ツイッターで感想を見てるとシューゲイザー、ポストロック、ポストパンク、等々言われてますが個人的にそれっぽいジャンルに当てはめるのは妙にしっくり来ず、というのも本人達も別にそれをやってるつもりは全くないとのことで参照元もとくに思いつかないんですよね。ある程度音楽的なバックグラウンドを前提としつつその奥が見えてこない・・・という意味では同じく突然変異的に出てきたPeople In The BoxやDownyを思い出すし、それらと音楽性が似てるわけではないんですが、やってることが結果的に「ポストロック」としか形容できないという立ち位置に近いものを感じるというか。重厚にも関わらず全く聞き疲れのしない透明感があり、この音の波に身を任せ浮遊する感じは王道とは外れつつもシューゲイザーと形容したのかなという気はします。
ツイッターで流行っていた80sベストって言葉を見てぱっと思いついたアルバムこれとMission Of Burmaでした。インディーシーンの立役者ことスティーヴ・アルビニの原点となるバンドで、ドラムマシンによる暴走するマシーンビートにジャンク感たっぷりの超ノイジーなギターを乗せて爆走します。音割れというかもう半分以上ノイズでしょというくらい爽快感がありここにまたアルビニのキレた咆哮が乗るのでとにかくかっこいいです。ボーカリストとしての彼が一番映える作品これだと思います。
余談ですが、僕はナンバーガールがSappukeiを作るにあたってこの辺に影響を受けたという話を聞き開幕「My Black Ass」から圧倒的な緊張感、そしてギター音が裏返ったときの激カタルシスに衝撃を受けこの後ハードコアに目を向けるようになったんですが、「The Admiral」辺りのドラムのビート感がナンバーガールにもろ引用されてるものだったり、そのまま54-71にももろに繋がる感じですね。
名盤2nd。1曲目「Didn't We Deserve A Look At You The Way You Really Are」が12分淡々とワンフレーズ繰り返す曲で緊張感を維持して煮え切らないまま終わり、吹っ切れたように2曲目以降からは3分前後の衝動まみれの激しい演奏が続くという振り切ったアルバム構成。そのフラストレーションを溜めてからのカタルシスの連続が余りにも気持ちよく、やっぱアルバムで聞くのっていいなというのを再確認することとなったアルバム。個人的に彼らのベスト作です。というか「Disgrace」「Canada」もミニマルにフレーズを紡ぎつつ爆発していくのかっこよすぎ。この辺のBBCライブ盤の「Canada」でのテイクがマジでヤバイので是非とも。こっちはZAZEN BOYSとかがかなり影響を受けてると思われます。
lastfmやサブスクの再生数見ると彼らの一番の人気作これっぽいですね。今までのアルビニのボーカルはいつもスポークンワーズと歌の中間+シャウトともとれるものだったのが1曲目「Prayer To God」から珍しくしっかりと歌っていて鈍器のようなビートの上で爆発させていきます。「Canaveral」も歌ものっぽいし「Song Against Itself」も割とポップなんですが、逆に今まで以上にノイジーな曲もあったりと基本は今までの延長ですが今までの鋭利な作風から少しずつ拡張されてる気がします。緻密なセッションで練り上げるというより感覚的なセッションで曲を作ってるようなので当時のモードが反映されてるのかもしれません。
開幕「Boilermaker」から爆走していくんで前作にあったじわじわとまとわりつくような雰囲気とはまるで違い、とにかく爽快感ある1曲目に今聞いてもかなりびびります。Goat収録の「Mouth Breather」とか好きだった人にはヤバイでしょう、てかそれ僕ですが・・・。前作より激しいし速いしで割と聞きやすいですがフレーズとフレーズの隙間が見えるおかげでリズム隊が非常に映えるのは勿論変わらず、ドラムのキレキレっぷりは更に増していて個人的にMinuetmenとかGang Of Forとかの流れでも聞ける気がします。というよりScratch Acid時代まで遡って聞くとあの頃のデヴィッド・ヨウのボーカルってゴスとかポジティブパンク感が結構強くて、グラムロックとかも好きなようなのでその辺がハードコアやノイズロックを通過した・・・というのが彼らなルーツな気がしてきますね。ちょっとBauhaus思い出すとこもあるし。
イタリアのバンドですがTouch&Goでアルビニ録音。Big BlackとScratch Acidのメンバーが合流してRapemanになりそれが分離してShellacとJesus Lizardになった・・・という変遷を辿ってきたわけですが、これらのバンドが好きならまず間違いないってバンドがこのUzedaですね。まぁほんとにShellacとかを連想する縦横無尽な曲展開に半ポエトリー+シャウトとも言えるボーカルが乗ってくわけですがShellacと比べても超ノイジー。とにかく濁っていて汚水とも言いたくなるようなジャンクなギターノイズで埋め尽くす1曲目「Nico And His Cats」からかっこよすぎですが、不定形の歪んだギターリフをドラムが繋ぎとめてく感じがドラムで聞くノイズロックって感じです。
