朱莉TeenageRiot

棚,日記,備忘録

butohes - Lost In Watercycle(2021)

butohes - Lost In Watercycle

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感想です。最近このアルバムについての話題が多いので一度自分の印象まとめておこうかなと。

butohes、東京を中心に活動する4ピースバンドで元々先行トラックの「Hyperblue」「T.O.L」がSNSで話題になりそのまま先日EPをリリース、そして初ライブということで丁度見る機会があったんですが本当にすごかったです。まぁ僕は先行シングルにして1曲目Hyperblueから完全にやられてしまったんですけども。最初にbandcampで出ていたSuperplumeを聞いたときElephant GymやEnemiesを想起してあの辺をもっと歌ものに寄せた感じかなという印象で隙間のあるアンサンブルメインのバンドだと思ってたんですが、Hyperblueではクリーンなギターリフを重ねに重ね音の波で埋め尽くしていくと言った曲でかなり予想外で、その中からメロディが自然と浮き上がってくるような、轟音とは違うんですがこの透明感のある重厚なギターサウンドがめちゃくちゃ気持ちよかったんですね。インスト系のポストロックっぽさもありインストと歌もののギリギリ中間を縫うような歌メロが個人的にかなりツボだったというか。

というわけでA面3曲はどこシングルカットしても問題ないようなキラーチューンで固めつつ、B面からは打って変わりエクスぺリメンタルに深く潜っていく三部作で音響面にフォーカスしていきます。ギターボーカルであるMichiro氏は同時にエンジニアも兼ねていて「Aquarium」では彼のアンビエント趣味が色濃く出たとのことですが前半の流れをぶった切らずちゃんと延長線として聞け、1フレーズをきっかけに音が誕生し轟音に至った末また冒頭に戻ってくる「zero gravity」では曲構成自体がドラマティックなのもあり非常にライブ映えのするアンセムで(生で見たとき凄まじかった)ここから吹き抜けの良い「Superplume」へ繋がるという6曲構成を生かし切った非常にコンセプチュアルな作品となってます。

ツイッターで感想を見てるとシューゲイザー、ポストロック、ポストパンク、等々言われてますが個人的にそれっぽいジャンルに当てはめるのは妙にしっくり来ず、というのも本人達も別にそれをやってるつもりは全くないとのことで参照元もとくに思いつかないんですよね。ある程度音楽的なバックグラウンドを前提としつつその奥が見えてこない・・・という意味では同じく突然変異的に出てきたPeople In The BoxDownyを思い出すし、それらと音楽性が似てるわけではないんですが、やってることが結果的に「ポストロック」としか形容できないという立ち位置に近いものを感じるというか。重厚にも関わらず全く聞き疲れのしない透明感があり、この音の波に身を任せ浮遊する感じは王道とは外れつつもシューゲイザーと形容したのかなという気はします。

とは言いつつSCLLっぽいというツイートを見かけて確かに!となったり、Mercury Programっぽいってツイートを見て言われてみればHyperblueが結構Chez Viking期っぽいフレーズ出てくるかもなとなったわけですが、どんな方向に行くか楽しみなバンドではありますが上記の面々に引っ掛かる方は是非とも。B面での実験的な方では初期múmとか好きな方にも引っ掛かるかもしれません。あとは知人のsora tob sakanaファンの方が解散ロスの中それ以降聞いたバンドの中で一番しっくり来たと感動してました。まぁ確かにポスト残響としてマスロック~エモ~ポストロックを横断しつつ徐々にエレクトロ化していったって意味ではどっか掠るとこあると思います。てか単純にベーシスト兼作詞のFg氏が照井さんの大ファンなのでリンクしまくりますね。

 


discography⑥

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アルビニ録音で好きなやつというかアルビニ本人のバンドとかでも好きなやつを選んでます。


 

Big Black - Songs About Fucking(1987)

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ツイッターで流行っていた80sベストって言葉を見てぱっと思いついたアルバムこれとMission Of Burmaでした。インディーシーンの立役者ことスティーヴ・アルビニの原点となるバンドで、ドラムマシンによる暴走するマシーンビートにジャンク感たっぷりの超ノイジーなギターを乗せて爆走します。音割れというかもう半分以上ノイズでしょというくらい爽快感がありここにまたアルビニのキレた咆哮が乗るのでとにかくかっこいいです。ボーカリストとしての彼が一番映える作品これだと思います。

80年代前半の初期作聞くとポストパンクとかノーウェーブの流れのバンドに聞こえてP.I.Lとか引き合いに出される感じでしたが、今作は普通にハードコア色強くて金属的なドラムマシンやノイズ要素からインダストリアルともリンクしてきますしMinistryとの同時代性もありますね。Slintの1stのジャンク~ノイズロック感とかは割とBig BlackRapemanの系譜感じますね。

 

Rapeman - Two Nuns And A Pack Mule(1988)

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久々に聴いたんですがマジでかっこよすぎる・・・もう圧倒的というかたった一年で解散してしまったバンドですが、Big Black解散後にアルビニがScratch Acidのリズム隊とともに結成した新バンドで本当に凄まじいです。基本的に後期Big Blackのノイズロックをドラムマシンではなく生演奏で再編成した・・・て感じですが、ドラムマシンがないのであの高速な爽快感は無くなり生ドラムのフレーズ一発一発がとにかく重く、序盤の「Monobrow」「Up Beat」ではドラムのテンポが途中で変化しそれに合わせて各リズム隊も縦横無尽に動いたり・・・ともうBig Blackとは全く楽しみ方が違います。そしてこのカラッカラに乾いた拡散しまくったノイズギターの嵐がマジで凄まじい。

Rapeman解散後にメンバーがそれぞれ分かれて活動するShellacとJesus Lizardはかなりこの時点で通じるところがあるというか、原型と呼べるものはここでできたんじゃないかとすら思うんですが、どちらも洗練されすぎてる中こちらは各パート衝動増し増しでぶちまけてる感じがあり、ジャンクロックとして聞くのならこれ以上のものはないです。

 

Shellac - At Action Park(1994)

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現在も活動中のアルビニのバンドで僕はこのバンドをきっかけにこの辺にハマっていきました。未だによく引っ張り出す愛聴盤で、アルビニについてPixiesとかNirvanaとかのプロデューサーとしてしか知らなかったのでバンドやってたんだ?というのもShellacから知ったんですが、実際にRapeman解散後Shellac結成までの1988~1993年辺りの空白はプロデュースがメインでやってたのかなぁとも思います。この間に心当たりのある名盤いくらでも出てるし。

