありましたが今作はストレートに歌もの要素が強くて聞きやすくて好きでした。

そもそもマスロックと呼ばれて連想する色々なバンドとPeopleを並べても違和感しかないし完全に影響だとか横の繋がりだとかを語る文脈から切り離されたバンドだと感じるし、18年作のkodomo rengouのインタビューで波多野さんは作曲の際に自分の聞いてる音楽からの影響を"封印"できると言ってるんですよね。残響のオーナーが言うには"相当ヤバいディガー"である波多野さんがそれを封印し純粋に作ってるっていうのがこの無添加な得体の知れなさというか奥が見えない音にとてつもなく説得力がありました。

今作歌ものが多いということでやっぱどうしても歌詞に目が行っちゃう作品で、"ゆうべ からだを売ってみたんだ こころを切り離すために" "絶対にからだから逃げられないと知った君は おかしくなってしまった"というおぞましい歌詞がこれでもかというくらい優しくポップな曲調で歌われるのは今まで以上にファンタジックな世界の皮を被った現実との対面という色がある気がして、歌詞と連動して二転三転してく演奏も相まってもうこれはプログレの域に突入してると思います。

で今作何が好きだったかと言うとFamily Recordではまだマスロッキンな曲が多く残響と接続できるのもわかる感じだったのが、アコースティックの色がぐっと増してて、曲の展開も複雑っちゃ複雑なんですけど歌が乗るところは割とシンプルにメロディーを聞かせるようになってていつも以上に温もりを感じて聞きやすいです。僕はどことなく、それこそ「時計回りの人々」「球体」からは箱庭の中で気づかぬ内に徐々に首が締まっていくような印象を受け、それが今まで以上に牧歌的で優しい音で紡がれているのが本当に"内側で鳴ってる音"という気がして、結構オウガのhomelyとかとも近い作品という感じがしました。

 

ASIAN KUNG-FU GENERATION - ファンクラブ(2006)

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アジカンで今でも一番聞くのなんだろうなと考えたところファンクラブで、定期的に聞いて影響を受けてる気がします。高校生のときは「桜草」とか「真冬のダンス」みたいな割と身近に感じれる虚しさが漂うポップソングみたいのが好きだったけど、この年齢まで積み上げてしまったものありきで聞くと"慌てなくたっていつか僕は消えてしまうけど""そうやって何度も逃げ出すから何もないんだよ"という1曲目の歌いだしからぶっ刺さってくるもんがあり「暗号のワルツ」がめちゃくちゃフェイバリットになってしまいました。

てわけでいつ聞いてもどっかしらハマるとこがあるアルバムで最後まで暗いムードが漂っていて、音楽性も初期のギターロックのフォーマットからは抜け出して所謂ポストロックやディスコパンクに近づいたと言われてる時期ですね。

前々からゴッチが「影響を受けた」「大好きだった」と語るバンドがそこまで反映されてるのか?というインプットとアウトプットのちぐはぐさがあったと思ってますが、実際初期はやりたいことよりも今の自分達のできる範囲でどれくらいかっこよくできるかを目指したと言ってた気がするのでそれは仕方がないのかもしれないし、そもそもゴッチの趣味が90年代頃とそれ以降どんどん変化してる気がします。それこそKANA-BOONと言ったハッキリと影響を公言して売れたフォロワー勢とあまり交流せずceroとか森は生きているとかスカートとかあの辺をフックアップしていたりとか、で実際それがアジカンの音と近いか?と言われるとやっぱり違って、ゴッチも初期の頃にできてしまったアジカンのフォーマットとやりたいことのズレの中で試行錯誤してたのがこの時期なのかな・・・とか思ってしまうし、その挾間で生まれたのがファンクラブなのかなという気もします。

音楽性については死ぬ程内容について語られてると思うし、あとはもう空白依存症の記事(ASIAN KUNG-FU GENERATION『ファンクラブ』(2006年): 空白依存症)が完璧なので今作が好きでまだ読んでない方は是非読んでください。僕はこれに多大な影響を受けました。あとどの曲も本当にドラムがかっこいいアルバムでワールドアパートとかブルートレインは今聞いても凄まじいですね。


 

終わりです。本当のルーツでありベストでもあるアジカンとかあの辺の00年代ギターロックについて書くのになんかすごく抵抗がありますね。次はpillowsかな・・・

 

 

恵庭椎ちゃん

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描きました。スーパーカブより恵庭椎ちゃん。

長かった・・・その間約二か月(というかそれ以上)、いかんせんお絵描き自体まともに勉強したことが無く、なんとなく一年半続けた来たという身としては難易度が高すぎた。てことで今までみたいに感覚では流石にもう出来ず描いてく中でパースだのなんだの色々知る必要があったし、資料集めのためにチャリやらその辺の街やら写真撮ったり・・・楽しかったけど。

で描いてた時間が長すぎてやり途中で俺自身がレベルアップするので、その結果最初の方にやった家とか床とか矛盾に気づいたりクオリティに差が出たりして、こりゃいかん・・・と描き直すんですよね。一生修正が終わらず、てことで予想以上の難産でしたがひとまず完成できてよかったです。

地味に背景のポスターとか凝ってスーパーカブアニメ版のポスター使ったりラーメン屋を実際によく行くところを参考にしたり、舞台周辺の土産屋とか行事調べるのも楽しかったです。。でアニメ、本当に素晴らしかった・・・ぶっちゃけ今期はかげきしょうじょ!!がつい先日最終話迎えましたが間違いなく年間ベスト級なんですが、ただアニメを見てこうスコンと頭をぶん殴られる感覚というか「すごいもの見たな」という感覚はスーパーカブ第一話に勝るものはなかったです。まだあるけど今年ダントツでベストアニメはこの二作かなぁ。スーパーカブを見ていると"今では自分の中で当たり前になってしまった日常のささいな幸せ"を再確認させてくれる余りにも丁寧な生活描写、そして無い無いの女の子を自称する女子高生がカブを手にし世界が少しずつ豊かになっていく様は見ているこちらが救われているような錯覚までありました。途中から友人も増え日常アニメとして普遍的になってくんですけどね、ちょっとアニメ自体の雰囲気も変わってきますが椎ちゃんはその頃に出てきます。