Don Caballero周辺はアルビニ録音+Touch&GoであとRodan~June of 44~Shipping NewsのほとんどがアルビニのスタジオでShellacのメンバーであるボブ・ウェストンが録ってる上に、レーベルもTouch&Go及びその傘下のQuarterstick Recordsで、この辺のシカゴ~ルイヴィルの布陣というかシーンが僕はもうほんとに好きすぎる。
他にもライブ盤でもお馴染みの「In The Abscence Of Strong Evidence To The Contrary, One May Step Out Of The Way Of The Charging Bull」「Delivering The Groceries At 138 Beats Per Minute」など代表曲目白押しですか、どれも1stが2ndに至るまでに拡張されたプログレッシブな展開をしつつメタリックなギターサウンドも所々残ってる・・・という感じでただメインというよりは"カラフルな曲展開の内の一つ"という具合に収まりかなり聞きやすいです。総まとめとも言えるし重かった1st~2ndと完全にポストロック寄りになった4thのいいとこどりをしてるとも言える作品で「Slice Where You Live Like Pie」はもうベストトラックなんですが、リフもキャッチーだし音色も抒情的で後の名作American Donへ繋がってったのがわかります。American Donと並んでオススメ、というかセットでどうぞ。既にミニマルな要素強いですがより硬質なのがこちら。
代表作。ジャケも有名でTouch&Goの顔とも言えるアルバムでアルビニ録音の名盤としても有名です。でまぁ完全にマスロックで、ディストーションが効いたへヴィなギターリフなどの要素はもうほとんど前作においてっちゃってるんですけどね。名曲「The Peter Criss Jazz」はタイトなセッションやアンサンブルを聞かせるというより、完全に空間に浸透していく音色を聞かせるといった方向にシフトしたルーパーとポリリズムを駆使したギターリフの繰り返しでどんどん世界観を広げていきます。こういう広がってくスケール観をアルビニの密室感ある音であえて録るというのが非常に箱庭的で割とこの手法後のポストロックにも繋がるし、同年にMogwaiもアルビニ録音を出してたりと同時代で共振していたと思います。
以前聞いたときはやっぱ歪んだギター多い方がいいっていうシンプルな思考で3rdをよく聞いててこっちは難しい印象あったんですが、むしろ曲を印象付けるリフやフレーズはこっちの方がキャッチーでわかりやすい気もします。「You Drink A Lot Of Coffee For A Teenager」「Details On How To Get Iceman On Your License Plate」とかは抒情性たっぷりで複雑なのにフレーズもキャッチーですんなり聞けるし何より展開も音色もめちゃくちゃエモいしで、割とシカゴ音響派やキンセラ兄弟とも関連付けて「ポストロック」として一番聞きやすいアルバムかも。
ドンキャバとメンバーほぼ被ってますがめちゃくちゃ実験的な作品。というか中心人物であるデーモンがいないので別物、イアンのギターは確かに近いけど曲構成がめちゃくちゃ実験的で、とにかく手数多く突っ走るドラムの上でそのリズムを無視したギターのフレーズも非常に不規則といいますか、形を保っていないような各パートのフリーセッションの塊・・・フリージャズとかのが近いんですかね。ちなみにアルビニ録音、イントロ前のまるでスタジオ内で楽器をやりくりしているのを目前で見てるかのような臨場感があります。どの音も誇張して来ず音の実験のようなとこもあり、Gaster Del SolとかJoan of Arcとかのが近いかもでそれと近いような音響メインというか、音の隙間の空間に浸るというような聞き方がしっくりくるかも。
前作と比べて一気に静寂寄り、前身バンドも含めて彼らのキャリア内で最も落ち着いた作品かもしれません。開幕「The March Song」からミニマルなフレーズの反復によるスロウコアですが、轟音で爆発させるのではなく硬質なフレーズの絡み合いの妙で爆発を表現するというのはJuen of 44でも見られた作風であり音色がおそろしくかっこいいです。June of 44の3rdからダブ要素を薄くした作品としても聞けるし、スロウコア色強くなると同時にジェフの歌心も相まってフォークロック的な風情も少しあり、Rodanの頃からの抒情的なメロディーが濃く出てる曲が好きだった人はしっくりくると思います。