で1st、Big BlackRapemanで見せたジャンクとも言える破壊的ギターサウンドはなりを潜め、むしろカラカラのノイズギターをそぎ落とし収束させたようなギターでジグザグと反復するリフとそこに絡んでくるリズム隊を聞くという今までと比べると大分ミニマルな作品で、変拍子も多用し完全に個性の塊で3ピースの究極というか、もう楽器同士の会話を記録しているとすら言いたくなりますね。1曲目いきなりイントロからあの「針金を引っ掻いて空気の振動でギターが鳴ってる」と言うジャリジャリとした空気感そのものが音に出てて、この密室感はアルビニ録音のビジョンそのものというか、本人の美学が詰まってるんだろうなと思います。

余談ですが、僕はナンバーガールがSappukeiを作るにあたってこの辺に影響を受けたという話を聞き開幕「My Black Ass」から圧倒的な緊張感、そしてギター音が裏返ったときの激カタルシスに衝撃を受けこの後ハードコアに目を向けるようになったんですが、「The Admiral」辺りのドラムのビート感がナンバーガールにもろ引用されてるものだったり、そのまま54-71にももろに繋がる感じですね。

 

Shellac - Terraform(1998)

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名盤2nd。1曲目「Didn't We Deserve A Look At You The Way You Really Are」が12分淡々とワンフレーズ繰り返す曲で緊張感を維持して煮え切らないまま終わり、吹っ切れたように2曲目以降からは3分前後の衝動まみれの激しい演奏が続くという振り切ったアルバム構成。そのフラストレーションを溜めてからのカタルシスの連続が余りにも気持ちよく、やっぱアルバムで聞くのっていいなというのを再確認することとなったアルバム。個人的に彼らのベスト作です。というか「Disgrace」「Canada」もミニマルにフレーズを紡ぎつつ爆発していくのかっこよすぎ。この辺のBBCライブ盤の「Canada」でのテイクがマジでヤバイので是非とも。こっちはZAZEN BOYSとかがかなり影響を受けてると思われます。

 

Shellac - 1000 Hurts(2000)

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lastfmやサブスクの再生数見ると彼らの一番の人気作これっぽいですね。今までのアルビニのボーカルはいつもスポークンワーズと歌の中間+シャウトともとれるものだったのが1曲目「Prayer To God」から珍しくしっかりと歌っていて鈍器のようなビートの上で爆発させていきます。「Canaveral」も歌ものっぽいし「Song Against Itself」も割とポップなんですが、逆に今まで以上にノイジーな曲もあったりと基本は今までの延長ですが今までの鋭利な作風から少しずつ拡張されてる気がします。緻密なセッションで練り上げるというより感覚的なセッションで曲を作ってるようなので当時のモードが反映されてるのかもしれません。

 

Jesus Lizard - Goat(1991)

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Scratch Acidで活動していたデヴィッド・ヨウ率いるTouch&Goを代表するバンドで名盤2nd。元々彼らを知ったのはグランジオルタナまとめサイトニルヴァーナとスプリットを出しているとのことで、まぁ大きく勘違いしてしまったわけでグランジバンドとは全く色が違いますね。グランジ的なハードロックやブラックサバス由来のヘヴィネスとは全く異なるおどろおどろしさがあり、むしろアンサンブル自体はスカスカでポストパンク~ハードコアの流れで聞くバンドかと。

とにかくこのバンドと言えば圧倒的存在感を誇るデヴィッド・ヨウで、彼の化け物じみたボーカルはとにかく酩酊感がありこんなボーカルいたら一人で全部もってっちゃいそうなんですがそうもいかず、リズム隊各パートのフレーズ、音色ともに圧倒的個性を持ってるのがジーザス・リザードのすごいところ・・・。というかアルビニ録音マッチしすぎだし、Rapeman経由して別れてるので単にプロデューサーとして以上に関りが深いってのもあると思いますが、アルビニ録音ありきだろって思えるくらいデカく録られているドラムの存在感半端なくこれを中心に進行していきます。ここにデュアン・デニソンの地をのたうち回りたくなるような不穏なギターとこれまたアルビニらしい音の太さよりも切れ味の鋭さメインなベース音が乗るという、混沌とした世界観は唯一無二。

 

Jesus Lizard - Liar(1992)

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開幕「Boilermaker」から爆走していくんで前作にあったじわじわとまとわりつくような雰囲気とはまるで違い、とにかく爽快感ある1曲目に今聞いてもかなりびびります。Goat収録の「Mouth Breather」とか好きだった人にはヤバイでしょう、てかそれ僕ですが・・・。前作より激しいし速いしで割と聞きやすいですがフレーズとフレーズの隙間が見えるおかげでリズム隊が非常に映えるのは勿論変わらず、ドラムのキレキレっぷりは更に増していて個人的にMinuetmenとかGang Of Forとかの流れでも聞ける気がします。というよりScratch Acid時代まで遡って聞くとあの頃のデヴィッド・ヨウのボーカルってゴスとかポジティブパンク感が結構強くて、グラムロックとかも好きなようなのでその辺がハードコアやノイズロックを通過した・・・というのが彼らなルーツな気がしてきますね。ちょっとBauhaus思い出すとこもあるし。

 

Uzeda - Different Section Wires(1998)

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イタリアのバンドですがTouch&Goでアルビニ録音。Big BlackとScratch Acidのメンバーが合流してRapemanになりそれが分離してShellacとJesus Lizardになった・・・という変遷を辿ってきたわけですが、これらのバンドが好きならまず間違いないってバンドがこのUzedaですね。まぁほんとにShellacとかを連想する縦横無尽な曲展開に半ポエトリー+シャウトとも言えるボーカルが乗ってくわけですがShellacと比べても超ノイジー。とにかく濁っていて汚水とも言いたくなるようなジャンクなギターノイズで埋め尽くす1曲目「Nico And His Cats」からかっこよすぎですが、不定形の歪んだギターリフをドラムが繋ぎとめてく感じがドラムで聞くノイズロックって感じです。

ちなみにUzedaの主要メンバーである二人は後にDon Caballeroのリーダーであるデーモン・チェと組んでBelliniを結成、この辺のTouch&Goやアルビニ録音のバンド達がどんどん合流していくのが個人的にかなり好きなとこです。

 

 


 