 

月姫が発売したり引っ越しがあったりと忙しくて全然なにも書けてませんが、ぼちぼち下書きは溜まってるのでまたどこかで・・・。

discography⑦

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最近ちょっとポストロックブームがきてるんでディグって良かったやつとか、聞き返したやつとか、あと近いなーって雰囲気の好きなポストロックを8枚。


 

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Bastro→Gastr Del Solを率いてまさしくハードコアがポストロックへと発展していくその様を体現しているデヴィッド・グラブスによるソロ作。ちゃんとリリース追えてるわけではなくかなり多作っぽいんですがこれは一応4th?で時期的にはGastr Del Sol終了後ってのもありソロだしより実験的になるのか・・・と思いきや、かなり聞きやすいSSW的な作品になってます。でも確かにサーストン・ムーアとかパホ(Slint〜Tortoise)とかバンドで実験的なことやってる人こそソロではシンプルな歌ものが多い気がしますね。

とは言いつつ今作、ソロでもかなりポストロック的な質感で一曲目の「Seagull And Eagull」から再生してマスロックだったのが非常に好みで、緩やかな歌物SSWにマスロック的なリフって感覚としてはアメフトとかと近い感じで聴けますし、何よりフレーズがもうオリジネイターとしての貫禄たっぷりでインプロ的に自然と出てきたギターリフが素でマスロックになってしまったという雰囲気があります。さすがBastroで元祖マスロックと呼ばれていただけあり、やっぱ地続きなんだというのもわかるのが良かったです。ちなみに今作ジョン・マッケンタイアがドラム叩いてるようで布陣もBastro、なんですがこの時期の彼と言えばThe Sea And Cakeだしそっちと並べて聞けますね。 

 

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引き続き次作、めちゃくちゃ良くて今まで聞いてなかったの後悔する程ハマってます。相変わらず自然体でギターを弾いて歌を歌うSSW的アルバムですが、前作での弾き語りを肉付けしていったという感じからよりロックバンド的アルバムになってる気がします。ギターも分厚いし所々バンド全体でドライブしてくようなとこもあるし(Pinned To The SpotとかDon't Thinkとかかなり好きです)、ポストロックってより普通にもうUSインディーって感じで聴けますね。とか言ってると終盤で内なるGastr Del Solが顕現して前半からは想像もつかないくらい実験的なインストへと放り込まれるのは流石としか言いようがありません。しかし繰り返し聞くとバンドっぽい曲でも「The Nearer By and By」の後半のうっすらとしたノイズワークはGastr Del Sol経由のSSWって感じで非常にしっくりくる、と思ったらどうやらここはMatmosも関わってる模様。ルイビル人脈の横の広さを実感しますね。後は今更感かなりあるんですが、彼はハードコアやってたり音響派やってたりでボーカルが全面に押し出されたバンドを余りやってなかったのもあり忘れがちでしたが、素直に歌声めちゃくちゃ良すぎる・・・。ソロでは結構メロディアスで歌物としても良い曲ばっかなんでそれだけでも聞けてしまうんですが、変則的なギターフレーズの上でそれをやってのけるのも彼のキャリアならではって感じがします。

 

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ポストロック名門Southern Recordsより。シカゴ音響派周辺のポストロックバンドDianogahの2ndでアルビニ録音、ちなみに次作からマッケンタイアが手掛けるのもあり完全にシカゴ付近のインディーロック~ポストロック人脈ですが、音の方もベース二人+ドラムという変則構成でマスロックにまではいきませんが個々のフレーズの組み合わさりと反復を楽しむって感じで、音で埋め尽くしてしまわないからこそ空間の隙間を感じられる気持ちよさというか、こういう細いアンサンブルのポストロック好きすぎですね。で抒情的な歌が乗る・・・て感じで音を分厚くしすぎず徐々にエモく盛り上げていきます、結構展開も多いし少しジャズ入ってくるのもシカゴっぽい。スロウコアのような絶妙な抒情的な緩さも感じられていい具合にルイヴル発のポストロックとシカゴ音響派の橋渡しになるバンドだと思います、June of 44とToirtoiseの間を埋めるというか。

 

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今更聞いたんですが知人のスロウコアプレイリストにい入っていてめちゃくちゃ良くて最近かなり聞いてます。音が誇張してこない生音による空間系ポストロックとして聞いててとにかくドラムの音が余りにも良すぎる・・・で調べたところやっぱりアルビニ録音、それどころかメンバーは00年代ポストロック台風の目の一つとも言えるTempolrary Resdenceのオーナーが在籍してるらしく、もう布陣から間違いないんですが内容も完璧。スロウコアとかああいう抒情系でフォークロック寄りの雰囲気ありますがかと言ってずっとスローテンポなわけではないし(むしろスロウコア的な曲の方が少ないかも)、存在感のあるドラムが曲を牽引していってその上で繊細なギターフレーズが紡いでいくセッション系ポストロックですね。アメリカーナにも寄らずオルタナっぽい音でまとまってます。レーベルは勿論Tempolrary Resdence。

 