ジャケがマジでかっこよすぎる・・・というかShipping Newsはアートワーク全部かっこいいですね。今作はEPをくっつけたコンピレーションですが新曲3つ追加されてたり全部同時期の録音なので統一感もあり、普通に3rdアルバムとして聞けます。「Hanted on Foot」「Haymaker」辺りはSlintを思い出す静→動への爆発していくスロウコアですがギターのバースト具合が尋常じゃなく、ここまでやるとMogwaiとかと同系列として聞けるでしょう。
あとは静へと振り切った曲が多くやはりSlint~The For Carnationなどのルイビルの同期と呼応しどこまでも深淵へと潜ってしまうし(実際に次作からはThe For Carnationのベーシストであるトッド・クックがメンバーとして加入します)、全体的に落ち着いた曲が多い分、狂気的な曲の振り切り具合がすごいです。今までと比べるとアコースティックな歌ものの雰囲気もあり、Mogwaiの2ndとか、あとDusterとかとも並べて聞ける気がします。通して聞くにはちと重いですが名曲だらけ。
2005年ということでルイビル発祥の他のバンドは多数解散、むしろシーンは次に移り変わり、自分達の影響下である新しいポストロックやマスロックのシーン真っ只中で発表された代表作。そんな中彼らは音をそぎ落とし、初期RodanやJune of 44の1st~2ndを想起する彼らのポストハードコア的な獰猛なバンドの音を突き詰めていった作品とも言え、相変わらず陰鬱ですがインディーロックとかからもアクセスしやすいアルバムじゃないでしょうか。
1曲目「Axons and Dendrites」から後のライブ盤にも収録されるナンバーで彼らの曲の中でも随一のポップさを誇っていますが、スポークンワーズを軸にじわじわ迫ってくるスタイルはやはりSlint以降という空気を漂わせ、今や一つの様式美と化した時代にそのオリジネイター達が円熟した音を鳴らしている・・・というより、その更に次に行ってしまったという気さえします。「(Morays or) Demon」に関してはShipping Newsらしいハードなナンバーで、今までのアルバムでの彼らってスロウコア~ポストロックに寄ってた気がしますが、今回はポストハードコアに回帰しそれを発展させてる印象があり、今までの経過を聞きつつ2005年の作品としてこれを聞くとストレートすぎてニヤリとします。
Rodan、June of 44と枝分かれしていったバンドとこれを聴き比べることで、フロントマンであるジェフ・ミューラーはそれぞれのバンドの音楽性の"どの部分"を担当していたのかが浮き彫りになってくるので聞き比べるのが非常に面白いです。その核とも言える部分がむき出しになっているのがこのアルバム、でしょう。ちなみに紹介した4枚全てShellacのボブ・ウェストンによる録音、レーベルはTouch&Go傘下のQuarterstickという、Rodan時代から彼らの作品では完全にお馴染みのメンツ。
解散前ラストアルバムにして地元ルイビルでの演奏を記録したライブ盤、しかも前アルバムの2曲を除き全て新曲。ライブ音源そのままということでシンプルなアレンジな上に結構早い曲が多くパンクに回帰した・・・というイメージでしたが、B面からは今まで通りポストロック色も強くなり「Do You Remember The Avenues?」とかはもう半マスロック化しつつShipping Newsとは思えないほど高速でめちゃくちゃかっこいいです。もっとこの路線を聞きたかった・・・。
主要メンバーであるジェイソン・ノーブルが2013年に亡くなってしまいバンドは解散。当時まだファンではありませんでしたが、ジェフとジェイソンは高校時代からの親友でJ・クルー、Rodan、Shipping Newsと10代の頃からずっと一緒に音楽をやってきてるので当時の彼の心境については想像に難くないです・・・。ジェフ・ミューラーについて僕は最も影響を受けているミュージシャンの一人ですので、何年か経ち今またJune of 44として再始動してくれたことに感謝しかありません。
以上です。元々前身となったRodan及びJune of 44の記事と一緒にジェフ・ミューラーのバンドとして載せようと思ったんですが流石に長くなりすぎたので断念、そしてSlint以降のルイビルの系譜としても完成系の一つということで別で書きました。とりあえずRodanからセットで是非とも、下に関連記事並べます。