昨年ナンバーガールのライブ見たのをきっかけにこの辺の熱が再燃しShellac聞きまくってました。あと

この記事Rapemanについて書いている全ての文章で一番好きですので是非。

 

Don Caballero周辺はアルビニ録音+Touch&GoであとRodan~June of 44~Shipping NewsのほとんどがアルビニのスタジオでShellacのメンバーであるボブ・ウェストンが録ってる上に、レーベルもTouch&Go及びその傘下のQuarterstick Recordsで、この辺のシカゴ~ルイヴィルの布陣というかシーンが僕はもうほんとに好きすぎる。

 

discography⑤

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以前Slint影響下のバンドをまとめてたら(discography④)元コンセプトから外れないまま徐々にDon Caballeroっぽくなってくの面白いなと自分で言ったんですが、ハードコア~ポストハードコア~ポストロックという変遷を辿ったという意味ではSlintやRodanと直接的な絡みはなくともかなり同時代性があり、後のマスロックやポストロックの原型を作ったバンドですね。

てわけで流れで全作聞き返し・・・そしたら3rd派だったのが今の僕は完全に4th派になっていたので感想+適当に周辺バンドで好きなやつです。


 

Don Caballero - For Respect(1993)

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ドンキャバと言えばやっぱりマスロック~ポストロック元祖としての緻密に組まれたセッションによるインストバンドの印象が強く、ジャズ要素も強かったりでキング・クリムゾンと比べられたり、あと曲が長尺なイメージがあったりもするんですが、1stはあまりそれに当てはまらずとにかく疾走感溢れる変則ポストハードコア~マスロックオリジネイターとしての名盤で超ヘヴィです。というかシンプルにメタリックなギターと手数の多いドラムがぶつかり合いどんどん加速してく熱い曲だらけ頭空っぽで聞いてめちゃくちゃかっこいい作品というか、ロック的衝動たっぷりですね。あとアルビニ録音。ちゃんと後のドンキャバに繋がりつつ最もシンプルで、短い曲ばっかなのも印象的。Oxesとか初期Tera Melosとかのマスロックはこのアルバムが一番近いかも。

 

Don Caballero - Don Caballero 2(1995)

DON CABALLERO 2 /DON CABALLERO/ドン・キャバレロ/現BATTLESメンバーも在籍していたUSポストロック  ・バンド1995年リリース2ndアルバム / 名盤|ROCK / POPS /  INDIE|ディスクユニオン・オンラインショップ|diskunion.net

前作から引き続きメタリックで硬質なギターを全面に押し出しつつ曲が拡張されまくっていて10分くらいの楽曲だけでも3曲あります。で曲展開も一辺倒ではなく何部構成にもなっていて、まだ3rd以降はその後のポストロック要素というか本格的に実験的になってく(むしろなりつつキャッチーさを損なわなかったのが彼らの一番すごいとこかも)わけですが、2ndということで1stの衝動たっぷりのまま複雑になってたという絶妙なバランス。というか彼らの90年代の作品って本当に全部名盤だし、ちゃんと前作、次作を繋ぎつつマンネリ化しないのがすごいです。

 

Don Caballero - What Burns Never Returns(1998)

Don Caballeroの「What Burns Never Returns」をApple Musicで

で3rd、完全にDon Caballeroのイメージを確立させた名盤で1曲目の「Don Caballero 3」から今後の彼らのスタイルの王道、ジャズ色もかなり強まってるんですがその中でも所謂"ポストハードコア"的な硬質でタイトな質感が残っててめちゃくちゃかっこいいです。インプロ色強そうでいてその実全部計算通りでやってそうな緻密な曲展開、その展開の鍵を握るバンドの創始者にしてリーダーであるデーモン・チェのドラムがとにかく音、フレーズともに極上で、彼が曲の中心であったことがよくわかる作品になってます。

他にもライブ盤でもお馴染みの「In The Abscence Of Strong Evidence To The Contrary, One May Step Out Of The Way Of The Charging Bull」「Delivering The Groceries At 138 Beats Per Minute」など代表曲目白押しですか、どれも1stが2ndに至るまでに拡張されたプログレッシブな展開をしつつメタリックなギターサウンドも所々残ってる・・・という感じでただメインというよりは"カラフルな曲展開の内の一つ"という具合に収まりかなり聞きやすいです。総まとめとも言えるし重かった1st~2ndと完全にポストロック寄りになった4thのいいとこどりをしてるとも言える作品で「Slice Where You Live Like Pie」はもうベストトラックなんですが、リフもキャッチーだし音色も抒情的で後の名作American Donへ繋がってったのがわかります。American Donと並んでオススメ、というかセットでどうぞ。既にミニマルな要素強いですがより硬質なのがこちら。

 

Don Caballero - American Don(2000)

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代表作。ジャケも有名でTouch&Goの顔とも言えるアルバムでアルビニ録音の名盤としても有名です。でまぁ完全にマスロックで、ディストーションが効いたへヴィなギターリフなどの要素はもうほとんど前作においてっちゃってるんですけどね。名曲「The Peter Criss Jazz」はタイトなセッションやアンサンブルを聞かせるというより、完全に空間に浸透していく音色を聞かせるといった方向にシフトしたルーパーとポリリズムを駆使したギターリフの繰り返しでどんどん世界観を広げていきます。こういう広がってくスケール観をアルビニの密室感ある音であえて録るというのが非常に箱庭的で割とこの手法後のポストロックにも繋がるし、同年にMogwaiアルビニ録音を出してたりと同時代で共振していたと思います。

以前聞いたときはやっぱ歪んだギター多い方がいいっていうシンプルな思考で3rdをよく聞いててこっちは難しい印象あったんですが、むしろ曲を印象付けるリフやフレーズはこっちの方がキャッチーでわかりやすい気もします。「You Drink A Lot Of Coffee For A Teenager」「Details On How To Get Iceman On Your License Plate」とかは抒情性たっぷりで複雑なのにフレーズもキャッチーですんなり聞けるし何より展開も音色もめちゃくちゃエモいしで、割とシカゴ音響派キンセラ兄弟とも関連付けて「ポストロック」として一番聞きやすいアルバムかも。

ギタリストであるイアンがバトルスで有名になったのもあってよく前身として語られるのを見ますが、バトルス的な電子音ともつかずのギターの音色や細やかなフレーズは今作が一番近いですかね。と言ってもドンキャバは全作デーモンのドラムの存在感が圧倒的で彼のイメージを具現化するためのバンドというイメージがあるので、イアン一人であまりバトルスと繋げるってのはちょっと違うかもなとは思うんですが、セットで聞きやすいのはわかるかも。