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以前ここ(Slint以降のポストロック~ポストハードコア)で出したA Minor forestのメンバーが在籍したバンド。98年作ということでポストロック全盛、というかファーストインパクトって感じしますがこの中で紹介しているので例にもれずシカゴ音響派っぽい空気感にスロウコアを足した感じ。元々A Minor Forestの頃からスロウコア要素かなり強かったですが、あちらではどっちかと言うと完全にポストハードコアだったのがあの狂気は完全に無くなり、メンバーにチェロがいるためチェロ特有のワンフレーズ地続きになってどんどん変化していき、その上にふわっとしたギターリフが乗っかってくその隙間を楽しむって感じで地に足がついてない感覚が最高に気持ちいいですね。あとジャズ色もかなり強いのでTortoiseとかと並べて聞けますし、Tortoiseが1st時はもろSlintフォロワーのスロウコアだったことを考えると33.3はかなり近いバンドだと思います。

前身のA Minor Forestの頃からSlintの空気濃かったですが、地方でスロウコア~フォーキーな音楽に寄ってった人達がシカゴのポストロックシーンに触れて洗練されてこうなってくのってこの時代の流れがある気がして、33.3のメンバーはルイビル出身じゃないけどあのムーヴメントのその先として聞けるので、そういう意味では僕の中でDianogahと立ち位置近いかも。

 

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名盤。この流れで聞ける生音重視のポストロックで上記のDianogahとかSonnaとかと雰囲気近いですが、それらと比べてもGangerはかなりメロディアスで聞きやすくてめちゃくちゃハマりました。でドラムのフレーズがドラムンベースぽくなってたりB面からはエクスペリメンタルな電子音入ってアンビエントっぽい雰囲気になってったりと侮れません。掴みがキャッチーなだけに急に靄掛かって行き先が見えなくなるような感覚に陥り、この辺はNeu!やCANと言ったクラウトロックの影響が強いみたいで確かに長尺の「What Happened to the King Happened to Me」とかはNeu!とも通じるとこあります。

サブスクのレコメンドで知ったバンドですがDianogahとかJune of 44関連作として勧められたという先入観も手伝って、パっと聞き90sのUSポストロック感かなり強いですが実際はグラスゴー出身、でも確かにドラムンベース想起したのもそうだし「Blau」とか実験的な曲もちょうど同時期にUKだとWARPの台頭もあったと思うし、00年代になってポストロックと本格的に合流する印象ありますがGangerはこの時点で非常にハイブリッドなのは土地柄もあるかもしれない。どっち方面から聞いても良いとこどりって感じで大好きなアルバムです。

 

 

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この感じで最後にMogwai持ってくるのどうなんだ・・・て思うんですがまぁいいでしょう、別にシカゴ音響派とも絡みなくむしろ先程のGangerと同じくグラスゴー発、彼らがムーヴメントを作ったと言っても過言ではない静→動の過剰なダイナミズムを生み出したバンドでその1stにして一番好きなアルバムです。Tortoiseとかのシカゴ音響派とはちょっと距離あるというか、どっちもポストロック代表として名前が挙がるけど二分化されてるなーと最初知ったとき思っていたんですが、MogwaiのルーツはCodeine、Slint、そしてThe Jesus and Mary Chainマイブラを挙げていて、つまりスロウコアとシューゲイザーの融合なんですよね。でそう考えるとシカゴ音響派も元を辿るとルーツは一緒というか、Slintを中心としたルイビルのポストハードコアの人達がシカゴへ渡りTortoiseとかGastr Del Solになってった(メンバー的にもパホはSlint→Tortoise、デヴィッド・グラブスはBasto→Gastr del solと直結ですね)と考えるとMogwaiもスタートは同じ、どこを拡張してったかの違いでやっぱり同じポストロックなんだなぁと。

で僕はこれに気付くのにかなりの年月が掛かりMogwaiに対してもなんとなくシューゲイザーよりは硬質な重さがあって好きだったしただの「巨大なオルタナ」くらいの認識で長い間聞いてたんですが、最近スロウコアとかをよく聞いていて感覚的にわかっていき再びリバイバル的にハマってます。1曲目の「Yes! I Am A Long Way From Home」からそれこそ今回紹介してきたスロウコア発展型ポストロック(?)とも通じる雰囲気があり、フレーズを紡いでいく中でノイズが拡大されてくんですがまだ大轟音とまではいかないところも含め美しく、繰り返すにつれて少しずつ轟音へと至ってくのもいつ聞いても最高だしモグワイで一番好きな曲これかも・・・。

 

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相変わらずジャケ怖すぎる。めちゃくちゃ久しぶりに聞いた・・・前は「Christmas Steps」以外しっくりきてなかった気がしますが今聞くと全部塩梅よくて完全にこれスロウコアのアルバムですね。轟音パート減ったらそうなるの当たり前っちゃ当たり前だけど全体的に靄が掛かってて色々効果音入ってるのもあると思いますが、どんよりとしたじめっとした浮遊感みたいのが常にあって、その中アルバムの雰囲気を壊さず曲が進んでいきゆったり大轟音へと向かってく「Ex-Cowboy」で感情大放出って感じが非常にドラマ性のあるアルバムに聞こえます。シカゴ周辺の隙間を楽しむスロウコアと比べると靄が掛かってるからこそその中でも存在感のある生々しいドラムの音がめちゃくちゃ気持ち良くてフリッドマン流石って感じですが、前作もそうですがフレーズも最高だしドラムが歌みたいな聞き方してる気がしてそういうところはCodeineを思い出す・・・。

あと「Christmas Steps」はやっぱいつ聞いても最高です。静寂からの爆発パートをシューゲイズ的轟音で埋め尽くすのではなく硬質なフレーズの組み方や音色でカタルシスを演出するってのがやっぱりめちゃくちゃクールだなと、でこの手法今聞くとJune of 44の3rdとかなり被るとこありますね。ちなみに僕は昔これ聞いて「スマパンのAeroplane Flies Highだ!」とか言ってました。