こちらもネットレーベル発で、For Tracy HydeやTenkiameで知られる夏bot氏主宰のCanata Recordsより。ギターポップがシューゲイザーへと発展していくその瞬間を切り抜いたようなアルバムで、ジザメリのダークランズにもうちょいノイズ足して疾走感足した感じです、でもうダークランズ大好きな僕にはもうヤバイっす・・・。だってこういうジザメリのアルバム聞きたかったって思ってたみたいのがまさしく具現化した作品だし、しかもElfs In Bloom終了後の新バンドHappy Vally Rice Showerの1曲目が「Just Like Lucy」でもろオマージュなんですよ。
「I See Your Face And Feel Ecstasy」はキュアーとかも思い出すギターポップにほんのちょっとの甘いノイズとあととにかくメロディーも良すぎるしでマジで大名曲だし、ちょっとUSオルタナっぽい重さもある轟音シューゲイズからオアシスっぽいギターリフが飛び出す「Resurection」もほんとに泣けます。先ほどの後継バンドHVRSの方で再録も多いんですが、アルバムの流れや少しくぐもったローファイな録音だからこそ感じるノイズと甘酸っぱさのバランスや統一感含め本当に好きな作品です。あと地味にコンポーザーのたびけん氏によるブログ(空白依存症)にもめちゃくちゃ影響を受けていてかなりのバンドをここから知りました。
最後にもう一点、こちらも言葉に衝撃を受けたアーティストでナンバーガールが解散ライブのMCで語っていたことをきっかけに聞いたTHA BLUE HERB。普段あまりヒップホップ聞かないのですが所謂90sのヒップホップ的なブラックミュージックのノリがほとんどなく、ゴスゴスと体に響く破壊的に加工されたドラムの生音はロックからも非常にアクセスしやすいと思います。ちょっとリズムも和的だしかなりローファイなのでバンドサウンドっぽさがあるというか。で尚且つ歌い方もラップというよりは半分ポエトリーディングに近いと思えるものもありナンバーガール→ZAZEN BOYSという変遷を聞いていた自分には非常に納得。
とは言いつつも、リズムやサウンドよりも一番やられたのはやっぱり言葉の力ですね。彼らの作品で最も尖っていたのが1st「STILLING, STILL DREAMING」で地方VS東京というフィールドを作り上げた非常に攻撃的な作品で、こちらも向井秀徳が冷凍都市という仮想敵を作り上げSAPPUKEIを作り上げたことから影響を感じたところです。で今作はその延長戦上、に立ちつつもう少し内面的なものを掘り下げていくアルバムで「STILL STANDING IN THE BOG」ではモノ造りは信仰であると掲げる現在地と決意表明、「路上」ではもうヒップホップの枠を超え音楽を聴きながら一つの小説を読み終えたかのような、自分とは程遠い世界を生きている一人の男の人生を”追体験”するような曲で衝撃でした。
そして2nd、前作を踏襲しつつもリードトラックの「Scissors」が音をそぎ落としミニマルに淡々とフレーズを繰り返していくんですがかなり不穏な空気を漂わせてSlintの「Rhoda」や初期インスト曲に近い感覚があります。Ativinは他アルバムでSlintのTweezっぽい曲もあったりするので、Spiderland以前の彼らを独自解釈してる感じがいいですね。リフの雰囲気も前作と比べるとじめっとした陰鬱なものに変わっていて、緊張感もあるしよりポストロック的になったというかSADな雰囲気も出てきている。あくまでバンドサウンドなんですけど醸し出す雰囲気がダークな方向に行っていてSlint直系というか、曲調はもう少し早くラフにしたような質感ですが関連作として是非。「Underwater」という曲ではストリングスも入ってダウナーで色鮮やかなアンサンブルはそれこそSlint、そしてShipping Newsを思い出すかなりルイビルっぽい曲でニヤリとする。メンバーのダニエル・バートンはEarly Day Minersというバンドでもうちょっとフォークとかの風情感じるスロウコアをやってるのですが、Ativinにもそこと通じるスロウコア的側面が強く出た曲はありつつも、その奥にある部分、それこそフォーキーな質感はAtivinには全く無いのが良い。ポストハードコアサイド、という感じでしょうか。
所謂スロウコア、ポストロック的と言っても、「When the Sky Turns Clear」という7分の曲を除けばあくまで2~4分くらいのサイズで次々曲が進んでいくのがAtivinらしいなと思います。おかげで曲の雰囲気は重くても普通にリフはかっこいいのでどんどん聞けますね。