 

Storm And Stress - Storm And Stress(1997)

ドンキャバとメンバーほぼ被ってますがめちゃくちゃ実験的な作品。というか中心人物であるデーモンがいないので別物、イアンのギターは確かに近いけど曲構成がめちゃくちゃ実験的で、とにかく手数多く突っ走るドラムの上でそのリズムを無視したギターのフレーズも非常に不規則といいますか、形を保っていないような各パートのフリーセッションの塊・・・フリージャズとかのが近いんですかね。ちなみにアルビニ録音、イントロ前のまるでスタジオ内で楽器をやりくりしているのを目前で見てるかのような臨場感があります。どの音も誇張して来ず音の実験のようなとこもあり、Gaster Del SolとかJoan of Arcとかのが近いかもでそれと近いような音響メインというか、音の隙間の空間に浸るというような聞き方がしっくりくるかも。

 

 Storm & Stress - Under Thunder and Fluorescent Lights(2000)

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2ndということでプロデューサーがアルビニからジム・オルークに代わり、ギターフレーズがよりミニマルで録音もアルビニの硬質なものから大分丸くなってるためポストロック感はこっちのが強く、録音による楽曲の雰囲気を聴き比べるのもめちゃ楽しいですね。で割と歌の比重高めに感じるのもソフトな録音だからこそか?あと1曲1曲の時間が割と短め・・・なんですがかと言ってインプロ色が減ったとかそんなことはなく、むしろギターのフリーインプロ感は更に高まってるような・・・というか00年代以降の所謂「マスロック的」なキメ細やかなフレーズの応酬というか、ああいうリフってこう生まれてったのかなというのが垣間見えるようなナチュラルなセッションのワンシーンをまるごと保存したような曲が多いです。

 

Hella - Hold Your Horse Is(2002)

そしてHella、ドンキャバをオリジネイターとしてマスロックの祖とするなら(本人達はその呼称を嫌ってますが)その後00年前後に出てきたHella、Sleeping PeopleやTera Merosと共にドンキャバ以降のマスロックを代表するバンドでこん中で一番好きですね。ギターとドラムの2ピースながら完全にやりたい放題に二人して暴れまくってて、カオスというよりもう暴走って感じのこのドラム最初打ち込みかと勘違いしたし、ギターも攻撃的なリフを連発しまくってて崩壊寸前なんですが、所々エモーショナルな展開が盛り込まれているのがまた熱い。

このザック・ヒルVSスペンサー・セイムという個性のぶつかり合いがマジで好きなんですが3rdではなんと2枚組、しかもそれぞれのメンバーが主導権を握って片方ずつ好きにやる・・・てのもかなり面白いんですよね。4th以降はボーカルを入れたりメンバー増やしてマーズ・ヴォルタとかに寄りつつメロディアス化してくわけですがなんだかんだ活動休止(?)中。

 

Creta Bourzia - Memories Of Earth(1998)

Creta Bourzia – Memories Of Earth (1998, CD) - Discogs

ピッツバーグというDon Caballeroと同郷のバンドで、リアルタイムで彼らの躍進を目にしながら憧れ相当影響を受けたとのことです。Don Caballeroは一度解散、そして再結成時に中心人物であったデーモン以外メンバー総入れ替えということで、なんとこのCreta Bourziaのメンバーが加入・・・てかそのときのインタビューで知って調べたらbandcampにあったんで最近聞いたんですが、1stのドンキャバをもう少しギターリフ主体に切り替えたマス寄りポストハードコアという感じです。こっちはボーカル有り。やっぱDischordとかとは距離あってかなりメタリックな質感、ドンキャバ再結成後の正体が見えてきます。個人的に復活後ラウド寄りのドンキャバにあんましっくり来なかったんですが、今までの続きとして聞くよりCreta Bouziaと初期Don Caballeroのハイブリッドって感じだったのかも・・・

 

 


以上です。再結成後のドンキャバはぶっちゃけ余り聞き込めてなく(ライブ盤はよく聞きますが)、HellaDon CaballeroからSpotifyが高確率で繋げてくるのとあとblack midiとか話題作聞いてると所々思い出すことあるんでよく聞いてました。

 

 

日常に生きる少女②

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描きました。昨年と同じく6月13日、誕生日おめでございます。ナンバーガールオマージュではなくちゃんと描きました。あとpixivに間違えて眉毛ないバージョン上げてしまい鬱。

 

前のやつっす

 

これは自分のことかと思い泣きそうになった曲。

記録シリーズ:Shipping News

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Shipping News。RodnaやJuen of 44でフロントマンとして活躍したジェフ・ミューラー最後のバンドにして、Rodan時代を共にした盟友ジェイソン・ノーブルと再びタッグを組みルーツであるハードコア~スロウコアを掘り返します。

00年代に多数フォロワーを生んだポストロック元祖であるSlintやRodan、Crainを発祥とし脈々と続くルイビルのポストハードコア~ポストロックのオリジネイターによる正当な後継。前回、前々回から引き続きSlint以降というテーマの最終ということで全アルバム感想です。


 

Shipping News - Save Everything(1997)

てわけで1st、元々Rodanで活動していたというのもありもろ直系のサウンド・・・とは言いつつRodanにあったスロウコアから爆発して一気に音が分厚くなるエモーショナルな展開はあまり見せず、硬質で冷ややかなギターサウンドと3ピースの隙間のあるアンサンブルを生かし、じわじわと緊張感を持続させながら形を変えていきます。静→動の対比の色はあまりなく、彼らのフォロワーであろう今後出てくるポストロックやマスロックをもろ想起する感じでShipping Newsを聞くことでRodanがマスロックの元祖というのにも説得力が出てくる気がします。実際以降のバンドでもAtivinとかはもろこの頃のShipping Newsを思い出すし、ポストロック大御所ですが初期はハードコアの冷たさが残っていたMurcury Programの1st~2ndとかも近しいものを感じます。

 

Shipping News - Very Soon, And In Pleasant Company(2001)