 

 

 


 

ルイビルのシーンとシカゴ音響派及びジャズとの絡みについてでほぼこのシーン内で完結したチョイスでした。ちょっとしたマイブームですね。

好きな音楽ブログまとめ

音楽ブログを漁るのがすごく好きなんですが、今まで参考にさせてもらった大好きなブログや最近見つけてハマっているブログなどをまとめました。

まず最初に自分は幅広いジャンルを聴く音楽リスナーではなく、むしろ偏ってる側だという自覚があるので、紹介するブログの傾向も全体的に似た感じになってしまうというのはご了承ください。逆を言えば僕と音楽趣味が近い方はかなり楽しく読めるとこばかりだと思います。


 

音楽そのものではなく音楽ブログをディグるという行為を好きになったきっかけがこちらのブログで、バンドの歴史を解説しつつ純粋に読み物として面白く読める工夫が散りばめられていて、インディーロックがインディーロックであるためシーン内でそれぞれの時代をどう生きたか・・・そういうロックを文章で楽しむというのを教えてくれたブログです。PavementThe Jesus and Mary Chainと言った大御所なのにTSUTAYAに置いてないポジションのバンドについて大体ここで知りました。最後に近い音楽性の関連バンドを紹介するコーナーも当時サブスクもなかったので次に聞く指標としてもありがたかったです。

アルバムレビューだけでなく、ちょっと前にやってたTortoise及びシカゴ音響派の特集記事(Tortioise / TNTを聴く① ポストロックの魅力・その代表作を改めて考える)は圧倒的でこれに加え全アルバムレビューやシーンの解説記事もありこれらを無料で読めて本当にいいのか・・・?という気持ちになる程に充実しています。あとはダブ特集(ロックリスナーがダブ沼に落ちるとき)という元々ダブに精通してないロックファンが一からジャンルを開拓してく変遷が書かれていて、近い目線だからこそすごく読みやすいですし、あと毎年の年間ベスト記事も楽しくて現行の音楽を掘る際にも参考にしているブログです。

 

 

上記のWITHOUT SOUNDSのサム氏によるNoteで現在こちらで更新中。現在はSonic Youthの掘り下げを複数に渡ってしているんですが相変わらずの情報量と読みやすさに感動しています。まだ途中なのでこれからも楽しみですね。

 

 

70年代から激動のロックシーンを生で体験してきたというとんでもない方によるブログで、恐ろしいことに00年代から今でもコンスタンスに更新が続いていてすごい・・・。60年代ブリティッシュ・インヴェイジョンやサイケデリック・ロック、ブルースがルーツのハードロックやプログレから70年代のパンクの台頭など、現行シーンに影響を与えたロックのオリジネイター関連の記事がすごく参考になります。ジャンルごとの別館もあって追いやすいし60~70年代周辺のある程度名が知れてる名盤はほとんど網羅されてるかと。で長く更新してるだけあって代表作以外のライブ盤やブートレグとか、ここ以外じゃ載ってないだろうなという有名バンドの掘りづらいとこも書いてるし、そこにひっそりと隠れ名盤があったりするんですよね。

 

 

個人の聞いてきたディスコグラフィアーカイブ的に記録していて自分用って趣さえ感じるのですが、その感じがめちゃくちゃ好きなブログ。僕が読みたい音楽文って批評とか最新の音楽情報ってよりは自分と感覚が近い・・・もしくはこの人みたいに音楽聴けるようになりたいなぁという、憧れのリスナーの方がどういう音楽を聞いてきたか、そういう個人史を読み、そしてその文章に影響を受けたい。そう思うきっかけになったブログが空白依存症でした。

基本的には60~70年代の所謂ロック名盤、それ以降のUKロックやUSオルタナ〜エモとかアートスクールやアジカンなどの日本の00年代~10年代ギターロックがベースになっていて、それらの音楽性や歌詞に強く切り込みつつ、自分の生活や価値観からどう捉えたかってのがかなり感情的にか書かれていてそれに共感してしまうし、音楽の解像度を上げつつ筆者の書く文章そのものを好きになってしまう・・・という感じで多大な影響を受けました。僕はかつてロキノン名盤特集(ロキノン厨なら聴いておきたい、私選00年代の邦楽ロック名盤25 その1: 空白依存症)を読みナンバーガールのSAPPUKEIやグレイプバインのderacineを知りTSUTAYAに借りに走ったので本当に自分のルーツとなるブログの一つです。

 

 

DISK REVIEW

ブログの名前も無く、ガラケーからサイト開いた時こんな画面だったなと思い出してしまうようなサイトなんですが、90年代〜00年代初期について聞いてきたアルバムをレビューしていて、リアルタイムだからこその「今定着している音楽史や名盤の偏見がないからこそ」の、語り継がれる前の目線から書いています。レディへの1stがエモの区分にいたりとか、海外のポストハードコアの話でナンバガが出てきたりとか・・・でその生の目線が今だからこそ新鮮で尚且つ共感するところもあったりしてとても嬉しくなりますし、このサイトを見てると自分も今好きな音楽や漁ったものについてなにかしら記録を残しておきたいという気持ちになるんですよね。自分の中でめちゃくちゃ大きいブログです。

 

 

ここ最近で一番ハマってるブログかもしれません、60~70年代にかけてのUSとUKのサイケデリックロックを総括しようというブログで、アメリカと言っても西海岸と東海岸で時差三時間分も距離あるし当時インターネットも無くまとめてUSサイケって言い方はよくないんじゃないか・・・という切り口から、地域ごとに章立ててサイケムーヴメントをまとめてるのを見てそのままドハマリしました。サブジャンルとしてのソフトロックとかプログレまでの変遷やドラッグカルチャーの背景としてロックがどう関係していたかとか、LSDの出自から掘り下げてったり、あと各バンドでのメンバーの相関図をなんと表を作り章ごとに埋めて繋げていくっていう手法をとっていて、知ってるバンドが多数あると点と点が繋がっていく感覚が非常に楽しいです。最初は地域のムーヴメントだったのがどうやって世界に広がったか、そしてその先にいる有名バンドがどれなのかっていうのが見えてきます。