そして同時期のEPでこれが素晴らしい。ジャケも完璧(に好み)で、表題曲「Summing The Approach」に関しては序盤アンビエントかと勘違いするくらい空間的なインストで一度完全に闇の中に潜ってしまい、そのまま違和感なく最小限のドラムのフレーズが飛び込んでいき、ここから今までの作品を思い出すタイトで硬質なスロウコアが始まるという曲で、この静寂パートと最小限の音のみで構成されたアンサンブルは完全にポストロック以降、及びその黎明期の音響の美学というか極小から静へと流れていく感じが本当に良い。染みます。最後の「My Eyes Of Yours」もかなりスロウコア純度高め、かつ今までのマスロックっぽいリフは極限までそぎ落とされながらも少しだけ輪郭をなぞり、リズム隊の最小限な音の反復感と合わさって極上。もうこれはSlintというよりThe For Carnationとかのが近いかもしれない。曲数少ないですがかなり濃いEPで数曲スティーヴ・アルビニ録音なのも完璧にマッチしている。
MONOやExplosion In The Skyを擁するポストロック名家Temporary Residenceよりリリース。ここまでくるとSlint~Rodanの系列というよりDon Caballeroに近く尚且つ実際に同系列として語られることが多いバンドですが、Don Caballeroの緻密に組まれたプログレッシブな曲群と比べると、ジャズとかプログレの方に向かいすぎずセッションの中でどんどんエモーショナルにギアを上げていくというシンプルにロックの熱さやダイナミズムを強く、で割とそういうところがRodanとかと重ねて聞けけてしまう。それこそDon CaballeroもRodanも通過した上での次の世代のポストロックという感じ。不協和音から抒情的な音へと流れていくのはエモを複雑に長尺にしていった延長線上にあるような感じですがPeleとかと比べるともう少しポストハードコアサイドですね。
大傑作2nd。ストレートに盛り上がってく1stも好きでしたがこちらはよりインプロ色が増しギターの線も細くなり、より複雑な変拍子ギターリフとメロディアスに絡みあうリズム隊が骨組みとなって展開していきます。何より録音がかなりダイナミックで、ライブの生演奏っぽい荒々しさとジャンキーなギターサウンドは前作以上に強めながらも各パート分離もよくてめちゃくちゃかっこいいです。まさしくタイトルにもなってますが「Sausage Full Of Secrets "Live"」という曲名もあり、会場の熱量をそのまんま保存したような長尺な曲が多く、最終曲も開幕のインストと関連付けていてバンドとしてのセッションそのものを音源にしてしまったような、それこそジャズとも通じてくるインプロゼーションパートが丸ごと後半入っていて彼らの真価が聞ける作品。1stの延長線として是非。
Sweep The Leg Johnny - Tomorrow We Will Run Faster(1999)
4th。こちらでRumah sakitのギタリストも参加してより推し進めた作品で相変わらずハードコア+サックス+プログレッシブな展開という詰め込み具合によるカオス。1曲目のイントロからホーンなのでもうよりジャズの色が強まってきて長い曲が更に増えてきてますがアンサンブルは相変わらず硬質、かなりタイトなポストハードコアの延長線にあるもので、むしろこの対比は前作以上かもしれない。静寂パートも極端なものはなくなってエモのクリーンパートを練り上げて無理やりジャズに組み込んでいったような、相反する2つのパートを同時に鳴らして無理やり枠にねじ込みながらも成立させてしまったような、曲全体の世界観の解像度もかなりくっきりしててめちゃくちゃかっこいいです。ここまでくるとSlint以降というテーマから脱線してきますが、解散後にメンバーのクリス・デイリーはJune of 44やHooverで知られるフレッド・アースキンとJust a Fireを結成することでうっすらと再び繋がってきます。
Just A Fire - Light Up(2004)
というわけでJust a Fire、今までHooverやその派生バンド諸々にJune of 44、HiMと言った数々のバンドで強い影響力を及ぼし当時のポストロック~ハードコアシーンの土台となったフレッド・アースキンが今度は自らボーカルをとります。
June of 44がポストハードコアからスタートしアルバム減るごとに徐々にダブ~ジャズ化しHiMに繋がったことや、Hoover解散後に同メンバーでAbileanを結成しまたしてもダブに接近したことなど、上記のバンドには全てフレッド・アースキンがベーシストやトランペットで参加していてどんどんダブ・レゲエを意識した作風へと変化していくんですよね。で今作は最初からその状態で結成、てことでガッツリとポストロックなのかと思いきや、意外なことにディスコーダントで硬質なポストハードコアを鳴らしていてこれがかなりかっこいいです。とは言いつつもろレゲエを思い出すミニマルなベースラインが挿入されたり複雑なリズム展開を見せたり、今まで"ポストロック的な"アプローチで行われていたことがストレートにハードコア直系で鳴ってきます。元々こっちの趣向で初期Hooverとかが一番彼の色強かったのかなぁとか考えてしまいますがかなりオススメ。Spotifyに無いのが残念。