前作と比べて一気に静寂寄り、前身バンドも含めて彼らのキャリア内で最も落ち着いた作品かもしれません。開幕「The March Song」からミニマルなフレーズの反復によるスロウコアですが、轟音で爆発させるのではなく硬質なフレーズの絡み合いの妙で爆発を表現するというのはJuen of 44でも見られた作風であり音色がおそろしくかっこいいです。June of 44の3rdからダブ要素を薄くした作品としても聞けるし、スロウコア色強くなると同時にジェフの歌心も相まってフォークロック的な風情も少しあり、Rodanの頃からの抒情的なメロディーが濃く出てる曲が好きだった人はしっくりくると思います。

 

Shipping News - Three-Four(2003)

ジャケがマジでかっこよすぎる・・・というかShipping Newsはアートワーク全部かっこいいですね。今作はEPをくっつけたコンピレーションですが新曲3つ追加されてたり全部同時期の録音なので統一感もあり、普通に3rdアルバムとして聞けます。「Hanted on Foot」「Haymaker」辺りはSlintを思い出す静→動への爆発していくスロウコアですがギターのバースト具合が尋常じゃなく、ここまでやるとMogwaiとかと同系列として聞けるでしょう。

あとは静へと振り切った曲が多くやはりSlint~The For Carnationなどのルイビルの同期と呼応しどこまでも深淵へと潜ってしまうし(実際に次作からはThe For Carnationのベーシストであるトッド・クックがメンバーとして加入します)、全体的に落ち着いた曲が多い分、狂気的な曲の振り切り具合がすごいです。今までと比べるとアコースティックな歌ものの雰囲気もあり、Mogwaiの2ndとか、あとDusterとかとも並べて聞ける気がします。通して聞くにはちと重いですが名曲だらけ。

 

Shipping News - Flies The Fields(2005)

2005年ということでルイビル発祥の他のバンドは多数解散、むしろシーンは次に移り変わり、自分達の影響下である新しいポストロックやマスロックのシーン真っ只中で発表された代表作。そんな中彼らは音をそぎ落とし、初期RodanやJune of 44の1st~2ndを想起する彼らのポストハードコア的な獰猛なバンドの音を突き詰めていった作品とも言え、相変わらず陰鬱ですがインディーロックとかからもアクセスしやすいアルバムじゃないでしょうか。

1曲目「Axons and Dendrites」から後のライブ盤にも収録されるナンバーで彼らの曲の中でも随一のポップさを誇っていますが、スポークンワーズを軸にじわじわ迫ってくるスタイルはやはりSlint以降という空気を漂わせ、今や一つの様式美と化した時代にそのオリジネイター達が円熟した音を鳴らしている・・・というより、その更に次に行ってしまったという気さえします。「(Morays or) Demon」に関してはShipping Newsらしいハードなナンバーで、今までのアルバムでの彼らってスロウコア~ポストロックに寄ってた気がしますが、今回はポストハードコアに回帰しそれを発展させてる印象があり、今までの経過を聞きつつ2005年の作品としてこれを聞くとストレートすぎてニヤリとします。

Rodan、June of 44と枝分かれしていったバンドとこれを聴き比べることで、フロントマンであるジェフ・ミューラーはそれぞれのバンドの音楽性の"どの部分"を担当していたのかが浮き彫りになってくるので聞き比べるのが非常に面白いです。その核とも言える部分がむき出しになっているのがこのアルバム、でしょう。ちなみに紹介した4枚全てShellacのボブ・ウェストンによる録音、レーベルはTouch&Go傘下のQuarterstickという、Rodan時代から彼らの作品では完全にお馴染みのメンツ。

 

Shipping News - One Less Heartless To Fear(2010)

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解散前ラストアルバムにして地元ルイビルでの演奏を記録したライブ盤、しかも前アルバムの2曲を除き全て新曲。ライブ音源そのままということでシンプルなアレンジな上に結構早い曲が多くパンクに回帰した・・・というイメージでしたが、B面からは今まで通りポストロック色も強くなり「Do You Remember The Avenues?」とかはもう半マスロック化しつつShipping Newsとは思えないほど高速でめちゃくちゃかっこいいです。もっとこの路線を聞きたかった・・・。

主要メンバーであるジェイソン・ノーブルが2013年に亡くなってしまいバンドは解散。当時まだファンではありませんでしたが、ジェフとジェイソンは高校時代からの親友でJ・クルー、Rodan、Shipping Newsと10代の頃からずっと一緒に音楽をやってきてるので当時の彼の心境については想像に難くないです・・・。ジェフ・ミューラーについて僕は最も影響を受けているミュージシャンの一人ですので、何年か経ち今またJune of 44として再始動してくれたことに感謝しかありません。

 

以上です。元々前身となったRodan及びJune of 44の記事と一緒にジェフ・ミューラーのバンドとして載せようと思ったんですが流石に長くなりすぎたので断念、そしてSlint以降のルイビルの系譜としても完成系の一つということで別で書きました。とりあえずRodanからセットで是非とも、下に関連記事並べます。

 

 

そしてこれら以降に近い雰囲気のあるバンドとかを並べたやつですが、一応ルイビル関連としては一まとめです。

 

 

邦楽オールタイムベスト①

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邦楽について分けて書こうかなと思ったんですが(あんま聞いてないし)、昨年そういえばツイッターで邦楽オールタイムベスト投票ってのが流行り、投票はしなかったけど仲間内でリスト作って公開するってのをやったので、そこで選んだのを中心+最近マジで良かったやつとかを思い出込みで書いてこうと思います。


 

LOSTAGE - Guiter(2014)

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LOSTAGE、元々は4ピースでぶっといギター二本を生かした轟音エモとも呼べるポストハードコアサウンドにどう日本語を乗せるか・・・というバンドだったのが2009年のメンバー脱退を境に3ピースへと転身。基本はエモ~オルタナを横断しつつハードロックやダブ等様々な顔を見せつつもストイックに音をそぎ落とし、歌もの要素もどんどん強まっていき・・・て感じですが、今作4ピース時代の轟音要素と3ピース以降のバンドサウンドがいい感じにバランスよく完成されててある意味到達点という気もします。

エモ・・・を通り越しポストロックにまで近づいたような優しいギターの包み方をしてくれるんですが、いややっぱ基本ギターロック的ですが一瞬そう言いたくなるような暖かみがあるのはやっぱり五味さんの歌かな。スケール感広い轟音要素もガッツリ残ってる中「どこでもない」とか「路傍の花」とかで見せる収束してそぎ落とした瞬間のギターの音は隙間の中で本当に映える。元々歌詞が好きなバンドで、抽象的ながら時折見せる強烈な人間らしい言葉のやさしさに触れた瞬間そのギャップに泣いてしまう・・・。ブッチャーズに捧げる「美しき敗北者達」なんてタイトルから良すぎますね。