2年位前にジオシティーズが閉鎖してしまい、この辺の60年代のロックとかサイケとかを取り扱ったインターネット黎明期の素晴らしいレビューサイトが大量に無くなってしまったんですが、あの頃を思い出し見つけたときかなり興奮しました。ただ当時のサイトでもここまで網羅的に載せてくれてる場所は中々無かったと思います。

 

 

ロックを中心にCD全盛期だった90年代にショップで働いていた経験を生かした当時の目線からレビューをしていて、今では音楽史として名が残っていても実際にリアルタイムでどういう流行り方をしていたか、そんな中筆者はそれをどう受け取ったかってのを書いてて、後追いで探すオフィシャルのディスコグラフィとかとは少し違った雰囲気があります。

ジャケイズム~ジャケ買い随想というコーナーもありジャケ買いした全く知らないアルバムについて自分で調べながら感想に至るまでを記録するという最高の企画もあるしこういうの個人音楽ブログの醍醐味だと思います。文章にドラマ性があるというか、本人の経験談を踏まえてエモーショナルにバンドの思い出をアウトプットしつつちゃんとそのアルバム背景を解説してくれるのでここで読んだアルバムってもう特別な存在になってしまうというか、勝手にシドバレットのエピソードがアルバム情報に追加されてしまうような、そんなブログです。

 

 

元々放蕩息子の迷走というブログ(僕がART-SCHOOLSmashing Pumpkinsと言ったオルタナティブ色の強いアーティストを好きになるきっかけになったところです)をやっていたおかざきよしとも氏による現在のブログ。特集記事の密度が凄まじく、最近だと大瀧詠一周辺やマイブラをやってて一つのバンドのバックグラウンドからアルバムだけではなく全曲レビューに近い形であるので、ディスクガイドよりガッツリと好きなアーティストについて感想を見たい人にはめちゃくちゃ最高のブログだと思います。

あとは何か一つのテーマに絞った記事が多く、音楽性とは関係ないリスナー目線での共通項から特集を組んだりしてて最近だとこちら(サブスクにないアルバム(30枚ほど) - ブンゲイブ・ケイオンガクブ)とかかなり面白かったです。こういう感じで"アメリカンロック"や"ローファイ"てどんなの?と言った漠然とした音楽用語に個人的主観で切り込んでいくシリーズ(アメリカンロック?アメリカーナ?に関するあての外れた考察とあと20枚ほど)(“ローファイ”とは結局なんなんだ)とか、文字で読むプレイリストって感じの特集がたくさんありちょっと時間空いた時の読み物としてオススメ。

 

 

ポストハードコアや北海道のロックシーンを追うのならマジで間違いないブログで、記事のテンションかなり高めですがここに書かれているRapemanShellacなどのアルビニ関連の記事の勢いに強く影響されました。とくにRapemanの記事はこれより素晴らしいRapemanの文章見たことないです。

fOULの記事では当時のバンドのエピソード、人間関係をかなり深く掘り下げてて吉村秀樹吉野寿のエピソードも絡めかなりの情報量があり、リアルタイムで北海道ハードコアシーンを追ってた人の貴重な記録がたくさんあるんですよね。あとは90年代のGravityやTouch and GoやLovitt、Ebullition、Dischordなどポストハードコア系のレーベルがメインで、筆者そのものが強く出ている文章にかなり個性があるのでこの辺にピンときた人は是非とも。

 

 

東京のロックバンドTTUDの本名氏による打倒Pitchforkを目指すブログで、どこを掘ったら見つかるのか・・・という名前すら聞いたことないアーティストばかり紹介していて戦慄します。基本的にはポストパンクやポストハードコア等のインディーロック~オルタナ系やノーウェーブ、あとアルビニ録音やそれに近い感触のバンドが多いですがカテゴリも国ごとになっていて、一つもアーティストを知らない国籍のバンドいくらでもいるし、適当にどこ聞いてもめちゃくちゃかっこいいんですよね。たぶん日本語でこのバンド紹介してるのこのブログ以外ないでしょうと断言したくなるようなものばかりで友達にどんどん紹介してマウントを取れること間違い無しです。Durutti Column感はあんまり無いです。

 

 

rljp氏によって同時進行で更新中のブログで、ツイッターの知人間でブリットポップについての記事(90年代のブラーの印象について。 – This is…POP?!)が話題になり読んだところかなり感動してしまい、更新頻度も高く今一番更新が楽しみなところです。

80~90年代のUKロック~ブリットポップオルタナ渋谷系などの音楽シーンをリアルタイム経験した方が当時の思い出を振り返りながらあくまで個人史として記録していくんですが、ここまで生活と密接に結びついた音楽文というか、当時の景色が見えて来るものあまり経験したことなく、雑誌とか音楽史から語られるものとはちょっと違ったリアルさがあり読み物としてめちゃくちゃ面白いです。しかも過去の記録だけでなく現行の音楽リスナーとして新譜の話題にも触れていて、読んでるだけで胸が熱くなってくるようなものがあり、こういう音楽に関する文章を読みたかったと心から思います。

Real Life Journal.の方は半分日記とも言えるものや年代ごとのランキングを発表していて、最近だとSonic YouthのGooに関する記事(ソニック・ユース「GOO」について。 | Real Life Journal.)が今まで読んできたものからは見えなかった視点から当時を知ることができてかなり感動しました。

 

 