 

Tatuki Seksu - Hanazawa EP(2011)

Tatuki Seksu – Hanazawa EP (2011, 320 kbps, File) - Discogs

出会ったときの衝撃がマジで凄まじかったネットレーベル発のシューゲイザー名盤。花澤香菜のアニソンやキャラソンからボーカルを抽出しそこに轟音ノイズを乗せるというまさにインターネット感のあるリミックスのようなアルバムですが、演奏も打ち込みではなくこれを録るためにレコーディングしたという力の入りっぷり。そして彼女のウィスパー風味の声質がシューゲイザー特有の甘美さや浮遊感と相性が良すぎて、1曲目の「プリコグ」から本来アニソン(これはゲームからですが)らしいかわいらしいコーラスがドリーミーでミステリアスになるという超化学反応が起きてました。「恋愛サーキュレーション」でも大轟音の中でも声質のおかげでハッキリと存在感があり異物感が一切ない・・・。

基本的にはマイブラリスペクトの王道シューゲイズ、ですがマンチェっぽいダンサンブルさはなく、むしろ重めのノイズがより強烈に乗っててオルタナ度かなり強め。ていうかこれもうオタクの夢みたいなもんですよ、いや発想はわかるし本当にピンポイントに突き刺さるものだけどそれにしても素材が良すぎるし、演奏も良すぎるしで広く聴ける作品だと思うんですよ。マジですごい。

 

Elfs In Bloom - Girl Meets Manifesto(2012)

Girl Meets Manifesto | Elfs In Bloom | Canata Records

こちらもネットレーベル発で、For Tracy HydeやTenkiameで知られる夏bot氏主宰のCanata Recordsより。ギターポップシューゲイザーへと発展していくその瞬間を切り抜いたようなアルバムで、ジザメリのダークランズにもうちょいノイズ足して疾走感足した感じです、でもうダークランズ大好きな僕にはもうヤバイっす・・・。だってこういうジザメリのアルバム聞きたかったって思ってたみたいのがまさしく具現化した作品だし、しかもElfs In Bloom終了後の新バンドHappy Vally Rice Showerの1曲目が「Just Like Lucy」でもろオマージュなんですよ。

「I See Your Face And Feel Ecstasy」はキュアーとかも思い出すギターポップにほんのちょっとの甘いノイズとあととにかくメロディーも良すぎるしでマジで大名曲だし、ちょっとUSオルタナっぽい重さもある轟音シューゲイズからオアシスっぽいギターリフが飛び出す「Resurection」もほんとに泣けます。先ほどの後継バンドHVRSの方で再録も多いんですが、アルバムの流れや少しくぐもったローファイな録音だからこそ感じるノイズと甘酸っぱさのバランスや統一感含め本当に好きな作品です。あと地味にコンポーザーのたびけん氏によるブログ(空白依存症)にもめちゃくちゃ影響を受けていてかなりのバンドをここから知りました。

 

syrup16g - coup d'Etat(2002)

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音楽においてベストを選ぶという際、歌詞について選ぶのかサウンドについて選ぶのかで全然意味合いが変わってくるし、それら一緒にしたこういうベスト的なものって同じ物差しじゃないので意味ないんじゃないか?とかいろいろ考えてしまうわけです。歌ってる内容に全く同意できなくても鳴ってる音がとにかく素晴らしくて、その感動が歌詞を超えてしまう状況もあるわけだしまぁ難しいよね。しかし時折、歌詞もサウンドも好みド直球という音楽が出てくることもあり、それが完璧に同じ方向で入ってきたのがこちらの「coup d'Etat」です。80sのニューウェーブ〜ネオサイケっぽいギター音からシューゲイザー前夜までの変遷を一枚でやりつつグランジのようなわかりやすいヘヴィさもあり、syrup16gのアルバムでは一番攻撃的だと思います。

そして歌、彼の作詞って人に伝えるフォーマットにしているというより本当に己の言葉を連ねていて、だからこそ生っぽいというか、こっちから歩み寄ることでハッとすることが多いというか、好きなサウンドの中から欲しかった言葉が出てくるので、ここにいてもいいと言ってくれるような気持ちになるんですね。このバンドの歌詞については死ぬ程色んなサイトで語られてますが、王道だけど僕は「汚れたいだけ」とか「ハピネス」はいつ聞いても泣きます。

 

gorup_inou - MAP(2014)

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歌詞の流れでこれ選ぶのも変な話ですが、group_inouのMAPですね。彼らの音楽って最初の頃は支離滅裂な言葉の羅列の中一瞬ハッとくるものがあり、そのワードチョイスにとにかく中毒性があり・・・という感じだったのが、個人的に一番胸にささってくるアルバムがこれなんですけども。最終作ということだけあってトラックが一番洗練されてて最早歌詞なくても十分ストーリー性があり、キャッチーでノスタルジックな電子音楽として聴けてしまうけど、そんな中ハッキリと音と言葉がハマって一つの形になる瞬間があるんですよ。「MANSION」での「屋根からなんか見える」とか「CHOICE」での「あっという間の毎日うっとり」とか、前後性無かったり言葉遊びに近い部分もあるんですが予想外なところでそれが体に入ったときに強烈に琴線に触れる瞬間がある。これは僕の聞くタイミングとかシチュエーションにもよるものなんで個人差ありますが、そういう瞬間が散りばめられたアルバムなんですね。

 

OGRE YOU ASSHOLE - アルファベータ vs. ラムダ(2007)

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単音ギターによるツインギターのアンサンブルをつきつめた結果テレヴィジョン~ポストパンク的な無機質な質感と人懐っこいメロディーが同居した最高のジャパニーズ・インディーロックアルバム。しかも3~5分間のポップソングが続く中でもマーキー・ムーン後半のような徐々に熱くなる展開が盛り込まれていて僕が追い求めるUSインディー的緩やかなサウンドとギターアンサンブルってのはこれが一番理想です。

でこのアルバムについてこのブログで書くのたぶん三回目とかになるので以下をどうぞ、でもベストというテーマで絶対に無視できなかった・・・。

OGRE YOU ASSHOLE - アルファベータ vs. ラムダ (2007) - 朱莉TeenageRiot

記録シリーズ:OGRE YOU ASSHOLE - 朱莉TeenageRiot

 