ルーツロックやアメリカンなSSWやカントリーがメインですが、かつてWilcoを掘ってたときこの記事(Yankee Hotel Foxtrot / Wilco 【むつみのT'sな日記】)に出会いえらく感動してしまい、今でも定期的に読んですげ〜ってなるブログです。アルバムレビューとして完璧なんですが、これにまつわるバンドのエピソードや周辺シーンの触れ方についてぐんぐん読ませる書き方と言いますか、本当に面白くて、僕はここに書いてあるオルタナカントリーについて何一つ・・・本当に何一つ知らなかったんですが出てくるバンドについてついつい知りたくなってしまう。そんな文章です。これ読んで無かったらWilcoにハマることなかったかもなって思います。

 

 

先ほどまでのブログとは若干趣が違い、記事にもよるんですが生活と音楽が結びついてて普通の日記の最後に濃厚な音楽レビューが添付されているというサイトで、扱ってる音源も代表的な作品ではなくちょっとその一歩先というか、あまり日本版で出てなさそうなライナーノーツの代わりとなるような隠れ名盤だらけでHR/HMとエモ~ポストロックやハードコア周辺が多くかなり雑他。こんなマイナーなバンドにこんな濃厚な文章が乗ってるのここしかないっしょと言いたくなる記事が沢山眠ってます。2003年から続いてるんで膨大な量ありますがバンド名や特定ワードを統一したフォーマットで載せてるので、検索欄に気になるワードやバンド名入れてバーっと見るのかなりオススメです。上記がリニューアル後のブログ形式、ディスクレビューは下に貼った過去ログに大量にあり適当に漁るのもオススメで検索もここの左側からできます。

ちなみに筆者が活動しているDOIMOIというバンドがマジでかっこいいのでこちらも是非、日記パートでちょくちょくバンドの話も出てきたり名古屋を中心に活動してるっぽくて同地区の他のバンドやレコ屋の話題もたまに出てきますね。

 

 

現行で発表されてる新譜や話題作を次々と濃厚な文章でレビューしていて、個人ブログではほぼ最速じゃないでしょうか。それこそ旧譜ってある程度評価がまとまってきたりインタビューが出てきたりしてそれぞれ解像度がハッキリしてから書き込むって人が多いと思うんですが、ファラさんの場合は発売直後から様々なバックグラウンドを分析して切り込んでくれるのでリアルタイムでセットで聞くのが非常に楽しいですね。

あとは基本的にV系文脈に詳しい方で(ヴィジュアル系オールタイムベストアルバム50選)は決定版と言える内容でその辺詳しくない僕もこの記事片手にかなり掘らせてもらいました。純粋にディスクガイド的に読み進めるのもすごく楽しかったです。あと前ブログ(SIKEI-MUSIC)も膨大な記事残ってるので過去ログ漁りたい方はこちらを。

 

 

説明不要の名ブログでレーベルの発祥やグランジムーヴメントが音楽ジャンルとして、サウンドだけではなくシアトルという地域を前提としたカルチャー、そういう一つのムーヴメントについてここまで無料で読める資料がネットに存在していることに感動しました。

メジャーなグランジバンドもしっかりシアトルかどうか、で区分しそれぞれの視点から読み解いていくのと、バンドの記事ではバックグラウンドだけでなく基本的に全アルバムレビューもついてるし、載せたインタビューもちゃんと引用元などが丁寧に載っていてかなり助かります。そしてバンドだけではなく"グランジ"という言葉そのものや当時のインディーシーンにおいての精神性について解説する記事もあるしでこのサイト一本でこの辺の地盤を固めました。地味に更新継続中。

 

 

ハードコアやエモを漁るならまず最初に訪れたという人は多いんじゃないでしょうか。というかエモシーンって好きな人は多いのにそのルーツに関する資料って意外と多くないというか、影響力の強さの割にグランジブリットポップと比べると自分からある程度掘らないとわからない印象があり、例えばストレートエッジって結局何?とか、洋楽を掘り始めた人に関してはレーベルで聞く重要性とかも掴みづらいと思うんですが、そういう入り口にすごくいいと思います。

特にサンディエゴ特集とか地域の話も交えつつレーベル内で色んなバンドがメンバーを入れ替えてやってきたんだなぁってのが見えてきて非常に面白く、僕はこれをパクりたくてSlintから辿るルイヴィルのポストロックとか記録シリーズ:Rodan / June of 44をやったわけですが、こういうサウンドの方向性があったのだなぁってのがとにかくわかりやすいですね(ちなみにこういうのを完璧にやっているのが上記のケンジロニウスの再生でここ本当にすごいです)。

 

 

インディーシーンの大御所ことスティーヴ・アルビニ録音をひたすら紹介するブログで、インディーロックを掘るのなら避けて通ることはできない方なので非常に勉強になります。しかも代表作一通りと言った感じではなくかなり筆者の趣味趣向が反映されたアルビニ録音チョイスでそれにも関わらず既に200枚以上紹介しててかなり掘り甲斐があり、アルビニ録音ベスト(第100回記念! Steve Albini録音 名盤10選 : All Along the Familyseat)とかもあります。割とUSインディー周辺やスロウコアとかもここで結構好きになったバンド多く、SilkwormやLowとかもこちらで興味を持ちファンになりました。

 

 

最近知ったブログですが基本的には80年代中心にポリスやXTC、アズテックカメラはほぼキャリア通しての記事が存在していて他にもスティーヴィーワンダーやスティーリーダン、ジャズやファンク〜ソウルまで取り扱ってますが記事の情報量がものすごいです。アルバムを作る際のレーベル等の背景からそのアーティストのキャリア、ディスコグラフィの前後作を踏まえた縦の繋がりだけでなく、発売時のヒットチャートやシーンを交えた横のつながりまで解説していて立体的に見れます。でそういったアルバムにまつわる解説を終えたあとに全曲レビューまであるという充実っぷり。

 

 

幅広く紹介してますがレーベル探行というレーベル紹介ページの充実っぷりがすごくて、生い立ちからサウンドの特徴を80年代のパンク〜ポストパンクがメインでFactoryや4AD、Mute等のUKロックシーンについて重要なレーベルをまとめてくれててかなり参考になります。所属バンドを並べただけでなくレーベルそのもののストーリーを時系列順に並べてその時々で重要アーティストをピックアップしてくという形で、気になったバンドがいるとアーティスト一覧にもちゃんと記事があり、アルバムと音楽性の変遷を辿りながら簡潔にまとめてくれていて非常に助かります。

 

 

声優の音楽について中心に書いてるブログで、声優って結構有名プロデューサーや名だたるミュージシャンが参加しあらゆる音楽性がアニメ要素やアイドル性も伴って融合している魔境というイメージなんですが、だからこそレビューを掘ると音楽的観点からは全く書いてないものも少なくなく、自分の求めてるレビューに行きつくのが難しい印象があります。

でここなんですが、過去記事を見ればわかるようかなり幅広く様々なジャンルを聞いてきたであろう目線からレビューしていて圧巻。中々サブスクにないのも多いのでちゃんと追えてる訳ではないですが、コンセプトなどを読んでるだけでも面白かったりします。あと声優全く関係ないですがポストロック特集(ポストロックの名盤を考えてみる - onabenchinthepark)がめちゃくちゃ充実していてこちらもかなりお世話になりました。

 

 

ここまで取り上げてきたブログは旧譜メインが多くて僕が個人的にそういうの読むのが好きだからなんですが、こちらは毎年年間ベストとして新譜を50枚選出していて半期とか細かいスパンでもあるので現行の音楽を追うのに向いてます。あと毎月新譜情報とかもバーッとまとめてくれてて、しかもそこからピックアップしたいくつかのyoutubeリンクがあったりとかなり助かります。とは言いつつそれ以外の記事も充実していて、邦洋問わず話題作メインですが最近だとこちら(BUCK-TICKにどハマりしたのでそのきっかけや魅力などいろいろ語ってみた<前編> | PUBLIC IMAGE REPUBLIC)とか完全に個人的ブームを記録したものもあるし、それに地続きになる形でシーンを振り返った記事(「ヴィジュアル系」と私 | PUBLIC IMAGE REPUBLIC)とかも僕がヴィジュアル系にあまり詳しくないからこそ読んでて楽しかったです。

 

 

ポストロックに関してのライブラリが非常に充実したサイトで、90年代末期~00年代前半の全盛期にリアルタイムでレビューしてる個人ブログは多数あるのですが、ここに関してはシーン全体を総括する勢いでアーティストごとに全アルバム紹介をしていて現在も更新継続中。またスロウコアやグランジを一つの記事で大御所から割とマイナーどころまでバックグラウンド込みで紹介してくれてて、90年代のオルタナ周辺のディスクガイドとして非常に参考になります。

 

 

元々音楽アルバム100選という年に一度そのときの全キャリア総括したジャンルに焦点を絞らないアルバム選や年間ベストを記録するサイトだったんですが、つい最近公開されたオリジナルのZINE(1st MIXTAPE ZINE『MuMuMOOD -MY 2010s-』(archive) - カヤマのブログ)では「10年代総括」をテーマに10年代の大半を学生として過ごした世代としてシーンを俯瞰し再考します。メタルやジャズ、ヒップホップと言ったジャンルに自分は精通していないのでリスナーとして聞いてきたものは若干違うかなと思うのですが、オールジャンル総括して“音楽を聴く“という行為そのものに焦点を当てているので、近い世代だし、まさしくSNSやブログを軸にディグってきた自分もその当事者として色々と共感できることだらけでした。アルバムジャケットや音楽雑誌の表紙、アニメや映画などを切り貼りして作られた背景も最高だし、挿入されるイラストも全て自作とのことで、「こういう文章が読みたかったけど誰も作ってなかったから」という動機もDIY感満載でわくわくします。

 

 

中々他で見つからなかったThe Fallのディスコグラフィを漁ってたとき見つけたサイトで、The Fallの膨大すぎるアルバムについてレーベルの変遷とそれによるサウンドや録音の変化、メンバーの入れ替わり、ライナーノーツ付き日本版を今それぞれ手に入れるのも難しそうなのにかなりの枚数を資料化してくれてます。

そしてこの記事を書くにあたって久しぶりに来訪したらクラウトロックの記事が昨年大量に更新されていたようで圧巻・・・で最近もコンスタンスに更新が続いてる上に幅広く60年代~現在まで多数あり、カテゴリ見てるだけでも膨大な数(ザッパだけで100枚以上・・・)あるし、かと言って一つ一つが薄味になってなく、輸入盤買ってバックグラウンドがわからないやつとかサブスクで聞いた旧譜があったりすると詳細がわかりかなり助かります。持ってるCD全部書いていくとのことでこれからも楽しみです。

 


以上でした。音楽好きになって本格的に自分から色々漁るようになったの自分は10年代入ってからの世代で、雑誌やディスクガイドを買うということを知らぬまま真っ先にインターネットで情報収集をしていたのでブログを漁るって行為が原点みたいなとこがあります。てことで自分のルーツとなったものや最近お世話になってるブログを一度どっかにまとめたいなと思ってやりました。

レコ屋のサイトは除外したのですが、最近新しく音楽をディグるのにレコ屋のレビュー群やNoteによる解説を読むことがかなり多いのでそちらもオススメです。Lastfmやdiscogsを渡り歩いて気になったアーティストをレコ屋レビューや音楽ブログを辿る、という感じで普段音楽を聴いてます。あとめちゃくちゃ良い音楽記事あってもブログ自体が音楽というより普通に日常的な日記がメインってとこもまだまだあったのですが、今回一応「音楽ブログ」というコンセプトなので見送ってます。