NUMBER GIRL - サッポロ OMOIDE IN MY HEAD状態(2005)

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邦楽オールタイムベストという言葉を聞いて最初に浮かんだアルバムがこれだったけどまぁ聞いたときの自分への衝撃とそれ以降の方向性を決定的にしたという意味でも、普通に沢山聞きましたって言う回数的なものでも間違いなくナンバーワンでしょう。

元々アジカンベボベといった00年代邦楽ギターロック(これがリアタイでした)の影響元ということで辿ったんですが、スタジオ盤を聞くとちょっと癖が強くて中々入り込めなった自分が、ライブ盤でその聞きづらさが全て解消され(単純に音圧とかギターの太さとかフレーズのわかりやすさとかありますが、一番デカイのは向井秀徳のボーカルがぐんと聞きやすい&パワフルに)、解散作ということでセトリも集大成、コンディションも最強だったわけです。

でまぁライブまるごと保存なので当たり前っちゃ当たり前ですが、最初聞いたときコンセプチュアルに聞こえ全然原曲と違う音&アレンジされまくりだしで普通に新しいオリジナルアルバム聞いた感触だったんですね。流れ、完璧だし。あとナンバガ的なジャキジャキのオルタナサウンドってのは割とスタジオ盤のイメージで、こっちだと手数も多いしギターも分厚いのに埋め尽くされず4人のアンサンブルの隙間が見えるというか、フレーズの組みあがり方がハッキリとわかるというか、全員個性が強いってのもあるけどそういうのがちょっとレッド・ツェッペリン的に聞こえてめちゃくちゃかっこいいんですね。最初間違えてディスク2から再生しちゃったけどSappukeiでのクリーンなギターによる2音の繰り返しの緊張感と流れるように爆発して爆裂ノイジーに飲み込んでくこのカタルシスとか、スタジオ盤だともっとヒリヒリしたポストパンクの感触なのでまるで違いますしね。ギターのザクザク感とか・・・とにかくかっこいいです。ベストでしょう。

 

THA BLUE HERB - SELL OUR SOUL(2002)

STILL STANDING IN THE BOG/THA BLUE HERB 収録アルバム『SELL OUR SOUL』 試聴・音楽ダウンロード  【mysound】

最後にもう一点、こちらも言葉に衝撃を受けたアーティストでナンバーガールが解散ライブのMCで語っていたことをきっかけに聞いたTHA BLUE HERB。普段あまりヒップホップ聞かないのですが所謂90sのヒップホップ的なブラックミュージックのノリがほとんどなく、ゴスゴスと体に響く破壊的に加工されたドラムの生音はロックからも非常にアクセスしやすいと思います。ちょっとリズムも和的だしかなりローファイなのでバンドサウンドっぽさがあるというか。で尚且つ歌い方もラップというよりは半分ポエトリーディングに近いと思えるものもありナンバーガールZAZEN BOYSという変遷を聞いていた自分には非常に納得。

とは言いつつも、リズムやサウンドよりも一番やられたのはやっぱり言葉の力ですね。彼らの作品で最も尖っていたのが1st「STILLING, STILL DREAMING」で地方VS東京というフィールドを作り上げた非常に攻撃的な作品で、こちらも向井秀徳が冷凍都市という仮想敵を作り上げSAPPUKEIを作り上げたことから影響を感じたところです。で今作はその延長戦上、に立ちつつもう少し内面的なものを掘り下げていくアルバムで「STILL STANDING IN THE BOG」ではモノ造りは信仰であると掲げる現在地と決意表明、「路上」ではもうヒップホップの枠を超え音楽を聴きながら一つの小説を読み終えたかのような、自分とは程遠い世界を生きている一人の男の人生を”追体験”するような曲で衝撃でした。


 

以上です。順位は一応つけてましたがとくに意味ないなとなりぱっと思いついたの並べた感じですが、残りもどっかで・・・

 

 

 

discography④ Slint以降のポストロック~ポストハードコア

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前回に引き続きSlint以降というテーマで選んでいきます。かなりポストロック寄りで個人的に共通項を見出せるアルバムを7枚+1枚。


 

Ativin - German Water(1998)

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90年代に活動したマスロック~ポストハードコアバンドの1st。RodanやBedheadで聴ける抒情的でメロディアスなギターフレーズをもうちょと小刻みなリフにして反復させてくって感じで、マスロックバンドにしてはキメがあったり長尺の曲があるわけではないんですがリフの捻じれ具合はかなり通じるところがある。でこのリフの反復の中でパターンを入れ替えて緩やかに展開していく・・・という曲が多く、雰囲気も風通しがよくてマスロック寄りのインディーロックって方がしっくりくるし、それこそアメフト以降のマスロック~インディー全部取り込んだ感じのリバイバル方面にも影響を与えている気がする。あとドラムの録音がすごく心地よくてこの浮き上がり具合はダブとか、それに影響を受けたポストパンクとかの雰囲気もある。ちょっとだけスロウコアを連想する音の隙間の作り方は他アルバムやEPの方で繋がってきます。

 

Ativin - Interiors(2002)

そして2nd、前作を踏襲しつつもリードトラックの「Scissors」が音をそぎ落としミニマルに淡々とフレーズを繰り返していくんですがかなり不穏な空気を漂わせてSlintの「Rhoda」や初期インスト曲に近い感覚があります。Ativinは他アルバムでSlintのTweezっぽい曲もあったりするので、Spiderland以前の彼らを独自解釈してる感じがいいですね。リフの雰囲気も前作と比べるとじめっとした陰鬱なものに変わっていて、緊張感もあるしよりポストロック的になったというかSADな雰囲気も出てきている。あくまでバンドサウンドなんですけど醸し出す雰囲気がダークな方向に行っていてSlint直系というか、曲調はもう少し早くラフにしたような質感ですが関連作として是非。「Underwater」という曲ではストリングスも入ってダウナーで色鮮やかなアンサンブルはそれこそSlint、そしてShipping Newsを思い出すかなりルイビルっぽい曲でニヤリとする。メンバーのダニエル・バートンはEarly Day Minersというバンドでもうちょっとフォークとかの風情感じるスロウコアをやってるのですが、Ativinにもそこと通じるスロウコア的側面が強く出た曲はありつつも、その奥にある部分、それこそフォーキーな質感はAtivinには全く無いのが良い。ポストハードコアサイド、という感じでしょうか。

所謂スロウコア、ポストロック的と言っても、「When the Sky Turns Clear」という7分の曲を除けばあくまで2~4分くらいのサイズで次々曲が進んでいくのがAtivinらしいなと思います。おかげで曲の雰囲気は重くても普通にリフはかっこいいのでどんどん聞けますね。

 

Ativin - Summing The Approach(1999)

Ativin – Summing The Approach (1999, CD) - Discogs

そして同時期のEPでこれが素晴らしい。ジャケも完璧(に好み)で、表題曲「Summing The Approach」に関しては序盤アンビエントかと勘違いするくらい空間的なインストで一度完全に闇の中に潜ってしまい、そのまま違和感なく最小限のドラムのフレーズが飛び込んでいき、ここから今までの作品を思い出すタイトで硬質なスロウコアが始まるという曲で、この静寂パートと最小限の音のみで構成されたアンサンブルは完全にポストロック以降、及びその黎明期の音響の美学というか極小から静へと流れていく感じが本当に良い。染みます。最後の「My Eyes Of Yours」もかなりスロウコア純度高め、かつ今までのマスロックっぽいリフは極限までそぎ落とされながらも少しだけ輪郭をなぞり、リズム隊の最小限な音の反復感と合わさって極上。もうこれはSlintというよりThe For Carnationとかのが近いかもしれない。曲数少ないですがかなり濃いEPで数曲スティーヴ・アルビニ録音なのも完璧にマッチしている。

 

Rumah Sakit - Rumah Sakit(2000)

MONOやExplosion In The Skyを擁するポストロック名家Temporary Residenceよりリリース。ここまでくるとSlint~Rodanの系列というよりDon Caballeroに近く尚且つ実際に同系列として語られることが多いバンドですが、Don Caballeroの緻密に組まれたプログレッシブな曲群と比べると、ジャズとかプログレの方に向かいすぎずセッションの中でどんどんエモーショナルにギアを上げていくというシンプルにロックの熱さやダイナミズムを強く、で割とそういうところがRodanとかと重ねて聞けけてしまう。それこそDon CaballeroもRodanも通過した上での次の世代のポストロックという感じ。不協和音から抒情的な音へと流れていくのはエモを複雑に長尺にしていった延長線上にあるような感じですがPeleとかと比べるともう少しポストハードコアサイドですね。

 

Rumah Sakit - Obscured By Clowns(2002)

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大傑作2nd。ストレートに盛り上がってく1stも好きでしたがこちらはよりインプロ色が増しギターの線も細くなり、より複雑な変拍子ギターリフとメロディアスに絡みあうリズム隊が骨組みとなって展開していきます。何より録音がかなりダイナミックで、ライブの生演奏っぽい荒々しさとジャンキーなギターサウンドは前作以上に強めながらも各パート分離もよくてめちゃくちゃかっこいいです。まさしくタイトルにもなってますが「Sausage Full Of Secrets "Live"」という曲名もあり、会場の熱量をそのまんま保存したような長尺な曲が多く、最終曲も開幕のインストと関連付けていてバンドとしてのセッションそのものを音源にしてしまったような、それこそジャズとも通じてくるインプロゼーションパートが丸ごと後半入っていて彼らの真価が聞ける作品。1stの延長線として是非。

 

Sweep The Leg Johnny - Tomorrow We Will Run Faster(1999)

先述したRumah Sakitと合同ライブ盤を出すなどしていたバンドで、実際Don Caballero~Rumah Sakitの流れで聞けるバンドですが、今あげた二つと比べるとかなりハードコア色が強く一番激しいです。で尚且つメンバーにサックスがいるためまず大分音色が違い、サックスがハードコア要素に追加されるともはやカオスとも言える音の飛散具合でフリージャズ聞いてるときの各アンサンブルが一体となった不協和音ノイズに近いですね。静寂パートも多く「Rest Stop」「Skin」辺りはもろSlintを感じる展開があり、まさにSlintとKIng Crimsonを繋げつつ好き放題やるという予測不能のアルバムで、長尺の曲も多いんですが40分でまとめ上げてさくっと聞ける名盤。

 

Sweep The Leg Johnny - Going Down Swingin'(2002)

4th。こちらでRumah sakitのギタリストも参加してより推し進めた作品で相変わらずハードコア+サックス+プログレッシブな展開という詰め込み具合によるカオス。1曲目のイントロからホーンなのでもうよりジャズの色が強まってきて長い曲が更に増えてきてますがアンサンブルは相変わらず硬質、かなりタイトなポストハードコアの延長線にあるもので、むしろこの対比は前作以上かもしれない。静寂パートも極端なものはなくなってエモのクリーンパートを練り上げて無理やりジャズに組み込んでいったような、相反する2つのパートを同時に鳴らして無理やり枠にねじ込みながらも成立させてしまったような、曲全体の世界観の解像度もかなりくっきりしててめちゃくちゃかっこいいです。ここまでくるとSlint以降というテーマから脱線してきますが、解散後にメンバーのクリス・デイリーはJune of 44やHooverで知られるフレッド・アースキンとJust a Fireを結成することでうっすらと再び繋がってきます。

 

Just A Fire - Light Up(2004)

というわけでJust a Fire、今までHooverやその派生バンド諸々にJune of 44、HiMと言った数々のバンドで強い影響力を及ぼし当時のポストロック~ハードコアシーンの土台となったフレッド・アースキンが今度は自らボーカルをとります。

June of 44がポストハードコアからスタートしアルバム減るごとに徐々にダブ~ジャズ化しHiMに繋がったことや、Hoover解散後に同メンバーでAbileanを結成しまたしてもダブに接近したことなど、上記のバンドには全てフレッド・アースキンがベーシストやトランペットで参加していてどんどんダブ・レゲエを意識した作風へと変化していくんですよね。で今作は最初からその状態で結成、てことでガッツリとポストロックなのかと思いきや、意外なことにディスコーダントで硬質なポストハードコアを鳴らしていてこれがかなりかっこいいです。とは言いつつもろレゲエを思い出すミニマルなベースラインが挿入されたり複雑なリズム展開を見せたり、今まで"ポストロック的な"アプローチで行われていたことがストレートにハードコア直系で鳴ってきます。元々こっちの趣向で初期Hooverとかが一番彼の色強かったのかなぁとか考えてしまいますがかなりオススメ。Spotifyに無いのが残念。

 

 

 


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前回と発端になったシーンについてです。