 

今ではサブスク片手にディスクガイド代わりに見るのも楽しいと思います。少しでも参考になれば幸いです。

SPOILMAN - BODY/SOLID GREEN

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先日新譜が発売したSPOILMAN、マジでハマってしまいちょっと強気ですがたぶん今年もう自分の中でこれ超える作品出ないだろうなと。そう思ってしまったほどで自分の中のポストハードコア趣味やアルビニ録音好きなところにドストレートに突き刺さってきた感じでもうドハマりですね。てことで感想を。

 

 

BODY 

1stアルバムで新譜に合わせてフィジカル購入、昨年の作品ですが聞き返しリバイバル的に大熱狂してます。メディアにてNirvanaが引き合いに出されるのも納得の静と動の対比というかラウド&クワイエットな轟音ジャンクギターでカタルシスを得る1曲目「Amaryllis」からJesus Lizardのデヴィッド・ヨウを思い起こすフリーキーなシャウトの連発がかなり中毒性あり、奇怪なMVも不気味で最高。15曲45分というアルバムで短い曲も多くパンキッシュなジャンクロック~ポストハードコアの連続ですが表題曲でもある11曲目「BODY」ではSlintとかRodanとかのルイヴィル周辺を思い出すような不穏な曲になっていて、この静寂からまた爆発するかのようにカオティックな4曲へとなだれ込みますが凄まじいです。極端な静と動の行き来をする「Pail and Ladder」や、「Rampage」でのノイズ垂れ流しパートはかなり熱いし、ラスト2曲の「Woodcutter」「Utonagan」に関してはもう圧巻、ゴリゴリに不穏なベースとドラムがえげつないくらい鋭利にリズムを刻みながらジャンクギターがこれでもかと炸裂しまくるポストハードコアメドレー。

 

SOLID GREEN

そして2nd、前作のジャンクギターとシャウトでカタルシスを得るって感じと比べるとパキっとした敷き詰められたビート感で気持ちよくなるアルバムな感じもします。インタビューでもギターを重ねるのやめたって言ってたんですが確かにあんまギター前に出てる感じではないというか、リードトラックにもなった開幕の「Flock Of Seagulls」もリズムが先行していてキメがおそろしくかっこいいし手数の多いドラムとそこにザクザク切り込み鋭利なベース音聞いてるだけでも楽しいです。Jesus Lizardを参考にしたとも言ってて確かにMonkey Trickっぽい曲とかPop Songっぽい曲とかもあるんですが、個人的にMinutemenをめっちゃ思い出す感じでMinutemen→Jesus Lizardって線を引いたらその次に浮かんでくるバンドがSPOILMANでしょう、今作はそういう系譜な感じ・・・と言いつつ、最後のNothing Man~Solid Greenの2曲がハードコア出自のバンドが音もスピードも削ぎ落としてスロウコアだったり、それに近い不穏な路線いくやつをやっててここマジでフェチなので飛び上がりました。1stで静寂パートを担当してたBODYとかを拡張したような印象で、最小限の音を紡いでずっと緊張感を持続させて・・・みたいな、最終曲のSolid Greenとか後半大爆発してShellac化してシャウトかますってのがもう好みすぎて泣いた・・・。

 

 


ユニオンの見出しにて「スティーヴ・アルビニが好きな人は全員聞いてください」というコメントがフロントマンのカシマ氏によって書かれていたわけですが、まさしくぶっ刺さってきたという感じでアルビニ録音ってよりアルビニ本人がやってたバンドやその周辺シーンをかなり思い出し、それこそRapemanやそっから分離したShellac~Jesus Lizard、あとちょいちょいSlintの名前出してましたがそういうシカゴ~ルイビル、あとNirvana初期とかMudhoneyとかパンク寄りのグランジ等あの辺のUSアンダーグラウンド好きな人なら間違いないです。こんなTouch and GoとかAmphetamin Reptileとか僕の大好きな時代の大好きなレーベルを想起するような音を2021年聞けるとは思いもしなくて、ここまでやられると完全に屈服するしかない・・・。本当にピンポイントに一番刺さるとこやられた感じで本人達も好きな音楽を詰め込んだけどきっとこういうの聞きたいって人はいるはずと1st時に言ってましたが、まさしく完全にその通りに・・・。

とは言いつつ、ポストハードコアがどうとかアルビニだとか何も考えずにむしろこれ入口になるって人も多いと思えるほどシンプルにかっこいいですよね。わかりやすいというか、ハードコアやグランジが苦手って人にも全然いけると思うし、SNSやインタビューでニルヴァーナの名前が出るのってそういうとこだと思うんですよね、ジャンルの垣根をぶち壊して色んな人に刺さるアルバムだと思います。

 


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今作、ユニオンが主宰してるKerosene Recordsからリリースということで僕はレーベル自体初めて知ったんですが、名前からしBig BlackだったりKerosene 454を連想する確信犯でこのレーベル追うとかなり熱い現代のポストハードコアシーンが形成されていて、激情とかとも通じるsassya-とかインダストリアルやポストパンク寄りのThe Keeleyとかが所属しててどっちも新譜ヤバイんでセットで是非とも。両者ともSPOILMANと交流深いアーティストですがここ一帯のシーン激熱すぎる、基本的に後追いで90年代を追い続けえる自分みたいなものにとって救いみたいなもんです。

 

あと最後に大好きなAmphetamin Reptile Recordsのコンピレーション貼っときます。ぶっちゃけSPOILMANここに一曲混ぜても全く違和感ないよな・・・